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優越的地位の乱用に関する独禁法上の指針 その2

2011-12-13 22:38:12 | 言いたいことは何だ

第2 委託者による優越的地位の濫用行為



代金の支払遅延
(1)考え方
 委託者が、提供を受けた役務の代金について、受託者に責任がないにもかかわらず、その全部又は一部を契約で定めた支払期日より遅れて支払うことがある。
 このような代金の支払遅延は、委託者側の収支の悪化や社内手続の遅延などを理由とすることが多いが、取引上優越した地位にある委託者が、正当な理由がないのに、契約で定めた支払期日に代金を支払わない場合であって、受託者が、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる。
 また、契約で定めた支払期日より遅れて代金を支払う場合だけでなく、取引上優越した地位にある委託者が、一方的に代金の支払期日を正常な商慣習に照らして遅く設定する場合や、支払期日の到来を恣意的に遅らせる場合にも、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい。ただし、支払期日が遅く設定される場合であっても、代金の額について支払期日までの受託者側の資金調達コストを踏まえた対価として交渉が行われるなど正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えていないと認められるときは、優越的地位の濫用の問題とはならない。
(2)独占禁止法上問題となる場合
 取引上優越した地位にある委託者が代金の支払を遅らせることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
社内の支払手続の遅延などを理由として、委託者側の一方的な都合により、契約で定めた支払期日に代金を支払わない場合
役務の成果物を対象とする取引において、役務の成果物の提供が終わっているにもかかわらず、当該成果物の検収を恣意的に遅らせることなどにより、契約で定めた支払期日に代金を支払わない場合
役務の成果物を対象とする取引において、代金は当該成果物を委託者が実際に使用した後に支払うこととされている場合に、委託者側の一方的な都合により当該成果物の使用時期を当初の予定より大幅に遅らせ、これを理由として代金の支払を遅らせるとき
代金の減額要請
(1)考え方
 委託者が、受託者に対し、契約で定めた代金の減額を要請することがある。
 受託者が提供した役務の内容が委託時点で取り決めた条件に満たないことを理由として委託者が代金の減額を要請することもあるが、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、正当な理由がないのに、代金の減額を要請する場合には、あらかじめ計算できない不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注8)。
 また、委託者が契約で定めた代金を変更することなく、役務の仕様を変更したり、契約外の役務の提供を要請する場合もあるが、このように代金を実質的に減額することとなる場合の考え方は、上記と同様である。
 なお、受託者から提供された役務に瑕疵(かし)がある場合、委託内容と異なる役務が提供された場合、納期に間に合わなかったために取引の目的が達成できなかった場合等、受託者側の責めに帰すべき事由により、当該役務が提供された日から相当の期間内に、当該事由を勘案して相当と認められる金額の範囲内で代金を減額する場合、代金の減額要請が対価に係る交渉の一環として行われ、その額が需給関係を反映したものであると認められる場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない。
(注8)受託者との間の継続的な取引関係の中で、代金の減額に代えて「協賛金」、「協力金」等の名目で金銭的な負担の要請が行われる場合があるが、その場合の考え方は、この代金の減額要請の場合と同様である。
 また、委託者が行う催事等の費用の一部に充当するために受託者に対して協賛金等の負担の要請が行われる場合があるが、その場合の考え方は、後記5のとおりである。
(2)独占禁止法上問題となる場合
 取引上優越した地位にある委託者が代金の減額を行うことは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
受託者に責任がないにもかかわらず、役務の提供を受けた後に、予算不足など委託者側の一方的な都合により、契約で定めた代金の減額を行う場合
提供を受けた役務について、あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくし、委託内容と異なることや瑕疵があることなどを理由として、契約で定めた代金の減額を行う場合
委託者側の一方的な都合により取引の対象となる役務の仕様等の変更、やり直し又は追加的な役務の提供を要請した結果、受託者側の作業量が大幅に増加することとなるため、受託者に対し当該作業量増加分に係る代金の支払を認めたにもかかわらず、当初の契約で定めた代金しか支払わない場合
受託者が委託者の要請に基づいて設備投資や人員の手配を行うなど、委託者に対する役務提供の準備のための費用を負担せざるを得なくなっているにもかかわらず、委託者側の一方的な都合により、当該役務の一部の委託を取りやめ、契約で定めた代金から委託取引の減少分に係る代金の減額を行う場合
著しく低い対価での取引の要請
(1)考え方
 委託者が、受託者に対し、当該役務の内容と同種又は類似の内容の役務の提供に対し通常支払われる対価に比して著しく低い対価での取引を要請することがある。
