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ウェネトさまの館

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「超絶技巧を超えて 吉村芳生展」(そごう美術館)

2020年11月19日 18時43分34秒 | 展覧会・美術関連

そごう美術館「超絶技巧を超えて 吉村芳生 展」を観たのでございます。
https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/archives/20/yoshimura_yoshio/


 

吉村芳生の鉛筆画を初めて観た時、超絶技巧でリアルな事に腰を抜かしたものじゃった。
2018~19年には東京ステーションで本展が開催されるも観逃してしまい、巡回した横浜に観に行ったのでございます。

初期の作品から絶筆まで、60点以上が展示。
構成は以下の3章。気になった作品もリスト順に一部挙げておくぞよ。

【ありふれた風景】
初期のモノトーンの鉛筆画や版画の展示。鉛筆画、やはり凄いのぅ。

《ドローイング 金網》1977 鉛筆、紙
最初のコーナーでまず驚愕したのが、全長約17mもの紙に、金網だけが延々と描かれた作品。
網目の数は実に1万8千個、完成まで70日かかったそうな。
ドシロウトなわたくしは、よくも飽きずに描き続けられるものじゃ・・・と思ってしもうた。
なれどこれはまだ序の口じゃった。

《A PARKING SCENE No.26》1979 インク、フィルム
版画家としてスタートした吉村は、様々な版画技法を試みたのでございます。
シルクスクリーンの版を作る時に用いるかようなフィルムも、版画作品の原点として独立した作品とみなしていたそうな。

《ドローイング 新聞 ジャパンタイムズ/10点より》1979-80 鉛筆、紙/オフセット、紙/色鉛筆、紙
26歳の頃から始めた新聞シリーズ。
以前も驚愕した新聞シリーズじゃが、どうやって描いたのかは本展のキャプションで初めて知ったぞよ。
買ったばかりの新聞をプレス機で紙に転写し、ごく薄いインクを頼りに鉛筆でそっくりそのまま写しておったのじゃ。

《ジーンズ》1983 鉛筆、紙
ジーンズの一部分が超リアルに描かれた鉛筆画で、撮影した写真を大きく引き伸ばし、小さなマス目を引き、そのマス目ひとつひとつを、拡大した方眼を引いた紙に模写したそうな。
元になった写真や下絵も展示され、興味深うござります。

《徳地・冬の幻影》1987 色鉛筆、紙
雪の積もった大木が緻密に描かれておるのじゃが、よく観ると、人の顔や動物などが潜んでいて、騙し絵チック。

【自画像の森】
吉村は生涯を通して、膨大な数の肖像画を描いたのでございます。
この章の「新聞と自画像シリーズ」は、会場の一番最後に展示。

「インドの自画像シリーズ」8点 1986 色鉛筆、紙
インド各地の風景をバックにした自画像で、これまでのモノクロ世界から一変し、色鉛筆による鮮やかな色彩。

「新聞と自画像シリーズ」2008-2010
2000年代から描き始めたシリーズで、新聞と自画像どちらも描くタイプと、既存の新聞の上に自画像だけ描くタイプがあり。

《「3.11から」新聞と自画像 全8種より》2011 シルクスクリーン、新聞紙
2011年の東日本大震災後、シルクスクリーンで自画像を刷った作品。
描かれた表情から吉村の想いが伝わりまする。

《Self-portraits 1000 in Paris (パリの新聞と自画像)/全1000点より》2011-12 鉛筆、新聞紙
パリ滞在中の一年間で現地の新聞に描いた自画像は、実に1000枚に及ぶとか。

【百花繚乱】
花を描いた緻密で色鮮やかな大作が並び、一番テンション上がった章。

吉村は、モノクロ表現の長いスランプの中、1990年頃に初めて花を題材にして、もっと色を使いたいという想いが湧き、色鉛筆で描いた花の絵に重心を移したのだとか。

何点かは、画面を紙ヤスリでこすったり、ガムテープを貼って剥がすなど、ダメージ加工が施されてございます。

愛用した色鉛筆や道具の展示もあり。色鉛筆はファーバーカステルの120色を使用したそうな。

《コスモス》2004 色鉛筆、紙
《コスモス》2005 色鉛筆、紙
並んだ2点、同じような構図で咲き乱れるコスモスが描かれておるが、2004年のは写真かと見紛う描写、2005年のはダメージ加工が施され、見比べる事ができまする。

