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早稲田大学山岳部 活動記録(2014年度~)

早稲田大学山岳部です。2014年度より活動報告をこちらで行います。

春山合宿-2月〜3月(冬期)飯豊連峰縦走報告-

2018-04-27 00:57:31 | 2017年度 合宿



[経緯]
かねてから飯豊連峰には独特のオーラを感じていた。その名の響きからなのか、なんなのか…。とにかく「いつか登りたい!」そんな風にぼんやりと頭の片隅に置いてあった。その「いつか」は意外にも学生時代にやってきた。昨年6月に剱岳を春山の対象から外すことがコーチ会で決定されたためだ。

レベルの高い登攀ができないなら、雪と格闘する重厚長大な縦走をやってやろうと思った。できれば、来年度に向けて経験値を蓄積するためにも、記録の少ない山域のほうが良い。ーー「飯豊連峰だな。」頭の片隅に置いておいた山の名前が不意に浮かんできたのだ。

冬期の飯豊連峰縦走に向け、創刊号から2000年代までの岳人や山と渓谷を全て調べ上げ、記録をかき集めた。これを参考にし、山形県長者原から西俣尾根を経て主稜線を縦走し、三国岳から松ノ木尾根を下降するルートに決定した。

計画に万全を期すため、冬山合宿で西俣尾根の偵察を行いいよいよ春山合宿で飯豊連峰縦走へと挑戦した。

期間:2018年2月27日〜3月5日
山域・対象:飯豊連峰縦走 西俣尾根〜主稜線〜松ノ木尾根
メンバー:CL4年福田、2年中島、浅川


行動詳細
2/27(火)晴れ
18:00部室集合〜22:00部室出発〜23:10夜行バスにて離京


18時に部室に集合。いよいよ始まる飯豊縦走へ期待を胸にパッキング。その後早稲田で下界最後の晩餐とし、22時に東京駅鍛冶橋バスターミナルへ向け出発。1人当たり40kgオーバーのガッシャーだったが、さほど混雑していなかったため、問題なく預けられた。23時10分に定刻通り離京。

2/28(水)晴れ 5度
05:00米沢駅=07:27JR小国駅=09:45奥川入荘〜10:30西俣尾根取り付き〜13:30大曲〜14:30十文字池〜16:00西俣ノ峰


米沢駅に到着したのは早朝だったが、震えるほどは寒く感じない。5時57分発の米坂線で冬山同様小国駅へ。車窓を流れる一面の雪景色に雪国の旅情を感じつつ、約1時間半電車に揺られる。小国駅でタクシーを呼んだが、出払っているため1時間半ほど待たされた。事前に小国タクシーに予約をしておくのが吉。冬山では見晴らしの良かった道路も3メートルほどの雪の壁に視界を遮られ、狭くなっていた。しかし通行には問題なく10時前に奥川入荘に到着し、すぐに歩き始める。西俣尾根取り付きへは30分ほど。ここから痩せ尾根の急登となったが、気温が高いため重い雪に足を取られる。加えて尾根上に大きなシュルンドが無数に口を開けており、ルートファインディングに時間がかかった。結局冬山で残置トラロープを使って通過した岩場で1p、大曲手前の急登で1pFIXしたことで、冬山の3倍の時間を費やしてしまった。大曲からは悪場もなく、膝下のラッセルを西俣ノ峰まで。ほとんどの雪庇は崩落していたものの、タイトロープで木々の間を縫うように進んだ。大曲から西俣ノ峰は冬山とほぼ変わらないペースで登りきり、16時に到着した。ピーク北側の樹林帯の緩斜面に幕営し、21時に就寝した。


大曲直下の急斜面。年末はすんなり通過できたが、グライドクラックと腐った雪のためFIXした。

ビレイする中島。

3月1日(木)5度 雨のち吹雪
終日停滞


5時に起床し、外を見ると雨に加えて濃いガスが立ち込めている。風はまだ強くはないが、二つ玉低気圧の通過が控えているため停滞とする。正午頃から暴風となり、15時頃から猛吹雪となった。標高は1000mだが北アルプスの稜線をも凌ぐ暴風が翌朝まで止むことはなかった。結局夜中にテントラッセルを3度行いなんとか持ちこたえた。

3月2日 (金)−5度 吹雪
08:00起床〜12:00出発〜13:40枯木ノ峰〜14:30大ドミにて幕営準備開始〜16:00幕営完了

午前中まで大荒れだったため、遅めに起床した。午後からは回復に向かいそうなので、大ドミまでテントを前進させることにする。12時に出発し、タイトロープにワカンで西俣尾根を登っていく。前日の雨や強風のためクラスト気味。ラッセルはなくいいペースで進む。ただ、午後になっても天候はさほど回復せず、視界は5〜10mほどのホワイトアウト状態だ。西風も非常に強く、幾度となく突風に体を煽られながら歩みを進めた。(通常行動はありえない天候だったが、冬山の偵察から、ルートファインディングも雪庇のケアも問題ないと判断しての行動だった。)冬山と比較して、稜上の積雪は1mほど増えてはいたが、雪庇はそれほど発達していなかった。14時半に大ドミに到着し、強風と格闘しながら幕営。幕営完了と同時に風は徐々に弱まりだした。




3月3日 (土)晴れ 風強い −7度
06:00出発〜07:15頼母木山〜07:45地神北峰〜09:45地神山〜10:30扇ノ地紙〜11:10門内小屋

夜から快晴となり月に照らされテント内も明るいほどであった。風は少々あるが、条件としては悪くない。これまでの強風でクラストした斜面をワカンアイゼンで頼母木山まで。似頼母木あたりから西風が勢いを増し、突風に煽られ転倒するものもいた。それでも快晴のチャンスを生かそうと北脵岳を目指した。地神北峰からは立っていられない暴風となり、匍匐前進で進む。それでも飛ばされそうなのでスリング等でお互いを結び合った。耐風姿勢をとっていた中島が風で飛ばされたが、結び合っていたことでなんとか止まった。それでも、偵察や記録から地神山を越えれば風は弱くなるはずと予想し、地神山までは稜線にしがみつくように進んだ。結局地神北峰から地神山まで20分足らずの道に2時間を費やした。地神山から先は風速25mほどになり、歩けそうなのでひとまず門内小屋を目指すことにした。地神山から扇ノ地紙のコル周辺はなぜか微風だったが、扇ノ地紙への登りから再び暴風とハイマツの踏み抜きに苦しんだ。11:10に門内小屋に到着。(ここまで顕著な雪庇はほぼなし。)小屋の東側の冬期入り口が開いたことに、心底安堵した。30分ほど休憩し、梅皮花小屋を目指すつもりだったが、やむ気配のない烈風の中入れる保証のない梅皮花小屋を目指そうという気はとうとう起きなかった。結局門内小屋にテントを張り、行動終了とした。夕闇に包まれるまで飯豊本山がくっきり望めるほどの快晴であった。

三匹穴を通過したところ。この頃は微風だったが、偽頼母木の登りで暴風になった。この後は写真を撮る余裕もなし。

3月4日 (日) 晴れのちホワイトアウト
06:00出発〜07:00北脵岳〜08:10烏帽子岳〜11:00御西小屋〜12:15飯豊本山〜13:30本山小屋


昨日の遅れを取り戻し、飯豊本山にアタックするため気合いを入れて5時55分に門内小屋を出発。

天気は快晴。風強し。

北脵岳へは5〜10mほどの雪庇を避けながらの登りだ。小屋からアイゼンで出発し、ところどころ土の露出した尾根を行った。ラッセルはなく、1ピッチで北脵岳を越えた。

北股岳山頂。風が少し落ち着き始める。

風は10〜15mと飯豊にしては弱いほうか。日本海や越後、東北の白い山々はもちろん北アルプスまでを見渡せる。北脵岳からの下りも急と聞いていたが、実際は全く問題ない。傾斜よりもむしろホワイトアウト時のルーファイに要注意だ。幸い視界はよく、問題なく梅皮花小屋へ。(門内小屋同様東側に ある冬期入り口は、凍結のため開かず。)ここから烏帽子岳までは比較的急登となるが、コースタイムを短縮し、08:10に烏帽子岳に立った。烏帽子岳山頂付近は風が弱かったので、休憩とアイゼンの上からワカンをはいた。飯豊連峰の主稜線で小屋以外で風を避けられるのは地神山から扇ノ地紙のコル周辺のみであるようだ。あとは御西小屋を目指して緩いアップダウンをひたすら退治していくだけだが、1856mのピークあたりで浅川がバテはじめた。ちょうどこの頃大日岳付近で雲が湧き出し、飯豊本山方面に流れ出した。稜線上でのホワイトアウトを避けるため、バテた浅川に発破をかけてなんとか御西小屋にたどり着いた。御西小屋で休憩後、視界の効くうちに飯豊本山までの広い稜線を進んでいく。起伏はさほどないが、体が重くペースが上がらない。駒形山でガスに捕まったが、ホワイトアウト直前で飯豊本山のピークに達した。

飯豊連峰の盟主飯豊山に到達した瞬間。福田の現役最後のピークはガスの中。さっきまでの快晴はどこに…?

