ある牧師から

ハンドルネームは「司祭」です。

山谷裁判判決文全文① 主文

2020年02月08日 | キリスト教全般

平成25年11月13日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成20年(ワ)第10777号 損害賠償等請求事件

口頭弁論終結日 平成25年8月2日

判決

東京都千代田区神田多町2丁目5番地

原告 株式会社クリスチャントゥデイ

同代表者代表取締役 矢田喬大

東京都◆◆区◆◆◆-◆◆-◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆号

原告 矢田喬大

◆◆県◆◆市◆◆◆◆◆◆丁目◆番◆◆号

原告 高柳泉

上記3名訴訟代理人弁護士 小林雄介

           同 辰野嘉則

           同 飯田耕一郎

           同 金山貴昭

           同 北山昇

■■市■区■■■■■■■■-■■救世軍■■小隊

被告 ■■■

同訴訟代理人弁護士 ■■■■

        同 ■■■■

 

主文

1 被告は、原告株式会社クリスチャントゥデイに対し、55万円及びこれに対する平成20年4月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 被告は、原告高柳泉に对し、25万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3 被告は、原告矢田喬大に対し、15万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4 被告は、インターネット上で被告が管理するウェブサイト「MAJORMAK'S DIARY」並びにアカウント名「ct-cult,newcollegiate」及び「dga」に記載された文言のうち、別紙主張整理表の「番号」欄6,8~10,14,17~19,21,23~27,31,32,34,35,37,39,40,43,45,46,49,51,55~57,59~62,66,68,70~75,78,80~82番の各「該当箇所」欄掲記のブログにおける各「表現内容」欄に引用された文言(ただし、21番の(イ)及び32番(ア),(イ)を除く。)を削除せよ。

管理人注 以下が削除命令が出された、「別紙主張命令表」の「番号」欄6,8~10,14,17~19,21,23~27,31,32,34,35,37,39,40,43,45,46,49,51,55~57,59~62,66,68,70~75,78,80~82番の各「該当箇所」欄掲記のブログにおける各「表現内容」欄に引用された文言(ただし、21番の(イ)及び32番(ア),(イ)を除く)。









































管理人注 阻却された表現内容のみについては、山谷裁判判決で阻却された表現一覧 を参照してください。阻却の理由等については、下部の[続き]からご覧下さい。

5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

6 訴訟費用は、これを2分し、その1を被告の負担し、その余を原告らの負担とする。

7 この判決は、第1項、第2項及び第3項に限り、仮に執行することができる。

続き 請求、事案の概要、当裁判所の判断・認定事実

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山谷裁判判決文全文② 請求、事案の概要、当裁判所の判断・認定事実

2020年02月08日 | キリスト教全般

事実及び理由

第1 請求

1 被告は、原告株式会社クリスチャントゥデイに対し、130万円及びこれに対する平成20年4月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 被告は、原告高柳泉に対し、50万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3 被告は、原告矢田喬大に対し、30万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4 被告は、原告らに対し、インターネット上で被告が管理するウェブサイト「MAJORMAK'S DIARY」並びにアカウント名「ct-cult,newcollegiate」及び「dga」に記載された文言のうち、別紙主張整理表の各「該当箇所」欄掲記のブログ(以下、これらを併せて「本件ブログ」という。)における各「表現内容」欄に引用された文言を削除せよ。

5 被告は、原告らに対し、前記4項記載のサイト上に、別紙謝罪文記載の謝罪文を掲載せよ。

第2 事案の概要

1 本件は、原告らが、インターネット上で被告が管理する本件ブログにおける被告の書き込みによって名誉を毀損されたと主張し、被告に対し、①不法行為に基づく損害賠償請求として、原告株式会社クリスチャントゥデイ(以下「原告会社」という。)については130万円、原告高柳泉(以下「原告高柳」という。)については50万円、原告矢田喬大(以下「原告矢田」という。)については30万円並びにこれらに対する被告への訴状送達の日の翌日である平成20年4月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、②不法行為に基づく名誉回復請求として、本件ブログ上の名誉毀損表現の削除及び当該ブログ上に謝罪文を掲載することをそれぞれ求めた事案である。

2 前提事実(争いのない事実、並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨による認定事実)

(1)当事者

ア 原告会社は、主としてインターネット上のウェブサイトにおいてキリスト教に関する情報を提供することを業とする株式会社である。

 原告高柳は、原告会社の設立時から平成23年7月まで、原告会社の代表取締役社長であった。原告矢田は、平成17年に原告会社に入社し、平成23年7月29日付けで代表取締役に就任した。(甲24,27)

イ 被告は、キリスト教会「救世軍」のメンバーであり、牧師、通訳、翻訳、神学校教師等を仕事としている。救世軍は、日本におけるキリスト教福音派の組織である日本福音同盟(JEA)に加入しているキリスト教会である。

(2)本件ブログへの投稿

 被告は、平成18年2月16日、本件ブログ上において、原告会社についての書き込みを始め、別紙主張整理表の番号1から84までの「表現内容」欄記載の各表現を投稿した(以下、同各表現を併せて「本件各表現」という。)。

(3)原告会社と被告との交渉経緯

 原告矢田は、平成18年10月3日から4日にかけて、計3回、被告に対して、電話で本件ブログの削除を求めた。その際、原告矢田は、被告に対し、「ブログを削除しなければ裁判に訴える」などと伝えた。

 原告高柳は、被告に対して、「納得のいく回答が得られない場合は、…法的な処置をも検討します」と通告した。

 原告会社は、被告に対し、電話で、本件ブログ上への原告会社に関する書き込みの削除を要求し、さらに、平成18年12月13日、救世軍本営を訪問し、被告及び被告の上司である太田晴久と面談し、本件ブログの削除を要求した。

 原告高柳は、平成19年1月25日、太田晴久及び被告と会談し、本件ブログ上での原告会社に対する書き込みの削除を要求した(以下「高柳■■会談」という。)。

(4)通知書の発送

 原告会社は、平成19年3月20日、被告に対し、同日付け内容証明郵便を送付し、誹謗中傷表現を削除すること、原告会社に対する謝罪と今後一切名誉毀損の言動をしないことを成約する書面の提出を求めた(甲2)。

 被告は、削除に応じず、上記書面を提出しなかった上、上記内容証明郵便を本件ブログ上で公開した(甲3)。

(5)調停の申立て

 原告会社は、平成19年4月9日、東京簡易裁判所に対し、本件ブログ上の原告会社を誹謗中傷する記述の削除及び損害賠償を求める調停を申し立てた(甲4)。

被告は、調停期日に欠席し、上記調停は、平成19年6月20日、不調に終わった(甲5)。

3 争点

(1)本件各表現の名誉毀損の成否

(2)損害及び謝罪広告の要否

(3)削除請求の可否

4 争点に対する当事者の主張

(1)原告の主張

ア 被告は、平成18年2月16日頃から本件ブログ上において原告会社に関する書き込みを開始し、その後、原告会社が統一教会と関係のあるカルトで反社会的行為をする集団であることをほのめかし、また原告会社のメディアとしての適性を疑わせるような記載を繰り返し行った。

