東京23区のごみ問題を考える

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~ごみ問題のスクラップブックとして~

23区 清掃工場の地球温暖化防止対策(3)熱利用効率向上の研究

2010年09月19日 19時58分53秒 | 東京23区のごみ

『「清掃工場の熱利用効率向上に係る研究 平成21年度活動報告書(平成22年3月) 清掃工場の熱利用効率向上に係る研究会』情報開示請求資料より

23区の清掃工場の平成20年度における熱利用状況のまとめで「発電効率」なども明記されているので、なかなか見応えはある。ただし、67頁にも及ぶ報告書のため、独断と偏見で、気になった部分のみ抜粋する。

■清掃工場の熱利用効率向上に係る研究 平成21年度活動報告書
(平成22年3月) 清掃工場の熱利用効率向上に係る研究会 -赤字は感想など
研究会の構成は6事業者(平成21年9月設立)
東京二十三区清掃一部事務組合
東京エコサービス株式会社
東京ガス株式会社
東京熱供給株式会社
東京臨海熱供給株式会社
財団法人日本環境衛生センター

目次(目次だけでも研究会のやっていること方向性が大まか見えてくる~)
1.はじめに
2.研究会の活動概況
3.清掃工場の熱利用に係る経緯と現状
 (1)東京23区における清掃工場の熱利用に係る経緯
 (2)東京二十三区清掃一部事務組合における熱利用に係る現状
 (3)国の施策の動向
 (4)産業界(プラントメーカー)の動向
 (5)海外における熱利用の状況
4.調査方針の検討
 (1)東京二十三区清掃一部事務組合の熱供給事業の状況を踏まえた検討
 (2)プラントメーカーの提示技術を踏まえた検討
 (3)今年度の調査方針
5.現地調査報告
【国内施設】
 (1)函館市日之出清掃工場
 (2)大阪市住之江工場
 (3)北九州市皇后崎工場
【海外施設】
 (1)オランダ王国アムステルダム市WE施設
 (2)ドイツ連邦共和国アウグスブルグ市清掃工場
6.研究の総括

はじめに
~~大省略~~
… しかし、低炭素化社会を目指す厳しい社会的変化の中で、東京23区の清掃工場の熱利用効率向上に取り組むことは、社会の今日的要請に応え、環境の改善に寄与し、さらには、ごみの有効活用により23区民の財政負担の軽減につながることから、研究取り組みを希求する動きが生まれた。
~~大省略~~
現実的にはそうなのだけど、この「ごみの有効活用」という考え方にはとても抵抗がある。熱利用にしろなんにしろ、それが目的となってはごみが減らせなくなる。常にごみを供給しなければの悪循環。有明清掃工場もそうである、地域熱供給のため、常に安定してごみを入れなければならないのである。

3.清掃工場の熱利用に係る経緯と現状
(2)東京二十三区清掃一部事務組合における熱利用に係る現状
平成20年度における熱利用状況のまとめ

①発電量は1,034,083MWh(前年度比27.5%増)であり、新エネルギー相当分も含めた売電収入は4,400,230千円(前年比16.4%増)と顕著に増加している。増加の理由としては廃プラスチックのサーマルリサイクルの寄与率が高いと考えられる。
②外部への熱供給量は572,447GJ(前年比4.8%増)であり、売却熱料金は182,666千円(前年比7.4%増)となっている。
③ボイラによる熱回収効率は83%、都市ガスの燃焼も含めた発電効率は12%、ごみ焼却過程での蒸気利用も考慮した全体の熱利用効率は39%であった。
④主要な熱損失は復水器及びタービンにおける熱損失13,907TJ(投入エネルギー全体の約45%)と煙突からの熱損失4,592TJ(投入エネルギー全体の約15%)であった。

       



       

4.調査方針の検討
(1)東京二十三区清掃一部事務組合の熱供給事業の状況を踏まえた検討
①東京二十三区清掃一部事務組合の清掃工場における最大の熱損失は復水器における熱損失(Out-Putエネルギーの約45%)である。
②温度が低く熱の利用法も確立していないため、現状ではほとんど未利用になっているタービン排気のエネルギーの10%を有効に活用することができれば、約87,000トンのCO2(一般家庭約95,000世帯分に相当)を削減することができる。
(2)プラントメーカーの提示技術を踏まえた検討
プラントメーカーは、社会状況を踏まえて実現可能な熱利用率向上技術を提示しているが、「白煙防止装置廃止」「高効率乾式排ガス処理」のように住民配慮や環境対策の側面からの検討が必要な技術が含まれている。また、「低空気比燃焼」のように過去に研究がなされた技術も含まれている。
――ものはいいよう、「白煙防止装置廃止」が住民配慮でできないというより~ それでは商売にならないから? 白煙防止を廃止して、住民にしっかり観察してもらうのがいい~ 
(3)今年度の調査方針
「東京二十三区清掃一部事務組合の熱供給事業の状況」及び「プラントメーカーの提示技術」の両側面からの検討を踏まえ、6事業者が参加しての本共同研究においては、温度が低くてこれまでは利用がなされていないものの、対象となるエネルギー量が最も大きく、また、それぞれの事業者の知見を持ち寄っての研究が可能なテーマとして、「水冷式復水器によるエネルギー利用効率の向上」について研究を進める。