山頂到着と同時に風も出始め、手荒い祝福を受ける。山頂滞在もそこそこに本山小屋まで退散することに。本山小屋へ向かう途中で完全にホワイトアウトし風も勢いをましてきたが、なんとか本山小屋を見つけることができた。急激に崩れた天候と浅川の体力から本山小屋に泊まることにした。本山小屋の北側の冬期入り口を掘り出し、転がり込んだ。小屋を揺るがすほどの強風の中、明日の好天を祈って就寝した。

3月5日(月)曇りのち雨
06:00出発〜07:20切合小屋〜09:00三国小屋〜0920松ノ木尾根下降点〜11:20松ノ木尾根末端13:00川入〜15:00いいでのゆ


4時に起床すると、風はおさまっていた。6時に視界5mほどの濃霧のなか下山開始。地形図を頼りに稜線を外さないよう高度を下げる。地形図では尾根状だが、実際は斜面になっており、ルートを外しかける。幸い夏道が露出している箇所が点在していたため、それを頼りに下山できた。50mほどの岩稜が続く御秘所も鎖が出ており、問題なく通過できた。草履塚から切合小屋までは雪の斜面となり、ルートを外してしまった。少々戻ると残置の赤旗が立っており、ひと安心。ホワイトアウト時は必ず迷うので、切合小屋から飯豊本山の往復には赤旗が30本ほどあると安心だろう。地形図と赤旗を頼りに歩き、7時に切合小屋に辿り着いた。この頃からガスが抜け視界が回復した。切合小屋から三国小屋は視界不良時は種蒔山から南西に出ている尾根に誘い込まれないよう注意が必要だ。また、種蒔山から三国岳までは東側に3〜10mの雪庇が張り出しており、要注意である。種蒔山からは時折腰まで潜るラッセルとなり、難儀しながら三国小屋へ。この区間はノーマークであったが、神経を使う箇所であり、川入から飯豊本山までの核心かもしれない。三国小屋から10分ほど疣岩山方面に進んだところから松ノ木尾根を下る。

松ノ木尾根の下降点。ガスっていたら見つけるのに苦労しそうだ。

非常に明瞭な尾根であり、視界が良ければ容易に見つけることができる。松ノ木尾根には赤布は見当たらず、1100m付近で尾根が90度曲がるところの木に赤テープが巻かれているのみであった。クライマーズライトに張り出す雪庇をケアしながら、1100m付近までサクサク下ることができた。ここから下部は尾根が痩せることに加え、クライマーズライトには雪庇、クライマーズレフトには融雪によるグライドクラックがそれぞれできていた。ロープは出さず750m付近まで慎重に下った。ここから下はもはや稜上を下るのは不可能なほどクラックでズタズタになっていた。また、あまり下ると渡渉が面倒であろうことから、750m付近からタカツコ沢に向けて斜面を下り、スノーブリッジを越えて広河原状の平地に降り立った。三国小屋からここまでは約2時間かかった。ここからは川入まで雨の中1時間半ひたすら平地のラッセルとなったが、下山パワー全開で進んだ。深雪に閉ざされた無人の川入集落に着き、固い握手を交わす。過酷な日々から解放された安堵と確かに飯豊連峰縦走を完遂したという充足感で自然と表情も弛んだ。と同時に、若干の名残惜しさも感じつつの終末だった。

雪に埋もれた川入集落に下山。人もおらず、圏外。いいでのゆまでの歩きが確定。トリップ感は最高潮。

しかし、ここから電波の入る「いいでのゆ」までは約10キロの林道歩きをしいられる。途中林道を塞ぐデブリをいくつも越え、林道横の斜面からの全層雪崩の恐怖に怯えながら、ようやく「いいでのゆ」に到着した。

斜面からのデブリが道を塞ぐ。下敷きになったらと思うと恐ろしい。

「いいでのゆ」の熱い温泉で汗を流し、無事成功の余韻に浸った。冬山から下山してきての温泉はやはり最高だ。いつまでも入って居たかったが、今晩のベッドと温かい布団での睡眠は譲れない。(下りてしまえば、先ほどまでの名残惜しさも過去のものとなるらしい。)風呂からあがるや否やタクシーを呼び、いよいよ車中の人となる。春の足音が迫る国道を喜多方駅まで。駅前の食堂で名物の喜多方ラーメンに舌鼓をうち、郡山から新幹線で各自帰京した。新幹線が県境を越え栃木県に差し掛かると、朝から降り続いていた雨は上がっていた。

老兵は去るのみ!

2017年度冬山合宿

2018-01-12 16:51:45 | 2017年度 合宿


期間:2017年12月22日〜12月25日
山域・対象:飯豊連峰 地神山
メンバー:4年CL福田、2年SL中島 浅川


行動詳細
12月22日(金)晴れ 18:00部室集合〜22:00出発〜23:10東京駅鍛冶橋バスターミナル発高速バス〜
早稲田界隈は放生寺の冬至祭りのためかなりの人で賑わっていた。人混みをガッシャーで強行突破し18時に部室に集合。3人ということで装備も少ないため、すぐにパッキングを終える。重量は大体40キロ前後になった。年の瀬なので、いつも以上にきれいに部室を片付け、22時に東京駅へ向け出発した。鍛冶橋バスターミナルは相変わらず遠い。やっとの思いでバスターミナルに到着すると、早稲田界隈同様過密状態だった。人混みから逃げるように米沢行きのバスは23時10分定刻通りに出発した。

12月23日(土)雨のち雪 1度
高速バス=05:00JR米沢駅=07:27JR小国駅=08:30国民宿舎梅花皮荘〜09:20西俣ノ峰登山口〜10:10大曲〜12:20西俣ノ峰〜14:30枯木ノ峰〜16:00幕営完了
5時に米沢駅に到着すると雨が降っていた。その後は降ったり止んだり、はっきりしない天気だ。米沢駅から米坂線で1時間半電車に揺られ、小国駅へ。駅の待合室でヤッケに着替えタクシーで国民宿舎梅花皮荘へ。タクシー代は9160円。その後デポ品を奥川入荘手前の大木に置かせてもらい9時に奥川入荘を出発。出発時からワカンを装着した。スノーシューのトレースがあったが、ワカンでは踏み抜いてしまう。20分間で登山口に到着し、いよいよ取り付いた。取付きから痩せた尾根の急登が大曲まで続いていた。取り付きから150mほどの地点でワンポイント岩場の通過があったが、垂らされていたトラロープを使い、難なく通過した。大曲からは雪のたっぷり付いた歩きやすい尾根を膝下のラッセルで西俣ノ峰まで。ここ数日晴れが続いたらしく、想定より雪が締まっていた。しかし、ここからは天気には恵まれず、大曲手前から降っていた雨が強まり、ヤッケを濡らしてしまった。その後30分ほどで雨は雪に変わった。12時20分に西俣ノ峰へ到着。山頂手前でトレースをつけたと思われる単独行の男性とすれ違った。枯木ノ峰まで往復してきたらしい。また、西俣ノ峰ピーク付近の木には、どこかの山岳会のものらしきデポ品がくくりつけられていた。西俣ノ峰からの稜線は小さなアップダウンが続き、東側には2〜3mほどの雪庇が張り出していた。樹林帯があるため稜線は分かるが、樹林帯ギリギリを歩いても時折雪庇の割れ目を踏み抜いてしまう。念のためタイトロープでアンザイレンして枯木ノ峰手前の台地まで。西俣尾根上は膝上までのラッセルをこなして枯木ノ峰手前にたどり着いた。枯木ノ峰周辺は雪の台地が広がっていたため、幕営地とした。掘っても掘ってもフカフカの雪で、整地にかなり手間取り16時に幕営完了。18時に夕食をとり、その後就寝。


西俣ノ峰までの小尾根下部の大曲。雪は少なめ。

西俣尾根上は樹林帯のすぐ脇が雪庇になっているため、タイトロープで進む。

12月24日(土)曇りのち雪 −1度
04:00起床〜05:45出発〜06:30大ドミ下コルにてAC設営開始〜07:50AC設営完了、アタック開始〜09:40頼母木山〜10:20地神山北峰〜10:40地神山〜12:15AC帰幕

4時に起床すると無風。寒さも感じなかった。アタック日和だ。天候もいいので、大ドミまでテントを前進させ、余裕があればそこからアタックすることにした。1時間半で撤収完了したが、慣れないタイトロープに手間取るなどして15分余計にかかった。暗い中ヘッドランプを頼りに尾根を登る。すぐに枯木ノ峰に到着し、一旦下りとなるが、下りの尾根上は風で雪が吹き飛ばされるのか一部クラストしている箇所もあった。また、相変わらず東側には雪庇が大きく張り出し、一部崩落していた。尾根の西側の樹林帯のきわを進むことでこれを避けながらコルへ。さらに進むとコルの一段上の平坦地が幕営に適していた。また大ドミまで200mほどと近かったため、ACとした。25日からの冬型に備えて入念に整地、固定を行なった。7時50分にアタック装備で出発。頼母木山へのリミットを10:00、主稜線上での引き返しのリミットを11:30に設定した。ACから上の稜上にも3〜4mの雪庇を確認していたので、ACからタイトロープで前進する。ラッセルは膝下ほど。20分で幕営適地である大ドミを通過し、8時半すぎには計画書で第2キャンプとする予定だった三匹穴に到達した。この周辺の木々は東側に大きく傾いて生えており、枝も西側には伸びていないことからかなりの西風が吹く場所だと分かる。広い雪原ではあるが、幕営地としては一段下の大ドミのほうが良いだろう。三匹穴からは岩やハイマツすら雪に埋もれており、真っ白な斜面にトレースを付けていく。ワカンも沈まないようになり、ペースも上がる。1600mあたりから再び尾根状地形を進むが、ここから先はクラストしていたので、アイゼンを装着した。また、三匹穴から前出の尾根状地形までは目標物のない雪原となっていたため、視界不良時に備えて赤旗を50m間隔で立てた。標高を上げても風がほとんどないため小休止も交えながら、9時半に偽頼母木、9時40分に頼母木山をそれぞれ通過した。頼母木山の山頂標識には1.5m超のエビノシッポが南側に発達していた。