 また、被告は、本件ブログ上に、原告高柳及び原告矢田が、統一教会の元幹部であったダビデ張牧師のマインドコントロールを受けており、「パラノイド傾向と虚言性向」がある等と記載した。

これらの本件ブログへの記載における本件各表現は、原告らの社会的評価を低下させることが明らかである。

 本件各表現についての原告らの具体的主張内容は、別紙主張整理表の「表現内容」欄及び「社会的評価を低下させる理由」欄記載のとおりである(なお、別紙主張整理表においては、原告会社のことを「CT」ないし「クリスチャントゥデイ」ということがある。)。

イ 原告に生じた損害及び謝罪広告の必要性

(ア) 被告が、本件各表現を不特定多数の者が閲覧できる本件ブログ上に掲載した結果、原告会社の社会的信用は著しく低下した。原告会社は、キリスト教関連の情報提供を主要な業務としており、その主な情報受領者はキリスト教の関係者であるところ、キリスト教界において統一教会は異端であり、問題のある団体であるという共通認識があり、本件各表現によって、原告会社の社会的名誉が毀損されたことは明らかである。原告会社が被った無形的損害は計り知れず、その損害額は、少なくとも100万円を下らない。また、原告会社は、本件訴訟を提起するにあたり、弁護士費用として30万円の支出を余儀なくされたことから、これも被告による名誉毀損と相当因果関係のある損害である。

 また、原告高柳は、極めて悪質な本件各表現により、精神的損害を被り、その損害額は、少なくとも50万円を下らない。

 同様に、原告矢田は、本件各表現により、精神的損害を被り、その損害額は、少なくとも30万円を下らない。

(イ)本件各表現によって原告らが被った社会的評価の低下を回復するには、被告に別紙謝罪文記載の文言及び方法で謝罪広告を行わせることが必要である。

ウ 削除請求

 本件各表現は、極めて悪質な名誉毀損表現であり、削除されるまで表現がインターネット上に残存するというブログの特質から、本件各表現が削除されない限り、原告らに損害が生じ続けることは明らかである。

 したがって、原告らの被った損害を補てんするためには本件各表現を本件ブログから削除することが必要である。

(2)被告の主張

ア 本件各表現には、原告らの社会的評価を低下させないものがある。また、仮に本件各表現が原告らの社会的評価を低下させるとしても、その表現内容は全て真実性、あるいは相当性が認められる。また、論評といえる表現内容については、論評としての相当性の範囲内であり、被告は名誉毀損の責任を負わない。

 原告の主張に対する被告の反論は、別紙主張整理表の「被告の反論/抗弁」欄記載のとおりである。

イ 損害の有無及び謝罪広告の必要性

争う。

ウ 削除請求

争う。

第3 当裁判所の判断

1 認定事実

 前記前提事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨からすると、次の事実が認められる。

(1)「張在享が来臨(再臨)のキリストである」との教義は、キリスト教においては異端的な教義である(弁論の全趣旨)。

(2)張在享の疑惑調査

ア 韓国基督教総連合会(以下「CCK」という。)は、同会の会員である大韓イエス教長老会合同福音総会長の張在享(同人は、「ダビデ張」、「張在洞」などと称される人物である。以下、同人物については「張在享」という。)について、統一教会に関係している疑惑があるとして、異端対策委員会を設置し、調査した。

 上記調査が開始されたことは、韓国のオンライン新聞である「NewsNJoy」に掲載され、キリスト教界に知れ渡たることとなった。

 日本におけるキリスト教福音派の組織である日本福音同盟(JEA)は、平成16年6月17日、その加盟団体に対し、原告会社についての調査結果として、韓国新聞社「韓国基督公報」による次の報告があった旨を通知し、原告会社による取材を一切受けないことを決定した。

「韓国クリスチャン新聞の常任理事、張在洞牧師は、統一教会の核心メンバーであることが判明。このことについての記事が韓国のオンライン新聞であるNewsNJoy(htp://www.newsnjoy.co.k)に出ている。基督公報の取材によれば、海外ネットワークとして日本と中国に力を入れているらしい。張在洞牧師は現在、合同福音教団の総会長ですが、韓国基督教総連合会から異端として調査中である。(クリスチャン新聞提供)」

 これを受けて、救世軍は、同月18日、被告を含めた救世軍関係者に対して、「『クリスチャントゥディ』新聞の件」と題するファックスを送信し、上記日本福音同盟による調査結果を配布した。(乙1、84)

イ 張在享は、CCKの異端対策委員会に対し、統一教会関連団体で働いていたことがあり、これを深く悔い改めて懺悔する旨記載した「悔い改めの自筆覚書」を提出し、上記異端対策委員会は、8月12日に全体会議を開き、上記覚書の内容を公開した。

 CCKの異端対策委員会は、平成17年9月6日、調査の結果、「張在享が1997年以降統一教会と関係をもった形跡はない」旨の声明を発表し、これは日本福音協会のホームページにも掲載された。(甲6、7、184)

(3)CCKの異端対策委員会は、平成21年及び平成22年に、張在享が自らを再臨主(世界の終末の日にキリストとして再びこの世に現れる者のこと。)とする疑惑について、調査及び再調査を行ったところ、「嫌疑なし」の結果となった。CCKは、平成23年、張在享の統一教会疑惑及び再臨主疑惑について、無嫌疑であり、問題は終結したことを公表した(甲8、17)。

 正統派キリスト教徒の最大組織である世界福音同盟(WEA)は、同年その加盟団体である日本福音同盟に対して、張在享の疑惑は解消された旨を通知した(甲16,24)。

なお、CCKから分裂した韓国教会連合(CCIK)は、張在享の疑惑の追及を継続している(乙146,161)。

(4)張在享の経歴

ア 張在享は、昭和24年10月30日、大韓民国で出生し、昭和47年から昭和52年1月まで、統一教会の学生組織である原理研究会の新村学舎の責任者として活動し、昭和50年2月8日には統一教会の合同結婚式に参加していた。

張在享は、昭和57年3月、統一教会の学生組織である国際基督教学生連合会の事務局長に就任した。

 統一教会は、昭和60年頃、成和神学校を設立し、同校を母体として鮮文大学を設立することを計画し、同大学の設立準備委員会を組成したところ、張在享は同委員会に参加した。

張在享は、昭和61年9月、成和神学校企画室学生担当に就任し、翌年3月、成和神学校企画室長に就任した。昭和63年9月1日、統一教会の神学校である統一神学校と成和神学校が合併し、平成元年、張在享は成和神学校学生部長兼教務課長に就任し、同校で神学の教授を担当するようになった。

