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国家緊急権

2016-09-22 12:16:46 | 法・裁判

皆さんは現在の憲法をどうみていますか? 日本国憲法は一言でいえば、滅私奉公の否定、国家は広い意味での私たちの幸せを実現するためにだけ正統性があるという考え方です。「すべて国民は、個人として尊重される」(13条)に象徴されます。
自民党の改憲案は、これを滅私奉公の方向に修正しようというもので、個人より国家、人権より公益、そして軍事力志向がその要点です。さて、今回のお題は国家緊急権。
新設の第9章「緊急事態」によると、武力攻撃・社会秩序の混乱・大災害などの緊急事態では、首相は閣議を経て、緊急事態を宣言できることになります。緊急事態が宣言されるとどうなるか。通常は国会が行っている法律や予算の議決は、緊急政令や財政上の処分として内閣や首相がします。つまり、政府が国会の代わりをするということです。
さすがに、緊急事態の宣言については事前または事後に、緊急政令や財産上の処分については事後に国会の承認が必要とされていますが、はたして事後の承認という歯止めは政府の暴走に待ったをかける機能を果たせるでしょうか?
皆さんは治安維持法をご存知でしょう。そう、反天皇制や共産主義という思想自体を取り締まったあの悪名高き治安維持法です。1925年に制定されたときには、共産党トップの志位さんは懲役10年、共産党員ではない私は処罰されないという内容でした。
1928年に治安維持法の改正が帝国議会に提案されました。悪法も改正すれば良くなるか? そんなことはありません。改正するとたいてい悪法はもっと悪くなります。ポイントは2点で、志位委員長は死刑にでき、党員でない私でも党員の手助けをすれば処罰可能(懲役2年)という改正案でしたが、議会では審議未了で廃案となりました。
ところが、政府は議会閉会の翌日、同一の内容の緊急勅令を制定しました。明治憲法(大日本帝国憲法)は帝国議会閉会中について、議会の頭越しに天皇が新法を制定したり既存の法律を改廃する国家緊急権を認めていました、事後に議会の承認を得ることを条件に。
しかし帝国議会は、既成事実には弱いのでしょうか、事後の承認を与えてしまいます。大災害が発生したわけでもないのに議会閉会の翌日にこんなことするなんて(明治憲法にも「公共の安全を保持しまたはその災厄を避けるため緊急の必要により」という限定はありましたが)、そしてそれを易々と許してしまうなんて。
その反省のうえに現憲法は、新法制定や法律の改廃はあくまで国会の議決が必要(国会は唯一の立法機関、41条)、衆議院が解散され衆議院議員がいないときは参議院が国会の代わりをする(参議院の緊急集会、54条)ことにしたのです。改憲案の国家緊急権は、主体が天皇から内閣・首相に代わっただけで、明治憲法の緊急勅令とよく似ています。百害あって一利なしと考えます。

この記事のポイント
1.緊急事態が宣言されると、政府が国会の代わりを
2.事後の承認では暴走の歯止めにならない
3.国家緊急権の考え方は、明治憲法の緊急勅令の反省を忘れている

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