↑頼母木山の山頂標識は真っ白。右奥が地神山。

風は10mほど吹いているが、飯豊山や朝日連峰、上越の山々が見渡せる。主稜線から臨む日本海も格別だ。また想像していたより雪庇も発達しておらず、広い尾根を楽しみながら登っていく。主稜線はハイマツの踏み抜きはあるが、クラストしているためラッセルはなし。全山縦走の際は頼母木山から1日で北脵岳を越えて梅花皮小屋も十分射程圏内だ。地神山北峰の登りを軽々こなし、地神山北峰から地神山を仰ぎ見る。近づいて見ると意外と高さを感じた。ただ、歩いてみるとそんなことはなく、20分足らずで地神山に登頂した。地神山からは北脵岳がすぐ近くに見えた。門内岳は真近に迫る荒天の予報と、引き返しリミットまでにはたどり着けなそうだったことから断念した。


↑目的地の地神山頂にて。部員が少なく寂しい。


↑飯豊本山まで続く真っ白な稜線。嵐の前の静けさ。

山頂に20分ほど滞在し、下山の準備に取り掛かる。主稜線上は地神山までも雪庇がなく、視界も効くので地神山山頂でタイトロープを解除し、一斉に下山開始。下山は急いだつもりはないものの驚くほど早く、15分で頼母木山に到着した。


地神北峰からの展望はまさに絶景。

引き返しリミットの設定をもう少し後ろ倒ししてもよかったか。頼母木山で休憩し、ACまで一気に下った。12時15分にACに到着した。

12月25日(月)風雪 6度
04:30起床〜06:00出発〜07:00枯木ノ峰〜08:00西俣ノ峰〜09:00十文字池〜09:30大曲〜10:15西俣ノ峰登山口〜11:00国民宿舎梅花皮荘=タクシー=JR小国駅 解散
夜の間中風雪がテントを叩き続けていた。暴風ブロックが破壊されたものの、降雪はさほど多くなく、テントラッセルは必要なかった。朝起きると雪ではなく雨になっており、テントがずぶ濡れだ。風速は2〜30mほど。素早く支度し、6時にタイトロープで下山開始。15分ほどで明るくなりはじめた。まずは枯木ノ峰までの登りだが、雨で重みを増したためか、前日まで張り出していた雪庇が崩落している箇所があった。また雨はクラストしていた雪面をも腐らせ、重い雪のラッセルとなっていた。慎重に樹林帯を縫うように前進し、1時間で枯木ノ峰に到着した。相変わらず風は強いが、視界は200mほどとまずまず。そもそも西俣尾根は支尾根は少なめなので、尾根を間違えることもなさそうだ。ひたすら風雪と格闘しながら、膝下から膝上のラッセルをし続け8時に西俣ノ峰に到着した。ここまで、ルートを指し示すかのように立ち並ぶ木々のおかげでいいペースで来られた。

↑下山時は年末の大寒波&爆弾低気圧によって大荒れの天気に。

あとは急な尾根を長者原まで下るだけだとたかをくくっていたが、ここからが核心だった。雨のため、雪面はまるで残雪期かのように腐り、10歩に1歩腰まで雪に嵌ってしまう。西俣ノ峰から標高を下げても、一向に弱まらない風にバランスを崩されるため、踏み抜きが多いのだ。ペースを落としたものの、9時に十文字池、9時半に大曲を通過した。大曲から長者原は風は収まるものの尾根が痩せているため、慎重に下る。積雪がかなり減っており、踏み込むと雪がずるりと剥がれ山肌が露出するほどだ。あまりに歩きにくいので、ワカンを外してツボ足で下った。行きに難なく超えた雪の付いた岩場も、足場にした雪が剥がれ落ちるなど少々危険なため、トラロープを掴みながらゆっくり下った。この岩場を下りきると長者原はすぐそこだ。緊張も緩み、転げるように登山口へ。


↑クリスマスの朝に下山してしまった。

登山口から奥川入荘までも、踏み抜きが多く、最後の最後まで苦しめてきた。しかし、それをも楽しみに変えながら歩き、奥川入荘のコンクリートに下り立った。デポを回収し、梅花皮荘へ11時に下山した。梅花皮荘に挨拶し、温泉に入らせていただいた。飯豊温泉の茶色のお湯と、湯船に浸かりながら見上げる白い飯豊連峰は格別だった。汗を流し、温まったあと、食堂で美味しい昼食を食し、梅花皮荘をあとにした。梅花皮荘からタクシーで小国駅に到着すると(9160円也)、米坂線は運休とのこと。しばらく待つと坂町方面への救済バスが到着したので、浅川を見送った。待てど暮らせど、米沢方面へは電車もバスも出ないとのことなので、仕方なくタクシーで米沢駅へ。米沢市内でも猛吹雪となっており、電車のダイヤは大幅に乱れていた。米沢駅から2時間遅れの新幹線に乗車し、各自帰宅の途についた。

総括
冬期の飯豊連峰であり、また年末の大寒波襲来予報もあったことから、かなりの悪天候、ラッセルを想定したうえでの出発であった。結果として、予想よりも天候、積雪条件などが厳しくなかったとはいえ、冬期の飯豊連峰を舞台に目的に達成し、無事下山できたということは収穫だと思う。特に、スピード感のある行動により、迫り来る荒天に捕まる前に下山できた点は集中力と意思の疎通の両面での成長を示すものであっただろう。また、ラッセルを含めた体力面や生活技術なども向上していた。タイトロープを結んでいたため、1人のラッセルする時間が長くなっていたが、ペースを落とさず歩いていたし、冬期でも起床から出発まで1時間半で完了することができた。かなりスムーズに山行を終えられたように感じる。隊としてのチームワークの強化を実感できた点であった。
ただし、今回のルートが、ルート上に危険箇所はほとんどなく、難易度が低かったことも忘れてはいけないだろう。常に余裕がある中だったため、実力が発揮できただけかもしれない。春山の飯豊山は確実に今回よりも厳しくなる。より追い込まれる状況でも実力を発揮できるように山行やトレーニングで限界値を押し上げていくことが必要である。
それにつけても飯豊連峰はいい山であった。

2017年度新雪期合宿

2017-12-20 12:22:41 | 2017年度 合宿
2017年度新雪期合宿報告書

1)期間:2017年11月23日(木)~27日(月)

2)山域/形態:富士山定着

3)メンバー:4年福田(CL)、2年中島(SL)・浅川、田中OB(28年度卒)

4)行動詳細

11/23(木) 雨のち晴れ
11:00集合~14:00発15:35新宿バスタ発=17:30御殿場駅=タクシー=19:30新5合目登山口
昨年度の出発日は東京では54年ぶりの11月中の積雪に見舞われたが、今年は雨。新雪期合宿出発日はなかなか天気に恵まれない。11時に集合し、パッキング。グローバルエデュケーションセンターからパルスオキシメーターをお借りすることができ、医療パックも整った。14時すぎに部室の掃除を終え出発。雨は上がっていた。昨年までは小田急ハルク前から出ていた御殿場行きのバスは新宿バスタ発着となっていた。祝日のためか、予定から15分ほど遅れて17時半に御殿場駅到着。夕食と明日の朝食の購入を済ませてタクシーに乗り込んだ。問題のゲートは開いており、新5合目登山口までタクシーで入ることができた。4人で一台に乗ったため4370円也。登山口には他に明治大がテントを張っていた。また、新5合目駐車場には車が5台ほど停まっていた。駐車場の隅にテントを張り、20時半に就寝した。

11/24 (金)晴れ4℃
6:30出発〜7:30次郎坊〜10:006合目小屋跡〜12:002900m〜13:306合目小屋跡にて幕営完了
5時に起床し、各自朝食を済ませる。登山口横のバス停に不要な荷物をデポし、6時半、日の出とともに出発。快晴による放射冷却のため明け方こそ寒かったものの、朝日がもたらした暖かさの中砂礫の道を良いペースで進み、先行していた明治大を追い抜いた。例年通り6合目に幕営するらしい。長く退屈な砂礫の道も次郎坊手前で終わりを迎え、雪道へと変化した。雪は風に叩かれ蹴り込みが効かないほどに締まっている。それでも歩行訓練を兼ねつぼ足で進む。2100m付近からいよいよ山肌全てが堅雪に覆われだしたためアイゼンピッケルを装着。TSまででアイゼンを履いたのはここ四年で初めてであった。アイゼンの爪だけが雪面に刺さる硬さで快適そのもの。夏道の登山道沿いに順調に高度を稼ぎ10時に6合目小屋跡に到着した。この頃になると風も出始め、時折耐風姿勢で凌がなければならないほどだった。また浅川に若干疲れが見え始めていたので、順応も兼ねて20分休憩をとった。6合目小屋跡より上は先ほどまでとは打って変わって膝下のラッセルとなり、ペースが落ちる。加えて南西から吹き付ける風も勢いを増し、吹き上がる霰と相まって我々の進行を妨碍してくる。それでも雪の状態から滑落の危険は低いと判断し、なんとか7合5勺を目指して前進。12時に2900m付近に到着した。7合の日の出館を目前に捉えていたものの、強風のため幕営困難と判断し、6合目小屋跡に戻ることにした。6合目小屋跡の吹き溜まりを整地し、なんどもテントを強風に煽られながらもやっとの思いで設営完了。この設営作業中に中島のザックとその下に置いていたテントの外張りが突風に飛ばされ、あわや紛失の危機となったが、中島がダイビングキャッチし事なきを得た。しかし、ちょうど持っていたテントポールから手を離したためにポールは奈落の底へ落ちていってしまった。ザック等のセルフは常にとるべきであった。※ア設営後はTS周辺で雪上訓練をする予定であったが、激しさを増す風とホワイトアウトに近い視界不良のため断念した。6合目に幕営予定だった明治大は上がって来なかった。17時半に夕食をとり、就寝。風は一晩中テントを潰そうとするかのように吹き続けていた。



