goo blog サービス終了のお知らせ 

プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◆ カメイ美術館 花の絵画展

2023年05月14日 | ◆美しいもの。


10年ぶりくらいにカメイ美術館に行ってきました。人生2度目。
場所は行きやすいんですけどね。でも車で行くところじゃないと、結局足が遠のく。
まあ車で行くところも、行かないところは行かないんですけど。
特別展が「花の絵画展」というのに惹かれて行って来た。
まあそれほど規模は大きくないだろうとは思ったけど。

カメイ美術館は常設展が蝶の標本メインで、こけしがサブというカメイの創業者の
趣味全開の美術館。それに小さい特別展を合わせて展示していることが多いよう。

まあ「花の特別展」は想像通りの規模感。大作はないね。
スペース的にも大きめの展示室1室だけだから、ん-、何枚くらいかなあ、
50枚くらいあったかなあ。
展示作家が32人。だいたい1人1枚が基本で、何人かが3枚くらいあった気がするから、
40枚くらいなのかな。

小さい美術館の特別展でよくあることなんだけど、作品リストを作ってくれないのよね。
エクセルでいいから、作家と作品名と制作年くらい表にしてくれるといいんだけどね。

でも全体的にみんな好きな方の絵だったので眺めて楽しかった。

三岸節子の「花(ヴェロンにて)」はこってり厚塗りの黄色い花。好き。
千住博の夜の桜の絵。サイズ的にも売り絵だろうが、細かく丁寧に描いてて、
どんな筆を使ったらこういう表現が出来るんだろうなあ。買って飾りたいような絵。
ヴラマンクが3枚あって、かなり普通の花。3枚とも良かったな。赤の色が印象的。
李エン(エンの字は火が3つ)という人のハスの花の絵2枚と、
にじみを利用した木の絵が良かった。

いいですね。花の絵はね。難しいこと考えなくてもきれいだしね。

最近実作を始めたので(というほどのことはない。すぐに飽きると思う。
なにせわたしは驚くべき画伯だから)絵の見方ががらりと変わった。
どんな描き方をしているか、どんな色を使っているか、それを参考に出来るか、
という観点から見るようになって、なんか邪道な気がする。
前は絵の全体と向き合えたのに。部分をしか見れなくなっている。


あ、そうそう。忘れる所だったが、この美術館のメインは何といっても蝶の標本。
何しろ数がすごいからね!標本箱がいくつあるか、概算で数えてみようとして
それがめんどくさくなるほどたくさんあるからね!

パンフレットには亀井文蔵のコレクションの中から選んだ4000種・14000頭
(蝶は「頭」で数えるんですよ。知ってましたか?わたしは忘れていつも
「匹」といってしまうが)を展示していると書いてある。

40センチ内外の長方形の標本箱が、およそ400……くらいあるんじゃないですかねえ。
1箱5秒で見るとしても、30分かかる計算になります。

蝶に興味がある人は少ないと思う――特に標本には。
しかしそういう人が行っても楽しめます。
わたしもね。前に行った時には「蝶の標本なんか見てもしょうがないよなあ……」と
思っていたの。そりゃきれいだろうけど。でもいくら見ても蝶は単に蝶でしょ?

でも思っていたのと違った。わたしは蝶というより、手仕事の――自然の手仕事の
美ととらえた。丹念に作られた職人の手仕事の精緻さがある。
神の手がちまちまと作る自然の美。これをたくさん、手軽に一ヶ所で眺められる。

不思議に飽きませんよ。最終場所で分類されているとはいえ、
蝶はけっこうあちこちで似たような模様が発達するらしく、
たくさん見てもそこまでバリエーションが豊かではない。
それでも見てて飽きない。ここは不思議なところ。見て欲しい。

10年前に行った時はこんな感じ。https://blog.goo.ne.jp/uraraka-umeko/e/1325f56adf3d290217cfa2dd4020c108


蝶にしてもこけしにしても、自分の趣味を公開する場所を作れたんだから
亀井文蔵という人は幸せな人だね。
地元じゃない人のために付言しておくと、この人は地元の有力企業の創業者で、
まあ社長さんが作った道楽の美術館。
でもそれをわたしたちにも楽しめるようにしてくれたことにはやはり感謝したい。

――というわけで、島川美術館ももう少し力を入れて公開してくれないかね。
コロナ禍下の閉館は仕方ないと思うけど、この春のタイミングで今年度の営業は
見送るなんて言われると、結局公開はどうでも良くて、単に節税対策でしか
ないんじゃないかとがっかりする。

まあ絵画蒐集は趣味としても、その公開にはお金がかかり、会社の利益の話なので
クレクレもずうずうしい話かもしれないが、せっかく街なかに立派な美術館も
作ったんじゃないですか。
仙台市博物館も宮城県美術館も閉館するタイミングで島川美術館あたりに
がんばってもらわないと困る。
がんばって営業してください。いい絵がたくさんあるんだから。見たいんです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◆ 美をつくし 大阪市立美術館コレクション

2023年05月05日 | ◆美しいもの。
これは初見で読める人と読めない人がいると思うが、「みをつくし」です。
みおつくし=本来は「澪標」で、海の浅瀬に設置された目印。水路標識。多くの場合杭。
大阪にだけあるわけではないけど、主に難波の縁語で、
昔の和歌には「身を尽くし」との掛詞で多用される。
大阪市立美術館のエキシビ名としてかなりこじゃれていると感じる。