 平成3年3月4日、成和神学校が成和大学に改編されたところ、張在享は、神学教授として同大学に勤務し、平成5年12月29日、同大学が鮮文大学に改称した後も、平成10年1月まで同大学に勤務していた。(乙10,97,原告高柳p34,38~40)

イ 張在享は、大韓イエス教長老会国際合同総会の総務、大韓イエス教長老会合同福音の総会長、豪州サザンクロス神学校教授などを経て、イエス青年会、アポストロス・キャンパス・ミニストリー(ACM。以下「ACM」という。)を設立し、世界福音同盟(WEA)の北米支部理事を務めている(甲24,79,87,106)。

ウ 張在享は、アメリカのカルフォルニア州サンフランシスコ市のオリヴェット大学を創立し、その学長に就任していた(乙86)。

(5)各種団体及び人物の関係

ア 大韓イエス教長老会合同福音は、張在享が韓国において設立した教団であり、張在享が指導者として総会長を務めている(乙63,87,106,原告高柳p55)。

イ EAPCは、平成4年、若者への宣教運動を目的として、ACMの後援によって創立された団体であり、アメリカ等に多数の教会を設立している(乙89)。

ウ 東京ソフィア教会は、平成10年1月頃、大韓イエス教長老会合同福音の宣教師である安マルダこと安宣一以下「安マルダ」という。)が設立し、平成17年1月頃まで存続した教会である(原告高柳p21、原告矢田p44,46,乙22~40,80)。

東京ソフィア教会は、後に、日本キリスト教長老教会に所属することを明示するようになった(乙55~60)。

 日本キリスト教長老教会は、大韓イエス教長老会合同福音により派遣された宣教師が組成した複数の教会の集まり(教団)であり、平成15年7月頃に日本キリスト教長老教会と称するようになった(乙20~60、原告矢田p45、46)。

 安マルダは、平成15年4月又は5月頃、原告高柳を、大韓イエス教長老会合同福音の日本における代表者として日本代表使役者の地位に任命した(原告高柳p20~22)。

エ 日本キリスト教長老教会のホームページには、「青年宣教」として、ACMのホームページへのリンクが添付されているところ、同ホームページの画面の下には、「Copyright」として、EAPCの名称が記載されている(乙91、109,110)。

オ 東京ソフィア教会の所在地は、平成15年3月末までは①東京都文京区本郷2丁目26番8号ワカナビル3階であり、同年4月以降は、②東京都新宿区山吹町352番22グローサ・ユウ新宿ビル3階であった。上記①は、原告会社の設立当時の原告高柳の住所、株式会社ベレコム(以下「ベレコム」という。)の所在地と同一であり(乙19,22~40,64)、上記②は、原告会社設立当時の本店所在地と同一であり、原告高柳が同ビルの3,4階の賃貸借契約を締結した(乙19,41~60,原告高柳p1,2)。

 原告会社は、設立時(平成15年5月15日)、上記②のビルの4階を本店所在地としていた(原告高柳p1)が、同年12月頃、東京都渋谷区神泉町18-8SHOTOビル204号に移転し、その後は、東京ソフィア教会が上記2のビルの3,4階を使用していた(乙21,原告高柳p3)。

 平成19年(2007年)4月10日、韓国クリスチャントゥデイの住所は、原告会社の住所(東京都千代田区西神田2丁目7-6川合ビル3階33号)と同一であった(乙99~101)。

高柳■■会談の直前、原告名刺には、原告会社の住所地として韓国クリスチャントゥディの日本における連絡先が記載されていた(乙101、原告高柳p4)。

カ 東京ソフィア教会の電話番号(◆◆-◆◆◆◆-◆◆◆◆)の登録者は、安マルダであり、その後の東京ソフィア教会の電話番号(◆◆-◆◆◆◆-◆◆◆◆)の登録者は、原告高柳である。

 また、ACM、東京ソフィア教会、原告高柳の電話番号として使用されていた電話番号(◆◆-◆◆◆◆-◆◆◆◆)の登録者は原告高柳である。

キ 原告会社は、設立時に、韓国クリスチャントゥディ及びクリスチャンポストから資金援助を受けた。また、活動資金がひっ迫した際に、韓国クリスチャントゥデイ及びベレコムから資金援助を受けた。(原告高柳p4,30,31)

ク 張在享は、平成12年、オリヴェット神学校(Olivet Theological College & Seminary。以下「OTCS」という。)を設立し、同校は、平成16年2月、オリヴェット大学(01ivet University。以下「OU」という。)に改編された。張在享は、平成18年7月頃まで、同大学の理事長であり、それ以降は総長の地位にある(乙86)。

 OUは、そのホームページにおいて、宗派がEAPCである旨記載している(乙92)。

ケ 原告高柳は、UCLA在学中にACMの伝道を受け、OUの前身であるOTCSに入学し、平成15年3月23日に卒業して日本に帰国し、同年4月頃、大韓イエス教長老会合同福音の宣教師である安マルダから日本代表使役者に任命され、東京ソフィア教会の伝道師として活動していた(乙35~43,86,63・p3,7,原告高柳p24)。

原告高柳は、同年5月17日、大韓イエス教長老会合同福音において、張在享から牧師の按手を受け、同年秋頃まで東京ソフィア教会の牧師としての活動に従事していた(乙43~46、原告高柳p20~24)。

 原告高柳は、同月15日、原告会社を設立し、代表取締役に就任した。

 原告矢田は、株式会社ベレコムの取締役であり、東京ソフィア教会の第5回賛美礼拝における賛美リーダーであった者で、ACM千葉センター代表者、イエス青年会の会長でもあった。

 原告会社の設立当初の住所地は、東京都新宿区山吹町352番22グローサ・ユウ新宿であり、ACMの本部も同所に所在した。

 原告会社の記者である井手北斗(以下「井手」という。)は、東京ソフィア教会の信者であった。

(6)クリスチャントゥデイは、キリスト教メディアの世界的ネットワークとして、アメリカ、イギリス、日本、韓国等の世界各国の主要土地に記者を有し、新聞を発行している。原告会社は、上記ネットワークの一部として、日本において「クリスチャントゥデイ」という新聞を発行する組織である。(乙107,原告高柳p44,45)

(7)聖書講義ノート

ア ◆◆◆◆は、東京ソフィア教会の信徒であった平成14年頃、教会での講義内容を記載したノートを作成した。

 上記ノートには、「イエスキリストではなく、来臨のキリスト」(乙114の6)などと記載されており、この記載は、「イエスキリスト」が再臨することを教義とするキリスト教とは異なり、異端的な教義に基づく記載である。被告は、◆◆◆◆の両親が◆◆◆◆のアパートで発見したノートの一部として、上記ノートを受領した(以下「本件ノート」という。(乙113~115の2,160,乙144,153,原告高柳、被告)

