絶対安全なはずの「ゆうちょ銀行」が危ない 静かな「取り付け騒ぎ」の前兆
2016年03月07日(月) 週刊現代
異次元に突入するとはこういうことか。想像を絶する変動が金融業界に起こりつつある。マグマが噴出する日も近い。
■ゆうちょの200兆円が溶けていく
「小口の預金を集めて、将来性のある事業に投資するというのが本来の銀行の業務のあり方です。しかしすでに、このビジネスモデルは崩壊しつつあります。
国債の利回りは期待できないし、融資をしようにも有望な借り手がないとなれば、結局、銀行は手数料で稼ぐしかなくなる。ATMの時間外手数料などを考えれば、現在でも実質的にマイナス金利の状態にあるといってもいい。
私の知人でも『預金するのが馬鹿らしくなった』と金庫を買って、金の地金をしまっている人がいます」
こう語るのは信州大学経済学部教授の真壁昭夫氏だ。
目端の利く預金者たちはすでに動き始めている。ホームセンター大手の島忠では、2月中旬の小型金庫の売り上げが前年比2・5倍に跳ね上がっている。銀行というシステム自体に対する不信感がじわりと高まっている証左、静かなる「取り付け」の前兆である。
日銀が導入したマイナス金利は劇薬だ。その副作用のおかげで、今後の経営が憂慮されている巨大な金融機関がある。ゆうちょ銀行だ。
昨年11月、鳴り物入りで上場を果たした日本郵政グループの金融部門だが、その収益の柱は国債の運用である。日本郵政グループ関係者が語る。
「ゆうちょ銀行の運用資金は約200兆円ですが、そのうち4割を国債で運用しています。ところが、マイナス金利の影響で、もともと低かった利回りがさらに下がり始めている。
そこでゆうちょは株式や不動産ファンドなどを運用することで収益を上げられる態勢を作ろうと試みています」
これまでは「絶対安全」ばかりを重視してきた官営銀行にとっては、180度の方向転換だ。国債を買う以外にはろくな投資も融資もしたことがなかったため、当然ながら株式運用のための人材やノウハウが圧倒的に不足している。
嘉悦大学ビジネス創造学部教授の小野展克氏が語る。
「運用経験に長けている他行の担当者からは『ゆうちょは、あんな態勢で運用を始めて大丈夫なのか』と心配する声が上がっています。
優秀なファンドマネジャーでも、一人で運用できる規模は500億円程度が限界。ゆうちょ銀行は今後数十兆円もの規模を運用するわけですから、かなり大規模かつ実力の伴う運用部隊を配備する必要があります。ゴールドマン・サックスなど外資系投資銀行から人材を引き抜いていますが、いまはまだ『素人』が大半です」
今年4月、ゆうちょ銀行は、預金の最大枠を1000万円から1300万円に引き上げる。マイナス金利に嫌気がさしながらも、「とはいえ何と言っても元郵便局。ゆうちょ銀行なら絶対につぶれないだろう」と考える人たちが一時的に預金を積み増す可能性が高い。
だが、おカネを預かるほうの銀行は有効な運用先もなく、資金をどうしたらいいかもわからないまま、慣れないやり方で株式や不動産を買い始める。そこへリーマンショックのような世界規模のクラッシュが起きたとしたら……。
現在、原油安や中国経済の失速など、世界の市場は不安定要素が目白押し。投資マネーのリスクオフが進んでいる逆風のなか、ゆうちょという「巨大なクジラ」はよろよろと泳ぎだそうとしているのだ。
■金利はもっと下がる
「絶対安心だと信じていたゆうちょ銀行が、運用で数兆円規模の損失を出したということがニュースになれば、一般の預金者たちに与えるショックは計り知れない。パニックに近い取り付け騒ぎが起こるでしょう。
実際、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は年初来の株安で10兆円近い損失を出していると見られる。年金の保険料は勝手に引き出すことができませんが、ゆうちょ銀行に預けたカネが溶けているとわかれば、口座を解約する人が続出することはまちがいありません」(経済紙金融担当記者)
