
NHKがアンケートを募集していたので、回答を準備したけれど、いざ投稿しようとしたら、すでに締め切られていた。せっかく準備したので、ここに載せたいと思う。
Q1:雇用制度改革について伺います。労働時間ではなく成果で評価する新たな労働時間制度(いわゆる「残業代ゼロ制度」)について、労働生産性が高まるという意見や、長時間労働が常態化することを懸念する意見などがあります。あなたのご意見や疑問をお書きください。
何個作ったか、どれだけ売ったかなど、その成果が明示的にわかる仕事をしている人については、成果主義もあり得るかもしれません。しかし、たとえば、管理や人事、経理の仕事をしている人など、ほとんど上司の主観に頼って評価するしかない仕事をしている人には適用できない制度だと思います。後者の場合、評価そのものが難しいし、いくらでも恣意的に評価することができるわけで、公平感が高まるとは思われません。
「労働生産性が高まる」とは、企業が労賃として支払うお金に対して、労働者が働いて作り出す価値の割合がより大きくなるということです。しかし、その増えた分に相当する価値を労働者に還元してしまうと、先の定義からすると、労働生産性は高まりません。だから、労働生産性を高めようとすれば、労賃を上げることはできません。つまり、労働生産性が高まるということは、企業にとっては大変良いことですが、労働者にとってはなんのメリットもありません。長時間労働をせざるを得なくなったり、仕事がきつくなったりして、身体や精神に悪影響を与えることになって、かえってデメリットとなってしまいます。
なお、成果主義においては、成果があがれば、それだけ労賃も増えるわけで、成果が上がることが労働生産性の向上に直結するわけではありません。成果主義にすれば、いままでなまけていた労働者ががんばるようになるので、労働生産性が高まるということなのでしょうか。つまり、労働者はなまけるものであるという考えかたですね。そういう考え方で労働者を雇っている企業は、安売り競争では一定の力を発揮できるかもしれませんが、労働者の創造力を育てることはできず、そこからは、新しい時代を作り出し、世界をリードしてゆくような、その意味での競争力を持つ製品は生まれないと思います。
Q2:建設・介護・家事といった分野での外国人労働力の活用について、労働力不足を補うために必要だという意見や、受け入れる体制が整っていないと懸念する意見などがあります。あなたのご意見や疑問をお書きください。
外国人労働力を受け入れる目的が、それらの分野は仕事がきつく、低賃金であるため、日本人の働き手がないからというものであれば、やめるべきだと思います。それは、単なる倫理的な問題ではなく、現在すでに、低賃金、重労働という条件で働いている人たちのその条件を、そのまま維持することにつながるからです。その条件が嫌なら外国人に代えるぞということです。特に介護については、高齢化社会を迎え、ますます大切な仕事になってゆくのに、低賃金、重労働が常態化しています。その現状を変えることがまず必要だと思います。
そのほかの分野であっても、低賃金、重労働を常態化させるということは、国民を幸せにするということにつながらないばかりか、経済的に見ても、現在低迷している内需を拡大させることはできず、国民経済の成長を阻害するものだと考えます。
Q3:そのほか、雇用制度改革をめぐるご意見・疑問や、ご自身の雇用に関して心配なことをお書きください。
安倍政権は「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換」を掲げて、2015年度までに雇用を守るための「雇用調整助成金」と雇用を流動化させるための「労働移動支援助成金」の予算規模を逆転させる方針を示しました。
アルバイト、パート、派遣など、正社員に比べて低賃金で雇い、いらなくなったらすぐに辞めさせることができる人たちがどんどん増えています。そういう働かせ方をもっと普及させようという方針のようです。これは、企業にとっては大変好ましいことですが、働く側からすれば、低賃金で不安定な仕事が増えてゆくことであり、大変大きな問題です。
「行き過ぎた雇用維持」という言葉は、まさに企業の視点に立った考え方であることをはっきりと表しています。労働者にとって「雇用維持」に「行き過ぎ」などありません。「雇用維持」を労働者に対して強制するような法律はありません。労働者は、いつでも、自己都合で会社を辞めることができます。また、他の会社に移るのも自由です。反対に、法律は、会社が労働者を辞めさせることができる条件を厳しく設定しています(実際には判例で条件を決めています)。つまり、企業はそれを「行き過ぎ」と感じており、それを緩めるように望んでいるということです。「雇用調整助成金」は、その法律を守らせるため、税金で企業を援助しましょうという内容のものです。
つまり、冒頭の方針は企業の要請であり、企業のためのものです。残業代ゼロや解雇特区などもそうですが、安倍政権が行なっている雇用制度改革というのは、企業の側から反対意見は出てこないことを見てわかるように、すべて企業のためにやっているように見えます。「従来の法律は労働者を守り過ぎである。労働者の守り過ぎは企業のためにならない」ということでしょうか。労働者とその家族は、国民を構成する大部分です。その国民の守り過ぎが企業のためにならないとすれば、企業とはいったい何なのでしょうか。