わびぬれば今はた同じ 難波なるみをつくしても逢わむとぞ思ふ 

                          元良親王・百人一首

――と、学を披露したのはいいのだが、原義は「澪つ串」であることは初耳だった。
串だったのか。ううむ。ちなみに「澪」は浅瀬のなかで船の航行が可能な
比較的深い部分のこと。


県美のコーヒーショップがある方、本館と佐藤忠良館を結ぶ通路に、
各所の美術館の特別展ポスターが貼ってあるコーナーがある。
近くの場合もあるけど、九州など遠方の美術館のポスターもあり、
実用の情報かというとそうでもない。見て、あ、このエキシビいいなと思っても
遠くの美術館まで出かけていけるかというとそうはいかないですからね。

今回のポスターも、大阪市立美術館かあ……遠いなあ……と思いながら
通り過ぎようとしたら、福島県立美術館と書いてあることに気づいた。
おや。福島県立美術館でやるの?行けるじゃん。
とはいえ、今までわざわざ行ったことは1度しかないのだが(多分ワイエス展)、
ちょうど福島へ行きたいと思っていたこともあり、出かけてみることにした。


実は今回、写真撮影可だったんですよねー。
そしてけっこういい作品が多かったから、半分以上が撮りたい作品になってしまって。
そうすると絵を見るのではなく、絵を撮る方に気持ちがいって集中出来ない。
第一展示室の半分くらいでそれに気づいて、まず良さそうなのをある程度まとめて
撮ってから最初に戻って見るようにした。


日本画のいいのが見られるのは久しぶり。
約1年半前の「宮内庁三の丸尚蔵館所蔵 皇室の名品展 皇室の美-東北ゆかりの品々」
以来だ。これはランス美術館展の併設のエキシビだったが、ランス美術館展より
はるかに見応えがあった。


みんな良かったんだよなー。
撮った作品が18。いずれも佳品でいくつかに絞り切れない。
18も並べるのは大変だが、……並べてみようか。

佐伯祐三「教会」――ブラマンクから怒られて凹んでいた時期の作らしい。
村山槐多「自画像」――結核性肺炎と診断された後の自画像。「血の色」と名付けた
      ガランス色の多用。22歳で死んだのか……。名前はよく聞く作家だったが。
今村紫紅「業平東下り」――馬の顔が気に入った。少し情けないの。

橋本関雪「唐犬」――これは有名ですね。きれいな犬。頭を下げた犬が気になる。
児玉希望「枯野」――わさわさと描き込んでいるがぜんぜんうるさくない。秋の草花が美しい。
小野竹喬「秋陽(しゅうよう)」――グラデーションの美。真似したくなる。

上村松園「晩秋」――鏑木清方の「築地明石町」を思い出した。
          描かれた行為そのものからして日本の美だなあ。
北野恒富「星」――今一つ顔が上手くない画家に見えたが、雰囲気はいい。
島成園「伽羅の薫」――怪しくていいねえ。赤と白。孔雀。

堂本印象「如意輪観音」――こってりとした印象のあった堂本印象。ピンク色が美しい。
狩野派「四季花鳥図屏風」――かなり出来のいい花鳥図。こういうのをはべらかしたい。
関蓑洲「象図屏風」――象はほとんど見てない。表装の更紗模様が気に入った。

原在中「百鬼夜行図」――すっごくマンガ。鳥獣戯画を超えて面白い。
「十大弟子像頭部」――奈良時代。これ、佐藤忠良展とかにあっても全然違和感ないな。
「銅製湯瓶(とうびょう)」――鎌倉時代の水差し。工業製品のような安定の線。

「銀鍍金透彫 宝相華文経箱」――すっごい透かし彫り。南北朝時代。
それから根付のいいヤツいくつか。

……だが写真を撮って来るとそれで安心してしまって、全然作品に対する言葉が浮かばない。
やはり写真なしでじっくりと見た方が正しいんだろうな。
まあこの時は時間もなかったし。

混雑を避けようとして15時を狙って行って、遅れて15時半に着いたらほんと人が少なくて
ゆっくりと見られた。が、常設展も見なきゃいけないから、エキシビは1時間強。
思ったよりも作品数も多かったので、けっこう駆け足。
常設展は15分くらいで文字通り駆け足。ほとんど見たとは言えない。
14時半頃着ければベストだったかな。


まあとにかく粒ぞろいで良かった。大作がどーん!とまでではなかったけど、
佳品がたくさん来ていた。いいと思わない作品がほとんどなかった。
いいものを見せてもらった。大阪からわざわざ来てくれてありがとう。


福島県美術館も改修で長期休業に入るとどこかで見たような気がしたが、
その情報が見当たらない……。何も宮城県美術館、仙台市立博物館が長期休業中の
この時期に合わせることもなかろうと思ったが、自治体が違うんだから仕方ない。
仙台市と宮城県でさえ合わせられないんだから。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◆ フェルメールと17世紀オランダ絵画展

2022年11月20日 | ◆美しいもの。
うーん。期待値よりかなり下だったなあ。

とにかく初めのパートに迫力がないよね。
とにかくね。こういうありがちな、曇り空の森みたいなのばっかり見てても
愉しくないんじゃ!この類は美術館の保管庫の奥深くにしまい込んで
外に出さないでいただきたい!

