早稲田大学山岳部 活動記録(2014年度~)

早稲田大学山岳部です。2014年度より活動報告をこちらで行います。

滝谷、第四尾根主稜とドーム中央稜の登攀

2016-10-24 10:24:55 | 2016年度 個人山行
対象:滝谷、第四尾根主稜とドーム中央稜

日程:10/18~20

メンバー:田中颯4、鈴木雄大4

ギア:キャメロット#0.4〜3 1セット、ナッツ1セット、ハーケン(未使用)。キャメロットは1式あると所々で使え、有効だった。ナッツは一度だけ使用した。


記録:

10/18  6:30上高地〜7:30徳沢〜10:30本谷橋〜12:20涸沢~15:30北穂南陵テント場

 前日に雨が降ったようだが、すっきりと晴れた中、滝谷へとアプローチを始めた。今月末まで犬塚さんが徳澤園で働いているというので、いつもより軽い足取りで、徳沢まで。徳沢園の手前800mほどの所で犬塚さんが現れ、一緒に話をしながら歩いた。今日は小屋での勤務はお休みのようだった。徳沢園では、眠気覚ましのコーヒーと極上のソフトクリームをご馳走していただいた。



その後も、横尾を過ぎたあたりまで一緒に歩き、お別れ。北穂南陵テント場までは単調な登山道をひたすら歩き、15時半頃到着。ここのテント場は水場が北穂高山頂直下の小屋にしかないため、毎回15分ほど登らないといけない。今日は二人とも登る気にならず、残りの水でなんとか一夜を過ごし、明日の朝水を汲んでから滝谷へ出発することにした。



10/19 3:30起床〜4:20北穂南陵テント場〜5:00松濤のコル〜6:10C沢右俣左俣合流点〜6:30第四尾根末端付近の顕著なコル、クライミング開始〜13:00〜7p目終了後の懸垂点〜16:00終了点〜16:45北穂南陵テント場

 初めてのクライミングエリアでは取り付きに正しくアプローチすることが第一の核心だ。今回もそれは例外ではなく、松濤岩の手前のちょっとした踏み跡を頼りにガレガレの沢を下っていく。ここはガレ具合が半端なく、平日以外は絶対に行かないほうがいい。



半信半疑のままC沢の左俣のガレた沢と格闘すること1時間、右俣との合流する地点へ着いた。すると、トポに書いてある通りの顕著な100m程の踏み跡が第四尾根のスノーコルへ向かって続いていた。それを辿ると4尾根上のコルへと着き、一安心。結局無駄な道を歩かず、取り付きへと辿り着いた。ここからロープを出すことに。

[スノーコルだと思っていたところ、おそらくこれはトポ上の”小コル”か]


1ピッチ目、草付き混じりの岩。Ⅱ級程か。登っていると通常このようなルートにあるはずのピトンが1つもなく、不安になる。ロープを50m近くのばすと普通に歩けそうな踏み跡に合流する。2ピッチ目はコンテでそこを100m程進むと草も少なくなり、ピトンが現れ始めた。後でわかったことだが、ここがスノーコルで本来のクライミング開始地点らしい。


[トポ上の1ピッチ目を落石に気を使いながらリードする田中颯」

ただまだまだ浮石が多く、リードフォロー共に全く油断できない緊張したクライミングが続きそうだ。ジャルパインクライミング特有の岩を掴むのではなく押し付けながら登るテクニックを多用しながらロープを伸ばしていく。クライミングのムーブそれ自体は問題ないが、ホールドの不安定さが登る勇気を削ぎ落とすような箇所も度々出てくる。






ここまで来れば、稜線は明瞭で、ルートファインディングには困らず、7p目の終了点まで登ることができる。ここから25m強の懸垂をし、最後の2pを登ればクライミング終了だ。8p目はⅣ級のフェースからチムニーだ。最初のフェースは岩もそれなりに硬く、今までとは違った快適なクライミングを楽しめる。その後のチムニーは大きなザックを背負っていると登りにくく、ガッシャを持ってきていた田中は長い間挟まっていた。チムニーを登るときはスリングで体の下にザックを吊り下げると登りやすいと教え、次のピッチへ。