11/25(土) 晴れ-8℃
7:306合目小屋跡出発〜8:30砂走り館〜10:45銀明水前〜11:15剣ヶ峰〜12:00〜14:00大垂水沢にて雪上訓練〜14:306合目小屋跡TS
6時15分出発の予定で起床したが、相変わらずテントが飛ばされる恐怖を覚えるほどの暴風が吹いていたため、待機。7時頃外の様子を確認すると、快晴。山頂部に雪煙がまっているものの条件は悪くなさそうだ。とりあえず雪上訓練のため大垂水沢へ向かい、余裕があればアタックすることにして出発。昨日はラッセルを強いられた道も、アイゼンのよく効く富士山らしい道になっていた。時折霰とともに吹き付ける強風に耐えながら、長めに1ピッチ歩き、1時間で砂走り館に到着。ここから上は下部の積雪状況からは想像がつかないほど岩や砂が露出していた。やはりかなりの強風が吹き荒れていたことが分かる。しかし、当時は落ち着いていたので、アタックを決意した。それでも時折吹く風に注意しながら夏道沿いに登っていく。クラストしているところはなく、頂上直下のルンゼまで登山道に砂地が露出している箇所がところどころみられた。田中OBに一年生役を演じてもらい、二年生に声かけなどのケアの仕方を練習させながら歩くが、なかなか声が出ない。来年度に向け不安が残る。それでも歩行は安定しており、2ピッチで銀明水前に到着。
6合目からのスピードも及第点か。11時すぎに快晴の剣ヶ峰に登頂し、昨年のリベンジを果たした。山頂付近も雪がかなり少なく、御鉢の積雪は訓練には不十分そうに見えた。途中大垂水沢の積雪は確認していたので、大垂水沢3400m付近で訓練することに。訓練場所付近にはツボ足歩行、アイゼン歩行それぞれに適した斜面があった。12時に訓練を開始し、二年生が田中OBに指導する形式でツボ足、アイゼンでのスクエア歩行を計1時間半、初期停止滑落停止訓練を30分行い、14時下山開始。歩行、滑落停止共に下級生に教えられるレベルでは全くなかったが、14時を下山開始のリミットとしていたため、やむなく下山した。風も再び出始めたので30分で6合目小屋跡TSまで一気に下った。帰幕後は、行動中問題視していたアイゼン着脱の訓練を行った。登頂の成果の一方で、課題が多く見られ複雑な気持ちでこの日の行動を終えた。





11/26(日) 晴れ-5℃
07:30BC出発~BC周辺にて雪上訓練(07:40スクエア歩行~09:00アンカー構築訓練・確保三種~10:00滑落停止訓練~11:30スタカット~13:15コンテ~14:00終了)
今日も日の出前の暴風のため、出発を遅らせる。6時発の予定が7時半になった。相変わらず断続的に風が吹き付けていることに加え、TS付近の雪面の条件が大垂水沢と大差ないことから、TS周辺での訓練とする。7時半から20m×20mのスクエア内でツボ足での歩行訓練を1時間半みっちり行った。感覚が戻ってきたのか二年生の歩行も確度が高くなった。その後はスノーバーでのアンカー構築訓練と確保三種を昨日同様二年生が指導する形式で1時間行った。ポイントをしっかり押さえて確実にこなしていた。10時からはTS下の固い斜面で滑落停止訓練にうつったが、二年生はスピードがかなり出る固い斜面での停止に難儀していた。前提として、転ばない歩行を固めることが重要だと実感してもらえたようだ。11時半頃田中OBが下山開始。田中OBを見送った後は中島、浅川がザイルを組み、スタカット×6pでロープワークの確認。ミスがないのはもちろん、これまでになかったテキパキしたスピード感が見られた。今年度の合宿で意図的にルート工作をさせてきた成果が出ていたように思う。来年度を見据え、今日の仕上げに稲葉コーチ直伝のコンテを二年生に教えて、14時訓練終了。明るいうちにビバーク訓練用のビバークサイトを作ってから帰幕。小屋跡の吹き溜まりに腰掛けられる程度の深さの縦穴の半雪洞を掘った。夕食を済ませて18時に全員でビバークを開始。ビバーク開始早々雪洞の上に張っていたツェルトが破れ、暴風に晒される。それでも御殿場の夜景を慰みになんとか耐えようとしたが、22時にテントへ退却した。テントに転がり込み、そのまま就寝。

11/27(月) 晴れ −3℃
06:00〜09:00訓練〜10:00BC撤収完了〜10:40新5合目登山口〜12:00JR御殿場駅 各自帰京
4時45分に起床すると、風も弱い穏やかな朝だった。6時に訓練を開始する頃にはさらに収まり、絶好の登山日和となった。前日の訓練でロープワークには問題がなかったため、雪上歩行の総仕上げとしてスクエア歩行を実施。朝一の硬い斜面でアイゼン歩行、ツボ足歩行をそれぞれ45分ずつ行った。今年はアイゼンを付けて歩くことが多かったためか、よく歩けるようになっていた。その後、夏山定着で行った懸垂下降、ビレイ時の仮固定や引き上げシステムをおさらいした。忘れていたものはしっかり復習しておいて欲しい。9時すぎに訓練を終え、テントを撤収。10時に下山を開始する。快晴のため気温が上がり、雪も緩んでいたのでツボ足で下り始めたが、大砂走りルートに合流する手前からは雪面がかなり硬く、滑りそうになる。結局アイゼンを装着して下ることに。例年大砂走りは砂地が柔らかくツボ足で一気に下れるのだが、今年は非常に硬かったため、アイゼンを装着したまま、次郎坊まで積雪をつないで下りた。その後は駐車場まで砂地の道をひたすら走り、10時40分に新5合目登山口に到着した。24日12時にゲートが閉まったらしいので、ゲートまで歩いてタクシーに乗り、御殿場駅へと下りた。御殿場で美味しいかつ丼をかきこみ、下界に降りてきたことを実感。その後各自帰京した。

5)総括
今年度は入山直前のまとまった降雪のおかげで、雪上訓練は例年よりも効果的に実施することができた。それに加えて、連日の強風のなかでの行動は冬山シーズンに向けての良い経験になった。また、昨年度は到達できなかった剣が峰にも少ないチャンスを捉えて登頂することが出来た。これらの点から天候に恵まれた合宿であったといえよう。
天気にこそ恵まれたものの、今年度は一年生がおらず、上級生も少なかったことで例年と異なることが多かった。それゆえ訓練の内容や二年生の扱いなども例年と変更せざるをえず、難しさも感じていた。そんななかで田中OBの参加は上級生不足を補い、目の行き届いた指導をもたらしてくれた。ありがとうございました。来年以降も上級生不足が予想されるが、OBの力を借りるなど工夫しながら行ってほしい。
さて、上述のように天気、OBの力を借りて完遂した合宿であるが、我々自身はどうであっただろうか。今回の目的に二年生の強化を上げていたが、ロープワークや歩行などで今年度の取り組みの成果が実感できる進歩がみられた。これまではみられなかったリーダーシップについても、今回は特に中島に意識の改善が感じられた。訓練でも新たな技術や詳しい理論についての質問を自分からするようになったし、アタック中も風向の変化や、地形など視野を広く持っていた。来年度に向けて多くを吸収しようとする姿勢がみられたのは非常に喜ばしいことであった。その一方で、二年生同士のコミュニケーションや生活技術、体力などはまだまだ未熟であると言わざるを得ない。よかった点は伸ばし、未熟な点は補っていかなければならない。
何はともあれ冬山シーズンのスタートである新雪期合宿を無事完遂することができた。このタイミングで兜の緒を締め直し、今後も春山にむけて邁進していこう。