Q4:続いて、医療制度改革について伺います。医療保険が適用される診療と適用されない診療を合わせて行う、いわゆる「混合診療」の適用拡大について、先進医療が受けやすくなり、患者の利便性を高めるという意見や、医療の質や財政への影響を懸念する意見などがあります。あなたのご意見や疑問をお書きください。
日本は、いま世界で最も平均寿命が高い国ですが、その理由の一つとして従来の日本の医療制度があると思います。混合診療解禁はアメリカから要求されていることの一つ(「医療サービス市場への米国企業の参加」「営利企業による医療サービスの提供を認めること」「企業投資の観点からの『混合診療』の解禁」など)ですが、先進国で唯一医療を市場原理で行なっているアメリカの国民の大部分がまともな医療を受けることができないこと、十分な医療を受けることができるのは金持ちだけだということが、いろいろな媒体を通して報告されています。オバマ大統領がその現状を変えたいと保険制度の改革を目指しましたが、富裕層から大きな抵抗を受けています。貧乏人のために自分たちの税金を使われたくないそうです。国民の健康、命を、より多く儲けることが至上命題である市場原理にさらしてはならないと思います。
Q5:そのほか、医療制度改革をめぐるご意見・疑問をお書きください。
医療制度にしても、教育制度にしても、市場原理にはなじまないし、むしろできるだけそういう原理から遠ざけて、本来の目的を果たす必要があります。健康や命、教育が売り買いされるものになってしまってはなりません。金がすべてという現在の風潮には危険なものを感じます。
Q6:最後に、規制改革全体について伺います。安倍政権が進める規制改革は本当に経済成長につながるのかということへのお考え、そのほか、改革全体についてのご意見・疑問があればお書きください。
経済成長とはいったい何なのかというところから考える必要があります。仮に規制改革が経済成長につながったとして、衣食住を基本として国民の生活が劣化し、貧富の差が拡大し、犯罪が多発し、治安のためとして、国民の行動の自由にどんどんと規制がかかり、監視が強化されるようになってしまっては、国民にとって経済成長には意味がありません。池田内閣のブレーンで「所得倍増計画」の政策の基礎づけをした下村治氏は『日本は悪くない 悪いのはアメリカだ』という著書で国民経済について「この日本列島で生活している1億2千万人が、どうやって食べどうやって生きて行くかという問題である」「その1億2千万人が、どうやって雇用を確保し、所得水準を上げ、生活の安定を享受するか、これが国民経済である」と述べています。
経済成長も結構ですが、この基本的な目的が忘れられてしまっては意味がありません。
Q1:雇用制度改革について伺います。労働時間ではなく成果で評価する新たな労働時間制度(いわゆる「残業代ゼロ制度」)について、労働生産性が高まるという意見や、長時間労働が常態化することを懸念する意見などがあります。あなたのご意見や疑問をお書きください。
何個作ったか、どれだけ売ったかなど、その成果が明示的にわかる仕事をしている人については、成果主義もあり得るかもしれません。しかし、たとえば、管理や人事、経理の仕事をしている人など、ほとんど上司の主観に頼って評価するしかない仕事をしている人には適用できない制度だと思います。後者の場合、評価そのものが難しいし、いくらでも恣意的に評価することができるわけで、公平感が高まるとは思われません。
「労働生産性が高まる」とは、企業が労賃として支払うお金に対して、労働者が働いて作り出す価値の割合がより大きくなるということです。しかし、その増えた分に相当する価値を労働者に還元してしまうと、先の定義からすると、労働生産性は高まりません。だから、労働生産性を高めようとすれば、労賃を上げることはできません。つまり、労働生産性が高まるということは、企業にとっては大変良いことですが、労働者にとってはなんのメリットもありません。長時間労働をせざるを得なくなったり、仕事がきつくなったりして、身体や精神に悪影響を与えることになって、かえってデメリットとなってしまいます。
なお、成果主義においては、成果があがれば、それだけ労賃も増えるわけで、成果が上がることが労働生産性の向上に直結するわけではありません。成果主義にすれば、いままでなまけていた労働者ががんばるようになるので、労働生産性が高まるということなのでしょうか。つまり、労働者はなまけるものであるという考えかたですね。そういう考え方で労働者を雇っている企業は、安売り競争では一定の力を発揮できるかもしれませんが、労働者の創造力を育てることはできず、そこからは、新しい時代を作り出し、世界をリードしてゆくような、その意味での競争力を持つ製品は生まれないと思います。
Q2:建設・介護・家事といった分野での外国人労働力の活用について、労働力不足を補うために必要だという意見や、受け入れる体制が整っていないと懸念する意見などがあります。あなたのご意見や疑問をお書きください。
外国人労働力を受け入れる目的が、それらの分野は仕事がきつく、低賃金であるため、日本人の働き手がないからというものであれば、やめるべきだと思います。それは、単なる倫理的な問題ではなく、現在すでに、低賃金、重労働という条件で働いている人たちのその条件を、そのまま維持することにつながるからです。その条件が嫌なら外国人に代えるぞということです。特に介護については、高齢化社会を迎え、ますます大切な仕事になってゆくのに、低賃金、重労働が常態化しています。その現状を変えることがまず必要だと思います。
