はじめに
第2回目の練習が終わった後のミーティングで、ゴムヒモを使ってネットやコートを作りつつ練習していく話をしたところ、私の本気モードは選手に伝わったという印象を受けました。
しかし、私が本気モードを示す一方で、選手の中には、恵まれない環境下で練習して、果たして思っているような結果を出せるのだろうか・・・という不安を述べる者が現れました。
最もチーム立ち上げに力を注いでくれ、本気で全国大会に出場したいという思いを抱いている山形君です。
彼は
「磯野さん。練習方法は分かりました。でも、私疑問があるのです。」
と述べ、さらに
「他のチームがですね。きちっとした体育館で練習していてですよ。で、私たちが、言わば初めて全国を目指すという私たちがですよ、こんなゴムのコートやネットで練習していて、ほんとに全国出場なんてできるんでしょうか?その点が不安なんです。こんな状態で練習して強くなれるんだったら、きちっとした体育館で練習したチームはもっと強くなるでしょ。しかも、他のチームには、それぞれインターハイに出場した選手とか、実業団や大学性もいるわけですよね。私たちどうも不安ですね。私たちは、出遅れている分を取り戻して追いつかないといけないのです。」
気持ちはよく分かります。
全国大会のビデオは見てもらいましたが、全国大会を経験しているのは私だけです。
山形君が訴える不安はよく分かりました。
どう考えても、練習環境はよくないのです。
私は、ここで、逆境を跳ね返して結果を出そうとしている、私の考え方について皆に理解してもらうべく、その話をすることにいたしました。
チームの特徴と逆境を跳ね返す発想
「今、山形君が述べた不安についてだけど、もっともな意見だと思います。我チームは出遅れているし、練習場所にも恵まれていない。練習環境に恵まれているチームのほうが強くなるはずだということですね。しかし、それは我チームの中で、練習場所に恵まれていればもっと強くなるはずだという考え方はできる訳だけれども、必ずしも他のチームと比べて、他のチームのほうが環境に恵まれているから、そちらが強くなるっていうことにはならないと思っているのです。
環境に恵まれていてもですね。ノホホンとした練習していたら、それなりの効果しか出ません。私はこのチームに特別な想いというか、期待を抱いているのです。それは、経験則上の勘と言いますか、そういうレベルの話ですけど、このチームには可能性を感じているのです。
漠然とそれを伝えても、皆さん納得しないでしょうから、ちょっと具体的な話をしますが、バレーボールの技術・戦術的な話をしますとですね。
まず、今回はバレーボール経験者が8人も集まる可能性があるということです。9人制の経験者も私と小川係長と末松係長の3人いますし、返事待ちですが、矢野課長の奥さんも来てくれる可能性があります。
しかも、小川係長は指導もできます。また、その小川係長の話によると、アイスホッケーの末松係長も元はバレーボール経験者で9人制も経験し、かなりのレベルにあると言います。矢野課長の奥さんも噂ではママさんの全国出場を目指すチームに所属しているということです。
これは、そのプレーに期待できるばかりか、若手の指導を分担することもできるし、戦術面でも色々な観点から検討できることを意味します。
攻撃組立ては私が行い、レシーブの戦術に関しては末松係長に、ブロックの戦術に関しては小川係長に任せるという具合に、コーチを置く形で指導を分担することができると考えます。これによって、練習効率はかなり上がることになります。常にチームの戦術とみ合わせながら、個人の技術をアップしていくことが可能なんです。
また、左利きが多いというのも大きな特徴です。小川係長、山形君、新人の村本。この3人をどう使うかで結構面白いバレーができるのは間違いありません。バレーボールは「逆、逆」を突いて行くことでラリーをものにできるものです。
Aと見せて時間差のセミ、レフトに打たせると見せてライトに打たせる。右に打つと見せて左に打つ。こんな感じで、だから、体も逆、逆と鍛えて行きます。
後ろ向きに走る、逆立ちする、バック宙をする、背筋を鍛える、左手で箸を使うなど、いろいろなところで通常の行動と逆パターンを入れるのです。
だから、左利きというのは、その時点で大きなメリットを感じているのです。しかも3人です。
次にセンター攻撃の2名、青本と倉本。この二人はかなりの経験者ですので、ブロックが1枚になれば問題なくスパイクを決めるし、打ち方を10種類くらい持たせるようこれから練習させていきます。問題は、体力。5試合もつかどうかですから、この二人には徹底して持久力をつけてもらうつもりです。走り込みですね。
新人のメンバーは、どうなるかこれからですが、やる気満々で練習に来てくれているし、村本と足立は2回の練習で一応スパイクが打てるようになっています。彼らの伸び代はかなり大きいので、総力戦で戦うということにならざるを得ない全国大会では、ベテラン選手の体力温存のために役だってくれると思うのです。