……などと乱暴なことを言ってますが、この類は全欧的に数がありすぎる。
せっかくお高い運賃と手間と保険料をかけて貸し出してくれるなら、
もう少し点数を少なくしてもいいから、似たようなのばっかりは止めて欲しい。
まあこういうの好きな人もいるかもしれないけど。

ありがちといえばありがちなんだよねー。
これは数合わせのために相手方から押し付けられたバーターなのではないかと思う。
根拠は全くないけれども。


正直、鑑賞時間は30分でいいかなという感じだった。
だが1000円以上も出して30分しか見ないというのももったいないという
貧乏性が発動して、ちょっと良かった絵を何回も見た。
そしたら1時間を大幅に越した。この時間感覚は謎だった。

とにかく見た甲斐があったのは2枚のみ!



ミヒール・ファン・ミーレフェルト「女の肖像」
自慢じゃないけど知らない画家だ。だがとてもきれいな肖像画。
三十前後の貴族の女。円形の大仰なレース襟とオランダ貴族の制服ともいうべき黒い服。
そのレースと布地の模様が達者。
いいと思うのはその眼差し。聡明そうな、まっすぐに見つめる瞳に惚れる。
目の清々しさ。

フェルメール「窓辺で手紙を読む女」
窓辺の柔らかい光を浴びる女をフェルメールは数多く描いている。
その中で、中の上くらいの作品だろうか。
とにかくわたしが惜しいと思ったのは、服のデザインですね。
この袖の黒部分が白いデザインだったら、その拡散された光が、
白を柔らかく輝かせたろうに。

フェルメールは見たままをしか描けない画家だったのだと思う。
絵の効果を計算して服のデザインを適宜変える、という技は使えなかっただろう。
そうでなければ何度も何度も同じ服を描くとは思わない。例の白テンのガウン。

この絵の最大の見どころは赤いベッドカバー。いかにもぽってりと厚く温かそうで、
質感が見事に出ている。その上にこぼれている果実が、なぜここにあるかは不明だが。
手紙の緊急性(心理的な)を表しているのか?

ガラスへの顏の映り込みは本物を見たからこそ目に留まった部分かと思う。
画集では気づけなかっただろう。
なお、フェルメールのこの作品をかなりの精度で模写している
ベントフェルトなる人の作品もあって、こちらにもちゃんと映り込みは
再現されていました。


あとは……ちょっと目に留まったのは、
レオナールト・ブラーメル「神殿で祈るソロモン王」
(切り絵的に盛り上がったマチエール)
アーレント・デ・ヘルデル「槍を持つ男」
(顔部分はぼやけているのに、槍の装飾部分のみ精密。
ピントが合っていると感じたので、カメラ・オブスクラを利用している?と思った)
レンブラントの「若きサスキアの肖像」も来てたけど、
これはそんなんでもないレンブラント。魔女的な笑いを浮かべる。


まあとにかくミーレフェルトとフェルメールのみでした。
でもこの2枚を見ることが出来たのは嬉しいので、行って良かった。
混んでましたね。近年になく。
もう少し空いているところで見られたらもう少し印象が良かったかも。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◆ ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ

2021年10月09日 | ◆美しいもの。
宮城県美術館で11月7日まで開催中。

……うーん。期待値はそれほど高くはなかった。まあ予想通りだったとは思う。
しかしせっかくはるばるフランスから借りて来るのなら、
もう少しラインナップを工夫した方がいいんじゃないかね?

コローが16枚来ている。これがメイン。
まあコローも有名といえる画家だし、それが16枚来てるのならそれなりに……
とは思ったのだが、あんなに似たような絵ばっかり持ってきても仕方なかろう。

フォンテーヌブローの森。
木と野原と時々川、という描いてあるものは変わらないし、
光はほぼ曇りの夕方の薄暗い光だし、色調が変わらない。
一枚一枚は小品ながら佳品やそれに準ずるものだが、
それを16枚並べられてもねえ……

全部の絵が、まあこれなら壁に飾れるかなと思う出来なのだが、
壁に飾れる程度ということは一枚で鑑賞するインパクトはないわけです。
これで展示会は退屈。


ブーダンは多少良かった。7枚。
しかし個別認識が出来るほどの一枚はなく。

ルノワールやモネも1枚2枚来てるんだけど、当然ザ・モネというクラスではなく。
ピサロが若干ピサロだった以外は、モネを見た!という気もしない。

会場を通り過ぎるだけでいいかなというレベルだった。30分。
まあ元を取ろうという貧乏性な意識も働いて、それでも1時間弱かな。

そんななかで、スタニスラス・レピーヌという画家の2枚は良かった。
くれるというならこの人の絵を貰って帰る。多分くれるとはいわないだろうけど。
色合いが地味な来展絵画の中で、珍しく光あふれる絵だったということが
目を惹いたのかもしれないが、絵に優しみがあるんだよなー。
わたしはモネとピサロとシスレーを兄弟として扱っているが(←謎)、
この人は彼らの大叔父様という感じだ。覚えておきたい。

そしてレオ・ドルーアンという人のエッチング。
版画はそんなに興味がないのだが、この人は白黒で、光を感じる絵だった。
タイトルは「ジロンド、ラカノー沼」。
画家の版画はラフスケッチみたいな作品も多い気がするが、丁寧だった。


――が、ランス美術館は前座だ!


