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マスクはつけない、観光地は大混雑……“ゆるむ韓国”は大丈夫なのか?《ソウル現地取材》

2020-05-02 13:53:08 | 国内
文春オンライン 令和2年5月02日 06:00

 新型コロナは、他の国々と同じように韓国人の生活を完全に変えた。外出の際にはマスクが必須になり、マスクに黄金並みの価値があるという意味で「金スク(金+マスク)」という言葉が流行するほどマスクの品薄状態が続いた。
なるべく外出を控え、外出するなら人と人とは1〜2メートルの距離を保たなければならないという「社会的距離を置く」方針などが、コロナ時代の「ニューノーマル(NEW NORMAL)」として受け入れられている。

 ところが、最近、ソウルでは、そのニューノーマルとは程遠い風景が、あちこちで目につくようになった。

ソウル・現代デパートのフードコート(著者撮影)

整形手術の顧客が増加した
 韓国で初のコロナ感染者が発生してから100日経った4月28日、ソウル江南(カンナム)の某所で久しぶりに友達とランチをした。
江南で小さい皮膚科を経営している女医の友達は、「コロナのせいで顧客が減ったのではないか」という私の慰めの言葉に意外な話を聞かせてくれた。

「はじめは大変だったけど、最近は顧客が再び回復しているわよ。
むしろテレワークやマスク着用のおかげで、レーザー施術のように高価な治療を希望する顧客が増えた」

 レーザー施術後はしばらくの間化粧ができないため、まとまった休暇がもらえる冬季と夏季に人気のある治療法だった。
ところが、コロナのおかげで、何も疑われずマスクで顔を隠せるため、レーザー施術を受ける顧客が増えたというのだ。さらに他人と顔を合わせないテレワークが長引いたことから、その間に整形手術をする若い女性も増えたという。

 このような傾向は病院だけでない。いま韓国経済の全般にわたって「顧客」が増えていることは肌で感じられる。
この日、ランチを食べたいと思っていたレストランには空席がなかった。「ご時世だから、予約しなくても入れるだろう」と油断したのが失敗だった。

 帰りに寄ったデパ地下も「顧客」であふれていた。
人気デザートの売り場の前には、間隔2メートルどころか、ぴったりと寄り添った長い列が作られていた。

「報復消費」でリゾート地に客殺到
 韓国メディアは、コロナ感染拡散が縮小している最近、デパートや高級レストランなどに人が殺到する現象を受け、「報復消費の兆しが見える」と報じている。

「報復消費」とは、疾病・災難などの外部要因から抑えられてきた消費が、一気に噴出する現象のことだ。
特に、贅沢品の消費が増えるのが一般的だという。

 大型連休を迎えた韓国の旅行関連業界は、今回のコロナにおける「報復消費」の格好の受け皿となった。

 4月30日から5月5日まで6日間のゴールデンウィークに入った韓国では、宿泊施設や航空会社に予約が殺到し、関連業界では嬉しい悲鳴を上げている。

 韓国メディアによると、連休期間中、済州行きの飛行機は予約率が90%を上回るほど人気だ。金浦空港では連休期間中、計1670便ほどの航空機がソウル〜済州を行き来するが、済州行きの飛行機チケットの価格も急騰した。
感染拡大の真っ最中だった2月、3月には往復3万ウォンを下回っていた価格が、いまや片道13万ウォンまで跳ね上がった。

 済州島には、この連休期間中に18万人以上の観光客が訪れると予測されている。済州島だけでなく、江原道束草(カンウォンド・ソクチョ)や江陵(カンヌン)などの代表的な保養地の宿泊施設は、連休期間の予約率が97%に上る。
GW初日の4月30日から鉄道と高速バスのチケットが売り切れとなり、全国の高速道路は平年の週末より混雑する渋滞となった。

