官邸と産経が煽動する東京新聞・望月記者バッシングがヒドい! 卑劣な報道圧力に、メディアは即刻抗議せよ!
2017.09.16 卑劣!官邸と産経が望月記者攻撃を煽動 リテラ
官邸が今月1日、菅義偉官房長官の会見で孤軍奮闘する望月衣塑子記者が所属する東京新聞に対し書面で注意喚起をおこなった件が、さらに醜い事態を招いている。今度は産経新聞が、望月記者の発言をめぐって抗議文を東京新聞に送りつけたのだ。
そもそも、官邸が望月記者の質問に対して注意喚起の文書を出していたことが公になったのは、翌2日付の産経の記事が発端。その後、民進党議員が問題の文書を手に入れ公開したが、そこには内閣官房総理大臣官邸報道室長の上村秀紀氏の名前で、以下のように綴られていた。
〈官房長官記者会見において、未確定な事実や単なる推測に基づく質疑応答がなされ、国民に誤解を生じさせるような事態は、当室としては断じて許容出来ません。貴社には再発防止の徹底を強く要請します〉
ここで官邸が問題にしているのは、望月記者が加計学園の獣医学部設置認可について8月25日の会見で「認可の保留という決定が出ました」と発言したこと。文科省が認可保留を発表する前だったため、「決定」という発言を〈未確定な事実や単なる推測〉だと攻撃したのだ。
しかし、認可保留の決定については、8月10日の時点で産経も含むほとんどの新聞・テレビがすでに報じていたことで、また望月記者が質問したわずか数時間後には文科省も正式発表しており、〈未確定な事実や単なる推測〉などではまったくない。仮に「未確定な事実」や「単なる推測」だったとしても、それを質問して何が悪いのか。政府が正式発表したことしか質問できないとなれば、報道の自由を著しく侵害するもので、戦時中の大本営発表か、中国や北朝鮮の国営メディアかという話だ。
だが、この官邸による注意喚起の文書について産経が官邸に丸乗りした上、望月記者に対する批判とともに報じると、安倍応援団やネトウヨのあいだで過熱していた望月記者バッシングはさらにヒートアップ。なんと、報道が出て2日後の4日午後9時ごろに東京新聞には、中年男性の声で「ネットニュースに出ている記者は、なぜ政府の言うことに従わないのか」「殺してやる」という旨の電話がかかってきたという。これは望月記者への「殺害予告」だ。
■官邸の意を汲んで、望月バッシングを煽動してきた産経新聞
こうしたネット上の望月記者に対するバッシングを煽ってきたのは、その産経だ。6月に望月記者が官房長官会見で質問をおこなうようになるや否や、「産経ニュース」でさっそく批判記事を配信。その後も繰り返し望月記者の質問を批判、「野党議員のような質問」「会見時間の半分を浪費」などと個人攻撃を展開してきた。さらに9月9日には石平氏が「彼女のやってるのは吐き気を催すうぬぼれだ!」などと書き立てた。
この異常な事態を受け、望月記者は14日の会見で、「注意文書のことが産経新聞になぜリークとして出て、記事が出て、またこれまでの官房長官とのやり取りもいくつも記事にされていた」と言及。「言論弾圧を助長するかのようなネット上の誹謗中傷、ネット以外の誹謗中傷等々について、政府としてはいまどのように受け止めていらっしゃるのか」と菅官房長官に質問したのだ。
会見での質疑応答をもとに記者が殺害予告まで受ける。報道の自由を守る責任を負う政府としては、断固としてそうした卑劣な行動にノーという毅然とした態度を示すべきだ。しかし、菅官房長官は「ネットにいろいろ書くというのは、それはいろんな方の自由であるということも事実じゃないでしょうか。政府としてはコメントすることは控えるべき」とお茶を濁すだけだった。
しかも、このように望月記者への誹謗中傷を煽ってきた産経は、望月記者の「産経にリークとして記事が出た」という発言を「事実無根であり、社の名誉と信用を著しく毀損するもので看過できない」とし抗議文を出したのだ。
