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本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 北村薫「1950年のバックトス」

2021年08月24日 | ◇読んだ本の感想。
ほほう。こういう話か。

短編集。1冊で23編。1編の長さに長短がある。
全体的にはちょっと物足りなく読んだ。
日常生活のスケッチをさらっと書いている――あえていうなら、
書いているに過ぎないものが多かったから。
北村薫には求めるものが多いので、もっとイマジネーションを感じる
作品を読みたい。

本のタイトルとなった短編「1950年のバックトス」はどんな話なのかと思っていた。
70年前の(出版は2007年)バックトス。
バックトスというからには野球の話だろうと思うけれども。

そしたら、女子プロ野球の話でした。
50年ぶりに巡り合う、セカンドとショートの選手の話。
短編なのでそこまでいろいろ深く描かれるわけではないが。

後半、語り手が本人になってからはいい話なんだが、
それまでの前半、語り手が嫁の部分は違和感がつきまとった。
70歳を越えているおばあちゃん。「おばあちゃんと野球というのは、
北極とフラダンスくらいにむすびつきにくい」と書いてある。

そこまでだろうか。その意識にずれを感じて、読んでいて居心地が悪い。
今から15年前ということを考えても、
そして書いている作者が当時58歳ということを考えても、
そこまで高齢女性と野球が乖離しているとは思えない。

ましてや孫が少年野球を始めて、その練習試合につき合わせるのに
気兼ねするとかいうのは。
たとえ野球に欠片も興味がなくても、おゆうぎ会と同じようになんかやってる
孫の姿を見るのは楽しいものだろうに。

まあそういう違和感を置いておいて、話としては良かったんだけどね。
でも前半と後半視点人物を変えて語る話でもなかったかなーと思う。
おばあちゃんとプロ野球の結びつきの意外性を盛り上げたかったんだろうが。


「ほたてステーキと鰻」は、「ひとがた流し」の原型ですね。
どっちが先かはわからないけれども。
「ひとがた流し」→「ほたてステーキと鰻」という可能性は低いんじゃないかな。
それとも牧子側から見た関係性を書き残しておきたかったか。

「ひとがた流し」は切なくて、泣いて読んだけれども、
好きかと言われるとちょっと迷う。
やっぱり北村薫は最初の頃なんだよなー。わたしが好きなのは。
若者の心の繊細な切なさが好きだった。



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