ある「世捨て人」のたわごと

「歌声列車IN房総半島横断鉄道」の夢を見続けている男・・・ 私の残された時間の使い方など

臨死体験 (出典:ウィキペディア)(4)脳機能停止(低下)状態での脳損傷時の臨死体験

2015年09月29日 | 好きな歌

こうした中で注目されている仮説が、心停止後の脳内で神経活動のバーストが起きているというものである。2013年に発表された米ミシガン大学の研究論文によれば、マウスを人工的に心停止させて観察した脳電図は、心臓が停止後30秒間、脳の活動が通常より急増し、精神状態が非常に高揚していることが判明している。またワシントン大学のLakhmir Chawlaは、死亡直前の7人の患者から30秒〜3分間にわたる活発な脳波が検出できた事から、酸素欠乏状態の脳が電気サージ現象を起こすのではないかと述べている。(このサージ現象自体はどのようにも解釈できる上に、7人の患者は全員、臨死体験を報告せずに死亡している事から、Chawla自身は臨死体験との間に何らかの関連性がある事を指摘するに留めている。)

しかし全身麻酔下で手術を受けている心停止患者の脳には、心拍停止後の数秒には既に計測可能な反応はない。こうした患者が意識を保つためには、心停止と全身麻酔という2つのハードルを越えねばならない。

一方で、脳の表面的な計測には現れない、脳の深層である皮質下の活動のみで臨死体験を説明しようと試みる者もいる。Jason Braithwaiteによれば、海馬扁桃体の働きのみで、大脳皮質が関与しないまま有意味で複雑な幻覚が起こり得るという。しかし皮質下の脳機能のみでは、臨死体験のような双方向的で複雑な体験は成立しない、という見方も強く[42]、高度な意識が脳の深層構造の働きにより生み出される事を説明するモデルは、近年の神経科学には未だ無い。また、電極を脳の深部に埋め込んだ動物実験では、心停止後の大脳皮質の活動停止は、脳の深部の活動停止(または減退)も招くことが示されている。

2つ目の論点は「本当に臨死体験は脳波がフラットの最中に起きていたのか」という点であり、これは臨死体験の「タイミング問題」とも呼ばれる。殆どの臨死体験のケースは、実際に体験が起きた時間が不明であり、体験者の体感や研究者の推測に拠るほかないため、脳波フラットの時間に臨死体験が起きていた事は証明できない、という批判がある。ここで最も頻繁に唱えられている説は、体験者が脳がまだ機能している瞬間の記憶、つまり「意識を失いつつある瞬間」か「意識を取り戻した瞬間」である心停止前後の記憶を無意識中の体験と錯覚したのではないかというものである。心理学者のクリス・フレンチ英語版によれば、臨死体験ではライフレビューに見られるように時間感覚の変容を伴うのが一般的なため、そうした一瞬の間でも体験が起こり得るという。(→#脳の再起動説 (虚偽記憶説)

しかしサム・パーニアやピーター・フェンウィックなどの研究者はこの解釈に否定的である。前者であれば、通常は心停止後に脳損傷による記憶喪失が起こるため、何らかの体験が起こっても蘇生後にそれらを思い出す事は難しい。(記憶喪失の時間の長さは脳損傷の程度を測る目安にもなる。)後者については、脳が混乱状態を経て意識を回復する時に臨死体験のような明晰で秩序だった意識状態を生じるとは考えにくい、と述べている。単なる失神からの回復であっても意識は混乱した状態になるため、脳が酸欠で損傷する心停止の状態であれば尚更だという。

多くの臨死体験者は、体験は意識の回復途上ではなく無意識の最中に起こったようだと考える。そして実際に心停止中の病室の情景を描写できる患者たちがおり、そうした描写は医療チームなどの検証を受けている。2008年より開始された大規模調査であるAWARE-Studyでは「脳機能が活動していないであろう時間に意識があった事を証明できた」ケースもあったため、臨死体験は心停止「前後」ではなく、心停止中に起きている可能性が高いと結論されている[14]。逸話的なエピソードも含めれば、心停止患者が蘇生後にする体外離脱の報告は、しばしば描写が数十分に及んでいる事がある。それが事実であれば、体外離脱あるいは五感の残留のどちらが原因であれ、心停止中の前後に起こった短期的な脳の活性化ではタイミングが合わないことになる。

また、脳内現象説で見落とされがちであるのは、混乱状態にある瀕死の脳がいかにして現実以上にクリアーで明晰な体験を生み出すのかといった問いである。心拍が停止すると、酸欠や高炭酸症、ドラッグや代謝変化や発作が、脳の生理状態を強く混乱させる。脳への血流は途絶えるため脳は著しく損傷し、やがて脳幹の機能も停止し、大脳皮質も機能停止状態になる。心停止後に脳機能は急速に衰えていく。しかし臨死体験者が報告する「明晰な意識」や「論理的思考」「時系列に沿った記憶」「鮮明な視覚」などの精神活動自体、脳の多くの領域が関与している筈である。脳機能局在論から言っても、思考プロセスは1つのエリアではなく沢山の違った皮質エリアを介在して成り立つため、全体的に混乱した状態の脳が鮮明な意識体験を生み出すとは考えにくい。しかし心停止中の患者は、明晰な意識が本来あるべきではない時間に明らかに混乱しておらず、明晰さや注意力が増大している。