よくもまあ恥ずかしげもなく……とあきれ果てるしかない。連日のように露骨な官邸リーク記事を紙面に踊らせている産経が、今さらリークといわれて毀損されるような“名誉や信用”などいったいどこにあるのか。しかも、この注意喚起の件に限らず、産経が望月バッシングを展開してきたのは、リークの有無にかかわらず官邸の意図と歩調を合わせたものであることは明らかだ。
菅官房長官に厳しく詰め寄る望月記者の存在が官邸は疎ましく、この間裏で個人攻撃のチャンスを狙っていたといわれる。実際、「週刊新潮」(新潮社)6月22日号によると、菅官房長官は会見で切り込んでくる望月記者に怒り心頭。官邸スタッフに「警察組織を使って彼女の身辺調査をするよう命じた」ということが報じられている。
官邸リークによる読売新聞の前川喜平・前文部科学事務次官の“出会い系バー通い”報道を彷彿とさせる一件だが、官邸が産経と読売を巧みに使い分けリーク記事を書かせていることなどもはや周知の事実だ。
そんな産経に「報道の自由」やジャーナリズムの使命を説いたところで、八百屋で魚を買うようなことかもしれない。だが、問題なのは、産経は言うまでもないが、ほかのメディアの対応だろう。
■官邸に狙い撃ちされた東京新聞・望月記者を見殺しにする、忖度メディア
繰り返すが、官邸が東京新聞に出した注意文書は、明白に「報道の自由」に対する圧力である。「未確定な事実」や「単なる憶測」と言って質問を封じるということ自体が言語道断で、こうした官邸の言い分がまかり通れば、独自で掴んだ情報も「未確定な事実」や「単なる憶測」とされ、政府が認めていることしか追及できないということになってしまう。これは、望月記者や東京新聞だけの問題ではなく、報道の自由を著しく侵害するものとして全メディアが即刻抗議すべき大問題だ。にもかかわらず、ほかのメディアも東京新聞に対する今回の官邸の注意文書に対し、抗議どころか、何のアクションもしていない。
唯一の動きは、IWJの岩上安身氏が8日の会見でおこなった質問だ。ここで岩上氏は「25日のこの時点で、なぜ望月記者が特段に注意されなければならなかったのか。正式の公表の前とはいえあらかた報じられている内容にもとづいての質問であり、望月記者だけが厳しく注意されるというのはダブル・スタンダードのように感じられますが、その点いかがでしょうか?」と質問。だが、この件も翌9日、朝日新聞がベタ記事でほんの少しふれただけ。結局、きょうにいたるまで、どの新聞社・テレビ局ともに、表立って官邸に対して抗議をおこなっていないのである。
それどころか、望月記者の9月13日のツイートによれば、官邸記者クラブの幹事社であるテレビ朝日の記者が菅官房長官と目配せし、朝日新聞の記者がまだ挙手しているにもかかわらず会見を打ち切るなど、むしろ官邸側の意を汲んでいるくらいだ。
この、国民の知る権利など放り出して「官邸に嫌われたくない」という保身に走る記者クラブ体質、サラリーマン記者たちの「知らんぷり」加減には反吐が出る。これで「権力の監視」などできるはずがない。
対して米国のメディアはどうか。トランプ政権のホワイトハウス報道官だったショーン・スパイサー氏が政権に批判的なCNNやニューヨーク・タイムズなどを会見から締め出した際には、AP通信やタイム誌はいっしょになって会見をボイコット。ホワイトハウス記者会も抗議声明を発表した。もちろん、スパイサー氏が菅官房長官と同様にまともに質問に答えず、批判的なメディアには強権的な姿勢を見せても、記者たちは食い下がって何度も質問を繰り返す。スパイサー氏が詭弁を振りかざした際には露骨にシラけた表情を向け、紙面や番組ではっきりと「嘘つき」「バカ」「大バカ」「最悪の返答」と批判を浴びせている。これこそが不誠実な政権担当者へのジャーナリズムの本来のあり方ではないのか。
産経は論外としても、官邸が望月記者を露骨にターゲットにするなかで他社が他人事な態度を取っていることは、この国のメディアのレベルの低さを物語っている。そしてこれこそが、この国の民主主義の危機を示しているのだ。
