憂太郎の教育Blog

教育に関する出来事を綴っています

教師も環境因子である

2012-05-19 19:35:28 | 特別支援教育
 障害者福祉の分野では、障害をあらわす概念として、WHO(国際保健機関)が示しているICF(国際生活機能分類)が広く浸透している。このICFは、大ざっぱに言うと、障害をハンディキャップ(社会的不利)ととらえるのではなく、当事者を取り巻く環境条件を変えることで変わりうる相対的なものとしてとらえる、という概念といえよう。
 例えば、車イスで段差のある道は通行できない(社会的不利)が、段差をなくしてバリアフリーにすることで車イスでも健常者と同じく通行ができるようになる。つまり、歩行が困難で車イスを利用している人でも、通行するということについては、バリアフリーにすることで解消される。このように、環境が変わることによって、障害者も自分の望む社会参加ができるようになる、という環境要因からみた障害の概念ということである。
 このICFの考え方については、学校現場にも取り入れられている。いわゆる発達障害の子どもも環境が変わることで、普通学級で障害を気にせず生活ができるようになる、という考え方である。例えば、教室の正面黒板は、情報過多になりすぎないようにシンプルな掲示にするとか、視覚的な支援を使うことで見通しを持たせやすくするとか、そういう教室環境への配慮である。
 こうした配慮に加えて、最近では、教師も環境要因である、という議論がなされるようになった。これは、なかなかユニークな論点だと思う。
 単純にいえば、ある担任の教室では、発達障害児も障害を気にせず健常の子どもと同じように生活を送ることができるが、ある担任の教室ではそうではなくなる、ということだ。換言すれば、担任の発達障害児支援の力量差ということに過ぎないのだけど、発達障害児の目線に立てば、教師も教室環境の因子となる、ということなのだ。こうした「教師=環境因子論」とでもいうユニークな立論は、特別支援教育だけではなく、今後、広く学級経営や生徒指導全般について新しい視点での議論ができるのではないかと思ったのでありました。