続・軍務尚書の戯言

国際情勢や医学ニュースに関して日々感じたことを残すブログです。

300<スリーハンドレッド>

2008-06-17 22:38:27 | 映画と本
総合評価
 熱血度
 現実度
 恋愛度

紀元前492年に始まったペルシャ戦争・テルモピュライの戦いを描いた歴史アクション映画。

デジタル処理により自在に変化するアングルとスローモーションにより、極限まで高められた戦闘シーンの芸術性ばかりに目を奪われがちであるが、この映画の真髄は最後の5分にある。
なぜスパルタ王レオニダスは、まったく勝機のない300対100万の戦いに、愛する妻と息子を残し命を懸けて挑んだのか。
なぜ300人のスパルタ兵は、王の命令に一言の異議も唱えず、100万の敵に対峙し全員玉砕したのか。
レオニダス王は部下たちに「戦いの意義」「玉砕の必要性」を声高に叫ぶことはなく、観客は「なぜこんな無茶な戦いに挑んだのか」と疑問を持ち、降伏を勧めるペルシャ王クセルクセスの言葉に「ここで引いとけば安泰だろうに」と考える。
だが最後のシーンにおける、片目を失ったがゆえにその後のスパルタを託され戦場から離脱した1兵士の咆哮により、すべての疑問は氷解するのだ。

時代考証はむちゃくちゃで、世界史を愛したものにとっては突っ込みどころ満載であり、原作者・脚本家は歴史の知識が乏しいと推測できるが、それゆえに彼らは真剣に「なぜ300人のスパルタ兵は玉砕したのか」を考え、真理に到達したのである。
事実、テルモピュライの戦いとスパルタ軍の玉砕により作られた3日間で、アテナイは防衛体制を整えることが可能になり、後のサラミスの海戦の勝利とクセルクセス王の撤退へとつながるのだ。

打算・利己主義・計算に埋め尽くされた現代社会に生きる我々に、「男として生きるとはどういうことか」を強烈に問いかける熱い傑作であり、男を忘れ日々鬱々と生きる小生のような男性諸氏にぜひお勧めしたい。