イ ◆◆◆◆は、原告会社の記者であり、編集長であった。

ウ この点、原告らは、本件ノートが◆◆◆◆によって作成されたか不明であり、形式的証拠力がない旨主張するが、原告会社が発行したインターネット新聞「クリスチャントゥデイ」において、◆◆◆◆が本件ノートを作成したと名乗り出た旨の記載があること(乙153,160)に加え、原告会社の記者である井手が作成した匿名のブログ「Sola Gratia」(以下「匿名ブログ」という。)において、被告が問題としているノートは所有者が◆◆◆◆であることを前提とした記載があること(乙144)、原告高柳は、◆◆◆◆と連絡が取れるにもかかわらず、全く本件ノートの作成経緯やその内容について◆◆◆◆に確認していないなどと供述していることにも照らせば、本件ノートそれ自体は、◆◆◆◆の所有物であり、同人が作成したものであると認めることができる。

続き 本件各表現の名誉毀損の成否 異端的教義に関する表現

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山谷裁判判決文全文③ 本件各表現の名誉毀損の成否 異端的教義に関する表現

2020年02月08日 | キリスト教全般

2 本件各表現の名誉毀損の成否

(1) 本件各表現につき名誉毀損として不法行為が成立するためには、原告らの一般社会における社会的評価を低下させるものといえなければならない。

 すなわち、名誉とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価であると解され、名誉毀損とは、この客観的な社会的評価を低下させる行為であると解される(最高裁昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁)ところ、インターネット上のウェブサイトに掲載された表現の内容が人の社会的評価を低下させるか否かは、一般の読者の普通の注意と読み方を基準に判断すべきものである(最高裁昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁、最高裁平成24年3月23日第二小法廷判決・裁判集民事240号149頁参照)。

(2) また、事実を摘示して他人の名誉を棄損する場合であっても、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合において、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときは、その行為には違法性がなく、仮に上記証明がなくても、行為者において上記事実の重要な部分が真実であると信じたことについて相当の理由があれば、その故意又は過失が否定され、不法行為が成立しないと解される(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁、最高裁昭和58年10月20日第一小法廷判決・裁判集民事140号177頁参照)。

そして、ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損においては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、その意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、その行為は違法性を欠くと解される(最高裁昭和62年4月24日第二小法廷判決・民集41巻3号490頁、最高裁平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2252頁参照)。

 なお、名誉毀損が問題となっている表現における事実の摘示と意見ないし論評の表明との区別については、同表現が、意見ないし論評の表明にあたるかのような語を用いている場合にも、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に、前後の文脈や同表現の公表当時に読者が有していた知識ないし経験等を考慮すると、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張するものと解されるときは、その表現は、その事項についての事実の摘示を含むものというべきである(最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)。

(3) この点、本件各表現は、原告の主張を踏まえて類型化すると、次のとおりに分類することができる(各本文は原告の主張の要旨であり、括弧内の数字は、別紙主張整理表の「番号」欄の数字であり、その番号に対応する「表現内容」欄記載の表現を指し示すものである。なお、表現によっては複数の類型にまたがるものもあるため、重複する数字がある。)。

(原告会社に対する表現)

① 原告会社が、張在享が「来臨(再臨)のキリスト」であるという「異端的教義」を信奉し、かかる異端的教義を説いているとの表現(22,29,31,37,43,49,51。以下、これらを併せて「表現①」という。)

② 原告会社は、統一協会の核心メンバーないし幹部である張在享の設立した企業である、又は統一教会の派生カルト団体ないしダミー団体の疑いがあるとの表現(7,23,29,34,35,40,43,54,61,62,64,66,68,80。以下,これらを併せて「表現②」という。)

③ 原告会社が、原告高柳や従業員に対しマインドコントロールを行い、無償労働や消費者金融からの借金を強い、アポなし訪問や電話攻勢などをかけるようなカルト団体であるとの表現(8~11,17~20,24,26,27,29,32の(ア),(イ),33,36,38,41,46~50,52,55,56,59,60,62。以下,これらを併せて「表現③」という。)

④ 原告会社が,損害賠償請求裁判を提訴するとの威嚇,告訴の威嚇を行ったとの表現(28,30,42,44,53,67。以下,これらを併せて「表現④」という。)

⑤ 原告会社が、不審者・不審車両の配置、サーバーアタック、インターネット上の誹謗中傷といった被告に対する攻撃を行っているとの表現(1~6、12~16、21,25,28,32((ア),(イ)を除く。),39,45,57,58,63。以下,これらを併せて「表現⑤」という。)

(原告高柳に対する表現)

⑥ 原告高柳が、「ブログの記事を削除しなさい。さもなければ、大変なことになる」と述べた直後に、不審車両、不審者、サーバー攻撃などの事態が生じたとの表現(69,72。以下,これらを併せて表現⑥」という。)

⑦ 原告高柳が、パラノイド、虚言性向、尋常でない様子が見られたとの表現(70,71,73~75。以下,これらを併せて「表現⑦」という。)

⑧ 原告高柳が、自己を「来臨のキリスト」とする張在享と関わりがあることを示唆する表現(76,78,80。以下、これらを併せて「表現⑧」という。)

⑨ 原告高柳が経歴を詐称したとの表現(65,77。以下「表現⑨」という。)

⑩ 原告高柳が匿名ブログで被告の誹謗中傷を行っているとの表現(79。以下「表現⑩」という。)

(原告矢田に対する表現)

⑪ 原告矢田がマインドコントロールを受けているとの表現(81。以下「表現⑪」という。)

⑫ 原告矢田がパラノイド傾向、虚言性向が見られるとの表現(82。以下「表現⑫」という。)

⑬ 原告矢田が被告を告訴すると威嚇したとの表現(83。以下「表現⑬」という。)

⑭ 「摂理脱会手記」が原告矢田の自己の体験ではないかとの表現(36,84。以下「表現⑭」という。)

(4) 各表現についての不法行為の成否

ア 表現①及び⑧(異端的教義に関する表現。22,29,31,37,43,49,51,76,78,80)について

管理人注 赤丸は名誉毀損成立












(ア) 社会的評価の低下

 表現①及び⑧は、原告会社及び原告高柳が、張在享が「来臨(再臨)のキリスト」であるという「異端的教義」を信奉し、かかる異端的教義が原告の社内で教え込まれているとの事実(表現①:22,29,31,37,43,49,51。表現⑧:78,80)、原告高柳が張在享から牧師按手を受けたとの事実(表現⑧:76)を摘示する表現である。

 証拠(甲13)によれば、「異端」とは、「正統からはずれていること。また、その時代において正統とは認められていない思想・信仰・学説」を意味するところ、キリスト教に関する本件ブログの全体の構成や内容からすると、「異端的教義」とはキリスト教から外れた教義を意味していると解される。そして、一般人が表現①を閲覧すれば、原告会社がキリスト教の教義から外れた信仰をしているとの印象を抱かせ、キリスト教に関する情報の提供を業とする報道活動を行う原告会社にとって、原告会社が提供する情報の正確性や客観性に疑義を抱かせるおそれがあることから、原告会社の社会的評価を低下させるものと認められる。