それまで「ゆうちょだけは安心」と素直に信じてきた預金者たちは大慌てで窓口に殺到する。デフォルト寸前のギリシャで起きたような「取り付け騒ぎ」の始まりだ。
下ろせるうちに、できるだけカネを引き出しておこうとする預金者たちがATMに長蛇の列をなし、一日で数兆円規模の預金が引き出される。極度に混乱した事態に終止符を打つため、各行は預金引き出し額を大幅に制限したり、最悪の場合「預金封鎖」という事態もありうる——。
いまや、何が起きてもおかしくない。そのことは肝に銘じておくべきだ。
2月16日に日銀が導入したマイナス金利とは、正確にいうと市中銀行が日銀におカネを預けている当座預金の金利のことを言う。
現在預金残高は約220兆円。これまでこの口座には0・1%の利息がついており、市中銀行はなにもしないでいても2200億円もの利子を受け取ることができた。まさに濡れ手で粟のぼろ儲けだったわけだが、これからはマイナス金利により、逆に0・1%の利子を取られることになる。
現在のところマイナス金利が適用されているのは預金の一部のみだが、今後、黒田東彦日銀総裁がマイナス金利の幅を引き上げたり、マイナス金利が適用される預金の範囲を広げる可能性は高い。ユーロ圏はすでに0・3%、デンマークにいたっては0・65%ものマイナス金利が導入されているからだ。
経済ジャーナリストの磯山友幸氏が語る。
「これまで銀行は低金利で預金を集め、そのおカネで国債を買ったり、日銀の当座預金に預けたりするだけで儲けてきた。しかしそのような『利ざやビジネス』に依存した銀行はもう生き残れない。今後は銀行の淘汰と選別が始まるでしょう」
このような状況下で、ゆうちょ銀行がリスクの高い運用に乗り出していることは前述した通りだが、融資をしようにも地域経済が疲弊しきっていて有望な融資先がみつからない地方の銀行も袋小路に追い込まれている。
これまで「利ざやビジネス」にだけ依存してきた地銀は早晩、他の銀行に買収合併されるか、最悪の場合、倒産に追い込まれることになるだろう。
■もう銀行を信用できない
銀行業務を管轄する金融庁は地銀経営の危うさを百も承知だ。
それを示す資料がある。昨年7月に作成された「金融モニタリングレポート」。金融庁の官僚たちがメガバンクから地銀、信金まで銀行業界の現状とリスクを詳細に分析した100ページ以上にわたる文書だ。
このレポートは、長引く低金利で地銀の収益率がますます低下していることを指摘しつつ、地銀の融資先について次のようなリスクがあると警鐘を鳴らしている。
「多くの地域銀行において、自行の収益の核として期待する戦略的分野について、その戦略を裏付けるに足りる収益性の有無・程度を把握できる管理態勢となっていない事例が認められた」
典型的な官僚コトバで書かれているのでわかりにくいが、要は「収益を上げられるマトモな事業を持たない地銀がたくさんありますよ」と指摘しているのだ。このように昨年来、金融庁はろくに融資も行えない地銀の再編、倒産を見越して、その準備を進めてきた。
この状況にマイナス金利が加われば、一気に地銀の統廃合が進むのは火を見るよりも明らか。その際、預金者が混乱して金融システムへの不安が広がり、パニックがメガバンクにまで拡大していく可能性がある。
これほどまでに金融業界を揺るがすマイナス金利だが、政策の当局者である黒田総裁は自らの手法に自信満々のようだ。
「2月12日の黒田総裁と安倍首相の会談は1時間に及びました。総理からは『マイナス金利を導入しても、株価は大きく下がっているじゃないか。7月の参院選までに、なんとか回復してもらわないと困る』と厳しい叱責がありました。