脳の機能停止(低下)状態における臨死体験

脳内現象説では説明が難しい現象の代表例として、脳の機能が停止(あるいは極端に低下)している最中に患者が臨死体験をしていたという事例が存在する。以下は代表例である。

パム・レイノルズのケース

最も詳細な医学的データが残されたケースとされる。当時34歳であったパム・レイノルズは「低体温循環停止法」と呼ばれる治療を受けた。この治療では患者の体温を15.5度にまで下げたうえで、心拍と呼吸を停止させ脳波を平坦にし、頭部からの血液を抜き取ったうえで、脳幹の動脈瘤の摘出を行った。パムはこの手術中に臨死体験をした。

エベン・アレグザンダーのケース

ハーバード大学の脳外科医であったエベン・アレグザンダー英語版は、2008年に昏睡状態となっている間に臨死体験をした。体験後にエベンが自身の脳の状態を調べた結果、7日間の昏睡状態の間にエベンの脳の大部分は機能停止していた事が判明した。

特にエベンの大脳皮質は機能していなかったため、幻覚を見る事すらできない状態であった。エベンの臨死体験では鮮明かつ複雑な内容の映像も現れたため、「脳幹による幻覚説」でも説明がつかない。「一時的に機能が停止していた脳が意識を回復する際、それまでの古い記憶が支離滅裂に放出された」とする「脳の再起動説」も検討されたが、エベンは昏睡状態中の病室の様子を一部記憶していたため、この説も否定された。最も印象的な例は、エベンには一度も面識もなく顔も知らないまま他界した実の妹が存在したが、臨死体験中に対面した女性がこの妹であったという(エベンは臨死体験後に両親から渡された顔写真を見て、初めて実の妹の顔を確認した)。

このエベンのケースは、もともと臨死体験などに否定的であった著名な脳外科医が、臨死体験を経て、それが死後の世界への来訪であるとして肯定的な認識に転じた例として有名になった。後に、エベンの昏睡は麻酔により引き起こされたものであり完全な無意識状態とは言えなかった、とする「暴露記事」がweb上に掲載される騒動が起きた。しかしエベンの担当医師は記事の内容に否定的であり、実際の昏睡状態で起きた反射的な発作を、意識があった証拠と取り違えた記事である事が指摘されている。

脳損傷時の臨死体験

ピーター・フェンウィックは、頭部に重傷を負い、脳機能が混乱状態に陥っている中で臨死体験が起きたというケースを自著で3例挙げている。

重大な損傷を受けた脳が、鮮明で首尾一貫とした体験をしたとは考えにくく、仮に無意識下で何らかの意識モデルが脳で作られたとしても、それらのモデルは断片化され、ランダムで不鮮明なはずであり、臨死体験のように整合性のある物語体験とはならないと考えられる。また、人間の脳が重大な損傷を受けたとき、記憶はダメージを受けやすいため、通常は事件の間の記憶はロストされる。そのため、仮に損傷した脳が何らかの理由で明晰な体験を持ち得たとしても、その記憶を後から明晰な記憶で思い出すのは困難である。

フェンウィックは大脳皮質に重大な損傷を受けたDavid Verdegaalの例などを挙げている。1986年、Davidは脳卒中を伴う心臓発作により2週間の昏睡状態に陥り、その間に臨死体験をした。Davidの大脳皮質は発作の影響により、大きな損傷を受けていたため、記憶能力は著しく弱まり、また心拍停止時の血圧低下が原因で脳が損傷したため、視覚も機能していなかった。こうした状況にもかかわらず、Davidは非常に鮮明なビジョンを伴う体験を報告した。仮に臨死体験が昏睡中ではなく心臓発作直前に起こったとしても、彼はそれを記憶し思い出すことは出来なかったと考えられる。

一方で、2060名を調査対象としたイギリスのAWAREプロジェクトでは、脳損傷による心停止患者は、心停止中による無意識中の記憶を持たなかったと報告された。

臨死共有体験

研究者であるレイモンド・ムーディは、臨死体験は死にかけた者のみならず、周りにいる健康な人々にも共有されるという「臨死共有体験」が存在する事から、脳内現象説に否定的な見解を示している。

ムーディによれば、臨死体験は死にゆく者の周りにいる人間と共有される事がある。死の際にいる患者に一人付き添っている者に起きることもあれば、複数人に共有されることもあり、「光体験」や「体外離脱体験」、「人生回顧体験」など臨死体験とほぼ同様の現象が起きるという。また、この世のものとは思えない音楽を周りの者と共に聞くという「音楽体験」や、自分のいた部屋の空間が膨張するなどの「空間変容体験」の証言が多い。この現象は、1980年代からムーディにより事例収集が行われた。