2017.09.16 卑劣!官邸と産経が望月記者攻撃を煽動 リテラ
官邸が今月1日、菅義偉官房長官の会見で孤軍奮闘する望月衣塑子記者が所属する東京新聞に対し書面で注意喚起をおこなった件が、さらに醜い事態を招いている。今度は産経新聞が、望月記者の発言をめぐって抗議文を東京新聞に送りつけたのだ。
そもそも、官邸が望月記者の質問に対して注意喚起の文書を出していたことが公になったのは、翌2日付の産経の記事が発端。その後、民進党議員が問題の文書を手に入れ公開したが、そこには内閣官房総理大臣官邸報道室長の上村秀紀氏の名前で、以下のように綴られていた。
〈官房長官記者会見において、未確定な事実や単なる推測に基づく質疑応答がなされ、国民に誤解を生じさせるような事態は、当室としては断じて許容出来ません。貴社には再発防止の徹底を強く要請します〉
ここで官邸が問題にしているのは、望月記者が加計学園の獣医学部設置認可について8月25日の会見で「認可の保留という決定が出ました」と発言したこと。文科省が認可保留を発表する前だったため、「決定」という発言を〈未確定な事実や単なる推測〉だと攻撃したのだ。
しかし、認可保留の決定については、8月10日の時点で産経も含むほとんどの新聞・テレビがすでに報じていたことで、また望月記者が質問したわずか数時間後には文科省も正式発表しており、〈未確定な事実や単なる推測〉などではまったくない。仮に「未確定な事実」や「単なる推測」だったとしても、それを質問して何が悪いのか。政府が正式発表したことしか質問できないとなれば、報道の自由を著しく侵害するもので、戦時中の大本営発表か、中国や北朝鮮の国営メディアかという話だ。
だが、この官邸による注意喚起の文書について産経が官邸に丸乗りした上、望月記者に対する批判とともに報じると、安倍応援団やネトウヨのあいだで過熱していた望月記者バッシングはさらにヒートアップ。なんと、報道が出て2日後の4日午後9時ごろに東京新聞には、中年男性の声で「ネットニュースに出ている記者は、なぜ政府の言うことに従わないのか」「殺してやる」という旨の電話がかかってきたという。これは望月記者への「殺害予告」だ。
■官邸の意を汲んで、望月バッシングを煽動してきた産経新聞
こうしたネット上の望月記者に対するバッシングを煽ってきたのは、その産経だ。6月に望月記者が官房長官会見で質問をおこなうようになるや否や、「産経ニュース」でさっそく批判記事を配信。その後も繰り返し望月記者の質問を批判、「野党議員のような質問」「会見時間の半分を浪費」などと個人攻撃を展開してきた。さらに9月9日には石平氏が「彼女のやってるのは吐き気を催すうぬぼれだ!」などと書き立てた。
この異常な事態を受け、望月記者は14日の会見で、「注意文書のことが産経新聞になぜリークとして出て、記事が出て、またこれまでの官房長官とのやり取りもいくつも記事にされていた」と言及。「言論弾圧を助長するかのようなネット上の誹謗中傷、ネット以外の誹謗中傷等々について、政府としてはいまどのように受け止めていらっしゃるのか」と菅官房長官に質問したのだ。
会見での質疑応答をもとに記者が殺害予告まで受ける。報道の自由を守る責任を負う政府としては、断固としてそうした卑劣な行動にノーという毅然とした態度を示すべきだ。しかし、菅官房長官は「ネットにいろいろ書くというのは、それはいろんな方の自由であるということも事実じゃないでしょうか。政府としてはコメントすることは控えるべき」とお茶を濁すだけだった。
しかも、このように望月記者への誹謗中傷を煽ってきた産経は、望月記者の「産経にリークとして記事が出た」という発言を「事実無根であり、社の名誉と信用を著しく毀損するもので看過できない」とし抗議文を出したのだ。
