ワカキコースケのブログ(仮)

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聴くメンタリーのイベント、8月とヤマガタの報告です

2017-10-26 23:37:33 | 日記


ブログがお休みな間も定期的に続けている「ワカキコースのDIG!聴くメンタリー」のイベント。
8月には東中野のポレポレ坐での第5回目を、そして10月の山形では山形国際ドキュメンタリー映画祭の関連イベントとして2日間行った。

今頃になってなんですが、セットリスト(かけた盤の順)を公開します。合計3回なので、1枚ごとの説明はほどほどにして―。★印は、連載で取り上げている盤です。

 

【atポレポレ坐 5】2017年8月4日

 

[1]オープニング 「NHKテーマ音楽集」より「歌のグランド・ショー」

毎回、「オープニングは明るい音楽に。それでも何かドキュメントの性質があるものを」と面倒な枷を作っている。それで、これを。公開番組で生オケの演奏なので、オフィシャルのテーマ曲でもライヴ録音なのだ。

 

[2]『LENNY BRUCE ― AMERICAN』★

前半は演芸特集。レニー・ブルースの漫談集から、代表的なネタ「白人が黒人とパーティーで打ち解ける方法」を。連載に全訳を載せている。

http://webneo.org/archives/43305

 

[3]「The Night Club Years1964-1968 WOODY ALLEN」

やはり芸人時代のネタ「キッドナップ」……のはずが、針の置きどころを間違え、僕がまた英語が分からなくて違うところを延々お聴かせしてしまった。

 

[4]『THE MANZAI 3』

番組収録音声のレコード化から、紳助・竜助とツービートを少しずつ。「どっちも早くて全然聴き取れない、ピッチを少しあげているのではないか?」の声を複数もらった。そこは不明だが、しゃべくりのスピードが急に上がったのと漫才ブームの到来はシンクロしていたのは確かだろう。

 

[5]『声帯模写大競演』

1973年に、立川談志が案内役となって松井錦声らの声帯模写を紹介する盤。聴いてもらったネタは、大河内伝次郎、坂東妻三郎、上田吉二郎、月形竜之介、徳川夢声、古川ロッパ、田中角栄、無着成恭。(他にもいたかな)

 

[6]「レコード図鑑1 昆虫」★

真夏らしいサウンドということで、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ヒグラシの鳴き声を。

 

[7]『日本仁義全集』★

前回(イベント第4回)でウケが良かったため、「博徒の仁義」をリクエストで。口上を語っているのは、果たして本職か俳優か。お客さんに挙手してもらってアンケートをとったところ、俳優のほうが多かった。

 

[8]「かえしておくれ今すぐに」ザ・ピーナッツ

吉展ちゃん誘拐犯人ただ一人だけに向けた、1960年代きっての大異色メッセージソング。京都で見つけてガッツポーズをして買ったのだが、部屋に戻って袋を開けたら中身が違っていた。中古レコ掘りに付きまとうぼやき話をした後、この曲はパソコンにつなげて動画で聴いてもらった。

 

[9]「朝日ソノラマ」1960年7月号より「原爆のうた」

峠三吉の「原爆詩集」を、文野朋子、久米明、小澤重雄が朗読。8月6日の2日前なので。

 

[10]『恐怖の大地震1980X年』

過去の地震の波形記録を、シンセサイザーで再現した1970年代後半制作のLP。クラフトワークや喜多郎が登場し、シンセで何か表現するのが「最新」だった時代の産物。今となっては映画の効果音のほうがしっかりして聴こえてしまう。「サンフランシスコ大地震」や「中国大地震」などを。自然への畏怖を説くマジメな部分と、パニック映画のサントラ的なこけおどしを狙った部分が混在した迷盤。

 

[11]『実録・恐山』

息子さんをなくした母親が、イタコの口寄せを通して息子さんのメッセージを聞く一連を。こちらはかなり真摯な盤。青森在住の戯曲家と俳優の兄弟が、イタコの理屈では説明しきれない存在意義まで伝えようとしている。

悲しみが癒えない人の思いを汲む「必要な非合理」というものは、あるのではないか。大槌町の「風の電話」のように……という話をさせてもらった。

 

[12]『決定盤!!長編現地録音 阿波おどり』★

イベントでは、最近入手した盤をお披露目するのが中心になる。今回のクライマックスは『実録・恐山』。それとお盆前なのが重なって、後半の構成はやや重ためになった。モロに言えば、古いレコードを聴くとはすなわち死者の声を聴くことだ。そういう性質がいつにも増して露わになったかな。なのでエンディングは明るく。阿波踊りは盆踊りのルーツなので、一応ストーリーは通っている。

 

 

【ヤマガタ出張篇 音で20世紀を駆けある記】2017年10月7日 BOTA theater

 

[1]『WALT DISNEY PRESENTS IT‘S A SMALL WORLD』

ディズニーが1964年に出した子ども向けレコード。おなじみの曲の、中華風、マリアッチ風、コサック風など様々な異国情緒アレンジが収録されている。国際映画祭にちなみまして。

 