2017年度夏合宿

2017-12-20 12:10:22 | 2017年度 合宿
2017年度夏山合宿報告書

①山域・対象:北アルプス剱岳真砂沢定着~上高地

②期間:2017年8月4日~2017年8月17日

③メンバー:4年CL福田、2年SL中島、浅川、小野、1年香取、萩原OB、鈴木雄大OB

④行動詳細

8月4日(金) 曇り 18:30部室集合~23:30東京駅八重洲鍛治屋橋BT=高速バス=06:00富山駅
 18:30に部室に集合し、装備、食糧等々の確認を行う。事前に立山駅前の五十島商店に食糧やガスを送っていたが、送り漏れもなくひと安心。パッキングをすまし、早稲田で夕食をとったあとは東京駅へ向かう。鍛治屋橋のバスターミナルに到着すると、金曜の夜ということもあってか混雑がひどく、辟易してしまう。バス待ちの間に雨がパラついたが、屋根の下は入る余地がなく少々濡れる。小雨であったことが不幸中の幸いであった。雨脚が強くなりかけたころバスが到着し、雨から逃げるように富山へ向かった。

8月5日(土) 曇りのち雨 23℃ 07:19電鉄富山駅発=08:40ケーブルカー=10:00室堂BT~12:40別山乗越~13:10剱沢派出所~15:30真砂沢ロッジTS
 富山駅に到着すると、薄曇りで早朝にも関わらず蒸し暑かった。約1時間電車に揺られ立山駅につくと、人の多さに驚かされる。ここからアルペンルートで室堂に向かうが、あまりの快適さに昨年度の春山で3日もかかったのが噓のようだ。途中残雪も見られ、雪の大谷付近には山側に4mほどの壁が残っていた。10:30に室堂を出発し、真砂沢を目指す。2700m以上はガスに覆われており天気が心配だ。雷鳥坂は登りだしで50mほど残雪を踏んだが、あとは夏道。室堂からおよそ2時間で別山乗越に到着した。香取は終盤遅れたが例年以上のペースにもよくついてきた。別山乗越~剱沢はルート上には残雪はほとんどないが、別山乗越~剣山荘方面は残雪が豊富でアイゼン必携とされていた。13時過ぎに剱沢に到着。県警に挨拶をし、ルート状況について伺う。今年は残雪が豊富で、平蔵谷や長次郎谷はシュルンドもあいていないようだ。またチンネについては、三の窓雪渓がズタズタなので長次郎谷右俣からの方が安全というアドバイスを頂いた。雲雪も怪しくなってきたので剱沢をあとに、真砂沢へ向かう。クロユリの滝がとけて現れていたので、しばらく夏道を行く。クロユリの滝を過ぎ、剱沢が真砂沢方面へと角度を変えるあたりで雪渓を歩けるようになった。安定した雪渓上を順調に下り平蔵谷出合で上部を偵察し、十分通行できることを確認した。長次郎谷出合から真砂沢ロッジまでの間にある大滝も雪で繋がっていたが、左岸の夏道から巻いた。その後再び雪渓を歩き、15:30前に真砂沢ロッジに到着した。他大の山岳部が3校ほど幕営していたため、端の空いたスペースにテント張る。設営し終えたころ、雨が降り出し、夜まで降ったりやんだりを繰り返していた。18時に夕食をとり、19時には就寝した。



8月6日(日)曇りのち雨 15℃ 03:00起床~04:00出発~05:00源次郎尾根登攀開始~08:30Ⅰ峰~09:00Ⅱ峰~10:25本峰~11:45平蔵のコル~12:40真砂沢ロッジTS
 03:00に起床すると、雨は上がっていた。計画書ではⅥ峰フェースの予定であったが、この日は翌日より天気が良いという情報を得ていたので、途中敗退が難しい源次郎尾根を先に済ませることにする。真砂沢から1ピッチで源次郎尾根の取り付きにつき、中島、浅川を先行させ最初の岩場をFIXで通過。雨でぬれており、上りにくい。その後も二年生2名を先行させ、二年生1名、福田で香取を挟むようにして進んでいく。2年生の判断で例年ロープを出している2番目の岩場の手前で2p分工作した。核心の岩場は中島がリードし、1人ずつムンターで確保しながら通過した。中島、小野以外は雨で滑ることを考えても安定感に欠けていた。このくらいは問題なく通過できるようにしたい。ここからは危険個所もなく踏み跡を辿り、一昨年崩壊した箇所の悪いトラバースを浅川リードで10mFIXした。その後はロープを出すこともなく順調に高度を稼いでいったが、途中、先行させていた中島、浅川がルートを誤り右往左往していた。危険な場所に導かれる可能性もあるので、踏み跡に惑わされずルートを見極める力をつけてほしい。合流してからは5人で行動し08:30にⅠ峰、09:00前にⅡ峰に到着した。このあたりまで来ると岩も乾いて登りやすい。2500m以上は基本的にガスに覆われていたが、時折本峰やⅥ峰フェースが顔をのぞかせるタイミングもあった。Ⅱ峰から30mの懸垂下降となるが、懸垂点のすぐ下に幅1m以上の大きな浮石が2つあったため触れないように注意し、懸垂を終えたものは壁から離れて本峰側で待機するなどして対処した。結局5人が懸垂し、回収するまで45分もかかってしまった。ここまでのロープワークに共通していえることだが、「確実かつスピーディーに」という意識を全員が共有することが大切である。コルから本峰へは浮石の折り重なったガレ場を慎重に上り、10:25に剱本峰に登頂した。山頂は見事にガスの中であるにもかかわらず30人以上の人がいた。山頂に20分ほど滞在し、下山開始。すると、カニのヨコバイを先頭に40人ほどの渋滞が起きており、全く進まない。そうこうしているうちに雷鳴が迫ってきた。雨がパラつき出したころ、ようやく平蔵のコルに降り立つことができひと安心。山頂に大勢いる場合はそそくさと下山したほうが吉であろう。平蔵のコルからは昨日の偵察通り出合まで雪がべったりついていた。アイゼンを装着し、平蔵谷を下る。4年前はシュルンドがコル直下に開いていたが、今年はまだあいていない。本峰南壁の取り付きを確認するなどしながら3分の1ほど下り、ここから走って下らせる。走るというより歩きに近かったが、40分ほどで出合に到着。雨も強まりだしたのでそのまま真砂沢ロッジTSまで駆け下った。雪渓が崩壊し真砂沢手前の大滝が口をあけていた。雨は昨日同様降ったり止んだり状態。17時に夕食後、19時には就寝。



8月7日(月) 晴れのち雨 13℃ 03:00起床~04:00出発~06:00Aフェース取り付き~09:15Aフェースの頭~09:30Aフェース岩小屋~11:00Cフェース登攀開始~13:40Cフェースの頭~15:00Ⅴ・Ⅵのコル~16:15真砂沢ロッジTS
 15:00頃から台風の影響が出はじめるという予報があったが、04:00に真砂沢を出発する。長次郎谷も雪が多く、右岸側であればシュルンドもよけて通行できる。迂回する必要がないので楽に長次郎谷を詰められ、2時間ほどでAフェースの取り付きに到着。初めに浅川、小野パーティー(以下、A隊)が魚津高ルートに取り付く。1p目のクラックが少々濡れているなかで確実にロープを伸ばしていった。30分ほど間をあけ香取、中島、福田パーティー(以下、B隊)も登攀開始。中島がリード。二年生はそれぞれ支点が不確実なところにはカムを加えるなど工夫していたし、上りも安定していた。香取も上るスピードが速い。抜群のロケーションのなかでのクライミングを楽しんでいた。ただし、Aフェースの支点は去年と比べて風化しており、怖さも感じた。09:15にAフェースの頭に到着。Aフェースの頭から同ルート懸垂もできるが、踏み跡を辿った懸垂点からなら1pで降りられる。Aフェースの岩小屋に戻り一呼吸入れ、Cフェースに向かうが、雪渓のいたるところに割れ目があり、通過に手間取る。通過できそうな箇所を見つけるのに30分は費やした。11:00に登攀開始。Aフェースと対照的に岩は安定しており、快適そのもの。登攀のスピード自体は決して早くないが、約2時間半で頭に抜けた。3p目あたりで後立方面から雲が流れてきて、ガスの中の登攀となり、頭では雨に加え風も出てきた。すぐに下降を始めるが、視界が悪く、いつもの下降点が見当たらない。仕方がないので、Bフェースの頭から50mロープ折り返しで1p懸垂後歩いて懸垂点に辿り着く。ここから50m2本で2p懸垂してⅤ,Ⅵのコルに降り立った。強風にロープが流され時間がかかった。この時点で15:00。Aフェースの岩小屋にデポした装備を回収し、雨のなか下り、16:15に帰幕。



8月8日(火) 雨 14℃ 台風のため終日停滞
02:00頃台風の影響なのかテントを風にゆすられる音で起こされる。やはり風雨が強まっている。この日は終日停滞。一日中雨が止むことはなく、低地に張っていたためテントも水浸しになった。

8月9日(水) 雨のち曇り 13℃ 06:00起床~07:00出発~08:30剱沢野営管理場~10:00別山岩場~14:00剱沢野営管理場にて萩原OB、雄大OB合流~15:00真砂沢ロッジTS
 03:00に起床するも、相変わらず雨とガスのため様子を見る。06:00に再び起きると雨が上がっており回復傾向がみられる。貴重な晴れ間になりそうなので、別山岩場で支点構築とセルフレスキューの訓練を行うことにする。07:00に真砂沢を出て1時間半で剱沢野営管理場に到着するも、天気が回復しない。1時間ほど様子をみている間に晴れ間も出てきたので10:00から別山岩場で訓練を開始する。一通りナチュラルプロテクションの設置方法を説明した後、各自ハーケン、カム、ナッツで支点を構築する。1時間ほど練習し、慣れてきたようなのでセルフレスキューの練習に移る。懸垂の上り返しと、カウンターラペルを練習した。皆よく覚えたようだ。今後も復習をしていこう。14:00に剱沢に下り、萩原OB、雄大OBと合流。7人で真砂沢に下る。剱沢雪渓は入山時と状況は変わらない様子だった。また、結局一日中雨が降っていた。天気予報では今後も雨が続くようだ。