そのほかの分野であっても、低賃金、重労働を常態化させるということは、国民を幸せにするということにつながらないばかりか、経済的に見ても、現在低迷している内需を拡大させることはできず、国民経済の成長を阻害するものだと考えます。
Q3:そのほか、雇用制度改革をめぐるご意見・疑問や、ご自身の雇用に関して心配なことをお書きください。
安倍政権は「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換」を掲げて、2015年度までに雇用を守るための「雇用調整助成金」と雇用を流動化させるための「労働移動支援助成金」の予算規模を逆転させる方針を示しました。
アルバイト、パート、派遣など、正社員に比べて低賃金で雇い、いらなくなったらすぐに辞めさせることができる人たちがどんどん増えています。そういう働かせ方をもっと普及させようという方針のようです。これは、企業にとっては大変好ましいことですが、働く側からすれば、低賃金で不安定な仕事が増えてゆくことであり、大変大きな問題です。
「行き過ぎた雇用維持」という言葉は、まさに企業の視点に立った考え方であることをはっきりと表しています。労働者にとって「雇用維持」に「行き過ぎ」などありません。「雇用維持」を労働者に対して強制するような法律はありません。労働者は、いつでも、自己都合で会社を辞めることができます。また、他の会社に移るのも自由です。反対に、法律は、会社が労働者を辞めさせることができる条件を厳しく設定しています(実際には判例で条件を決めています)。つまり、企業はそれを「行き過ぎ」と感じており、それを緩めるように望んでいるということです。「雇用調整助成金」は、その法律を守らせるため、税金で企業を援助しましょうという内容のものです。
つまり、冒頭の方針は企業の要請であり、企業のためのものです。残業代ゼロや解雇特区などもそうですが、安倍政権が行なっている雇用制度改革というのは、企業の側から反対意見は出てこないことを見てわかるように、すべて企業のためにやっているように見えます。「従来の法律は労働者を守り過ぎである。労働者の守り過ぎは企業のためにならない」ということでしょうか。労働者とその家族は、国民を構成する大部分です。その国民の守り過ぎが企業のためにならないとすれば、企業とはいったい何なのでしょうか。
Q4:続いて、医療制度改革について伺います。医療保険が適用される診療と適用されない診療を合わせて行う、いわゆる「混合診療」の適用拡大について、先進医療が受けやすくなり、患者の利便性を高めるという意見や、医療の質や財政への影響を懸念する意見などがあります。あなたのご意見や疑問をお書きください。
日本は、いま世界で最も平均寿命が高い国ですが、その理由の一つとして従来の日本の医療制度があると思います。混合診療解禁はアメリカから要求されていることの一つ(「医療サービス市場への米国企業の参加」「営利企業による医療サービスの提供を認めること」「企業投資の観点からの『混合診療』の解禁」など)ですが、先進国で唯一医療を市場原理で行なっているアメリカの国民の大部分がまともな医療を受けることができないこと、十分な医療を受けることができるのは金持ちだけだということが、いろいろな媒体を通して報告されています。オバマ大統領がその現状を変えたいと保険制度の改革を目指しましたが、富裕層から大きな抵抗を受けています。貧乏人のために自分たちの税金を使われたくないそうです。国民の健康、命を、より多く儲けることが至上命題である市場原理にさらしてはならないと思います。
Q5:そのほか、医療制度改革をめぐるご意見・疑問をお書きください。
医療制度にしても、教育制度にしても、市場原理にはなじまないし、むしろできるだけそういう原理から遠ざけて、本来の目的を果たす必要があります。健康や命、教育が売り買いされるものになってしまってはなりません。金がすべてという現在の風潮には危険なものを感じます。
Q6:最後に、規制改革全体について伺います。安倍政権が進める規制改革は本当に経済成長につながるのかということへのお考え、そのほか、改革全体についてのご意見・疑問があればお書きください。
経済成長とはいったい何なのかというところから考える必要があります。仮に規制改革が経済成長につながったとして、衣食住を基本として国民の生活が劣化し、貧富の差が拡大し、犯罪が多発し、治安のためとして、国民の行動の自由にどんどんと規制がかかり、監視が強化されるようになってしまっては、国民にとって経済成長には意味がありません。池田内閣のブレーンで「所得倍増計画」の政策の基礎づけをした下村治氏は『日本は悪くない 悪いのはアメリカだ』という著書で国民経済について「この日本列島で生活している1億2千万人が、どうやって食べどうやって生きて行くかという問題である」「その1億2千万人が、どうやって雇用を確保し、所得水準を上げ、生活の安定を享受するか、これが国民経済である」と述べています。
経済成長も結構ですが、この基本的な目的が忘れられてしまっては意味がありません。
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