《ヒマワリ》2007 色鉛筆、紙
大輪のヒマワリが1輪。壁には吉村の言葉「何千枚と自画像を描いたが、どの自画像より自画像らしいヒマワリ。」
横には、この絵が使われた工藤隆(ジャズピアニスト)のCDアルバムジャケットも展示され、音楽も流れておりました。

《未知なる世界からの視点》2010 色鉛筆、紙
吉村作品の中でも最大級、全長10mを超える大作。
中州一面に咲く菜の花と揺らぐ水面が緻密に描かれておるのじゃが、最終的に上下さかさまにして、水面を上、菜の花を下にして展示。
作品の前には、元の状態の写真も展示されておりまする。

《無数の輝く生命に捧ぐ》2011-13 色鉛筆、紙
全長7mを超える大作で、本展のメインビジュアル。
藤の花の写真を撮り、同じ部分を複数枚プリントして貼り合わせ、実際の風景よりずっと横長にしたものを描いておるのじゃ。
吉村は、数え切れないほどの藤の花ひとつひとつを、東日本大震災で亡くなった人の魂だと思って描いたとの事。
画面の右側に、描きかけのような余白を残してあるのも、心に響きまする。
構想写真と、愛用のカメラも展示。

入口のパネル(写真撮影可)の一部じゃ。


 

《コスモス(絶筆)》2013 色鉛筆、紙
右4分の1ほどを残した状態で、残った部分には小さなマス目が引かれており、ひとつひとつ描き写した事がよくわかりまする。
2013年に63歳でお亡くなりになったのじゃが、もっと長生きして描き続けて頂きたかったのぅ。

タイトル通り、超絶技巧を超えた作品の数々、たいそう観応えござりました。
会期は12月6日まで。

観終わって、久々に崎陽軒本店1階のアボリータムへ。


 

アフタヌーンティーセットをお願いいたしまする~。


 

メニューは月替わりなのじゃ。
まずは温かい中段から。ラタトゥイユのニョッキグラタンと、レーズン入りスコーン。
グラタンは、今まで何を食べてもハズレなし。
スコーンは・・・。メープルシロップもたっぷり添えられておるのが嬉しい。


 

下段は、タマゴとツナのサンドウィッチ。
パンがちとパサパサじゃが、美味しゅうござります。


 

上段は、苺のパンナコッタ、キャラメルとマロンのケーキ、金時芋のタルトじゃ。
単品のケーキも追加しようと思うたが、とりあえず我慢。


 

ドリンクは数種類から選べ、コーヒーにしたのじゃ。
おかわりを注ぎに来てくださるので、3杯も飲んでしもうた。エヘ
これで税込1600円と嬉しいお値段。来月から100円値上がりするそうな。

★おまけ話
お供のEが丸一日お休み日だった一昨日は、お天気も良く暖かく展覧会日和じゃったが、Eが疲れが溜まりまくっておって展覧会へ行く気力なく、庭の湯へまいりましたのじゃ。


 

青空と庭園を眺めながら茶色い温泉に浸かったり、バーデプールでアクアマッサージしたりアクアトレーニング受けたり、

お風呂上がりにソフトクリーム食べたり、


 

リラクゼーションエリアでゴロゴロしたり、マッサージチェアで全身捏ねられたりしてリフレッシュしたのでありました。

帰りに練馬区立美術館へ寄ろうと思ったのじゃが、猛烈な睡魔に襲われ断念。
夜も早くから泥のように眠ってしまい、この日に見られるという獅子座流星群を探し忘れたのじゃった。 

★本の話
昨日は、本を2冊一気読みして目がショボショボ。

・『ダフォディルの花 ケネス・モリス幻想小説集』 ケネス・モリス 館野浩美・中野善夫 訳
格調高い文章で書かれた、東西の神話や伝説29編。
表紙には、今まで観た林由紀子の作品の中でも特にお気に入りだった《夜明けに開く薔薇》が使われておりまする。


 

・『滅びの前のシャングリラ』凪良ゆう
好きな作家で、今回も引き込まれたぞよ。
本編に雪絵ちゃん視点がないと思うたら、初回限定付録のスピンオフ短編「イスパハン」が雪絵ちゃん視点じゃった。
これも良かったのに、重版で買った人は読めぬのじゃろか。
これは本編に入れるべき~。