9p目、Ⅴ級だが最初の2mを登れば後は簡単な登り。終了点は滝谷に似合わない銀に輝くペツルのボルトだった。


終了点からはポロポロの踏み跡を辿れば稜線に合流した。



テント場に戻りながら明日のドーム中央稜への降り口を確認し、払いそびれていたテント代を払って水を汲み、カレーを食べて眠りについた。



10/20 起床4:00〜4:50北穂南陵テント場発〜6:00T1の懸垂点〜6:30ドーム中央稜登攀開始〜10:30終了点〜11:20北穂南陵テント場〜12:30涸沢〜15:30徳沢にてカレー〜17:00上高地

前日に多少取り付きへのルートをチェックしていたため、スムーズに取り付きへと向かうことができた。縦走路をペンキに従って歩くと、一箇所クサリ場の加工があるので、そこを降りてすぐ、右側の踏み跡を15分ほど下ると、やがてクライムダウンはできそうにないところに着いた。その辺で歩き回ると、しっかりとしたラペルリングが見つかった。



20m強の懸垂をするとトポ上にT2とあるテラスに着き、さらに歩くこと3分、顕著なチムニーで始まるドーム中央稜1ピッチ目へと到着した。

[ドーム中央稜取り付き]

昨日の反省を踏まえて今日はフォローのみがザックを背負うスタイルで来ていたので、1ピッチ目のチムニーは田中が難なくリードした。2ピッチ目はⅤ級のスラブでなかなか面白い。



ドーム中央稜は昨日の脆さとは比べ物にならないほど安定しており、楽しいクライミングに集中できた。ただ、10月も終わりに近づき、途中小さなツララもあるような極寒のコンディションだった。岩は冷たく、吹きやむことのない風がビレイヤーを震えさせる。3ピッチ目はⅠ級の歩きなのでコンテで進み、4ピッチ目へ。4級の凹角を田中がリードしていった。核心は、1センチほどのフットホールドの上で、大きなチョックストーンのガバを掴むところで、田中は一度足を滑らせ2m程フォール。だが、回収不能の残置カムがこれをキャッチしてくれた。フォール後は何とか気持ちを取り戻し、突破してくれた。

[乏しいフットホールドを信じながら、チョックストーンを離すまいとする田中颯]

後で、花谷さんと今井さんが冬にここを登る動画を見たが、彼らが登っていたのは右のクラックで、そっちの方が簡単だったのかもしれない。だがそこにはピトンなどが何もなかった気がするが。
最終5ピッチ目は鈴木がリード。最後の最後のハングを右から、ハンドクラックを使って越えるムーブが簡単ではなく、アルパインルートではしたことないようなハンドジャムをして突破した。終了点に出れば涸沢側からの光が眩しく、最高のロケーションだった。常に日陰の滝谷とは体感で5度以上は暖かかっただろう。


[ドーム中央稜最終ピッチの核心部のクラックに腕を突っ込もうとする田中颯]

ドームに突き上げる最高のクライミングを終え、充実した気分でテン場へ戻り、上高地へと歩みを進める。



[繊細なクライミングの後は大胆にパッキング]



[一緒に上高地方面へと歩く少し変わった別パーティー]

途中徳沢に再び立ち寄り、犬塚さんからカレーとソフトクリームというなんとも豪華なご馳走をしていただいた。結局この山行中3回カレーを食べることになったのだが、(田中に至っては下界から食べ続けていたらしいので、連続5回)徳沢園のカレーは本当に美味しく5分とかからず完食した。ソフトクリームも相変わらず最高だった。良い先輩に恵まれたなと実感する。


お腹を満たした後、上高地へとひたすら続く道を無心で歩き、無事に山行を終えた。

検討事項:
1、青いハーフロープの傷みが激しい。同じ種類の同じ色のものは末端に番号をつけるなどして差別化するべき。



文=鈴木 雄大

瑞牆山 調和の幻想 5.10a 5p

2016-10-04 01:37:14 | 2016年度 個人山行
9/27 前日の雨も止み、久しぶりに比較的良いコンディションの中、ずっと登りたかった調和の幻想にトライした。メンバーは4年鈴木雄大と3年福田倫史。