※※※※※※※※※※※※


今回のエキシビはむしろ、同時開催の

◆ 宮内庁三の丸尚蔵館所蔵 皇室の名品展 皇室の美-東北ゆかりの品々

こっちの方が見応えがあるのではないか。
前売チケットを買った時はこっちに期待をしていたはずだが、忘れていた。

点数はそこまで来ていないんだけどね。
いつも常設展をしている部屋を2つ分使ったくらい。
でもいいものを数点――10点くらい見られたので満足感が高かった。

なによりもまず、最初に渡されたパンフレットに大変お得な気分になった。

カタログというのは大げさだが、フルカラー24ページは見たことのない充実ぶり。
全点――むしろ入れ替えする絵も載っているから、実際見られる絵以上――掲載。
うれしいわあ~。きれいですもん。



〇皇室ボンボニエール

ちらっとしか見たことがなかったから、10個まとめて見られたのは重畳。
前から見たいと思っていた。
全体的に思ったよりも地味。もっと華やかなものを想像していた。
おおむね銀細工、そこに菊の御紋を金で象嵌するというデザインが多かった。

10個のうち、貝桶型が可愛かったな。鉾型はボンボニエールという名称からは
かけ離れている気が……
「砂糖菓子入れ」というイメージからくるふわふわしたものじゃなくて、
もっとごつい。むしろ文房具の何かみたいな感じ。


〇円山応挙「群獣図屏風」

かなり大きな屏風。最初から宮中からの依頼で描いたそうだから、力が入ったろう。
右隻の、こっちを見ている犬の目が可愛くてねえ。優しいの。

カタログでは気にならないんだけど、実際に見ると松や杉を描きこまない方が
良かったんじゃないかなと感じた。
木が描いてあると「木」と「動物」という風に捉えてしまって、
動物が塊になってしまう。
木がなければ動物をもっと個々の意識をもって見られたんじゃないかな。

しかしよく見ると木にも栗鼠とか猿とか描いてあって、まあこれはしょうがないのか。
応挙は上手いですよね。動物も。


〇瀧 和亭(たき かてい)「花鳥之図」

かなり大きい三幅一組の掛け軸。掛け軸としては最大サイズかも。
花は良かった。鳥がサイズに対してわずかに迫力に欠けるかと感じた。
でも良かったですよ。ザ・花鳥画ですな。


〇土田麦僊「罌粟」

これも大きめの軸。日本画だけど、リトグラフのようなグラデーションの色合い。
茎と葉の線が細いのは狙っているのだろうけど、花だけが浮き上がることに
なるので、それを画家はどう考えているのだろうかと思った。
すごくきれいな絵。


〇前田青邨「唐獅子」

なんかスゴイ。という第一印象。
こんなデカイ屏風でこんなマンガ的な絵柄というのは珍しい。
前田青邨ってこんな画風の画家でしたっけ?

唐獅子、ユーモラスで愛らしいですね。
線が太いんだけど、線自体に濃淡をつけてあまり印象が強くなりすぎないように
工夫をしている。


〇東山魁夷「萬緑新」

ザ・東山魁夷。白馬は出て来ないけれども。
昭和天皇夫妻が新婚時代に訪れた猪苗代湖の風景だそうだ。
心が落ち着く絵。


他に洋画とか小彫刻なんかもあったけど、わたしの嗜好が日本画なので
日本画ばっかり並びました。久々にいい日本画が見られて幸せ。
めでたし。


パンフレットに載っている絵で、

平福百穂「玉柏」
寺崎廣業「秋景山水」
西村五雲「秋茄子」

も見たかったなあ。入れ替えするんだろう。
しかしこの3枚のために1500円出してもう1回行く気にはならない。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◆ 足立美術館展 横山大観、竹内栖鳳、華やかなる名品たち

2021年05月23日 | ◆美しいもの。
宮城県美術館にて、6月6日まで開催中。

数年前にようやく島根へ、足立美術館へ行ってきた。
その時は庭を見るのに集中してしまったので、
日本画をもっとちゃんと見れば良かったなという思いがあった。
見ようとしたけど体力が追い付かなかったんですよね。
(でも人が見過ごしがちな陶器はがんばって見てきたよ)

今回、足立美術館の日本画が来るというので、その後悔を取り戻せるかと
楽しみにしていた。


……が、ちょっと期待値が高すぎたかもね。
これは一線級とはいえない。二線級に、ちょこちょこ1.2線級、一級品がいくつか。
そんな感じでしょうか。

第一室が横山大観だったんだけど、この大観の質がいまいちでしたねえ……。
第一室が良くないとがっかりしてしまう。ここは配置が間違ったのではないか、
宮城県美術館。

大観は手垢がついてヤになってしまうほどの大家ですが、いくら大家でも
たいしたことのない作品はある。
特に大観はたくさん描いて、玉石混交な画家。それの石の方が来ている。

足立美術館にこの程度の作品しかないとは思えないから、
(さすがに現地でもっといいものを見たはず)
本宅を留守にするわけにはいかなかったということでしょうね。

うーん、今、作品リストを見てみても、大観の作品で思い出せるのは半分くらい。
かろうじて「十六羅漢」の、羅漢の顔を至近距離で見るとちょっと面白い。その程度。
あと、下村観山と描いたペアの掛け軸「巖上之両雄」(虎と鷹)の、
観山の方の岩の描き方が面白かったくらい……


来ている名前はスゴイんですよ。
菱田春草、川合玉堂、鏑木清方(これは佳品)、小林古径、前田青邨、
上村松園(これも佳品)、土田麦僊。
まあでもこの辺はおおむね二線級のものが来ていた。

それでもわたしが面白かったもの、好きだったものは、ないわけでもなくて。
とりあえず、見られて良かった!と思うA級は、

川端龍子「春雪譜」
大きくはない二曲一双の屏風で、デザインがなかなかにモダン。
全体の7割が雪の白で、その他は左上に雪解けから覗く土。
下部4分の1に雪が溶けた茶色い土の穴が5つ丸く描いてあって、そこから
ふきのとう・わらび・よもぎ・たんぽぽ……あ、5つめは植物じゃなくて鳥でした。
この5つが覗いている。土の部分が若干、扇面に見えて面白みがある。