歴史的には、7世紀に迦才が臨死体験の収集書である「浄土論」を編集している。そこに収録された20例のうち1例は臨死共有体験であり、臨終者の側にいた全ての者が仏の姿を見た、と記されている。1889年にはヘンリー・シジウィック率いるSPRのチームが17000人を対象にアンケートを取った結果、163名が「既に死亡している人物」の出現を目にしたことがあると回答した(うち殆どのケースでは、本人が死亡してから1時間以内に目撃されていた)。後にウォルター・プリンス英語版は、死亡した人物の幻姿を目撃する事で、その人物の死を初めて知ったというケースを107例収集した。20世紀初頭には、ダブリン王立科学大学の物理学教授ウィリアム・バレットが著書「臨終の床の体験」の中で、複数の共有体験例を紹介している。現在においては、イギリスの王立精神科医科大学のピーター・フェンウィックの臨床例に、4例の臨死共有体験が含まれている。

臨死共有体験は、病気でもなく脳に損傷もない健常者に起こるため脳内現象説では説明が難しい。ピーター・フェンウィックは「人が死んだ際、その死を知らない身内の人々に、死の光景が見せられる場合がしばしばある」、「病床に付き添って世話している人々が、その場で超自然的な光景を見る場合もある」と報告し、「それらは幻覚とは言えない」と述べている。ウィリアム・バレットは「互いに連絡し合っていない複数の人々が、内容の合致する出来事を目撃したという事実」が臨死共有体験の価値であると記している。

還元主義的解釈への批判

脳内現象説への根本的な批判として、そもそも脳内現象説は「脳内物質の発生により体験が起こっている」という「因果関係」を明らかにしているとは言えず、体験と脳内物質との「対応関係」(相関関係)を説明しているだけなので、「体験は脳内物質の分泌によるものにすぎない」と還元主義的に捉えるべきではないという批判がある。

また、仮に側頭葉への電気刺激が体外離脱現象を起こしたとしても、それは異なる経路により同じ現象が起きただけであり、どうやって意識不明者が外界の物事を知覚し得たのかという問題はそのまま残る事になる。すると「側頭葉に刺激が起きた事が引き金要因となり、何らかの認識主体(霊魂など)が身体を離れ外界を知覚した」と説明する余地も残る事になる(そうした解釈は実際に唱えられており、右側頭葉は脳と精神と魂の収束する場所であると考える者もいる)。この例において側頭葉への刺激で体外離脱が起きたという事自体は、側頭葉と体外離脱に何らかの「関連性」がある事を示しただけである事に注意する必要がある。

初期の研究者の中には、臨死体験が幻想でない事を示すために、脳機能との関連性を見出そうとした者もいた。また、ペンシルバニア大学アンドリュー・ニューバーグ英語版は、深い瞑想状態に入った人間の脳内に一定の神経学的な変化が現れる事を見出したが、「瞑想時における様々な神秘体験が客観的な現実であるか」と問われた時に、「それは『神経学的な現実』である」と返している。[23]神経科医のヴィラヤヌル・S・ラマチャンドランは「脳のなかの幽霊」で、側頭葉神秘体験に関係しているという証拠は「使いようによっては神の存在に対する反証ではなく、神の存在を支持する証拠にもなる」とも語っている。

こうした例からもわかる通り、ある体験に関与する脳の領域や化学物質を同定する事と、その体験が幻想である事を証明する事とはイコールではないので、混同してはならない。体験の幻想性を決定づけるのは、神経学的要因ではなく社会的な要因である。

ホログラム仮説

物理学者であるデヴィッド・ボームは、宇宙全体は1つの巨大なホログラムであると考えた。マイケル・タルボットは、このホログラム説から臨死体験の説明を試みている。臨死体験とは別のホログラム世界を訪れる体験であり、その領域で知覚する現実は、心が創造するホログラム状の思考形態である。こうした説は「死後世界では、自分の想念が形を取って現れた」「人生回顧(ライフレビュー)はホログラフィックな体験だった」というような実際の臨死体験者の証言から推測されており、ケネス・リングなどの研究者がこの説を支持している。

電磁気仮説

ケネス・リング等の調査では、臨死体験者の約25%が「体験後に腕時計が止まってしまうようになった」「電子機器を誤作動させるようになった」と報告している。その事から臨死体験が人間の生体を取り巻く電磁気力に変化を及ぼしたと推測できる。電磁気を用いて、人間のアルコール依存や鬱状態を治癒させる療法も存在するため、臨死体験で起こされた人体の電磁気の変化が、一種の電気ショック療法として働き、人格の長期的な変容を起こしたのではないかとする解釈がある。

量子脳理論

アリゾナ大学スチュワート・ハメロフの「Orch OR 理論」によれば、意識はニューロンを単位として生じてくるのではなく、微小管と呼ばれる量子過程が起こりやすい構造から生じている。量子から成る人間の意識は、普段は脳細胞にある微小管に詰まっているが、心停止によりこれが壊れる事で意識が宇宙に拡散し、患者が蘇生した場合には再び脳の中に戻る。こうしたプロセスが臨死体験ではないかとハメロフはコメントしている。


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