日々是好日

今日も晴天なり。
どんな日でも、毎日は新鮮で最高にいい日だと思うことにしてます。
ご一緒に如何ですか?

一網打尽

2020-05-19 11:21:24 | シニアライフ

「一網打尽」

未だ、こんな四文字述語を学んだことのない悪ガキ時代の話です。

熱い夏場は川での水泳が、悪ガキどもの絶好の遊び場です。

田舎の川は源流に近く水は冷たく、時々河原で干して、また泳ぐ。

その繰り返しです。

河原で、大きなミルク缶を使っての、茹で卵づくり。

卵は自宅の鶏小屋から失敬してきたのです。

自宅からの持ち出しだから、泥棒ではありません。

毎日の鶏の餌付けは私の担当です。

卵の持ち出しは、鶏からのプレゼントです。

手ぬぐいに包んで、壊さないように持ち出すのに苦労します。

ばーやも、母親も見て見ぬふり。咎められることはありません。

茹で卵は悪ガキどもで均等に食べます。

真夏の夜、蚊よけに蚊帳を吊るしております。

我が家の別蔵には使わないで横済みされている蚊帳があります。

「ばっぱ、入らない蚊帳ない?」

「とも!何言ってんだ、萱は屋根吹いたり、冬ごもりに軒下を覆う大切なもん

なんだよ。毎年萱場から刈り取って、貯めてるんだよ。」

「違うんだって、あの吊るしてある蚊帳だよ。」

「あれが、どうした?」

「水にしたして洗うと、緑色が溶けてなくなってしまうのかね?」

「洗ったこと無いから、分からない。」

「何を馬鹿な事、考えてんだ?」

脇で祖母との会話を聞いていた母親から厳しい質問。

「ただ、洗ったら色が変わるかって、聞かれただけだよ。」

祖母の援護を信用しない母親。

「川で蚊帳を張って魚を取るつもりか?」

悪ガキの思っている事が、的中。

「雑魚がいるのか、いないのか分からないところに蚊帳張って、取れるわけに

ゃーじゃろ。」

「とも、それって、ほんまのこときゃ?」

興味津々の祖母の問。

「うんだ。」

「雑魚、取ったらどうすんだ。家さ持ってくるのか?」

「いや、河原でみんなで焼いて食べる。」

「雑魚、いっぺいいるとこ知ってるのか?」

「うん、しってる。」

「馬鹿言ってんじゃないよ! 雑魚泳いでいるんだよ。

お前に捕まる雑魚なんて一匹もおらんよ。バカも程々にして措け」

またも、母親の厳しい一言を言い残して座を外す。

祖母は、まだ興味が薄れてません。

「どうしてしってるの?」

「川渕のクルミの根っこの下に、うじゃうじゃいっぱいいた。手に雑魚が触れ

ても逃げないで、固まっていた。」

「南京袋では駄目か?」

「それだと、ちっちゃい。直ぐ逃げられてしまう。」

「それで、蚊帳か?」

「うんだ」

「上の家のばっぱも誘って、見に行っても良いかなぁ?」

「ばっぱも川さ、へいるの?」

「いえ、ただ見てたいだけ。それに取れたら食べてみたいから」

それで、話は纏まった。

蔵から、8畳間に吊るされる蚊帳を持ち出してくれた。

それに、倉に置いてある味噌樽用の棒ベラも用立ててくれた。

「後で行くからな」と送り出された。

早速、悪ガキどもの作戦会議。

雑魚は上流に向かって逃げる習性を説く者もいる。

蚊帳を川底にしっかりと石で定着させ、クルミの根っこの遥か上流に

雑魚の逃げ場を確保し、一網打尽の体制ができ上がった。

海辺の漁師顔負けの発想です。定置網の仕組みです。

そこに雑魚が群がっているはずです。

いよいよ、ばっぱが用意してくれた

棒ベラが役立つ時です。

棒ベラをもって、崖のくぼみを突き、雑魚を追い出すのは

悪ガキ軍団の年少組。雑魚を下流に逃がしたら大変、責任重大です。

雑魚は上流に向かって逃げるものと、決めての網を打ってあります。

ガキ大将は指揮官。最低でも20匹が取れる胸算用。

蚊帳の網は直ぐには、引き揚げない。

まだ、網に入らないで、ウロチョロしているものもいるかも。

暫くして、濁り水が納まり頃を見計らって、網の領域を狭めて行きます。

「いたいた!」大きな歓声が上がります。

雑魚と言ってましたが、しっかりした名前があるはずです。

体長20cmで、ヒレの部分に赤みを帯びてます。

大漁です。

ばっぱも,上の家のばっぱを誘って、見学に来てます。

見ているだけでありません、ガキどもと一緒にワイワイ大はしゃぎ。

近所の桑畑から桑の枝を折ってきて、焼き魚の串づくり。

悪ガキどもは枯れ木を集めて、焚火の用意。

使った蚊帳は河原に広げて、天日干し。元の緑色のままんま。

「魚のはらわた取る?」 文房具屋で買って持ち歩いているナイフをだす。

「秋刀魚だってはらわた取らずに焼いて食ってるから、入らないよ。」

こっちのばっぱとあっちのばっぱと悪ガキの会話が行き交う。

「こんなに、いっぺい取れるんだったら、塩持ってくるんだったなや。」

ばっぱ同士の会話です。

この二人のばっぱは集落の漫才コンビ。盆踊り大会では評判の二人です。

桑の枝に刺さった魚は、全員に2本ずつゆき渡った。

焼け焦がさないように、何べんも魚の刺したを返します。

自分のものの自己管理が徹底されてる。

焼き具合と、食べごろはばっぱが教えてくれる。

今流に云えば、異世代交流です。

遠い昔の在りし日の懐かしい、夏の日の思い出です。

 

 

 

 

 

 

 


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