1p 5.9+ 30m
キャンプ場から30分で取り付きに到着し、10時40分スタート。出だしのワイドから快適なハンドクラック。ワイドにはまだ慣れが必要だが、小核心を超える毎にレストできるポイントがあり、何とかオンサイト。フォローした福田も核心部で耐え、落ちずに登った。


2p 5.8 20m
福田がリードでスタート。出だしのハンド大クラックが濡れていて難し目。福田が何回かトライするが突破できず、リードを交代した。上部スラブも濡れていたため、少し怖さを感じたが、何とか落ちずに登り切る。福田が取り付き付近に横山「ジャンボ」勝丘さんと増本さんを発見するが、遠かったため声をかけられず。


3p 5.9 20m
カンテ状フェースを登る。福田リード。ところどころクラックがあるので、そこから支点は取れる。右にトラバースした後のフィンガークラックが少し難しい。エイドに使っていたナッツが外れて派手に落ちた
が、古めのリングボルトがしっかりとキャッチしてくれた。

4p 5.10a 30m
鈴木リード。木登りからスタートするのだが、人気ルートな為かこの木が壁と反対側に曲がってきていて難しくなっている。本格的な木登りの末、慎重に岩へと移った。その後も1ピン目までのトラバースはなかなか距離があり緊張する。そして右のクラックにカム#2を刺し、次のクラックまで3mほどのランナウトをしながらスラブを登る。核心手前でカム#3を2つバチ効きさせて思い切ったムーブでガバを掴み、何とかオンサイト。フォローの福田もノーフォールで登った。


5p 5.9 45m
キャメロットの#6サイズが15mほど永遠に続く、精神面での核心ピッチ。ワイドでズリズリと体もキャメ6もずらしながら登って行く。カムをズラす間は落ちればビレイヤーの下まで…というようなランナウト状態になるので、絶対に落ちられない。出発前にこのサイズのカムを買っていて本当に良かった。
このワイドのセクションの半分上あたりで、左隣のルート、完結された青春から半無理やりだが、ボルトを借りられるので、120スリングでプロテクションをとる。これで大分気持ちはラクに。ワイドを登り切ると簡単なハンドクラックに変わり、その後短いオフウィズズを登る。このオフウィズズが少し厄介だが、ここまでノーフォールできているので、絶対に落ちられないという気で頑張り、オンサイト。福田も軽々とフォローし、無事に調和の幻想を登り終えた。4時丁度だった。




[充実したクライミング後、早々とガスの中へと消え去る福田倫史]


クライミング終了後、トポに書いてある「ナチュラルプロテクションに加え、強烈なランナウトや複雑なルートファインディングなど、決してビギナー向けのルートではない。」という文の意味がよく分かった。予定していたよりも時間は掛かってしまったものの、2人で良い経験を積む事ができた。このレベルのルートなら1日2本以上登る実力、体力を身に付けたい。

2016年度 北鎌尾根

2016-09-30 15:15:18 | 2016年度 個人山行
山域:北アルプス南部 中房温泉〜燕山荘〜大天井岳〜北鎌尾根〜槍ヶ岳〜徳沢園〜上高地

期間:2016年9月13日~15日

メンバー: 小川(4)鈴木雄大(4)小野(1)
行動概要:
9月13日(火) 雨  5:58松本駅発=電車=6:27穂高駅着=バス=7:50中房温泉~10:15合戦小屋~11:30燕山荘~14:10大天井ヒュッテ

9月14日(水) 晴れ 3:00起床~7:30天井沢出合~9:30北鎌尾根稜線~12:00独標〜14:10槍ヶ岳~17:00槍沢ロッジ~19:00徳沢園

9月15日(木) 曇り 7:00起床~10:20上高地バスターミナル~12:36松本駅

9月13日
 朝から雨が降っていたが出発し、燕山荘までの上りを雨の中歩きました。稜線上では風と雨が合わさって寒さを感じました。燕山荘からは北アルプスの山々が見えるはずなのですが、雨とガスによって視界が遮られ展望は望めませんでした。30分ほど燕山荘で休憩し、天気予報などの情報を確認し出発。大天井岳まで稜線歩きでは、雨が弱まりガスが晴れた時があり、翌日歩く北鎌尾根や双六岳などを望むことができました。大天井ヒュッテでテントを張り16:00就寝。