 また、表現⑧は、表現行為時に原告会社の代表取締役であった原告高柳が、異端的教義を説いている張在享と関わりがあることを示唆し、原告高柳が異端的教義を信奉しているとの印象を与えるとともに、そのような人物を代表取締役とする原告会社についても同様の教義を信奉しているとの印象を与える表現であるといえ、原告会社及び原告高柳の社会的評価を低下させるものである。

(イ) 違法性阻却について

 被告は、原告会社においては、張在享が来臨(再臨)のキリストであるとの教義が教え込まれており、原告高柳はかかる異端的教義を確信していることから、表現①及び⑧は、事実の公共性及び目的の公益性が認められ、被告の表現行為の重要部分について真実性があると主張し、それに沿う証拠を提出する(乙1,4,73,77,113の1~115の2,160,被告本人)。

a まず、本件各表現は、キリスト教界に一定の影響力を有する報道機関である原告会社及びその役員の異端疑惑や統一教会疑惑に関するものであり、正統派のキリスト教団体が関係各所に通達を出していること(乙1)からしても、公共の利害に関する事実であり、専ら公益を図る目的でなされたものであるといえる。

b そして、◆◆が、東京ソフィア教会において、張在享が来臨のキリストであると教え込まれていた証拠として、◆◆のアパートから発見されたとする本件ノート(乙113~115)や、張在享が創設したACMの生活状況、教義内容等が記載されているとされる書面(乙73,77)を証拠として提出するので、以下検討する。

 前記認定事実(7)のとおり、本件ノートは、◆◆◆◆の所有物であり、同人の自宅から両親が持ち出して被告に交付したこと、本件ノートには、日時場所として「2002年」「東京ソフィア教会」の記載、「キリストの来臨」について「イエスキリストではなく、来臨のキリスト」などの記載があり、これは正統派のキリスト教の教義から外れる内容であること、◆◆◆◆は、平成14年当時、東京ソフィア教会の信者であったことが認められ、これらの事実を踏まえると、正統派ではない「キリストの来臨」に関する講義が平成14年当時、東京ソフィア教会において行われていた可能性がある。

 しかし、張在享が来臨のキリストであることが明示的に記載された部分はなく、本件ノートが東京ソフィア教会の信者であった◆◆によって記載されたものであったとしても、直ちに、張在享が来臨のキリストである旨の教義が東京ソフィア教会、ひいては原告会社において教え込まれていたとは認められず、他にこれを裏付ける客観的な証拠はない。

また、ACM脱会者とのメールのやり取りが記載されているとされる書面(乙72~77)の中には、再臨主が張在享であるとの教えがあった旨の記載があるが、その体裁からすると、脱会者と名乗る人物が特定できず、被告が聴取した人物がACMの脱会者であるとは直ちに認められない。このほかに、ACMにおいて、張在享が再臨主であるとの教えがあったことを裏付ける客観的な証拠もない。

 そして、前記認定事実(2)及び(3)のとおり、張在享が自らを再臨主であるとの異端的教義を伝道している疑惑が広まったが、張在享の再臨疑惑については、韓国キリスト教総連合会の異端対策委員会(CCK)が「証拠がなく事実でなく、異端性が全くない」との判断を示し、世界福音同盟においても同趣旨の通知が公表されたことにも照らせば、原告会社において張在享が再臨主であるとの異端的教義が信奉され、教え込まれていることを認めるには足りない。

c 他方、表現⑧のうち76番については、証拠(原告高柳p20~24)によれば、原告高柳は張在享から牧師接手を受けたことが認められ、重要な部分について真実であるから、違法性が阻却される。

d 以上のとおり、原告会社及び原告高柳が「張在享は来臨のキリストである」という異端的教義を信奉し、原告会社内で教え込まれていることの真実性は認められず、表現①及び⑧のうち76番以外の表現については、被告の上記主張は採用することができない。

(ウ) 相当性

 次に、被告は、原告会社及び原告高柳が異端的教義を信奉し、原告会社内で教え込まれていることが真実であると信じるにつき相当性がある旨主張することから検討する。

この点、表現①及び⑧のうち22,29番を除く表現については、原告会社が異端的教義を信奉し、社内で教え込んでいることを断定的に示唆する内容となっている。

 このような断定的な内容の表現をするには、それ相応の合理的な根拠を要するというべきであるところ、本件ノート(乙113~115の2)や脱会者らのメールと称する書面(乙72~77)のみでは、客観的な資料に基づいて慎重な分析が行われたとはいい難く、他に合理的な根拠といえる資料は認められないから、真実と信じるについて相当な理由があったとは認められない。

 他方、22,29番については、前記認定事実(2)及び(3)のとおり、日本における正統派キリスト教の団体である日本福音同盟から、張在享について、キリスト教界にとって異端的立場である統一教会との関係があるとの疑惑が存在し、それに伴い原告会社からの取材を拒否することを決定した旨の通知が被告の所属する救世軍に送られていること、本件各表現の後、張在享については統一教会疑惑だけでなく再臨主疑惑もかけられており、CCKの異端対策委員会において複数回の調査が実施されたことに照らせば、張在享について異端の疑惑が存在し、原告会社もそれに関与している疑惑が存在していたといえるから、張在享の異端疑惑の存在及び原告会社の関与を示唆する表現をするのに相応の合理的な根拠があったというべきである。したがって、表現ののうち22,29番については、真実であると信じるにつき相当な理由があったと認めることができる。

(エ) よって、表現①及び⑧のうち31,37,43,49,51,78,80番については,原告会社又は原告高柳に対する名誉毀損となる。

 

続き 統一教会に関する表現 異常な団体、カルト団体である等の表現 

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山谷裁判判決文全文④ 統一教会に関する表現 異常な団体、カルト団体である等の表現 

2020年02月08日 | キリスト教全般

イ 表現②(統一教会に関する表現。7,23,29,34,35,40,43,54,61,62,64,66,68,80)

管理人注 赤丸は名誉毀損成立









(ア) 社会的評価の低下

 表現②は、張在享は、統一教会の信者、核心メンバーないし幹部であり、原告会社は、その張在字が創立し、支配する企業であり、張在享を再臨主として崇める共同体に属し、統一協会から派生したカルト・ダミ一団体の疑惑があるとの事実を摘示する表現である。

しかるに、一般人が、原告会社は統一教会の核心メンバーないし幹部等とされる張在字によって設立され、支配されていること、統一教会から派生し、ないしダミー団体である(疑惑がある)との表現を閲覧すれば、原告会社が統一教会と同様の反社会的団体であるとの印象を抱くものといえる。

