続・軍務尚書の戯言

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アメリカ文化雑感~其の七:アメリカアニメ事情~

2005-06-29 06:26:40 | アメリカ文化雑感
アメリカはその広大な国土のせいで地上波テレビはあまりなく,あっても極めて画像が悪い地方チャンネルが数個見れるだけで、ほとんどの家庭では有料のケーブルテレビをひいている。
このケーブルテレビのチャンネル数が半端ではなく,最も基本的な契約のものでも100近いチャンネルがあり,それぞれがあるジャンルに特化しているという特徴がある。
分かりやすくいうと,ニュースチャンネル(ABCやFox11)は朝から晩までニュース,ドラマチャンネル(TNTやA&E)は朝から晩までドラマといった具合で,中には料理番組ばかりを扱うFood Channelや動物番組ばかりで構成されるAnimal Planetといったマニアックなものまで存在するのだ。
小生には3歳の娘がいるため、アメリカに転居してからも自宅で主に見るテレビ番組は子供向けのものが中心で、特に子供が大好きなのがアニメを中心とした子供番組を放送するNickelodeonと少し高学年向きのアニメ番組ばかりで構成されたThe Cartoon Channelである。
子供たちと一緒にアメリカのアニメを見ていると,アメリカアニメと日本のアニメの質的な差に驚くとともに,日本のアニメーションが世界中の子供たちと一部の大人たちに熱狂的に指示されている理由がよく理解できる。

アメリカのいわゆるコアなアニメファン(アニメオタクとも言う)の状況に関しては,Moonlight Fantasiaのホームページで非常に詳しく述べておられるのでそちらをご参照頂きたいのだが,アメリカはディズニーによるアニメーション発祥の地であるにもかかわらず一般のアニメのレベルが極めて低く、このため日本のアニメが非常に人気がある。

この原因としては,アメリカと日本における漫画やアニメの認知度の大きな違いがあげられる。
「アルプスの少女ハイジ」や「日曜アニメ劇場」等の質の高いアニメを子供の頃から普通に鑑賞し,ドラマや小説と遜色ない深いテーマや社会性をもった漫画を大人になっても読む日本とは違い、アメリカでは漫画やアニメは「子供のもの」でしかなくそこに芸術性や社会性は全く求められていない。
子供向け玩具やキャンディーと同様に幼児期にだけ接するものであり,従って分かりやすさや子供の注目を集める色彩が強調されるのである。
この結果、アメリカ製のアニメはその多くが単純な絵・原色だけの色彩・コメディイタッチの分かりやすい内容になり、確かに子供は喜ぶのだが、宮崎駿や押井守のアニメを知っている大人には鑑賞に堪えられるものではない。
特に子供が大好きなアメリカの長寿アニメ番組Spongebob Squarepantsなどは、ビキニ湾の海底に住むカイメンの子供Spongebobとその仲間たちのどたばたコメディで,いわゆる「アメリカンジョーク」満載、日本ならPTAが選んだ子供に見せたくない番組10選に必ず選ばれそうな内容である。
また前述したようにデジタル処理やコンピューターグラフィックスを多用する日本のアニメとは違って、ほとんどが単純な構図と原色で構成されているため、分かりやすいが飽きやすいという欠点もあるようだ。

こうしたアメリカアニメの質の低さのため、日本のアニメは非常に人気がありその認知度も極めて高い。
日本でも大人気だった「ポケモン」「ドラゴンボール」「遊戯王」はその関連商品と共にアメリカの小学生を席巻しているだけでなく,日本で最近放映されたばかりの「One Piece」「鋼の錬金術師」「金色のガッシュベル」も現在Cartoon Channelで絶賛放映中,なんと「攻殻機動隊」まで深夜放送しており、全てが高い視聴率を記録している。
またアメリカの番組中で日本のアニメ~特にポケモンとドラゴンボール~を取り上げたりパロったりしていることもしばしばあり,ここからも日本アニメの認知度の高さが伺える。
一番驚いたのは日本でとんと見かけなくなったPuffyがアニメとコラボレーションしてアメリカで大ブレイク中であることで、彼女たちが主人公のアニメ「Hi!Hi! Yumi & Ami」はCartoon Channelの歴代視聴率1位を獲得したのだそうだ。

こうしたアメリカにおける日本のアニメの浸透と関連商品の普及は、アメリカ人の若い世代の中で日本人を「極東島国の黄色人種」から「Coolなアニメと精密機械を作る人々」へ徐々に変容させている。
もちろんアニメを通じてのものであるためかなりの誤解もあるようだが、いずれにせよ世界に誇る日本のアニメにより日本人のイメージが良い方向に変化するのであればこれほど喜ばしいことはないだろう。
外務省が高い金額を出してODAに精を出すより、良質な日本アニメの輸出と普及につとめた方が,日本の文化と日本人の優秀さを世界の人々に知らしめる最良の方法になるのではないかと思うのだが、いかがだろうか。

今日の箴言
「三つ子の魂百までも」

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2 コメント

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少し気になったので・・ (通りすがり)
2005-06-29 18:45:28
はじめまして!確かにアメリカアニメの質というのは、日本人として日本のアニメを見て育った私達からすればどうなんだろう・・と思ってしまうのは共感いたします。しかしそれは、大人の感性としての感覚なのだと、子供を見ていると感じるのです。

先日、スポンジボブを見ても何にも面白くないと私自身は思ったのですが、まだ幼い子供が食い入るように見ているのです。大変気に入ったようで、我が子にとっては、日本のどんなアニメもスポンジボブにはかなわない様子で何度も見ています。

あの原色の使い方や、動きなど、大人の感性ではわからない何かが、小さい子供の心をつかんでいるんだろうと思います。

高度な技術で大人のためのアニメが増えていく中、ただただ単純なスポンジボブのようなアニメも子供達のためには貴重だと感じます。日本は逆にそういうアニメが少なくなってきているように思えて残念です。
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コメントありがとうございます。 (軍務尚書)
2005-06-30 05:10:04
コメントありがとうございました。

うちの娘も確かにSpongebobは大好きですが,日本から送ってもらったプリキュアも同じぐらい好きな様です。

ご指摘の通り,子供向けのアニメも必要かもしれませんね。
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