[2]「カルピスソノシート 声のアルバム」より歴史的人物の声

初めて再生可能な蓄音機を発明したエジソン、日本で自分の声を吹き込んだ人物第一号である乃木希典などを。

初の地方イベントなので、ヤマガタではなるたけレギュラーのポレポレ坐とは違う、ベストアルバム的な選盤を意識した。初日は今までやったことのない事象の時系列を、『映像の世紀』のレコード版みたいな気持ちで組んだ。

 

[3] 『恐怖の大地震1980X年』

「サンフランシスコ大地震」が起きたのは1906年なので、前述の迷盤をここでも。

 

[4] 『LENIN SPEECHES RECORDED 1919-1921』★

レーニンの演説より、「ソヴィエト権力とは何か」を。連載に全訳あります。

http://webneo.org/archives/42225

 

[5] 『シェイヴド・フィッシュ~ジョン・レノンの軌跡~』より「イマジン」

ここで、なぜかレーニンつながりでジョン・レノン。

イマジンの歌詞とレーニンの演説は似てるな、ガチガチに訳せば「世界の人民諸君よ、想像したまえ!」ってことじゃねえか、とひらめいちゃって、今年の春にポレポレ坐で「もしも『イマジン』をマルクス主義者が訳したら」パフォーマンスをやった。果たしてスベったのかどうかさえ分からない反応だった。またやってみろと言われて再演したところ、まあ、なんとか拍手を。

 

[6] 『NHK放送50年』★

「(昭和)天皇皇即位御大典」、「226事件の『兵に告ぐ』」、「B29空襲の軍管区情報」、「開戦臨時ニュース」、「『街頭録音』東京裁判について」、「浅沼稲次郎刺殺」、「ケネディ暗殺」を。

『映像の世紀』ならぬ“レコードの世紀”を組もうとしたら、かなりの部分は日本放送協会が持ってる音源に頼ることになるのだった。

 

戦前までは日本で唯一の放送メディアで、翼賛体制のもとで成長した組織なので、お上には無条件で従う体質がNHKのDNAには否応なく組み込まれている。つまり、現在のインテリ層が「マスコミの原点に立ち返れ」とNHKの政治報道を批判するのは、ややトンチンカンというか、勉強不足なのだ。こういう話はさせてもらった。

ついでに、B29上陸の軍管区情報(今の台風情報に近い)を放送するのにいちいち軍のハンコが必要だった、そのために空襲を受けてから放送が流れることがしばしばあり、さすがに一般人からも批判が出た―それって、どっかのJアラームと似てませんかねという話も。

 

『街頭録音』は、番組のタイトル。戦後初めて民間人のナマの声を収録した番組だから、街頭録音と銘打つだけでも凄いことだったのだ。東京裁判について、「過ぎたこと」と受け入れる声、「絶対に無罪」と憤る声の両方を収録している。これはGHQの専門部・民間情報教育局(CIE)による〈番組の民主化〉を受け入れ、両論併記のルールに基づいて番組を作った最初の例。リベラルなみなさんが求めている「マスコミの原点」とはこちらのことであり、一方で「中立的な立場から両方の意見を等分に聞く」良さは、日本の風土に慣らせば自ずと「どっちつかず」ということにもなる。

 

[7] 『耳で聞く昭和史』

『NHK放送50年』とよく似た内容の盤だが、比較的明るい話題が多いので、「正田美智子さん婚約会見」「新幹線テスト走行」「アポロ11号実況」を。

 

[8] 『声帯模写大競演』

箸休め的に、美濃部都知事、大平外務大臣など戦後の政治家の声色を。

 

[9]「朝日ソノラマ」1962年11月号より「探訪ゲイバー」

録音機材がポータブルになれば、こんな突っ込んだ場所にもマイクを持って入れるようになる。銀座に店を出した元陸軍将校のママがキビキビと反省を語る声がかっこいい。

 

[10]「カルピスソノシート オリンピックハイライト」

「入場行進」「開会宣言」などを。5枚のソノシートが色違いになっていて、うまく五輪カラーに合わせているおしゃれな作りなのも見てもらった。

 

[11]「激動の1972年」より「あさま山荘事件」

現場音、連赤兵士の母親の嘆き、野次馬の怒声など、音だけで推移が分かる。僕が持っている聴くメンタリーの中でも、飛びぬけて構成が巧い作り。

 

[12]『栄光の756号 王貞治』

ホームラン世界記録の瞬間の実況。政治の季節と石油ショックを乗り越え、昭和が再び明るいムードになってきた時代の象徴的な音として。

 

[13]「ランボルギーニ・カウンタックLP500S」★

王さん756号のすぐ後に起きた、スーパーカー・ブームの産物。エンジン音、走行音などを。

新幹線の最高速度が200キロを突破しただけで感激していたのに、ほんの十数年でスーパーカーが手に届くあこがれの存在になった。このレコードが出た数年後にはビデオデッキが家庭に普及し、聴くメンタリーの役割は終わる。

 

[14「東京五輪音頭」三波春夫

「イッツ・ア・スモール・ワールド」で始めたので、また別の切り口で、世界参加のおまつりを寿ぐ歌をエンディングに。2020年までにこれぐらいポピュラーな、みんなが調子よく口ずさめる歌が生まれるかどうか。もし生まれるならば、そこには何がしかの五輪開催の大義があるんだと思っている。