6.研究の総括
(1)水冷式復水器
①水冷式復水器は、循環冷却方式により3つの類型に分類できる。
②タービン排気冷却水を熱供給媒体として利用する方式は熱利用効率の向上と合わせて施設設備点数の低減、省スペース、騒音低減などの利点が認められる。
(2)オランダ、ドイツにおける着目点
①熱利用効率が高い施設は「処理施設」ではなく「回収(リサイクル)施設」として位置付けられている。
②いずれの清掃工場についてもEU焼却指令に定められている排出基準をクリアするため湿式の排ガス処理設備は設置されているが、白煙防止の設置という考え方はまったくなく、いずれの国においてもEU委員会の方針に沿って可能な限りのエネルギー利用効率を追求している。←さすがEU合理的ですばらしい!!
(3)清掃工場を巡る社会経済状況
①23区ではごみ発電は、約40年前に開始され、以後、時代を追って発電効率の向上が図られてきた。今日、低炭素社会の実現に向けてエネルギー利用効率向上への取り組み要請は一層高まっていく。
②東京23区の清掃工場全体についてみると、1%の発電効率向上は2%程度の売電収入の増加をもたらす。タービンからの排熱は、腑存量としては膨大であるが、温度が低く利用上の課題があり、現状では殆どのエネルギーが未利用の状況にある。
(4)今後の課題と共同研究の方向性
①今年度得られた水冷式復水器に係る研究結果を基礎として、タービン排気冷却水を含む低温の排熱に着目しての有効利用方策、有効利用上の課題解決等について研究を進める。

--という21年度のまとめであった。22年度は「タービン排気冷却水を含む低温の排熱に着目しての有効利用方策、有効利用上の課題解決等について研究を進める」となっているがどんな結果となるのか~

また、報告書だけを読むと、なんだかいいこと尽くめにも思えるが.何ごとも、メリット、デメリットはあるのだろうから、デメリットの部分もしっかりと報告してもらわねば~現に、「清掃工場地球温暖化対策技術調査の結果について」では、「水冷式復水器」の実現性は×となっていたので、その問題解決もしっかりと検討してほしい。



「清掃工場地球温暖化対策技術調査の結果について」より

ということで~今後、さらにどこまで発電効率を向上できるのか、未利用のエネルギーをどれだけ取り出せるのか~ 清掃工場も、先ずは、実現可能なことから着実に取り組みをしてほしいし、そのうえでの各種研究を進めて、排出権取引などには決してならないように~ 

参考(「水冷式復水器」がどんなものなのかをネットで検索していたら~
わかりやすい資料を見つけた。2005年とすこし古いのだが~)

■ごみ焼却発電の拡大と発電効率の向上
SCE・Net エネルギー研究会・エネルギーレポート 松村 眞
http://www.sce-net.jp/pdf/R-01.pdf

よくいわれていることではあるが~
「主要国のごみ焼却発電施設数と出力規模」のグラフはちょっと衝撃的であった。

このグラフ、プラント数の他に、ごみ焼却総量もあるとなおよかったのだけど~
(アメリカのごみ量などは半端ではないからちょっと恣意的にもとられるので)



出典:財団法人エネルギー総合工学研究所作成データを元に、新エネルギー・産業技術総合開発機構が作成 ※グラフは「ごみ焼却発電の拡大と発電効率の向上」より作成
アメリカとドイツは蒸気の発電タービン入口温度を 400℃から 500℃とし、圧力は 5MPa以上を採用しています。また復水器は多くが水冷式なので、発電効率は25%以上が珍しくありません。一方、日本では蒸気の発電タービン入口温度が300℃以下で、圧力は2MPa以下です。復水器は臨海立地でもほとんどが空冷式です。なお、日本も新設工場では発電タービン入口の蒸気温度に400℃を採用し始めており、既設の清掃工場もボイラーや復水器など発電関連設備を新/増設すれば、発電効率を改善し出力を増大できるでしょう。(「ごみ焼却発電の拡大と発電効率の向上」より)

やはり気になるので、各国のごみ量↓↓も「平成17年版循環白書」からグラフを引用

2. 世界各国のごみの排出・処分の現状
 世界各国の2000年のごみ発生量についてみると、ごみの定義や調査年が国ごとに異なるために単純な比較はできませんが、日本のごみの発生量は約 5,200万t(出典作成時は1999年のデータを代用)で、ごみの総発生量は先進国の中ではアメリカに継いで2番目に多くなっています。ただし、人口1人当たりの発生量は約410kgで、先進国の中ではかなり低い水準となっています(序-3-1図)。


また、各国の人口とごみの焼却施設数、焼却量の関係についてみると、我が国と比較した場合、人口当たりの焼却施設数は少ないものの、1施設当たりの年間焼却量の多い国が多くみられます。特に、我が国、デンマーク、ベルギーなどは人口1人当たりの焼却量が多いものの、1施設当たりの焼却量は比較的少なくなっています。一方、オランダ、アメリカ、ドイツ等は、大規模な施設で相当量の焼却を行っている傾向がうかがえます(序-3-3図)。


なおさらわかりにくくなるかもしれないが、おもしろいグラフである~

関連(本ブログ)いろんな可能性を求めて研究する分にはいいのだろうが…
■ 経産省、9月に研究会設置 再生可能エネの熱利用で
http://blog.goo.ne.jp/wa8823/e/2cb9a52f4797b469047ad9f55daf77d9
■ 環境省、温室ガス削減へ6地域で実証事業… 清掃工場では?!
http://blog.goo.ne.jp/wa8823/e/9e5469e0504bc87669cc1203ba76ed87

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