 取引の対象となる役務の対価について、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、著しく低い対価での取引を要請する場合には、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注9)。
 しかし、委託者が要請する対価が受託者の見積りにおける対価に比べて著しく低く、受託者からみると、委託者による代金の買いたたき行為であると認識されるとしても、委託者から要請のあった対価で受託しようとする同業者が他に存在する場合など、それが対価に係る交渉の一環として行われるものであって、その額が需給関係を反映したものであると認められる場合や、いわゆるボリュームディスカウントなど取引条件の違いを正当に反映したものであると認められる場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない(注10)。
 なお、著しく低い対価での役務の委託取引を要請することが優越的地位の濫用行為に該当するか否かについては、対価の決定に当たり受託者と十分な協議が行われたかどうか等の対価の決定方法、他の受託者の対価と比べて差別的であるかどうか等の決定内容、取引の対象となる役務の需給関係を反映しているかどうか等の対価の決定状況などを勘案して総合的に判断することとなる。
(注9)このような場合、委託者と受託者の間で対価に係る交渉が十分に行われないときには、受託者は委託者による代金の買いたたき行為と認識しがちであるので、取引上優越した地位にある委託者は、当該対価が需給関係を反映したものであることについて十分受託者に説明した上で当該要請を行うことが望ましい。
(注10)同業者が独占禁止法第二条第九項第三号又は一般指定第六項に規定する不当廉売に該当する行為を行っている場合には、当該同業者の提示する対価は需給関係を反映したものであるとは認められない。
(2)独占禁止法上問題となる場合
 取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、役務の委託取引において著しく低い対価を定めることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
受託者が役務の委託取引を行うに際して新たに設備投資や人員の手配を行う必要があるなど、これによって当該役務の提供に必要な費用等も大幅に増加するため、受託者が対価の引上げを求めたにもかかわらず、かかる費用増を十分考慮することなく、著しく低い対価を定める場合
受託者に対して短い納期の設定を行い、これによって当該役務の提供に必要な費用等も大幅に増加するため、受託者が対価の引上げを求めたにもかかわらず、かかる費用増を十分考慮することなく、著しく低い対価を定める場合
多量ないし長期間の役務の委託取引をすることを前提として受託者に見積りをさせ、その見積りにおける対価を少量ないし短期間しか取引しない場合の対価として定めるとき
特定の受託者に対し、合理的な理由がないにもかかわらず、他の受託者の対価と比べて差別的に低い対価を定める場合
やり直しの要請
(1)考え方
 委託者が、受託者に対し、提供を受けた役務について、それに要する費用を負担することなくやり直しを要請することがある。
 提供を受けた役務の内容が委託時点で取り決めた条件に満たない場合には、委託者がやり直しを要請することは問題とならないが、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、その一方的な都合でやり直しを要請する場合には、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすい(注11)。
 なお、やり直しのために通常必要とされる費用を委託者が負担するなど、受託者に不利益を与えないと認められる場合には、優越的地位の濫用の問題とはならない。
(注11)役務の成果物が取引対象となる取引にあっては、受託者が成果物を試作した後でなければ具体的な仕様等が確定できないため、委託者が当該試作品につきやり直しを要請する場合がある。このような場合に、当該やり直しに係る費用が当初の対価に含まれていると認められるときは、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用として問題とはならない。
(2)独占禁止法上問題となる場合
 取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、提供を受けた役務のやり直しをさせることは、次のような場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を受託者に与えることとなり、不公正な取引方法に該当し、違法となる。
委託者側の一方的な都合により取引の対象となる役務の仕様等を変更したにもかかわらず、その旨を受託者に伝えないまま、受託者に継続して作業を行わせ、仕様に合致していないとして、受託者にやり直しをさせる場合
役務の提供を受ける過程で、その内容について了承したにもかかわらず、提供を受けた後に受託者にやり直しをさせる場合
提供を受けた役務について、あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくし、委託内容と異なることや瑕疵があることなどを理由として、受託者にやり直しをさせる場合
受託者が委託者に対し仕様ないし検査基準の明確化を求めたにもかかわらず、正当な理由なくこれを明確にしないまま、仕様等と異なることや瑕疵があることなどを理由として、受託者にやり直しをさせる場合
 
転載元:公正取引委員会 独占禁止法 役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の      指針


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