8月10日(木) 晴れのち雨 14℃06:00起床~07:30出発~09:00剱沢野営管理場~10:00別山乗越~11:00雷鳥平キャンプ場
福田、香取 12:15雷鳥平キャンプ場出発~12:35室堂BT着(12:40発のバスで香取下山)~13:00雷鳥平キャンプ場
 01:00に起床し、天気を確認するも雨。チンネ登攀は諦め、下山を決める。06:00に再び起床し、07:30に撤収。午後から雨の予報だが、後立山連峰が見えるほど視界は良い。真砂沢から1時間半で剱沢野営管理場に到着。ペースも良い。その後も黙々と雷鳥平キャンプ場にむけて歩き、11:00頃到着した。天気も持ちこたえているので濡れた装備を乾かすなどしていると香取に電話が入る。御家族が急病とのことなので下山。急いで支度し、室堂まで付き添いおろす。幸いバス待ちすることもなく12:40発のバスで下山した。その後雷鳥平に戻り、翌日送る装備を整理した後は自由。17:00頃から雨になった。

8月11日(金) 晴れのち雨 18℃ 休養日 文責中島
中島、小野 07:45出発~08:30装備郵送~10:30立山駅~パッキング~13:30立山駅発~16:00雷鳥平キャンプ場
 小野、中島で東京に送り返す装備を持ちキャンプ場を出発する。室堂に着き、ホテル立山の売店で段ボールをいただき、装備の郵送をする。その後アルペンルートで立山駅へ。五十嶋商店で食料を受け取り、場所をお借りしてパッキングを終える。来た道を戻り、雨が降る前にキャンプ場に着く。17時頃からどしゃ降りの雨となった。そのほかのメンバーは温泉に入るなど一日自由に過ごす。

8月12日(土) 雨のち曇り 16℃ 02:30起床~04:00出発~06:00真砂岳~07:00大汝山~07:50雄山神社~08:15下降開始~09:10龍王岳~11:00獅子岳~11:45ザラ峠~13:00五色ヶ原TS
 テントから出ると、稜線はガスの中であった。なんとか雨が降る前に五色ヶ原まで着きたいので急いで撤収する。二年生は20㎏前後の団装を振り分けられザックがパンパンになっている。雷鳥平を後に、大走り経由で真砂岳を目指す。2時間で真砂岳に到着したと同時に雨が降り出した。内蔵助カールを臨むコルに着くとやはり風も強い。稜線のすぐ下に残雪がたっぷりついており、冬期はかなりの吹き溜まりになったことが伺えた。雄山まで危険個所もなく雨の中無言で歩く。雄山神社の社務所で休憩中に一瞬晴れ間も見えたが、20分も持たず再び雨となった。龍王岳への上りで雨もピークとなり気温も低く感じる。寒さのため雨が落ち着くまで休憩せずに歩くことにした。鬼岳東面のトラバース道は雪渓に覆われており、6日には滑落事故が起きたようだ。しかし、傾斜も緩くアイゼンも必要ない斜面であった。鬼岳を過ぎ11時に獅子岳に到着すると雨も落ち着いてきた。五色ヶ原も目前なので休憩した後ザラ峠へ。途中中島が足を捻るが、ザラ峠でテーピングをして五色ヶ原まで歩きとおした。幸い明日も歩けそうだ。13:00に到着したが、キャンプ場は多くのテントが張られており、最終的に50張り以上のテントがキャンプ場を埋め尽くした。17:00から再び雨となったので、早めに夕食をとった後明日に備えて就寝。

8月13日(日) 晴れのち曇り 12℃ 02:30起床~04:00出発~06:30越中沢岳~08:00スゴの頭~09:15スゴ乗越小屋~12:30 2832m~13:30薬師岳~14:50薬師峠TS
 縦走の二日目にして今日が正念場となる。薬師峠までの長丁場で荷物も重いためだ。幸い天気は良さそうだ。鳶山で御来光を今合宿初めて見ることができようやく夏山らしくなってきたと調子が出てくる。待望の青空の下でペースも上がり、06:30に越中沢岳を通過する。ここからアップダウンの連続となるが、晴れ過ぎたのか気温もグングン上がり低温に慣れた体に堪えるようになった。休憩を挟みながら09:15にスゴ乗越小屋へ。チップ制の水場があり、ありがたく頂戴する。以前ルクラで出会った農大OGの方が働いており、挨拶する。モンスーンの時期は日本に戻ってきているそうだ。偶然の出会いに世間の狭さを感じた。09:30にスゴ乗越小屋を出発し、薬師岳への長い上りが始まる。間山への上りで中島がバテ出したので中島のザックから野菜とテントを抜き、小野、福田が持った。2832mのピークへの上りでガスに覆われ、北薬師岳付近で小雨がぱらつき始めた。北薬師から薬師岳まではやせた尾根を行くので気を引き締める。金作谷カールには雪が残っていた。北薬師岳から30分ほどで薬師岳に到着。視界はガスのため50mほど。期待していた展望はないので長居はせずに薬師峠へ向かう。1時間で薬師峠に到着すると、キャンプ場はパンク状態。300張りほどはあっただろうか。道にまでテントが張られている状況だった。聞けば、「10時にはすでに満杯」とのことだった。仕方なく、隅の方の斜面にテントを張り、炊事は外で行うことにした。受付をしようと財布を探すも見当たらない。すぐにスゴ乗越小屋の水場だと気づき、とりあえず電話すると、届けられているとのことでひと安心。翌日取りに伺うことにする。斜めのテント内で何度もずり落ちながら無理やり就寝。

8月14日(日) 晴れ 16℃
福田 05:15出発~06:00薬師岳~07:30スゴ乗越小屋~09:30薬師岳~~10:10薬師峠TS
福田到着後 11:30出発~13:00薬師沢小屋~16:00雲ノ平小屋~16:30雲ノ平キャンプ場
 05:00起床06:00出発の予定だったが、腹も空いていないので出発することにする。必要最低限の装備だけザックに詰め、スゴ乗越小屋を目指す。高曇りで視界も良く、気温も16℃と過ごしやすい。途中2832mピークで休憩をし、07:30にスゴ乗越小屋で財布を受け取る。お礼をし、すぐに薬師峠へ戻る。薬師岳への上り返しはさすがに疲れたが、10時過ぎに薬師峠に辿り着いた。皆で話し合い余裕がありそうなので雲ノ平を目指すことにする。11時まで休憩し、撤収。11時半に薬師峠を出発した。太郎平小屋周辺は木道が整備されており歩きやすい。太郎平小屋からは薬師沢への下りとなる。ここも整備が行き届いており、渡渉点と書かれた箇所も橋が架かっているし、ところどころ木道も設置されている。13:00に薬師沢小屋に到着。渓谷につり橋があり、そのわきに小屋がある光景はネパールのようだ。ここからは急登なのでゆっくり休む。つり橋を渡り、すぐ梯子が出てくるが危険個所はここだけ。あとはひたすら樹林帯の急登となる道を1時間半で登り切り、木道に出る。雲ノ平に点在するアラスカ庭園や奥日本庭園と呼ばれる景色に励まされ、16:30にキャンプ場に到着。ここもやはり混んでいたが、幸い平坦地に2張りテントを張ることができた。一日雨にふられることがなかったのはこの日だけであった。18時頃夕食を摂り、その後就寝。

8月15日(月) 曇り時々雨 13℃ 03:00起床~04:30出発~07:20水晶岳~09:15鷲羽岳10:10三俣山荘~12:00黒部五郎小屋TS~14:30黒部五郎岳~15:30黒部五郎小屋TS
 朝起きるとテントが濡れていた。夜中に雨が降ったようだ。また、朝食を食べている間に雨が降ってきた。今日も天気に歓迎されていないようだ。撤収し04:30に出発。キャンプ場の裏手から祖父岳への登山道を歩いたが、ここは通行禁止であるらしい。一旦キャンプ場分岐まで戻りそこから登山道を行かなければならない。昨日の行程が短かったこともあり、二年生の調子がよくペースも上がる。07:00に水晶小屋を通過し水晶岳へ。雨で滑りやすく、また道が狭いためガッシャーだとすれ違いしにくいとの指摘を両OBに頂いたので途中にザックをデポして山頂へ。20分ほどで到着し、写真を撮った。例によって展望はなし。続いて09:15に鷲羽岳を経て三俣山荘に。ここから黒部五郎方面への巻き道を進む。途中雪渓が2か所あったが、いずれも短く通行には全く問題ない。三俣山荘から二時間弱で12:00に黒部五郎小屋TSに着いた。時間もあるので場所取りも兼ねてテントを張ってから、黒部五郎岳を目指す。黒部五郎岳へはカール内のルートから向かった。「カール内に巨岩が転がる光景は絶景」と地図に紹介されていたが、ガスであまり見えなかった。14:30に山頂へ。ガスも切れかけたが、やはりすぐにガスに覆われた。肩を落として下山する途中から雨に降られながら15:30に帰幕した。ここまですべてのキャンプ場に共通して言えるのは、あまり平らなキャンプ場がなく、ダンロップのV6がギリギリであるということだ。6~7人用などの大型テントでは張るスペースがなく困っていただろう。

