(薬師如来)
この聖号を一遍誦す事で
十悪業の障が清浄となるとされる。
「頂礼(ちょうらい)如来(にょらい)
尊勝及尊勝音(そんしょうきゅうそんしょうおん)。」
この聖号を一遍誦す事で
五毒勝伏の障が除かれ 仏尊より離れる事がなくなるとされる。
「頂礼(ちょうらい)如来(にょらい)
鎮須弥尊及大宝明之塔(ちんすみそんきゅうだいほうみょうしとう) 。」
この聖号を一遍誦す事で
三悪道に転生する門が閉ざされ
清浄円満な菩提果位を獲得し、
不動仏の仏土に蓮華往生できるとされる。
「頂礼(ちょうらい)如来(にょらい)
鎮三摩地定之殊勝(ちんさんまじじょうししゅしょう)
及初発心断疑尊及怙主不動尊(きゅうしょほっしんだんぎそんきゅうこしゅふどうそん)。」
ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮かべて出掛けませう。
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。
沖に出たらば暗いでせう、
櫂(かい)から滴垂る水の音は
昵懇(ちか)しいものに聞こえませう、
ーあなたの言葉の杜切れ間を。
月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るでせう、
われら接唇する時に
月は頭上にあるでせう。
あなたはなほも、語るでせう、
よしないことや拗言(すねごと)や、
洩らさず私は聴くでせう、
ーけれど漕ぐ手はやめないで。
ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮かべて出掛けませう。
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。
角川文庫 中原中也詩集 より
道 上
神の帳面切りも近づきましたから、
冥罪の解消に急ぎませう。
時の波はヒタヒタ打つでせう、
予感も少しはあるでせう。
冥罪の中では さぞ暗いでせう、
神から滴垂る 大悲の涙の音は
暗がりの中でも聞こえませう。
ーあなた方の冒涜の言葉と行いとを
司命は聴き耳立てるでせう。
神はやがて降りられるでせう、
かれら驚嘆する時に
まことの月が頭上にあるでせう。
あなた方はなほも、自己正当化するでせう、
そこで感応もない 秘辞や祝詞やら、
洩らさず誦そうとするせう、
ーけれど冥罪の反省はしないで。
そしてポッカリ まことの太陽が出ましたら、
いくら悔いても 全てが遅いでせう
天地は分かれるでせう、
地に属する冥罪と共にあるでせう。
楓文庫 もみじ詩集 より