 したがって、表現②は、原告らの社会的評価を低下させるものと認められる。

 この点、被告は、この「クリスチャントゥデイ」は、原告会社ではなく、韓国のクリスチャントゥディのことを指しており、原告会社の社会的評価は低下しないと主張する。しかし、本件各表現が書き込まれた本件ブログの全体の構成及び内容からすると、本件ブログは原告会社を含めた張在字を中心とした共同体の統一教会疑惑及び異端疑惑を追及することが主題となっていると認められるから、一般人が、韓国のクリスチャントゥデイの記事であるとの印象を持ったとしても、韓国のクリスチャントゥデイと原告会社は、同系列の団体と認識するのが通常であり、前者の常任理事に統一教会の核心メンバーがいるとの表現は、原告会社の社会的評価も低下させるといえる。

 したがって、被告の上記主張は採用することができない。

(イ) 違法性阻却について

a まず、本件各表現は、キリスト教界に一定の影響力を有する報道機関である原告会社及びその役員の統一教会疑惑に関するものであり、正統派のキリスト教団体が関係各所に通達を出していること(乙1)からしても、公共の利害に関する事実であり、専ら公益を図る目的でなされたものであるといえる。

b 被告は、張在字が統一教会の核心メンバーないし幹部信者であることは真実である旨主張する。

 前記認定事実(2)及び(4)のとおり、張在享は、統一教会が関係する学校ないし大学に勤務し、神学を教授していた経歴が認められるものの、CCKは、平成16年に統一教会疑惑についての調査を開始し、平成9年以降の嫌疑を立証できなかったこと、張在字の疑惑についての問題は終結したことを公表したことが認められる。

 そうすると、張在享が統一教会の幹部信者であったとの表現は重要な部分について一応真実性があるものの、このことから、直ちに本件各表現がインターネット上で開始された平成18年の時点においても、張在字が統一教会の核心メンバーであるとか幹部であるなどと表現することについては、これを客観的に裏付ける証拠はなく、真実性を認めることができない。

 したがって、同時点で張在享が統一教会の核心メンバーないし幹部信者であることを前提とする表現②については、違法性が阻却されず、被告の上記主張は採用することができない。

 もっとも、29番は「統一教会・核心メンバーであった張在字」との表現であり、過去の時点で、張在享が統一教会の関係者(単なる信徒ではなく、関係大学の教授)であることからすると、重要な部分について真実性が認められ、29番については違法性が阻却される。

c 前記認定事実(2)のとおり、日本福音同盟は、平成16年6月17日、救世軍を含む加盟団体に対して、原告会社についての調査結果として、「韓国クリスチャン新聞の常任理事、張在洞牧師は、統一教会の核心メンバーであることが判明」との記載がある報告文書を通知し、原告会社の取材を一切受けない旨を決定したことが認められるから、表現②の7番は、上記日本福音同盟による通知の内容と同趣旨の表現を繰り返したものにすぎず、重要な部分について真実性が認められる。

 また、54番は「ダビデ張在字の統一教会前歴や…異端カルト疑惑を伝え、その中で、クリスチャントゥデイが小生に対して起こした『1000万円損害賠償請求申立事件』についても報じている」とする表現であり、張在享が統一教会の核心メンバーないし幹部信者であることを断定的に伝える表現ではないし、前記認定事実(4)のとおり、張在享には統一教会が関係する学校ないし大学で勤務し、神学を教授していた経歴が認められる以上、54番の上記表現の重要な部分について真実性が認められる。

 さらに、前記認定事実(4)のとおり、原告高柳が張在享から牧師按手を受けたことが認められるから、表現②のうち64番については重要な部分について真実性が認められる。

したがって、表現②のうち7,29,54,64番については、違法性が阻却される。

(ウ) 相当性の有無について

上記のとおり、表現②のうち7,29,54,64番を除く表現については、真実性が認められないところ、被告は、真実と信じるにつき相当の理由がある旨主張する。

 この点、前記認定事実(2)及び(3)のとおり、キリスト教界において、張在享が統一教会との関係を有している旨の疑惑が存在していたものの、張在享の統一教会疑惑は立証できず、その後、張在享自身を再臨主とする異端疑惑の調査が開始されたことが認められる(本件ブログ上に本件各表現が記載された記事を投稿し始めた平成18年当時には、既に統一教会疑惑は、正統派キリスト教界において広まっていなかったことがうかがわれる。)。上記張在享の経歴の存在に加えて、張在享が表現②の書き込み時点においても統一教会の核心メンバーないし幹部であることを合理的に推認できる資料及び事情の存在は認められず、被告が張在享の統一教会疑惑の存在について真実と信じたことについては合理的な根拠があるとはいえない。

 そうすると、表現②(7,29,54,64番を除く。)の前提となる、張在享が統一教会の核心メンバーないし幹部信者であることが真実であると信じたことについて相当性があるとはいえないから、被告の上記主張は採用することができない。

(エ) 以上により、表現②のうち7,29,54,64番以外の表現については,名誉毀損が成立する。

 

ウ 表現③、⑦、⑪及び⑫(異常な団体、カルト団体である等の表現。8~11、17~20、24,26,27,29,32,33,38,41,46~50,52,55,56,59,60,62,70,71,73~75,81,82。なお,36番については後記クのとおり。)

(ア) 表現③,⑦、⑪及び⑫は、原告会社が、代表者の原告高柳や、原告矢田を含めた従業員に対しマインドコントロールを行い、代表者や従業員らはパラノイド傾向と虚言性向があるとの事実を摘示し、原告会社は現実との乖離が進むとオウム的犯罪なども成立し得る旨評価を加える表現、さらに、従業員に無償労働や消費者金融からの借金を強い、他社に対してアポなし訪問や電話攻勢などをかけるような団体であるという事実を摘示し、原告会社がカルト団体である旨評価を加える表現、原告会社は悪賢いとする表現、原告会社の主張は「妄想」であるとする表現にまとめることができる。

以下、個別に検討する。

a マインドコントロール、パラノイド傾向、虚言性向、オウム的な犯罪に言及する表現(9、17~19,55,56,59,60,70,71,73~75,81,82)について

管理人注 赤丸は名誉毀損成立












 原告会社がその代表者や従業員をマインドコントロールすることで、同人らがパラノイド傾向、虚言性向の精神状態であるという事実を摘示し、極点に達する時にはオウム的犯罪も成立し得る旨の評価を加えた表現は、一般通常人が読めば原告会社によって、人格を操られた精神状態の代表者や従業員が在籍し、いわゆるオウム真理教のような反社会的行動に及びかねない危険な集団であるとの印象を抱かせるから、原告らの社会的評価を低下させる。