9月14日
 3:00起床。前日の予報通り雨はほぼやんでいたため、4:00に出発し貧乏沢を下降し天井沢と合流。貧乏沢は踏み跡がついていましたが非常に長く感じました。その後、北鎌沢を遡行し北鎌尾根の稜線上に出ました。この上りで、貧乏沢で下った標高とほぼ同じ標高を登り返したため非常に長く疲れを感じました。その場所からは独標の影となり槍の穂先は見えませんでしたが、槍から左右に長く続く東鎌尾根と西鎌尾根を見ることができました。この時点で天気は晴れており行動に最適な天候でした。独標を超え2時間ほど歩くと槍ヶ岳の山頂に到着しました。一度槍ヶ岳山荘まで降りた後、休憩し、徳沢園に向けて出発。高度をどんどん下げていきます。徳沢園には19:00に着きました。

9月15日
 7:00起床。徳沢園のご主人と、徳沢園で夏の間働いている山岳部OBの犬塚さんのご厚意で素晴らしい朝食と、ソフトクリームをごちそうになりました。長時間の行動の疲れが吹き飛んだ瞬間でした。その後、上高地のバスターミナルまで林道を歩いた後バスで松本駅まで下山しました。

感想
 行動中に見た景色はとても素晴らしく、記憶に残っています。しかし、初日の行動から先輩に遅れ気味になりトレーニングの不足を感じました。2日目も上りで歩みが遅くなり到着時刻が遅くなってしまいました。今回初めて連れて行っていただいた個人山行で、以前から憧れだった北鎌尾根を登ることができとても感動しています。今後、行動の足手まといにならないようしっかりトレーニングを行っていきたいです。

小野

瑞牆山

2016-07-25 20:49:29 | 2016年度 個人山行
アメリカですっかりクライミングの虜になり、衝動を抑えきれずに瑞牆山へ行ってきた。パートナー探しに苦労したが、最近暇そうにしているらしい犬塚さんが快く来てくれた。

一つ目に登ったルートは最近開拓されたばかりのjoyful moment 5.9 5p というルート。ブッシュ歩きもなく、下から山頂まで軽快なクライミングができるらしい。

1p目は5.9の左上するクラックを登り、木でピッチを切る。登り出しで少しプロテクションが取りにくいが、そんなに難しいムーブはなく快適に登る。ヨセミテの5.7よりも簡単に感じた

2p目 ハイハイトラバース。15メートル程左へ、少々ハングした岩を上に見ながらトラバース。ここは
犬塚さんが得意なハイハイで難なく通過。

3p目 5.9 トポに40mとあるが、最後の15mほどは5.6くらいのスラブ。出だしでリービテーションが快適らしいが、自分は迷わずレイバックで越える。爽快なピッチ。

4p目 5.8の短いワイドクラック。犬塚さんが相当苦労しながらも何とかワンテンでリード。ワイドに慣れてないと難しい。


5p目 殆んど歩き。途中で3mほどの5.7を登って十一面岩奥壁の頂上へ。



上の写真にみえてる5.6のワイドクラックを登るか、その下にある岩のトンネルをくぐると自然とクライマー道に導かれる。そのまま取り付きへ。

簡単なグレードながらも瑞牆山のマルチを楽しめる良いルートだった。


2日目は山河微笑に取り付くも、挟まり好きな犬塚さんが2ピッチ目の5.8のワイドクラックに2時間挟まってる間にパラパラと雨が降り出し、そこから懸垂。1ピッチ目を下る頃には滝のようになっていた。無理して登っていたら後悔していただろう。3ピッチ目には美しいクラックが見えていたので、是非とも次回登りたい。

鈴木 雄大