しかし、黒田総裁は『大丈夫です。まだ我々には3枚のカードがあります』と、今後の景気と株価の回復について自信たっぷりに確約したそうです」(元日銀幹部)
一部のエコノミストによると、3月もしくは4月にも日銀がマイナス金利の幅を拡大し、株高を演出するという見立てもある。このような状況に戦々恐々としているのが、大量のおカネを日銀の当座預金に預けている銀行業界関係者。
あるメガバンク幹部はこう嘆く。
「正直、マイナス金利が経済全体に及ぼす影響は我々にもわかりません。ただ一つ確実にいえるのは、銀行にとってマイナス金利は日銀による『拷問』以外のなにものでもないということ。マイナス金利は確実に銀行の収益を圧迫する。2月23日には、三井住友銀行が今春のベースアップ見送りを決めています」
だが銀行業界が、自分たちはリスクを負わず、金利の利ざやだけで何千億円もの儲けを出してきたことは事実。一方で預金者には100万円預けても年に10円しか利子がつかないような低金利で預金を集め、ATMなどであれこれと手数料をむしり取ってきた。
いまさら日銀のやり口を嘆いてみたところで、一般預金者たちには同情されない。むしろこの国の金融システムへの不信感が高まるばかりである。
元ファンドマネジャーの藤原敬之氏が語る。
「銀行預金や通貨への不信が高まると金や一等地の土地などの実物資産におカネが流れます。そして、ビットコインのような疑似通貨に流れる可能性もある。そうなると、想像以上のスピードで既存の通貨システムが破壊される可能性も出てくる」
マイナス金利政策が引き起こすパニックは、通貨の価値を保証する日本銀行の信用すらも傷つけかねない両刃の剣なのだ。
いまはまだ蟻の一穴かもしれない。だが、さらさらと流れ出した預金の波はやがて大きなうねりとなり、金融システムの根幹を揺るがす濁流へと姿を変える。
「デフレ脱却」の名のもとに、次々と異次元の金融政策を実行してきた黒田総裁—今は自信に満ちているその顔が青ざめる日は意外に近いかもしれない。
2016年03月07日(月) 週刊現代
異次元に突入するとはこういうことか。想像を絶する変動が金融業界に起こりつつある。マグマが噴出する日も近い。
■ゆうちょの200兆円が溶けていく
「小口の預金を集めて、将来性のある事業に投資するというのが本来の銀行の業務のあり方です。しかしすでに、このビジネスモデルは崩壊しつつあります。
国債の利回りは期待できないし、融資をしようにも有望な借り手がないとなれば、結局、銀行は手数料で稼ぐしかなくなる。ATMの時間外手数料などを考えれば、現在でも実質的にマイナス金利の状態にあるといってもいい。
私の知人でも『預金するのが馬鹿らしくなった』と金庫を買って、金の地金をしまっている人がいます」
こう語るのは信州大学経済学部教授の真壁昭夫氏だ。
目端の利く預金者たちはすでに動き始めている。ホームセンター大手の島忠では、2月中旬の小型金庫の売り上げが前年比2・5倍に跳ね上がっている。銀行というシステム自体に対する不信感がじわりと高まっている証左、静かなる「取り付け」の前兆である。
日銀が導入したマイナス金利は劇薬だ。その副作用のおかげで、今後の経営が憂慮されている巨大な金融機関がある。ゆうちょ銀行だ。
昨年11月、鳴り物入りで上場を果たした日本郵政グループの金融部門だが、その収益の柱は国債の運用である。日本郵政グループ関係者が語る。
「ゆうちょ銀行の運用資金は約200兆円ですが、そのうち4割を国債で運用しています。ところが、マイナス金利の影響で、もともと低かった利回りがさらに下がり始めている。
そこでゆうちょは株式や不動産ファンドなどを運用することで収益を上げられる態勢を作ろうと試みています」
これまでは「絶対安全」ばかりを重視してきた官営銀行にとっては、180度の方向転換だ。国債を買う以外にはろくな投資も融資もしたことがなかったため、当然ながら株式運用のための人材やノウハウが圧倒的に不足している。