8月16日(火) 曇りのち雨 14℃ 02:30起床~04:00出発~05:45三俣蓮華岳~07:00双六岳~11:00千丈乗越~12:30槍ヶ岳~16:00槍沢ロッジ~18:00徳澤園TS
 今朝も雨が降っている。雨から逃れるように東京を出発したにも関わらず、ひたすら雨に見舞われてきた。ずぶ濡れになったテントを撤収し、双六岳を目指す。04:00に出発し、黙々と歩くがなかなか明るくならない。定着のときは04:30には明るくなっていたが、日が短くなっていることを実感する。2p歩いて三俣蓮華岳に到着。その後雨は止んだが、視界は晴れず。双六岳からの槍ヶ岳も当然ながら見られず。取りあえず双六小屋で休憩することにして山頂を後にした。双六小屋で休憩するもかなり時間があるので、槍から徳澤園を目指すことにする。左俣乗越を過ぎたあたりから鎖場が出てくるがきちんと歩けば問題ない。千丈乗越からは今縦走最後の上りとなるので発破をかけて追い込み、12:00に肩に到着した。槍の穂先へは空荷で向かう。例によってガスに覆われた山頂には、登山者が10名ほどいた。浅川にとっては初の槍ヶ岳であった。最後のピークで写真を撮り、下山を開始した。人数は少ないが下降が遅く、渋滞となった。次第に雨も強まり岩場が滑りやすくなったが、慎重に下り肩に降り立った。休憩し、気合を入れなおして槍沢を下る。雪渓が残っていると想定していたが、雪を踏むことなく夏道をひたすら下る。大曲で休憩し、15:30にババ平を通過。下山パワー全開で横尾も通り過ぎ、18:00に徳澤園に到着。テントを建て終えたころには薄暗くなっていた。徳澤園に挨拶すると、遅い時間にも関わらず夕飯を頂けることになった。迷惑にならないよう徳澤ロッジの外来入浴(19:30受付終了)で汗を流してから徳澤園にお邪魔し、ごちそうになった。12日間ぶりの健康的なご飯が、疲れたからだに染み渡った。ありがとうございました。夕食後テントに戻り就寝。雨の降らない穏やかな夜だった。



8月17日(水) 晴れ 17℃ 07:00起床~07:30出発~09:00上高地BT~帰京
 朝起きると青空が広がっていた。気温も暑すぎず、歩くには最高の天気だ。昨日御馳走をたらふく頂いたので、もはやこれまでの朝食を食べる気にもならず、すぐに撤収した。出発前にお世話になったお礼をし、ゴールの上高地へと歩いていく。歩きなれた遊歩道を多くのひととすれ違いながら歩いていく。次第にすれ違う日人も増え、上高地が近づいてくる。最後の最後に天気に恵まれ、快晴の上高地に到着。久々の好天のためなのか達成感からなのか異様に清々しく感じた。ザックを置き、上高地アルペンホテルで入浴。汗をながしてさっぱりし、バスに乗り込み松本へ。松本の「EVEREST」というカレー屋でおかわり自由のナンを朝食の分も胃に押し込み、各自帰京。

⑥総括
 定着については、天候に恵まれなかったなかで、最低限Ⅵ峰フェースと源次郎尾根を現役だけでできたことは収穫といえる。特に源次郎尾根ではロープ工作についての判断を二年生に任せたが、状況をみて安全サイドに工作してくれた。さらに、新人で課題となった一年生へのケアも改善がみられ、おかげでチームワークが固まってきた。Ⅵ峰フェースでも、小川山等での経験を活かし成長した姿を見ることができた。香取も登攀スピードはここ数年の一年生のなかでも最も優れており、今後が楽しみだ。これからクライミングのベストシーズンとなるのでより磨いていってほしい。一方、全員に当てはまることだが、雪渓の下降やガレ場の通過はもう少し早く動けるようにすべきである。スピード=安全性に直結するため、登攀以外の部分でもさらなるスピードアップを図りたい。
縦走については、さらに二年生の成長を感じることができた。「一年間を通して必要な体力、歩行スピードの向上」を目的に掲げ、荷物も重くしたが、よく歩き通した。3日目以降は歩行スピードも上がり、縦走を通して日々強くなっていったように思える。雨天続きにも関わらず日程を短縮して完遂したことは自信になったのではないか。二年生に最も足りないのは自信であると思う。これを弾みとし、今後さらなる飛躍を遂げる事を期待する。香取は、体力、生活技術を磨く格好の場である夏山縦走に参加できず残念であったが、これは個人山行等で補填していこう。トレーニングにもこれまで以上に励んでほしい。
 全体を通して全員が「一皮向けた」と思う。これからは冬山シーズンに向け、見えた課題を修正し、成果はさらに伸ばしていこう。夏の頑張りが積雪期の成果に、さらには来年度に直結する。1人1人が先を見据えて日々を過ごしていこう。



2017年度新人合宿

2017-12-20 12:08:56 | 2017年度 合宿
2017年度新人合宿報告書

①山域・対象:北アルプス 穂高連峰涸沢定着

②期間:2017年6月8日~2017年6月14日

③メンバー:4年CL福田、2年SL中島、浅川、小野、1年香取、中山OB、橋本OB、萩原OB

④行動詳細
6月8日(木) 曇り16:30部室~22:40東京駅八重洲南口バスターミナル=高速バス=05:30上高地バスターミナル
授業で遅れる福田以外は16時半に部室に集合し団体装備、個人装備の確認をする。準備と最終準備会で新人の個装チェックをしていたので、忘れ物もなくすぐに確認を終える。香取は高校山岳部出身だけありパッキングも上手い。早稲田で夕食をとり終わるも時間が余ったので新人に練習させていた穂高連峰の概念図を書かせる。よく覚えている。準備は万端のようだ。出発前に部室の掃除をし、大きく膨れたガッシャーと共に東京駅八重洲南口へ向かう。雨の予報だったが、雨に降られることもなく22時半に「さわやか信州号」に乗り込んだ。

6月9日(金) 晴れ 3℃05:30
5時半に上高地バスターミナルに到着。バスを降りるとあまりの寒さに目が醒める。気温は3度。道理で寒いわけだ。空には薄く雲がかかっていたが、身支度を整えている間に青空が広がり奥穂高岳もハッキリ見えるようになった。6時に上高地を出発。ここから横尾まで13kmの遊歩道歩きとなる。明神、徳沢まで1ピッチずつかけてゆっくり進む。左手に聳える明神岳の岩峰には所々残雪が残っていた。また、途中看板に6/1明神付近での熊の目撃情報が貼られていた。徳沢で上條OBに挨拶する。徳沢園の美味しいコーヒーに加えステーキ丼までご馳走になる。ありがとうございました。ステーキ丼パワーでペースを上げ、9時20分に横尾に到着した。ここでスパッツを装着し、読図の確認をしたうえで横尾谷に入る。本谷橋手前の沢に雪がたっぷり付いているので、ツボ足での雪上歩行を1時間半ほど行う。特に下りは習熟が必要だ。訓練場所から5分で本谷橋に到着。6/5に架橋されてはいるものの閉鎖されているため、橋から100mほど上流で雪渓を渡り登山道に合流する。登山道は沢状地形には雪がもれなく付いており、二年生を香取の下に入らせながら通過した。横尾本谷出合を過ぎた風倒林のあたりで登山道を外れ雪渓歩きとなる。新人の香取は慣れない雪上歩行で若干の疲労が見られるもしっかり付いてきておりさすがだ。例年通り涸沢ヒュッテまで800mほどの岩から競争をし、涸沢ヒュッテまで一気に駆け登った。中島、浅川、小野、香取の順。ノルマの25分を切ったのは中島だけであった。涸沢ヒュッテの掘り出し作業の進行具合を見ると涸沢はここ4年で最も残雪が豊富であろう。他に3張りしかないテント場に小川OBから頂いたダンロップのV6を設営した。設営手順が容易であった。二年生が香取に指導をしながら夕飯を作る。香取は包丁の扱いに慣れていた。

6月10日(土)4時半 曇りのち雨 5℃ 04:30起床~05:45出発~06:00訓練開始~10:30OB合流~12:405,6のコル~13:00BC帰幕
4時半に起床し、5時45分に出発する。獅子岩付近まで雲に覆われているがそれより下は視界がよい。6時に涸沢ヒュッテ裏の斜面で雪上歩行訓練と滑落停止訓練を行う。雪はよく締まり、訓練に適していた。滑落停止訓練中の10時半頃OB隊がBCに到着される。この時間帯から時折雹が混じる雨が降り出す。その後スノーバーの縦埋め、横埋めの支点構築訓練をした後、香取が作成した横埋めアンカーでアンカーテストを行う。5人の静荷重だけでなく、衝撃荷重でもビクともしなかった。11時半に訓練を切り上げ、5,6のコルへと出発する。途中で香取が足の指の冷えを訴えた。靴の防寒性が不足していたのが原因だ。1)事前に買い替えさせるべきであった。なんとか耐えられそうなので、そのままコルを目指す。ここでも競争をした。中島、小野、浅川、香取の順であった。12時40分に全員が5,6のコルに到着する。雨で気温も低いので、そのままBCに下る。香取はコルから前を向いて下ることができ、スピードも速い。下りのスピードは安全性に直結するため、さらに伸ばしていきたい。一気に駆け下り13時にBCに帰幕した。17時頃に夕飯を食べ、19時には就寝。寝るまで雨は降り続けていた。
訓練内容:ツボ足での歩行1.5h、アイゼン歩行2h、滑落停止1h、アンカー構築訓練1h