植物はもう少し細かくというか繊細に描いた方が良かったように思えるけど。
ふきのとうだけは繊細だった。が、その他はぽてっとした描き方。
こういう描き方もありだけど、ふきのとうくらいに繊細な方が良かった。


安田靭彦「王昭君」
序盤で唯一、一線級だと思ったのがこれ。きちんと描かれている。
オレンジ色の頭巾の形が謎だったが。これはどういう頭巾かと思った。
松葉や植物がささってたしね。画家が想像で描いた頭巾のように思った。
考証はしてないだろうと予想。


竹内栖鳳「潮沙和暖」
小品ながら妙に気に入った一枚。さらっと描いたように見えるけど、
左上の小舟と漁師は極まってるし、海の色がきれいだしね。
右下の松をもう少し細かく描いた方が良かった気が……


山元春挙「瑞祥」
大きめの二曲一双の屏風。中国の架空の風景。画題は蓬莱山。
見ていて清々する。
わりとゴツゴツした風景だが、細かさとゴツゴツさがちょうどいい気がする。
何を表しているのか、何を表そうとしているのか、青い粒々が全面に散りばめられて
きれい。

すごく近づくと山中に豆粒のように描かれた人々に気づけて楽しい。
松の細かく描かれた姿が美しい。中景のかすんだ岩山も。

初耳の人だが、この作品が今回一番良かったかなー。
竹内栖鳳と並ぶ京都画壇の重鎮だったそうだ……。知らんなー。聞いたことなかった。
この人はきっと好きだわ。覚えておきたい。


他にちょっといいなと思ったのは、
川合玉堂「鵜養」……夜の雰囲気は出てないが、かがり火の煙の表現がすごい。
小茂田青樹「朝露」……朝顔とほおずき。水彩っぽい。いい意味で子どもっぽい。
前田青邨「山路之秋」……桜が可愛い。と思ったが、タイトルからして紅葉ですか?
竹内栖鳳「獅子」……代表作の「獅子」の掛け軸版。獅子のアップ。
          こういうアップで描いたのは珍しいのではないか。
伊藤小坡「一聲」……タイトルはホトトギスから。これも鼻先30センチで見て面白い絵。
橋本関雪「唐犬図」……これは代表作といってもいい出来。ボルゾイ。
           すごくきれいな絵なんだけど、出会いとまでは思えなかった。


でもまあ、久しぶりだったのでそれなりに熱心に見られたことは良かった。
会場に一歩足を踏み入れた時には「うぎゃあっ」と思い、
15分で見終わってしまうのではないかと恐れたが。

次は9月の「ランス美術館展」ですね。
早いとこ前売りを買っとかないと。そしてその前売りを無駄にしないように
ちゃんと行かないと。
中宮寺展、前売り無駄にしてしまったからなあ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◆ 特別展「伝わるかたち/伝えるわざ-伝達と変容の日本建築」

2020年11月12日 | ◆美しいもの。
東北歴史博物館で11月23日まで開催中。

テレビでたまたま見て行ってみた。宮城県美術館と仙台市博物館のエキシビは
見逃さないようちょこちょこチェックしているけど、東北歴史博物館は見逃しがち。
実はここのエキシビは当たり外れがある。
難しいのかもね。宮城県美術館と仙台市博物館と重ならないような兼ね合いで、
しかも面白いものを選ぶのは。

が、今回のこれは面白かった。

特別展タイトルが地味であまり伝わらないが、日本建築の模型と図面がメイン。
しかも模型も建物全体の模型ばかりではなく、組物部分だけといったものも
多かったから、万人向けではないかもね。建築にある程度興味がないと。

とっつきやすいところでは銀閣寺東求堂、法隆寺五重塔、薬師寺の塔などは
丸々の模型。ミニチュアみたいで面白い。

模型自体の質は高くて楽しめた。出来ればもう少し説明を一般向けに
して欲しかったが……それなりの解説はあるんだけど、最低限なので
もっと饒舌な説明が欲しかった。

あらためて見ると建築ってめんどくさいですねえ。
あんなに複雑な組物をなぜ考えたのかと訊きたい。
ダメならダメで仕方ないじゃないですか。柱、梁、壁、屋根で建てられる範囲の
ものを建てていれば。

が、人は工夫して工夫して、あれこれ可能性を広げていくもんですね。
組物なんか、手を動かさなければ絶対に出て来ない造型だと感じる。
これどうやって組んだんだろう?どういう順番で組んだんだろう?
柱と梁の関係はどうなってるんだろう。ここの四方に伸びている梁は
どう繋がっているんだろう……と疑問だらけ。ある種のパズルですね。
力の伝わり方や、デザインの考え方を想像しながら見ているのも楽しかった。

東大寺の鐘楼の模型を見て思ったが、あの大鐘は一体どうやって吊り下げて
いるんでしょうね?巨大丸太に吊り下げているのはわかるが、
鐘の金具が反対側に突き抜けている気がするんだよなあ。不思議。

結局2時間ほど見ました。このくらい見られるのは気力体力のタイミングが合った
時くらいだからラッキーだった。しかし最後は眠かった。会場暗いしね。

地味なので、建築好きの人向け。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◆ 東日本大震災復興祈念 東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展

