ーー定着パートから続くーー
剣を背にし、2日かけて祖母谷にたどり着いた。
これから縦走パートだ。
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8月7日レスト (小川、中島は宇奈月温泉へ買い出し)
夜も明けきらぬなか、目覚ましに起こされることもない。起きてから慌ただしく朝食の準備をする必要もない。今日はレストなのだ。日が完全に出てからのそのそ起きだし、朝食をとる。小川と中島はトロッコ電車の始発で宇奈月温泉へ食料の買い出しに向かっていった。
さて、残された私たちはというとやはりボルダー探しに向かうしかなかった。祖母谷温泉小屋は川のほとりに位置しており、良さそうなボルダーがちょろちょろあったのである。小さなボルダーを登り、暑くなれば川でクールダウン。これを繰り返しながら、さらなる良いボルダーを探しに上流へ遡行していった。
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すると川のはずなのに温かい流れがあるのに気づいた。よく探ってみると温泉が湧き出ているのだった。そこで、ボルダーから温泉の開拓へと方針転換した。丁度良い湯加減のところを探し、岩をどかして野湯を作った。大自然の中温泉に浸かり疲れも吹き飛んだが、咬まれると痛い謎の虫への恐怖から逃げるように立ち去るしかなかった。本当に痛く、あの謎の虫の羽音がトラウマになった。
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そうこうしていると小川と中島が帰ってきた。その後は皆で縦走用の食料パックを作った。かなり手際よく作業を進めることができ、30分程で完了した。再び暇になったので先ほどの野湯に向かったが、やはり謎の虫の襲撃をうけ5分と入らず逃げ帰った。
8月8日祖母谷温泉小屋〜白馬岳村営頂上宿舎
いよいよ今日から縦走だ。昨日のレストで疲れは取れたし、もう謎の虫からもおさらばだ。しかし、清水尾根もまた強敵である。標高800メートルの祖母谷温泉から2900メートルの白馬岳まで標高差2000メートル以上登る長い尾根なのだ。加えて新たに縦走用の食料も加わり荷物も重くなっている。長時間行動を覚悟し、清水尾根に取り付く。しかし、思ったより順調なペースで登っている。一年生の頑張りが光る。コースタイム通りで不帰避難小屋に到着。ここは水場も近く快適そうだ。ここから頂上宿舎までコースタイムであと4時間。お花畑の見事な嫋やかな稜線を登るだけのルールのはずだが、ここへ来てペースが落ちる。
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さすがに一年生も疲労している様子だ。休憩を細かくとりやっとのことで清水岳へ。清水尾根を登りきった。あとは頂上宿舎までほぼ水平に歩くだけ。風が出始めたころなんとかテン場に到着した。
8月9日頂上宿舎〜蓮華温泉
朝起きると雨がテントを激しく叩いていた。食事をとり外に出るとテントの張り綱が切れていた。昨晩は風が強かったようだ。ここまでずっと天気に恵まれて来たので、寒く感じる。そそくさとテントを撤収し、白馬岳へ。白馬岳山頂は真っ白で風も強かった。
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稜線上は風を避けられるところもないので、ノンストップで船越の頭まで。大池山荘に向けて下る途中雨が激しく降ってきた。急いで下るがなかなか大池山荘につかない。蓮華温泉への分岐があったので、そちらに曲がった。(後日確認したら分岐から小屋まで15メートルしかなかった。それほど視界が悪かった。)曲がって少し行くと雨が上がった。高度を下げるにつれて青空が広がっていった。テン場に到着後、鈴木雄大と私は蓮華温泉の野湯めぐりもした。800円也。この日、一旦下りていた田中が再合流した。
8月10日蓮華温泉〜朝日小屋
白馬岳からは稜線をたどって朝日岳に行くのが良い。だが、トレーニングのためあえて蓮華温泉に下り、登り返すのだ。ああ無情。蓮華温泉からさらに下る。下りきると今度は登りである。五輪尾根だ。想像よりもキツくはなかったが、一年生の靴擦れがひどくペースが上がらない。それにしても綺麗なところだ。木道も整備されており歩きやすい。気持ちの良い登りだった。一年生も靴擦れに耐えなんとか朝日岳まで登りきった。
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朝日岳から朝日小屋まで下り幕営。朝日小屋も絵になる。日没前には雲海と夕焼けを私たちに見せてくれた。夕焼けのせいかこの旅もあと2日かと感傷的になった。
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8月11日朝日小屋〜栂海山荘
ここまで来ればあとは下るだけ。さっさと朝日岳まで登り返し、ハイペースで栂海新道を下る。
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長栂山、黒岩山、サワガニ山、犬ヶ岳と次々に越え10時頃栂海山荘に到着した。北又の水場からは一年生が6リットルずつ、中島に至っては12リットルの水を荷揚げし追い込んだ。今日は山の日ということもあり、続々と登山者が集まってきた。その中のある方からカジキマグロの昆布締めやすき焼き、うどんなどを頂いた。あまりの美味しさに感動した。ありがとうございました。
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8月12日栂海山荘〜親不知海岸
標高が低いため、暑くなる前に下りようと2時に栂海山荘を出発した。出発する前は満天の星空にペルセウス座流星群が次々に尾をひいていった。旅の終わりに何を願えというのだろうか。とりあえず無事の下山を祈り、栂海山荘を後にした。暗闇のなかヘッドランプの灯りを頼りにどんどん下る。白鳥山までの登り返しを登りきったところで朝日が私たちを出迎えてくれた。白鳥小屋の屋上に登ると目と鼻の先に日本海が見えた。
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もう一度気を引き締め直し、下りだす。2ピッチで尻高山まで。ここまでくると暑い。早出が功を奏した。すぐ下に海は見えるのだが、ここから稜線は横に曲がる。海岸線と平行して進むので意外と長く感じる。
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それでも頑張りようやく最後のピーク、入道山に到着した。栂海新道の入り口の山だから入道山というのだろうか。ここで最後の休憩をとった。ゆずの「栄光の架け橋」を流した。「決して平らな道ではなかった。けれど、確かに歩んできた道だ」この曲の全てが夏山合宿にリンクし、気持ちが高ぶった。さて、もうひと頑張り。
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蝉の声が大きくなっていく。道路を走るトラックの音が聞こえる。道路を横断し、斜面を下りきると、栂海新道の終点にたどり着いた。
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しかし!まだ親不知海岸までもう少し。親不知観光ホテルの横から長い階段を下る。帰りを考えればガッシャーは置いていきたいが、せっかくここまで来たんだ。海まで背負っていこう。ここまでずっと先頭を歩いてきたが、一年生に前を譲る。海まであと10メートルのところで立ち止まり、これまでの道程を振り返る。
「翼やあれがパリの火だ」
そうひとりごち、皆の待つ海へと続く階段を踏みしてるように下りていった。
福田
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