6/11(日)晴れ −2℃ 
新人隊:5時45分 BC発、13時 5,6のコル下でロープワーク、14時 5,6のコル途中の斜面で現役が合流、15時 涸沢発、18時20分 上高地着
5,6のコル下でロープワークの訓練をしたのち、5,6のコルまでスタカット。5,6のコル直下より懸垂下降。下降後、現役学生に合流し、一緒にBCまで下る
訓練内容:スタカット9p、懸垂下降3p
上級生隊:05:50BC出発~07:30白出のコル~08:00涸沢岳~09:45最低コル~12:30北穂高岳南峰~14:00OB隊合流~14:30BC帰幕
夜は余りに寒く、夏用シュラフではとても寝られなかった。4時半に起床し、外を見るとモルゲンロートが見事だった。快晴だ。5時50分に出発し、小豆沢を詰める。昨日の雨と明け方の冷え込みの影響でカチカチにしまった雪面にアイゼンを蹴り込みながらどんどん高度を上げる。7時頃から雪が緩んできた。例年小豆沢上部にあるシュルンドは空いておらず岩は雪の下だ。7時半に白出のコルに到着し、8時に涸沢岳の山頂に立つ。無線での交信を試みるものの、失敗する。この後合流まで無線をオープンにしていたが一度も交信できなかった。2)涸沢岳からの下りはクサリにデイジーをかけながらFIX通過の要領でどんどん下る。D沢のコルへの下りで30m1pFIXした。それ以降もクサリ場を慎重に通過しながら9時半にカメ岩で休憩し、9時45分に最低コルを通過した。ここから北穂高岳へ登り返すが滝谷側の奥壁バンドのトラバースが昨日の降雪で氷化しており危険なため、ペツルのボルトから40m×3pFIXした。いずれも支点はピナクルで取れた。3p目で稜線の涸沢側に出ると雪壁が出てきたのでここを小野がリードで30m1pFIXした。二年生もリードや支点構築に慣れてきたようだ。ドームを巻いてからはロープを解き、所々クサリを使いながら北穂高岳へと向かう。南峰手前の氷化したトラバースでも1pFIXし、12時半に南峰へ到着。リミットの12時を過ぎていたので、北峰へは向かわず北穂沢を一気に下り、5,6のコルへと向かう。14時に5,6のコルの200m下付近で懸垂下降の訓練中の新人隊と合流した。その後一緒にBCに下り、14時半帰幕。OB方を見送った。ありがとうございました。OBを見送った後は涸沢ヒュッテでツェルト搬送の梱包方法を確認し、翌日の奥穂アタックに備えた。17時に夕食をとり、19時には就寝。



6月12日(月) 晴れ -2℃ 05:00起床~06:15出発~07:45白出のコル~10:20奥穂高岳~12:00白出のコル~13:00搬送訓練~14:00BC帰幕
5時に起床し、6時15分に出発。遅出が功を奏し、雪の締まり具合もちょうど良い。小豆沢を1時間半で詰め切り8時に奥穂への登りに取り付く。白出のコルから雪壁が確認出来たので、アイゼンを履いたまま取り付くことにした。小野、浅川を先行させクサリ場を30mFIX。その後雪壁を50mFIXして通過。雪壁にFIXしたロープは残置した。雪壁を越えたところで夏道に合流したのでアイゼンを外し頂上へ。頂上手前にも雪壁が出てきたので、浅川リードで30mFIXした。このロープも残置し、10時20分に奥穂高岳山頂に到着。徐々に雲は沸いてきているが、八ヶ岳から後立山連峰まで見渡せる。素晴らしい天気の中での登頂に新人の香取にも笑顔が溢れる。写真撮影を済ませた後は中島、浅川に残置ロープを回収させながら下り12時に白出のコルまで下りきった。ロープを3本持参してきたが、残置や下降を考えると4本あるとより早く行動できたように思う。コルの一段下から2pボラードで懸垂した。香取は少しずつ懸垂にも慣れてきている。懸垂後は小豆沢を駈け下った。BCまで下る途中でツェルト搬送訓練を行う。梱包に30分以上掛かったので、習熟が必要だ。2ピッチ分ロープで引き下ろした後BCまで引きずりながら搬送し、14時に帰幕した。



6月13日(火) 晴れ 5℃04:30出発~05:40出発~06:30モレーン~10:45北穂高岳~12:45BC帰幕
4時半に起床し外へ出ると薄くガスっているもののモルゲンロートが美しい。天気は良さそうだ。5時40分に出発し、北穂沢を詰める。北穂沢は2500m付近で1度夏道を歩くが、そのほかは基本雪の斜面を歩くことが出来る。6時半にゴルジュ上のモレーンで休憩する。北穂沢上部は東稜からの落石が目立っていたので、南稜よりに進むことにする。浅川と香取でザイルを結びスタカット訓練を開始する。途中落石が3回あった。南稜とインゼルの間のルンゼを抜けたところまで合計9pスタカットをし、松濤のコルへと向かう。9pで3時間20分を要した。コルへの登りでFIX通過の確認のため2pFIXした。コルに到着すると飛騨側から雲が迫ってきたのでそのまま北穂高岳北峰へと向かった。山頂は雪に覆われていた。ここ4年で初めてのことだった。山頂で15分休憩したのち11時に下降開始。コルへの登りでFIXした残置ロープ2pに加えてさらに50m×3pFIXしてインゼルの上をトラバースした。トラバースを終えた後は香取の下に二年生を入らせBCまで下った。5pFIX通過をしたにも関わらず1時間45分でBCに着いたのは練度が高まってきている表れだろう。さらに磨いていこう。12時45分に帰幕した後はテントの設営訓練をし、最後の夜に備えてテントを張り直した。16時頃から2時間ほど雨が降ったが、夜には星空となり20時頃就寝。



6月14日(水)快晴 気温不明04:30起床~06:00出発~08:00横尾~09:00徳澤園~11:30上高地
4時半に起床し、6時前に撤収完了。入山以来最もスッキリ晴れ渡った空の下上高地へ向け下山を開始する。香取の雪上歩行の確認のためにまだ日が当たらず固く締まった斜面をツボ足で下っていく。慎重かつ確実に下れるようになっている。登山道は入山時と比べて残雪は減ってはいるが、それでもこの4年で一番多いことには変わりない。本谷橋もまだ封鎖されているままであったので、入山時同様100m上流の雪渓を渡り本谷橋まで。ただし沢の中央は雪が溶け落ちて穴が空いているところもあったので、あと三日ほどで通過できなくなるだろう。本谷橋からすぐの行きで雪訓した沢もまだまだ十分残雪がある。それ以降は雪が残っておらず、すぐに横尾に到着した。横尾から徳沢への道は一部崩壊したらしく、ブル道を迂回する箇所があった。梓川河岸の清々しい道から新緑まぶしい樹林帯の道を気持ちよく歩き9時に徳沢園に到着した。上條OBはご不在であったが、従業員の方に下山の挨拶をすると、カレーライスにソフトクリームまでご馳走していただいた。ありがとうございました。徳沢園でエネルギーを注入できたので、上高地までひたすら歩き、11時半に上高地バスターミナルに到着。上高地アルペンホテルの風呂で疲れを癒し、快晴の上高地をあとにして松本経由で帰京した。



⑤総括
全体の目的については残雪、天候に恵まれ概ね達成できたといえる。例年以上に雪の上を長く歩くことができ、奥穂高岳、北穂高岳に登頂することができた。OBのご協力によって新人だけでなく2年生にも涸沢岳から北穂高岳の縦走をさせることができた。ありがとうございました。ルートファインディングや、支点の構築、リードの経験を補うことができ、成長した姿を見ることができたように思う。
また1年生についてはよく頑張っていたと思う。体力についても例年並みかそれ以上といえる。また、ロープワーク等の技術も覚えが良かった。事前の努力が結実したものである。また、モチベーションも高く今後が楽しみだ。これから1年間の合宿を通してさらに高めていってほしい。
しかし、課題もあった。二年生が合宿の目的を完全に達成できたとは言えないことだ。歩行訓練やロープワークの指導はよくできていたが、その他のケアが不十分であった。休憩中に1年生の下に入ったり、アタックの際に声掛けをしたりできたといえるだろうか。また、怒らなくてはいけない場面で怒ることができなかった。ダメなことをダメと言えないのは危険な組織である。メリハリをつけてやっていってほしい。何度も言っていることだが、9か月後には四年は引退し、二年生が最上級生として部を引っ張っていかなければならない。新人をきちんと育てることが未来の自分たちを助けることになるという意識をもって今後は上級生として頑張ってもらいたい。
今合宿は新体制で初の合宿である。船出となる合宿で全員無事に下山できたのは皆のおかげだ。ありがとう。よかったことはさらに伸ばし、悪かったことは修正するためにしっかり反省し今後1年間に繋げていこう。