よくもまあ恥ずかしげもなく……とあきれ果てるしかない。連日のように露骨な官邸リーク記事を紙面に踊らせている産経が、今さらリークといわれて毀損されるような“名誉や信用”などいったいどこにあるのか。しかも、この注意喚起の件に限らず、産経が望月バッシングを展開してきたのは、リークの有無にかかわらず官邸の意図と歩調を合わせたものであることは明らかだ。
菅官房長官に厳しく詰め寄る望月記者の存在が官邸は疎ましく、この間裏で個人攻撃のチャンスを狙っていたといわれる。実際、「週刊新潮」(新潮社)6月22日号によると、菅官房長官は会見で切り込んでくる望月記者に怒り心頭。官邸スタッフに「警察組織を使って彼女の身辺調査をするよう命じた」ということが報じられている。
官邸リークによる読売新聞の前川喜平・前文部科学事務次官の“出会い系バー通い”報道を彷彿とさせる一件だが、官邸が産経と読売を巧みに使い分けリーク記事を書かせていることなどもはや周知の事実だ。
そんな産経に「報道の自由」やジャーナリズムの使命を説いたところで、八百屋で魚を買うようなことかもしれない。だが、問題なのは、産経は言うまでもないが、ほかのメディアの対応だろう。
■官邸に狙い撃ちされた東京新聞・望月記者を見殺しにする、忖度メディア
繰り返すが、官邸が東京新聞に出した注意文書は、明白に「報道の自由」に対する圧力である。「未確定な事実」や「単なる憶測」と言って質問を封じるということ自体が言語道断で、こうした官邸の言い分がまかり通れば、独自で掴んだ情報も「未確定な事実」や「単なる憶測」とされ、政府が認めていることしか追及できないということになってしまう。これは、望月記者や東京新聞だけの問題ではなく、報道の自由を著しく侵害するものとして全メディアが即刻抗議すべき大問題だ。にもかかわらず、ほかのメディアも東京新聞に対する今回の官邸の注意文書に対し、抗議どころか、何のアクションもしていない。
唯一の動きは、IWJの岩上安身氏が8日の会見でおこなった質問だ。ここで岩上氏は「25日のこの時点で、なぜ望月記者が特段に注意されなければならなかったのか。正式の公表の前とはいえあらかた報じられている内容にもとづいての質問であり、望月記者だけが厳しく注意されるというのはダブル・スタンダードのように感じられますが、その点いかがでしょうか?」と質問。だが、この件も翌9日、朝日新聞がベタ記事でほんの少しふれただけ。結局、きょうにいたるまで、どの新聞社・テレビ局ともに、表立って官邸に対して抗議をおこなっていないのである。
それどころか、望月記者の9月13日のツイートによれば、官邸記者クラブの幹事社であるテレビ朝日の記者が菅官房長官と目配せし、朝日新聞の記者がまだ挙手しているにもかかわらず会見を打ち切るなど、むしろ官邸側の意を汲んでいるくらいだ。
この、国民の知る権利など放り出して「官邸に嫌われたくない」という保身に走る記者クラブ体質、サラリーマン記者たちの「知らんぷり」加減には反吐が出る。これで「権力の監視」などできるはずがない。
対して米国のメディアはどうか。トランプ政権のホワイトハウス報道官だったショーン・スパイサー氏が政権に批判的なCNNやニューヨーク・タイムズなどを会見から締め出した際には、AP通信やタイム誌はいっしょになって会見をボイコット。ホワイトハウス記者会も抗議声明を発表した。もちろん、スパイサー氏が菅官房長官と同様にまともに質問に答えず、批判的なメディアには強権的な姿勢を見せても、記者たちは食い下がって何度も質問を繰り返す。スパイサー氏が詭弁を振りかざした際には露骨にシラけた表情を向け、紙面や番組ではっきりと「嘘つき」「バカ」「大バカ」「最悪の返答」と批判を浴びせている。これこそが不誠実な政権担当者へのジャーナリズムの本来のあり方ではないのか。
産経は論外としても、官邸が望月記者を露骨にターゲットにするなかで他社が他人事な態度を取っていることは、この国のメディアのレベルの低さを物語っている。そしてこれこそが、この国の民主主義の危機を示しているのだ。