 この点、被告は、原告会社がマインドコントロールをしているとは明示していないことから、原告会社の社会的評価を低下させない旨主張するが、原告代表者や従業員らの異常行動について表現することにより、一般通常人が読めば、その文脈からマインドコントロールを行っている主体が原告会社であるとの印象を抱くといえ、原告会社の社会的評価が低下することが認められるから、被告の上記主張は採用することができない。

b 原告会社は従業員に不眠不休の無償労働、借金の強要をしている、家賃を滞納している、会社法違反の状態であるとの表現(29,41,60)について

管理人注 赤丸は名誉毀損成立



 29、41、60番は、原告会社が従業員を不眠不休、無償で働かせたり、消費者金融からの多額の借金をさせて上納させ、家賃を滞納したり、決算公告をしない会社法違反の状態の会社であるとの事実を摘示するものであり、特に60番については原告会社がカルト団体である旨の評価を明示的に加え論評する表現であるといえる。カルト団体という表現は、一般的には、狂信的な(理性を失うほど信じ込むような)崇拝をする団体として、異常行動をとる集団を彷彿させるものといえるから、上記29,41,60番は、一般通常人をして、原告会社が従業員を搾取し、社会的に不当な活動をしたり、狂信的な崇拝をする集団であるとの印象を抱かせ、原告会社の社会的評価を低下させるというべきである。

c 訪問攻勢、アポなし訪問、押しかけ等( 32の (ア),(イ),33,38 )について





 原告会社が訪問攻勢、電話攻勢をしかけて威圧したり、アポなし訪問をして居座り続けたりしたとの表現は、一般人に対し、原告会社が迷惑を顧みない行動をする集団であるとの印象を抱かせ得るともいえなくはないが、同時に、表現内容全体からみれば、被告が、原告会社と対立関係にあるCCK-J側からの伝聞情報を鵜呑みにして書き込んだ、具体的裏付けのない信用性の低い表現であるとの印象をも抱かせるものであって、結局、この表現によって、直ちに名誉毀損として違法性が認められる程度に原告会社の社会的評価が低下するとはいえない。したがって、32の (ア),(イ),33,38番については、名誉毀損は成立しない。

d 原告会社は悪賢いとする表現、原告会社の主張は「妄想」であるとする表現、原告会社は暴論を主張しているとの表現(20、47、48、50、52)について





 20番は、原告会社が、韓国のクリスチャントゥデイとつながりがあることを前提に、悪賢い働きを展開している旨の表現であるが、具体的事実を摘示して原告会社の社会的評価を低下させるものとはいい難い。したがって、20番については、名誉毀損は成立しない。

 また、47,48,52番は、平成19年11月29日付けで本件ブログに書き込まれた記事であるところ、これらの記事は、前記前提事実(3)のとおり、原告ら側と被告との間で、本件ブログの記事削除に関する交渉が行われた後に書き込まれたものであり、既に原告らと被告は対立関係にあったといえる状況の下で、各記事の内容からしても、被告による原告らの主張への反論ないし抗議として掲載されたものである。そうすると、一般人が上記発言を読んだとしても、被告が原告らと既に対立関係にあって、被告側の立場から原告らの主張への反論ないし抗議をしていることを主に認識するものといえるから、原告会社の社会的評価を客観的に低下させるものとは認められない。したがって、47、48、52番については、名誉毀損は成立しない。さらに、50番は、「再建主義論争における■■の意図は、旧約律法に根拠して現代に公開処刑制度を復活させ、かつ、公的福祉を全廃せよ等々」の暴論を論駁する」との表現により、原告会社が論殿の対象となる暴論を主張していることを摘示しているところ、一般通常人の普通の注意と読み方からしても、上記暴論の内容を具体的に理解することは困難であるから、上記摘示をしたことによって直ちに原告会社の社会的評価が低下するとは認められない。したがって、50番については、名誉毀損は成立しない。

e カルト団体(8,10,11,24,26,27,46,49,60,62)について

管理人注 赤丸は名誉毀損成立











 原告会社が「カルト疑惑がある」、「通常のキリスト教メディアではなく、カルトである」といった、原告会社が通常のキリスト教メディアではなく狂信的な崇拝をしている異常な団体である旨論評するものであり、一般人に同様の印象を抱かせるから、原告会社の社会的評価を低下させるものといえる。

 もっとも、11番は、「クリスチャントゥデイに疑惑が寄せられている以上、キリスト教言論機関を自認するクリスチャントゥデイは、その紙上で教界に対する説明責任を果たすべき。」というものであるところ、上記疑惑の内容を具体的に示しておらず、また、前記認定事実(2)のとおり、原告会社自身にも統一教会疑惑や異端疑惑があったことからすると、上記表現は、原告会社に説明責任を果たすべきとして上記疑惑に対する姿勢を糾弾しているにすぎないといえるから、真実性を欠く具体的事実を摘示して原告会社の社会的評価を低下させるものとは認められない。

(イ)違法性阻却について

a まず、上記各表現は、キリスト教に関する報道機関である原告会社のカルト疑惑に関するものであり、前記前提事実(2)のとおり、原告会社は日本福音同盟の調査により、張在享の統一教会疑惑に関与していることが疑われ、取材を拒否されていた立場であるから、原告会社の実態に関する本件各表現は、公共の利害に関する事実であり、専ら公益を図る目的でなされたものであるといえる。

b 真実性の有無

 この点、被告は、原告会社を含む「宣教の共同体」において、信者の自己決定権を侵害する教え込みを通じて植え込まれた熱狂的な信仰が共有されており、教団の教えと同様の思考をするようなマインドコントロールが行われていることは真実である旨主張し、それに沿う証拠(乙3、4、66~79)を提出する。しかし、証拠(甲19、20)によれば、原告会社は、キリスト教に関する情報の提供を業とする株式会社であり、ユーザー数1万4000、閲覧数15万件を超えるインターネット新聞を発行し、定期刊行物として「週刊クリスチャントゥデイ」を発行するなどしていることが認められるところ、これらの活動以外に、その従業員や信者を教化するような活動をしていることを裏付ける証拠はないため、被告作成にかかる聴取書(23)及び面談記録(乙4)を採用することはできない。

 また、ACMの脱会者なる人物とのメールのやりとりを記載したとされる書面(乙66~79)は、送信者や情報提供者を特定することができず、また、その記載を裏付ける客観的な証拠はない以上、採用することができない。

 したがって、原告会社が従業員らに対してマインドコントロールをしていることの真実性を認めるに足りる証拠はなく、被告の上記主張は採用することができない。

 また、被告は、原告会社が若者を不眠不休で無償労働させたり、借金を強要したり、家賃を滞納したり、設立以来決算をしたことがないことは真実である旨主張するところ、たしかに、証拠(原告高柳、原告矢田)によれば、原告会社は原告高柳や従業員らに借入があること、従業員らに対して正式な給与は支払っていないこと、原告会社の事務所賃料を滞納したり、決算書類を作成していないことが認められるため、29番の「無償労働をさせている」との表現や41番「家賃の滞納のために、1年程度で次々に事務所を移転」「設立以来、決算が官報またはインターネット上で公告されたことが一度もなく、会社法違反の状態」などとする表現については、重要な部分について真実性が認められ、違法性が阻却される。