2020年10月22日 | ◆美しいもの。
宮城県美術館にて特別展。

入ってすぐ、今回のメイン展示である「濤声」。
これは16面の襖。唐招提寺の東山魁夷の襖絵となれば、これ。

急に暗くなる展示照明のせいか、ふわふわした気分のまま「濤声」の前に立つ。
――色合いが不思議。実際に目の前にある物体の気がしない。
これはプロジェクション・マッピング?映像で構成されているような色合い。

どうしても疑いが抜けなくて、プロジェクション・マッピングなのではないかと
2回も確認したもの。しかしキャプションには紙本彩色と書いてある。
本当だろうか。

前に東北歴史博物館で「最先端技術でよみがえるシルクロード」
でやっていた変幻光でも当てているんじゃないかと思った。

だって水面が揺らめいて見えるんだもの。

緑色で描かれた海。思っていたよりもずっと靄のかかった色合い。
ストレートな気持ちのいい澄んだ色ではなく、二段階か三段階くすんだ色。
こんな色だとは思っていなかった。単に東山魁夷得意の、あの青緑かと。

この襖絵を見て、日々を過ごす人もいる。
まあそれはお坊さんとかの数が限られた人だけれども。

この展示、やり方も良かった。ちゃんと襖絵を襖として使った状態で展示してくれてる。
けっこういい柱を使っているし、釘隠しもちゃんとついている。襖の手前は畳。
環境展示で気分が三段階くらい上がりますね。


「濤声」を存分に堪能したところで裏に回ると、
「桂林月宵」の半分と「揚州薫風」の半分の並び。これらは水墨画。

「揚州薫風」は中国の広い池の風景。柳が風にたなびく。
遠くに楼閣を備えた三間の橋が見える。
柳が一様で少し面白みがないかと思ったが、橋と柳の遠近感は良かった。
水辺の風が吹く。

「山雲」。
これも良かった。
上段の間の床の間と違い棚と右側の襖と最後の襖。4つとも別な画題で密度が濃い。
一番素晴らしいのは床の間の部分で、尾瀬の早朝のもやのシーンを思い出させる。
だがここに花は飾れなかろう。絵を邪魔する。花を殺す。
山桜の一枝でもあれば、あるいは。

残念ながら全てを環境展示というわけには行かなかった。
「濤声」は出来てたし、「山雲」もかろうじて達成だろうが、
「桂林月宵」「黄山暁雲」は8面の襖なのにもかかわらず、4面4面に分けて、
その上全然別のところに展示しちゃったので良さが半減。いや、4分の3減。
これは残念だった。


襖絵の他に来ていたのは、基本的にその襖絵関連の下絵。
実物の5分の1の割り出し図なるものがあって、タテヨコナナメに基準線を引いて、
そこに下図を基にした絵を描きこんでいるの。それが思いのほか細かく……すごい。

岩や木の配置ならともかく、水面の模様などはもう少しフィーリングで
描いているのかと思っていたので、新知識が得られて重畳。

下絵の色はストレートだったね。東山魁夷らしい色使い。
それが本体はあんなにくすませる。どんな心境がそこにはあったんだろう。


いいもんを見ました。一度は見たいと思っていたものなので、見せてくれて感謝。
通常の展示期間だと年に数回しか開けないそうだし、そんな時には混んで混んで
とても行く気にはならないだろうから、ありがたい機会だった。

欲をいえばやっぱりもう少し環境展示に近づけて欲しいことですね。
繰り返すが「桂林月宵」「黄山暁雲」はほんと残念。
「山雲」も、その場で見ればまた相当に感じが違うもんなんだろうと思った。

透明人間になれたら、夜な夜な美術館に忍び込んで展示物を一人でゆっくり見て回る。
(盗難防止システムにひっかからないと仮定した上で。)
……しかし照明がないと見えないですね。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◆ 完結記念 ハイキュー!!原画展

2020年10月10日 | ◆美しいもの。
風の噂で聞くと、マンガは本誌での連載が終了したらしい。
完結記念の原画展。ひょんなことから行けることになって大変嬉しかった。

でも、マンガに詳しくないわたしは、そこまで期待はしてなかった。
原画っていっても……まあいうたら単に原稿でしょ?
そこに生身の動きは感じられるかもしれないけど、物として感動するかどうか。

が、実際に見たところ。
物として、大変良かった。原画というものの良さを知った。


わたしはマンガは少ししか読んでいない。多分10巻くらいまで。
そして読んだのはスマホでダウンロードしてだから、とっても小さい画面。
それでも充分感動したんだけどね。一話毎に泣いていた。
むしろ一話毎に複数回泣いていた。

しかし原画展でB3(?)の見開きで見るとねー。

そのイラストとしての、シーンとしての完成度の高さに驚嘆した。
わたしは古舘春一、キャラクターの絵としては決してきれいだとは思わないのね。
汚いという意味ではないけど、そこまで達者な絵だとは思わない。

しかし構図が素晴らしいね!特に見開きを使ったシーンにぐっと来たね!
一枚のイラスト、一枚の絵としての力。
……まあ具体的にどこがというのは覚えてないけれども。

これは本誌を読んでても気づけないところかもしれないなあ。
むしろ大ゴマで情報量が少ない分、パラパラとろくに見ないで進んでしまうかも。
が、B3の大きさを一目で見ると、その一枚で作品として見ることが出来て、
効果音の描き方とか、吹き出しの置き方とか、効果線のつけ方、
まあマンガ詳しくないので言葉をよく知らないけどその他いろいろ、
総合的にほんと達者に描いている。