 韓国交通研究院が2000世帯を対象に実施したアンケートによると、回答者の38.5%がGWに外出計画があると答えた。
すなわち、10世帯のうち3〜4世帯が家を飛び出して街を歩き回るものと予測される。

 この突然の現象に、韓国の防疫当局は旅行の自制を重ねて訴え、どうしても旅行する場合でも小規模に移動することを求めた。
GW期間中に最大の人出となる済州島では、連休期間中に「観光非常状況室」を設置し、特別防疫体制を敷いた。

「Kポップ」の次は「K防疫」
 もちろん大規模な行楽客の移動は、消費が回復する機会にもなり得る。

 GW前日の4月29日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、次のようにメッセージを発した。

「最近コロナ状況が沈静化し、政府は『生活防疫体制』への転換を準備している。ゴールデンウィークに続き、5月中に緊急災難支援金が支給されれば、内需が回復する良いきっかけになるだろう」

 旅行の自制を訴える一方、今回の連休を消費心理回復の機会と見ているのだ。

 韓国政府はGWが終わる5月5日以降、それまでの外出と団体行動を自制しなければならなかった「社会的距離を置く」という指針を変更し、「生活の中の距離を置く」という日常生活の中の防疫に転換する計画だ。
これを受け、全国の小中高では5月中に順次授業が開始され、教会の礼拝など宗教団体の行事も再開される。

 最近、新規感染者数が10人前後に落ち込み、4月30日には72日ぶりに韓国国内での「市中感染者ゼロ」となったことから、韓国政府や国民の間では、「コロナとの戦争で勝利した」という自信に満ちている。

 韓国政府とメディアは「K防疫」という新造語を作り出した。世界の人々から愛されるKポップやKビューティーなどの韓国文化コンテンツのように、韓国の防疫技術を世界にPRし、国際標準にしようという野心があるのだ。

 韓国政府が国際標準として提案する「K防疫モデル」には、「ドライブスルー(Drive Thru)」と「ウォークスルー(Walk Thru)」の検査運営手順、軽症患者や無症状患者を受容した「生活治療センター」の運営模型などが含まれている。

 韓国のメディアは、コロナの世界的なパンデミック現象と対処に苦しむ米国や欧州の状況は、韓国人の「西欧優越主義」の幻想を破ったと評価している。

 特に、危機管理に優れる国と評価されてきた日本政府の思いがけない未熟な対処は、韓国国民に自国の防疫と危機管理システムに対する自信を持たせた。
私ですら、韓国メディアを通じて「アベノマスク」の報道に接した時は、たとえ出生年の末尾の数字に基づく曜日制でも1週間に2枚、絶対にマスクが買える韓国の状況に感謝していたほどだった。

「もうマスクを使わなくてもいいと思った」
 ただ、連休以降、韓国社会でコロナが再び爆発する可能性も捨てきれない。
韓国メディアでも連日、連休の間に緩んでしまった防疫意識への懸念を示している。

 GWの初日、金浦空港の様子を取材した「中央日報」(4月30日付)によれば、国内線ターミナルの出発場の入口前は大行列で、団体観光客は密着したままマスクを脱いであいさつを交わすために忙しかったという。
さらに空港にはマスクをしていない人も多く、その一人(56歳男性)の言い分が紹介されていた。

「もうマスクを使わなくてもいいと思って、あえて持ってこなかった」

 同記事は、次のように指摘している。

「専門家は『まだ緩む時期ではない』と口をそろえている。『コロナを含む感染病は“2次拡散”の時が最も危険だ。
このような状況が生じないように現場では依然として医療陣が死闘を繰り広げるだけに、油断せず個々人が防疫規則をきちんと守ることが重要だ』と呼びかけている」

 コロナ防疫模範国と評価されていたシンガポールでも、防疫措置の緩和によってコロナが再び爆発的に増加した。
ゴールデンウィークが終わって生活防疫に切り替える過程で、「K防疫」の本当の成否が判明するものと見られる。


金 敬哲/Webオリジナル(特集班))




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