(糸川教授)日本国債の現状について、小川君から説明してもらったが、それでは次に日本国債の信用度について考えみたい。今回は日本国債の信用度は何を元にしたら良いのかというのが、ひとつの課題となる。これについてはゼミ生の意見を聞いてみたい。各自、思うところの意見を出してほしい。
(ゼミ生、森岡)債券の信用を計るとすれば、やはり格付け会社による格付けではないでしょうか。国債についてもソブリン格付けというかたちで格付けされているので、それで信用度を見ることができると思います。
(ゼミ生、鮫島)格付け会社の格付けは、あくまで格付け会社の意見であり、絶対に正しいというわけではないと思います。実際にソブリン格付けについては、過去のデフォルトの事例なども限られているので、企業の格付けなどに比べて正確性に問題ありと思います。
(ゼミ生、岡野)それではCDSはどうでしょうか。債券がデフォルトに陥るリスクに備える保証料を示すCDSスプレッドも信用リスクを見るための参考になると思います。
(ゼミ生、宮間)そのCDSスプレッドなのですが、マスコミなどで良く取り上げられることも多く、私たちにも信用を見る上で参考にできるものと思うのですが、以前、債券市場の参加者に話を聞いたところ、CDS市場そのものの規模は日本の国債市場に比較して極端に小さく、参加者も極めて限定的であるので、あくまで参考程度にしかならないと言ってました。
(糸川教授)いくつか意見が出てきたが、ここでひとつ基本的な事を聞きたい。国債ではなく社債などは、信用度というか価値はどのような形で表現されているのか、説明できる者はいるかな。
(岡野)それは同じ残存期間の国債の利回りに上乗せされる金利で表されていると思います。
(糸川教授)その通り。債券の発行体などに対してどの程度信用できるかはその上乗せ金利、つまり利回りのスプレッドで表現される。これはあくまで国債がリスク・フリー資産であるということが前提となっているが。
(小川)国債がリスク・フリーの資産であるかどうかについては、米国債も格下げされるなどしたことで疑問も生じていますが、それを考えるとややっこしくなりそうなのですね。
(ゼミ生、沢)なるほど、教授のおっしゃりたいのは金利ですね。国債の利回りは市場で決定されるわけであり、そこには市場参加者の信用度も価格形成に影響しているはずなので、利回りが信用度を測る物差しになると思います。
(糸川)さすが沢君に読まれたようだな。格付けについてはかなり批判も出ているように、ことソブリン格付けについては、私もやや懐疑的だ。これについては時間があれば、のちほど皆で議論したい。またCDSも市場への影響度を考えれば、市場でつけられた利回りの方が信用度は高いと言える。このため、今回、国債の信用度については、利回りをベースにして考えてみたいが、どうだろう。
(小川)そうですね。他に適切なものがないとなれば、国債利回りの変化で信用度の変化を見るという前提で良いのではないでしょうか。その上で、国債の信用度の変化による影響を考えていきたいと思います。
(沢)国債の利回りと信用度の関係について見るとなれば、もう少し具体的な利回りの水準との関係を見る必要もあると思いますが。
(糸川)このあたりは市場関係者の話を聞く必要がありそうだな。どうやら、宮間君は知り合いに市場関係者がいるようなので、その人から話しを聞くなりしてもらうと良いかもしれない。また、他の人も特に日本国債について、この利回り水準が何かしらの目処になっているといった話を聞いてきてほしい。それを次回のゼミにて発表してほしい。いくつかの目安をつけて、それを基にそれぞれのケースで起こりうることを、皆で議論し合うということでどうだろう。
(小川)了解しました。それでは時間も来たので今日のところはここで終了します。
続く