原画の良さ。うーん、知らなかったなあ。


わたしはアニメで追っているので、今のところ稲荷崎高校戦の手前までの
情報しかなくてですね……
なので原画展の後半はネタバレ怖し、しかし全く見ないのも気にかかる、
という大変中途半端な心境でした。

で、結果的には多少流れを知ってしまって、ああ……という部分もあるんだけれども、
まあしょうがないっすよね。

日向たちが3年生の時の絵が1枚あって、こういう後日譚が大好きなので、
すごくうれしかったー。日向が先輩になっている!やっちゃんが先輩になっている!
山口が(以下略)。

ああ~、早く全部見たいよう。


アニメは10月から第4シーズン2クール目開始です。
願わくば完結まで途切れることなくアニメ制作が続くことを。
3年とか空くのは勘弁ですよ。

とはいえ、アニメの丁寧さを考えると、そんなに急かすのもねえ。
急かしてクオリティが下がったら、日本アニメ史上の損失になってしまう。
クオリティを落とさず、その上でなるべく早い放送をお願いします。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◆ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展

2020年08月23日 | ◆美しいもの。
宮城県美術館で開催中。9月6日まで。

ここ10年くらいで日本画も好きになってきましたが、
やっぱり時々どっぷり西洋美術に触れたくなります。なんかほっとする。
ほっとするというのとは違うか。でも一歩入った時に漂う油絵の匂い(?)が
なつかしい。

今回入口ののところに飾ってあるポスターというか、垂れ幕が印象的でした。
お花の絵。あっ!誰の作品か控えてくるの忘れた!
展示品目録を見ても、タイトルでそれらしいものが見当たらない!しまった!

……しかし今回は大丈夫。珍しく図版を買って来たんです。
図版というのは、許されるものならば気に入ったエキシビのものは全部欲しいけど、
ちょっと高いしかさばるし……もう本棚に空いてるところがなくて、
文庫本さえ思ったようには買えない。いわんや図版においておや。

でも今回は買っちゃいました!
約2000円でこの本の体裁ならお値打ちだと思うくらいきれいな本だったんです!
版型は変型で20.5センチ四方の多分ほぼ正方形。
表紙はフェルディナンド・ゲオルク・ヴァルトミュラー「磁器の花瓶の花、燭台、銀器」。
背景が黒でとてもきれい。

もうこの図版を買っただけで行って良かった!
このまま飾っておきたい。部屋に置くと日焼けするんだけど、どこに置こうかなあ。


※※※※※※※※※※※※


作品としてはみんな水準以上。みんないい。
みんないいが、絵画史上スーパースター級の有名画家の作品はあんまりない。
ルーカス・クラナッハとルーベンスが何枚か来ているくらい。

室内装飾画としての一級品ですね。やっぱりリヒテンシュタイン公爵家は
ヨーロッパの名家、そこが持っている絵がダメなわけがない。
高度な美的センスにより選び抜かれた逸品。

逸品ぞろいだが、個々の作品についてそれほど語るべきことはない。
見ててとても楽しいけれども。言葉を引きだすかというと。
まあわたしの感受性の問題なんですけれども。


でも一族の肖像画はみなものすごく良かった!
アイドルっぽい人がいたり、少女マンガに出てくるような貴族の少年がいたり。
こういうのをセンスのいい邸宅の壁に飾っていたんだろうなあ。

「レオポルディーネ・アーデルグンデ」(侯爵侯女)が可愛かったなー。
顔も可愛いし、理知的だし、真珠の光沢もレースの袖口も美しかった。
レースの袖口部分だけを切り取って画面構成が出来そうなほど。

「リヒテンシュタイン侯フランツ1世、8歳の肖像」
これが少女マンガの貴族。美形のみならず、8才にしてこの憂いを秘めた表情。
現代のアニメキャラにしたらファンがつくこと間違いなし。

全体はだいたいバロックか古典主義だったんだけど、少しルネサンスも混じってる。

マルコ・バザイーティ「聖母子」
セバスティアーノ・マイナルディ「洗礼者聖ヨハネと天使二人といる聖母子」
が、とりわけ初期ルネサンスっぽい雰囲気だった。
マイナルディはボッティチェリの「ザクロの聖母」を思い出させる。
天使が頭を寄せ合う様子とか。

ルーカス・クラナッハ(父)「聖バルバラ」
宝石のような一枚。かなり小さめの板画だけど、赤がきれいでルビーのよう。
この赤のつややかさは印刷物では出ない。衣装の模様も細かくて。
どんな筆で描いているのかと思うほど。


陶器もかなりあった。景徳鎮、有田……。しかし西洋は磁器をとにかく金で
ゴテゴテと飾るのね。あれは普通の壺を切り離したりして加工して作るんだろうけど、
こっちにしてみれば異様に映る。

美意識が違うというのは当然のことだけれど、異国の美術をむりやり加工して
合わせてしまうのは乱暴な話。異国は異国として楽しむという姿勢はなかったのか。
まあでも日本だって擬洋風建築のような異様なキメラを生んでるわけだしね。
人のことはいえないか。

コーヒーカップ。ティーセット。美術館を彩るにふさわしい手を尽くされた名品。


花の絵も良かったなー。
最初に触れた花の絵は、
ヨーゼフ・ニッグ「白ブドウのある花の静物」「黒ブドウのある花の静物」でした。
なんとこれが……陶板画!
すっかり見逃していたわー。わたしの目は相変わらずフシアナか。