問題は、チームを立ち上げたばかりで、練習環境に恵まれていないというところにあります。しかしですね、この問題も私はなんとかなると思っているし、逆に選手の本気モードを知る上では返っていいんじゃないかとおもうのです。
つまりですね。体育館が見つからないと言いつつも、2つは見つけてきました。もちろん場所が遠かったり、体育館が狭かったり、用具がなかったり、といった問題はあります。しかし、これを克服してでもやるんだという選手ばかりですから、これは、チームのメンバーの本気モードは高いと言えるわけなんです。
もちろん、それと平行してチャンスがあれば、もっと環境のいい練習場所を探すこともしなければなりません。
練習会場に恵まれないことは、チームのメンバーの絆を強くするという点では有効に機能すると思いますし、そもそも、こういう状況でも練習しようということで、一生懸命意見を交わす皆の姿勢こそが、今後のチームの進む方向を暗示しているように思います。
自分は、このチームは練習環境には恵まれてないけれども、選手の特質やプレーのレベル、ハートの熱さという点では、他のチームに比べて抜きん出ているという気がするのです。
そして、この逆境の中だからこそ、必ずや全国大会Aクラスへの出場を果たすという思いで、チームの絆を強くし、一丸となって練習することができるような気がするわけです。
他のチームと違う練習をすれば、必ず他のチームと違うバレーができ上がります。これまでの私たちの職場の大会では登場しなかった新しいバレーを全国大会で披露して、強豪チームにひと泡吹かせるというのを目指しましょう。
必ず、行けますから。大丈夫。皆で頑張れば、必ず行けます。」
っと、まあ、このように熱く語ったわけであります。
そして、それを果たすべく、週2回の練習のほかに、自主トレをするとか、今所属しているテニスやラグビー、サッカー、柔道等のクラブ活動にも積極的に参加して、体を鍛えておくこと等を推奨し、その日のミーティングを終わることとしました。
選手の反応
ミーティングが終わった時、鴨下が言いました。
「所長、体育館はもし見つかれば、土曜とか日曜とかの練習日になってもいいですか?」
「うん、うん。上等だよ。夜勤者にとっては土・日もあまり関係ないし、取れる日に体育館を取って、練習に参加できる人が参加すればいいんだよ。この際、なんでもありの感覚で頼むよ。どう考えたって、私の言うゴムネットやゴムヒモコートよりはいいでしょう。」
「分かりました」
鴨下が返事すると、山形君と小川係長ももう少し体育館を当たってみるという話をしてくれました。
解散し、部屋を出て行くとき、当初バレー部への参加を渋っていた青本が、席を立ちながら
「よっしゃ!めっちゃ、やる気出てきた~」
と皆に聞こえるように言いました。
バレーボール初体験の新人4人も、眉を吊り上げ、すっかり戦闘モードの表情となり、それぞれ自主トレ用として渡された980円のボールを1個ずつ大事そうに抱えて帰っていきました。
私は、チームがまとまり始め、心ひとつにして同じ方向を向き、少しずつ本気モードになっていく気配を感じ、非常に満足しました。
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宮崎県出身の転勤族です。好きな食べ物はもち米、お餅、炭水化物が採れますから試合の朝は必ず食べてます。鹿児島県、熊本県、沖縄県、高知県等を転々としてきました。お盆と正月くらいしか宮崎県に戻れなかったのですが、昨年宮崎県に戻って来たのを契機に、宮崎県をはじめ各地で見聞きしたバレーボールの戦術や練習方法等を紹介してみることにしました。
カラーシャツ(白シャツ、青シャツ、赤シャツ等色違いのシャツ)の棒人間の図面や動画で分かりやすく説明することにベストを尽くします。
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チームをまとめて、モチベーションを高めていくというのは大変なことですね。
練習環境というハンデを絆・チームワークでカバーされ、全国大会出場の切符を勝ち取られることを祈念いたしております。涼しい帯広が磯野さんたちのチームをお待ちしています^^
その帯広も暑いですが、ここ旭川も連日30度オーバーです。今日も31度…。松江の34.4度と比べるとまだまだ序の口ですが…。
ランタンはお陰様で元気です。家では朝からエアコンをガンガンで、毎日川に飛び込んで元気に遊んでいます。ありがとうございました。(*^_^*)
そうですか・・・やっぱり、クーラーガンガンなんですね。
元気にしているのを聞いて安心しました。
ず~っと、元気でいていただきたいものです。
帯広は行くとすれば10月中旬ですけど、ちょうどよい気候でしょうかね。楽しみにしているところです。