僕は針を落としてすぐに出口まで下りたので、33回転を45回転に切り替えるのを忘れてしまった。なので折角の締めが、グズグズなことになったらしい。スミマセンでしたー。

 

 

【ヤマガタ出張篇 聴くメンタリー傑作選】2017年10月8日 BOTA theater

 

[1]『東本願寺 声明集1』★

2日目は、ストレートにここまでイベントでかけた盤の総集編。

一種の宗教音楽だという解釈で、「正信偈(しょうしんげ)」をオープニング曲にした。真宗ではよく選ばれる経文。一部を連載で訳しています。

http://webneo.org/archives/41019

 

[2]「ダーリンと和枝」★

連載の第1回目に選んだ、僕にとっての記念盤。婚約中の美空ひばりと小林旭のおしゃべり。

http://webneo.org/archives/20582

 

[3]『園遊会 昭和四十七年~五十三年春』★

剥製技師と昭和天皇の懇懇談などを。これは何回かけても面白がってもらえるし、まだまだお聴かせしていない人が沢山いる。

http://webneo.org/archives/41260

 

[4]『~砂漠のレコード~サラート(祈り)』★

「アブダビの市場」「砂漠を歩く音」など。のんびりした(出来はあまりよくない)レコードなので、のんびり聴いてもらったのだが。香味庵で、来てくださったお客さんに「懐かしかった」と感想をいただいた。旦那様の仕事の関係で、若い頃にしばらくアブダビに住んでいたので、そんなレコードを僕が出したのでビックリしたそうだ。僕もオドロキ。たのしい思いをさせてもらった。

http://webneo.org/archives/22208

 

 [5]「レコード図鑑1 昆虫」★

スズムシとマツムシを。映画祭開催中、山形公民館の周囲の植え込みからもコオロギの鳴き声が聞こえた。これがまた艶があって、キレイで感心したものです。

http://webneo.org/archives/35474

 

[6]『ルーツ・オブ・リバー 黒部川』★

最上流、渓流、中流、下流と大急ぎで聴いてもらった。本来は、通してじっと聴くと相当に面白みがあるレコードだ。

http://webneo.org/archives/39060

 

[7]『日本仁義全集』★

これもおなじみ盤。また「博徒の仁義」を。

http://webneo.org/archives/39060

 

[8]『梵鐘』★

ここからは、人気盤を立て続けに。イベントで何回かけてもウケがいいものは、すなわち聴くメンタリーの名盤だ。お客さんが決めてくれるのである。

東大寺(奈良)、新薬師寺(奈良)、羽黒三山神社、岩手中尊寺(南北朝)、浅草寺(江戸)などの鳴りの響きを。

http://webneo.org/archives/27390

 

[9]『空襲下の北ベトナム』

警報から飛来音、爆撃音などを1967年のハノイ空襲の一部始終をじっくり。

[10]『実録・恐山』

8月にポレポレ坐でかけたのと同じところを。
 

[11]『美空ひばりオン・ステージ』★

バッシングのさなかに大劇場での公演を敢行したひばりが、クライマックスに客席に向けて話したMCが劇的なので。この後にかかる「人生一路」をエンディング曲に。

http://webneo.org/archives/40283

 

どう組もうかなーといじくっているうちに、美空ひばりで始まり、ひばりで締めるのが一番しっくり来た。アナログレコードの女王だもの! 当然なのかもしれない。

 

ヤマガタでは、正直、思ったよりも手ごたえはあった。映画祭期間中にわざわざ“映像のないドキュメンタリー”をお聴かせする酔狂を、面白がってくれる声は多かったので。ホッとしました。

 

ここで書くとなんかイヤらしいので名前は伏せるが、えッ……という映画監督やプロデューサーの方にも来てもらった。お互い知ってか知らずか、コンペティションの出品監督と審査員が近くの席にいると、ちょっとこちらのほうがドキドキしたね。

 

それに、地元の人がけっこう覗きに来てくれました。2日とも来場してくれた方も。「あんたの話おもしろいから、色々とメモしてたらノートを何ページも使っちゃったよ」なんて。ありがたい。

 

というわけで調子に乗り、ポレポレ坐でのレギュラーに戻って、また年末あたりにやろうと考えています。ミュージシャンの人とは違い、そのつど新ネタを仕込まなくてはいけないのでタイヘンだが、そこが面白かったりする。

 

快く会場を貸してくれたBOTA theaterさん。

関連イベント扱いにしてくださった、山形国際ドキュメンタリー映画祭事務局のみなさん。

受付などをきもちよく手伝ってくれた高橋壮太さん、加納土さん。連載当初から応援してはくれてるんだけどレコード時代には全く興味のない猿田ゆう。

 

果たして映画祭期間中の山形に場所があるかどうか、調べるところから始めてくれた大澤一生。

機材の手配など仕込みの部分でかなり動いてくれた、小林和貴。

 

そして、お客さんになってくれたみなさん。

ありがとうございました!

 

 


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