花の絵が表紙になった図版を横に置いて眺めて、幸せ。



だいたい1時間半ほどかけてみて来た。展示品の数はそこそこたっぷり。
一つ一つのサイズはそこまで大きなものではないけど、物足りなさはなかった。
邸宅コレクションは総合的に見せてくれるから面白いですよね。
リヒテンシュタン家の明るく、知性的な方向性が素敵。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◆ ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡

2020年06月26日 | ◆美しいもの。
宮城県美術館でだいぶ期間を遅らせて開催。迷ったけれど行ってきました。

本来行なう筈だった、入口の説明映像が密を避けるために中止になっていたので、
特に序盤の印象はスカスカでした。まあそれはしょうがないかなー。

本来の展覧会の規模としてもおそらく中どころだったと思う。
がっつりという感じではなく。
何しろウィリアム・モリスの――展示としては壁紙とテキスタイルをただひたすら
並べているだけなので、それほど目を驚かせるものはない。

今回、特にこれといった新しい発見はなかった。
でもまあモリスデザインのきれいなヤツをたくさん見せてくれたので満足。
額にいれて飾れる値打ちのあるデザイン。

テキスタイルよりは壁紙の方が印刷の感じとかも含めて好きだなーとか、
このデザインだと和風の家には無理だよなーとか、
柄に対するサイズ感がやはり西洋人と日本人、しかも100年前の人と現代の、
とでは違うなーとか思ってきました。


後半はケルムスコットプレス出版の本が相当な数並んでいた。
だいたいデザインは擬古風であまり変わり映えしないんだけど、
文庫本くらいの本が擬古風に作られていたのはちょっと面白かった。

モリスの住んだレッドハウスの写真も多数。
イギリス風景はわたしにとって癒しになる。行きたいな。


※※※※※※※※※※※※


モリスをさくっと1時間弱見て、どうしようか迷ったけど常設展も見ました。
見て良かった。

好きな川端龍子の「和暖」が出てないかと思ったけど出ておらず。
それより、入ったところにわたしの嫌いなタイプの現代アートのでかいヤツが
展示されていて、こういうのを買うなら小品でもいいからきれいな日本画に
して欲しい……とがっかりした。


今回の収穫は太田聴雨でした。

太田聴雨。名前だけは日本画家として認識があったけど、絵はまったく見たことが
なかった。
宮城県美術館、前から持っていたんですね。最近買ったのか?と思ったが、
二十数点並んでいたうち、新収蔵品にはそう書いてあったから(4枚ほど)
他は前から持っていたんだろう。持っていたなら惜しまずに見せればいいのに。
まあ多少は見せていたんだろうけど。


わたしは人物画にあまり興味がないので、全体的には太田聴雨を好きなタイプには
分類出来ないんだけどね。

1935年以降の絵が各段に上手くなっている。
ごく乱暴なことをいえば、それ以前は下手だ。
わたしが長年日本画に興味がなかったのは、全体的に日本画の画家のデッサンが
下手だったからではないのか。

今は日本画もデッサンの訓練をするだろうけど、昔はどうだったんだろうなあ。
最低ラインのデッサンが出来てない絵とかたくさんあるよね。
歴史的にはそういうもんだで済んでいただろうが、
西洋画を見慣れた現代人から見るとシンプルに下手に見える。


聴雨のその部分が劇的に改善して、線もきれいになって色もきれいになったのが
1935年の「日時計」から。
これはきれいにまとまったきれいな絵。これが型にはめられた結果なのか、
前田青邨に師事した結果なのかというのはわたしは判断が出来ないけれども、
絵としてはこれ以後の絵が好きだ。

「初夏」なんかはため息の出るような美しさ。
女の髪も、頭に巻いた布の色合いも、眉の線も、
すべてが「決まった!」といいたい完成度。

初期の絵だと「陶工」というタイトルの柿の木が良かった。
これは柿右衛門の伝説をタネにした絵らしい。
柿右衛門の伝説は知らないが、調べるのが面倒なので調べない。
人物には興味ないが、柿の木が大変かわいくて良かった。


初期作品に「キリスト」という二曲一双の屏風があった。
これがけっこういろいろ物を考えさせた。

マリアと幼子キリストの前に人々が跪く礼拝図は世界中で何万枚と描かれて
いるだろうが、礼拝しているのが全て女性と子どもというのは、
その中でもかなり珍しい部類の絵だろうと思う。
なんだったら全て男性でしょう。礼拝している人は。

この制作意図は、ととても不思議に思う。
聖母子はそれなりに威厳を感じさせるが、全員女性と乳飲み子なので、
見た雰囲気は保育園。
女性たちはだいたい合掌しているが、キリスト教というより
どちらかというと仏画の雰囲気を感じさせる。

これが意図したものなのか、それとも純粋にキリスト教的に描こうとして
果たせなかったのか、謎。

女性だけで描いた意図は……。
キリスト教は結局のところ「父なる神」の宗教だから、男性優位なんだよね。
十二使徒にだって女性はいない。まあ仏教もそうだけれど。

母なるものを求め続けた聴雨の主題ということになるのか?
そういう簡単な落ち着き方でいいのか?
聴雨のことをよく知らないので、なんともいえない。
聴雨とキリスト教との関わりも若干複雑そうなのだが……


今回佐藤忠良記念館には行かなかった。


今後、特別展はわりと良さそうなのが並ぶ。
リヒテンシュタン、東山魁夷、中宮寺。近年にない豪華なラインナップ。
状況的に純粋に楽しみだーといえないところがなんだけれども、楽しみです。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする