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ミシシッピ州の中絶規制法

2021-08-11 09:17:51 | 法・裁判

人工妊娠中絶はアメリカの世論を二分する熱いテーマのひとつ、基本的にリベラル派は女性の中絶の自由を擁護し、保守派は規制を容認したり果ては嬰児殺と同視して禁止すべきとします。

日本の憲法と同様、合衆国憲法にも中絶をどう扱えとは書いてありません。半世紀前までは、中絶が許されるか禁止されるかは各州議会の判断に委ねられていました。南部や中西部では規制されている州が多かった。

それを一変させたのが1973年のロー判決です。この最高裁判決は、中絶は女性の憲法上の自由であって、妊娠中期(当時は妊娠24週)までは女性の選択に委ねる、つまり中絶規制の州法は違憲という、リベラル派からは画期的、保守派からはとんでもない判断でした。

以降紆余曲折ありましたが、最高裁はロー判決の中核的判断を維持してきました。ところが、4年間世界中を混乱させたあのお方が、最高裁に3人の新裁判官を任命したことによって、半世紀前のロー判決が変更されるのではないかと、合衆国でもわが国でも懸念されています(中絶反対派からは期待、ですね)

テーマはミシシッピ州の中絶規制法。この州法は妊娠15週以降の中絶を原則として禁止しています。ロー判決に抵触するので、当然のごとく違憲ではないかと訴訟が提起され、連邦裁判所は地裁も控訴裁判所(わが国の高裁)も違憲判決を下しました。

合衆国の連邦控訴裁判所は、地域色があって首都を管轄するワシントンDCが最もリベラルで、ミシシッピ州を管轄する第5巡回区連邦控訴裁判所は保守的とされています(日本だと頻繁に人事異動があるので、東京高裁が一番リベラルなんてことないでしょう)。その保守的な裁判所でも、ミシシッピ州の中絶規制は憲法違反としました。

さてミシシッピ州は最高裁の判断を求めたいと。この話題は、日本のマスコミでも取り上げられていて(たとえば日本人の知らないアメリカ:自由の国アメリカで「中絶禁止」の現実味 保守派優勢の最高裁で早ければ来春判断=中岡望 | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp))、私が改めて何か書く必要性はほとんどないのですが(笑)、ここは書かれてないので私のオリジナル!?

日本の最高裁と違い、アメリカの最高裁は上告の申し立てを受理するか否か完全に自由です。たぶん1万件はある上告のうち、最高裁が受理して審理するのは現在は年70~80件(かつては100件ちょっと)、大多数の事件は最高裁の判断なしで終わります。

保守的な裁判所でも違憲判決だったので、もう違憲の結論は覆しようがないのに、この事件を最高裁が審理すると決定したことが衝撃なのです。通常なら、下級審はロー判決に従って当然の判断をした、ジエンドのはずなのに。

じゃ最高裁は、どうやって受理する事件を決めるか? 最高裁の9人の裁判官のうち4人が賛成すれば取り上げます。ということは下級審の違憲判断は間違っている、容認できないと思っている裁判官が少なくとも4人はいることになります。

長くなったので、続きは明日。

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