嘉悦大学ビジネス創造学部教授の小野展克氏が語る。
「運用経験に長けている他行の担当者からは『ゆうちょは、あんな態勢で運用を始めて大丈夫なのか』と心配する声が上がっています。
優秀なファンドマネジャーでも、一人で運用できる規模は500億円程度が限界。ゆうちょ銀行は今後数十兆円もの規模を運用するわけですから、かなり大規模かつ実力の伴う運用部隊を配備する必要があります。ゴールドマン・サックスなど外資系投資銀行から人材を引き抜いていますが、いまはまだ『素人』が大半です」
今年4月、ゆうちょ銀行は、預金の最大枠を1000万円から1300万円に引き上げる。マイナス金利に嫌気がさしながらも、「とはいえ何と言っても元郵便局。ゆうちょ銀行なら絶対につぶれないだろう」と考える人たちが一時的に預金を積み増す可能性が高い。
だが、おカネを預かるほうの銀行は有効な運用先もなく、資金をどうしたらいいかもわからないまま、慣れないやり方で株式や不動産を買い始める。そこへリーマンショックのような世界規模のクラッシュが起きたとしたら……。
現在、原油安や中国経済の失速など、世界の市場は不安定要素が目白押し。投資マネーのリスクオフが進んでいる逆風のなか、ゆうちょという「巨大なクジラ」はよろよろと泳ぎだそうとしているのだ。
■金利はもっと下がる
「絶対安心だと信じていたゆうちょ銀行が、運用で数兆円規模の損失を出したということがニュースになれば、一般の預金者たちに与えるショックは計り知れない。パニックに近い取り付け騒ぎが起こるでしょう。
実際、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は年初来の株安で10兆円近い損失を出していると見られる。年金の保険料は勝手に引き出すことができませんが、ゆうちょ銀行に預けたカネが溶けているとわかれば、口座を解約する人が続出することはまちがいありません」(経済紙金融担当記者)
それまで「ゆうちょだけは安心」と素直に信じてきた預金者たちは大慌てで窓口に殺到する。デフォルト寸前のギリシャで起きたような「取り付け騒ぎ」の始まりだ。
下ろせるうちに、できるだけカネを引き出しておこうとする預金者たちがATMに長蛇の列をなし、一日で数兆円規模の預金が引き出される。極度に混乱した事態に終止符を打つため、各行は預金引き出し額を大幅に制限したり、最悪の場合「預金封鎖」という事態もありうる——。
いまや、何が起きてもおかしくない。そのことは肝に銘じておくべきだ。
2月16日に日銀が導入したマイナス金利とは、正確にいうと市中銀行が日銀におカネを預けている当座預金の金利のことを言う。
現在預金残高は約220兆円。これまでこの口座には0・1%の利息がついており、市中銀行はなにもしないでいても2200億円もの利子を受け取ることができた。まさに濡れ手で粟のぼろ儲けだったわけだが、これからはマイナス金利により、逆に0・1%の利子を取られることになる。
現在のところマイナス金利が適用されているのは預金の一部のみだが、今後、黒田東彦日銀総裁がマイナス金利の幅を引き上げたり、マイナス金利が適用される預金の範囲を広げる可能性は高い。ユーロ圏はすでに0・3%、デンマークにいたっては0・65%ものマイナス金利が導入されているからだ。
経済ジャーナリストの磯山友幸氏が語る。
「これまで銀行は低金利で預金を集め、そのおカネで国債を買ったり、日銀の当座預金に預けたりするだけで儲けてきた。しかしそのような『利ざやビジネス』に依存した銀行はもう生き残れない。今後は銀行の淘汰と選別が始まるでしょう」
このような状況下で、ゆうちょ銀行がリスクの高い運用に乗り出していることは前述した通りだが、融資をしようにも地域経済が疲弊しきっていて有望な融資先がみつからない地方の銀行も袋小路に追い込まれている。
これまで「利ざやビジネス」にだけ依存してきた地銀は早晩、他の銀行に買収合併されるか、最悪の場合、倒産に追い込まれることになるだろう。
■もう銀行を信用できない
銀行業務を管轄する金融庁は地銀経営の危うさを百も承知だ。
それを示す資料がある。昨年7月に作成された「金融モニタリングレポート」。金融庁の官僚たちがメガバンクから地銀、信金まで銀行業界の現状とリスクを詳細に分析した100ページ以上にわたる文書だ。
このレポートは、長引く低金利で地銀の収益率がますます低下していることを指摘しつつ、地銀の融資先について次のようなリスクがあると警鐘を鳴らしている。
「多くの地域銀行において、自行の収益の核として期待する戦略的分野について、その戦略を裏付けるに足りる収益性の有無・程度を把握できる管理態勢となっていない事例が認められた」
典型的な官僚コトバで書かれているのでわかりにくいが、要は「収益を上げられるマトモな事業を持たない地銀がたくさんありますよ」と指摘しているのだ。このように昨年来、金融庁はろくに融資も行えない地銀の再編、倒産を見越して、その準備を進めてきた。
この状況にマイナス金利が加われば、一気に地銀の統廃合が進むのは火を見るよりも明らか。その際、預金者が混乱して金融システムへの不安が広がり、パニックがメガバンクにまで拡大していく可能性がある。
これほどまでに金融業界を揺るがすマイナス金利だが、政策の当局者である黒田総裁は自らの手法に自信満々のようだ。
「2月12日の黒田総裁と安倍首相の会談は1時間に及びました。総理からは『マイナス金利を導入しても、株価は大きく下がっているじゃないか。7月の参院選までに、なんとか回復してもらわないと困る』と厳しい叱責がありました。
しかし、黒田総裁は『大丈夫です。まだ我々には3枚のカードがあります』と、今後の景気と株価の回復について自信たっぷりに確約したそうです」(元日銀幹部)
一部のエコノミストによると、3月もしくは4月にも日銀がマイナス金利の幅を拡大し、株高を演出するという見立てもある。このような状況に戦々恐々としているのが、大量のおカネを日銀の当座預金に預けている銀行業界関係者。
あるメガバンク幹部はこう嘆く。
「正直、マイナス金利が経済全体に及ぼす影響は我々にもわかりません。ただ一つ確実にいえるのは、銀行にとってマイナス金利は日銀による『拷問』以外のなにものでもないということ。マイナス金利は確実に銀行の収益を圧迫する。2月23日には、三井住友銀行が今春のベースアップ見送りを決めています」
だが銀行業界が、自分たちはリスクを負わず、金利の利ざやだけで何千億円もの儲けを出してきたことは事実。一方で預金者には100万円預けても年に10円しか利子がつかないような低金利で預金を集め、ATMなどであれこれと手数料をむしり取ってきた。
いまさら日銀のやり口を嘆いてみたところで、一般預金者たちには同情されない。むしろこの国の金融システムへの不信感が高まるばかりである。
元ファンドマネジャーの藤原敬之氏が語る。
「銀行預金や通貨への不信が高まると金や一等地の土地などの実物資産におカネが流れます。そして、ビットコインのような疑似通貨に流れる可能性もある。そうなると、想像以上のスピードで既存の通貨システムが破壊される可能性も出てくる」
マイナス金利政策が引き起こすパニックは、通貨の価値を保証する日本銀行の信用すらも傷つけかねない両刃の剣なのだ。
いまはまだ蟻の一穴かもしれない。だが、さらさらと流れ出した預金の波はやがて大きなうねりとなり、金融システムの根幹を揺るがす濁流へと姿を変える。
「デフレ脱却」の名のもとに、次々と異次元の金融政策を実行してきた黒田総裁—今は自信に満ちているその顔が青ざめる日は意外に近いかもしれない。