 もっとも、原告会社が従業員らに対して、借金を強要したことや従業員を不眠不休で働かせていることを裏付ける客観的な証拠はなく、この点に関する真実性は認められない。

c 評論としての相当性

 カルト団体である旨の論評(8~10、24,26,27,46,49,60,62)については,キリスト教に関する情報提供を目的とする団体にとって、カルト団体である旨の評価がされることは、その活動の信用性を著しく損なうおそれがあるから、意見ないし論評としての域を逸脱したものとして違法性が認められる。

(ウ) 以上によれば、表現③、⑦、⑪及び⑫のうち8~10,17~19,24,26,27,46,49,55,56,59,60,62,70,71,73~75,81,82番は、原告らに対する名誉毀損となる。

続き 威嚇、誹謗中傷、経歴詐称、摂理脱会記、小括、損害について、削除請求について、結論 

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山谷裁判判決文全文⑤ 威嚇、誹謗中傷、経歴詐称、摂理脱会記、小括、損害について、削除請求について、結論 

2020年02月08日 | キリスト教全般

エ 表現④及び⑬(原告ら及び原告会社の記者が被告を威嚇したとの表現。28,30,42,44,53,67,83)









(ア)表現④及び⑬は、原告高柳、原告矢田及び原告会社の記者が、被告に対して法的措置を取る等と申し向けた事実を摘示し、それを「威嚇」である旨の被告の意見論評を加えた表現行為であると認められる。

 そして、前記前提事実(3)のとおり、被告が原告会社に関する疑惑追及を目的として本件ブログでの本件各表現を投稿し始め、その削除を原告会社から求められていたことからすると、原告らと被告は、本件ブログの記載に関する一定の対立関係にあったものと認められる。そして、本件ブログの削除を求める原告会社が、被告に対して、法的措置を取る旨の発言をしたことをもって、被告が「威嚇」である旨評価したとしても、一般通常人であれば、原告会社と被告との対立関係が激化しているとの印象を受けるにすぎず、原告らが主張するような原告会社が権利行使を盾に反社会的な行為を行う団体であるとの印象までは抱かないというべきであるから、表現④及び⑬は、原告会社の社会的評価を低下させるものとは認められない。

(イ)よって、表現④及び⑬は、原告らに対する名誉毀損とはならない。

 

オ 表現⑤及び⑥(不審者、不審車両、サーバーアタック、誹謗中傷等。1~6、12~16、21,25,28,32((ア),(イ)を除く。),39,45,57,58,63,69,72)

管理人注 赤丸は名誉毀損成立






















(ア)この点、原告の主張からすると、表現⑤及び⑥のうち1~5、12,13,15,16,28,58,63,69番は、原告会社が、被告に対して不審者・不審車両を差し向けたり、救世軍に対するサーバーアタックをしたりしていること、被告や救世軍に対するインターネット上の誹謗中傷を行っていること、原告高柳が、「ブログの記事を削除しなさい。さもなければ、大変なことになる」と述べた直後に、不審車両、不審者、サーバー攻撃などの事態が生じたことを摘示した表現であるとされる。

 しかし、上記各表現には、この不審者・不審車両を差し向けたのが原告会社であるとは明言されておらず、ただ不審者・不審車両が存在したとの事実を記載しているにすぎないし、「科学的証拠は一切存在しない」、「サーバーアタックの仕掛人が、いったいだれであるのか、皆目見当がつかない」などと自ら根拠がないことを認める表現もある。そうすると、これらはその表現態様からして、対象とする主体が不明であったり、被告の主観的で、かつ証拠がないことを認めた上での憶測を述べているだけの表現であるといえ、このような表現は、通常一般人の読み方からして、原告会社が不審者や不審車両を配置したり、サーバーアタックを行ったりしたとの明確な印象を直ちに抱くとはいい難い。

 したがって、表現及び6のうち、上記表現態様である1~5、12,13,15,16,28,58,63,69番については、原告会社の社会的評価を低下させるとまではいえない。

 他方、6,14,21,25,32((ア),(イ)を除く。)、39,45,57,72番については、原告会社がインターネット上で誹謗中傷をしたり、個人情報を晒したりしている旨摘示する表現であるところ、組織的にインターネット上で他人を誹謗中傷したり、個人情報を晒すことは、不当ないし違法な活動を行う反社会的団体であるとの印象を与えるから、社会的評価が低下するところ、上記誹謗中傷や他人の個人情報を晒している主体について、「クリスチャントゥデイ工作員」「クリスチャントゥデイ側の意を汲むとおぼしき人物」「クリスチャントゥデイ側」「クリスチャントゥデイ社長の高柳泉が匿名で開設したブログ」などと記載されており、このような記載を一般人が読めば、原告会社が不当ないし違法な活動を行う反社会的団体であるとの印象を抱くものといえる。

 したがって、6,14,21,25,32((ア),(イ)を除く。)、39,45,57,72番については、原告らの社会的評価を低下させる。

(イ)この点、被告は、表現⑤(21番(イ)を除く。)及び⑥について、真実性ないし相当性が認められ、違法性が阻却される旨主張するが、原告会社が、不審者・不審車両を差し向けたこと、サーバー攻撃をしたこと、インターネット上で誹謗中傷をしたことを認めるに足りる証拠はなく、また、真実と信じるについて合理的な根拠も認められないから、被告の上記主張は採用することができない。

 もっとも、21番の(イ)については、証拠(原告高柳p47)によれば、匿名ブログである「Sola Gratia」を管理しているのは原告会社の記者である井手であることが認められるから、同表現のうち「クリスチャントゥデイの記者たちは、Sola Gratia…といった匿名ブログを立ち上げて、『23』の個人情報を…ネット上で流す対抗手段を取るに至った。」との表現は、重要な部分について真実性が認められる。

(ウ)以上により、表現⑤及び⑥のうち6,14,21((イ)を除く。),25,32((ア),(イ)を除く。),39,45,57,72番については、原告らに対する名誉毀損が成立する。

 

カ 表現⑨(原告高柳が経歴を詐称したとの表現。65,77)


(ア)65,77番は、一般人通常人がこれを読めば、原告高柳が被告に対して経歴について虚偽を述べたとの事実を摘示するものであり、原告高柳が経歴を詐称する人物であるとの印象を与えることから、原告会社及び原告高柳の社会的評価を一応低下させる表現といえる。

(イ)もっとも、前記認定事実(5)ケに加えて、証拠(乙35)によれば、東京ソフィア教会の週報において、原告高柳は「ロサンゼルス・ピルグリム教会の高柳泉幹事」として紹介されていること、原告高柳は、日本代表使役者の立場であり、韓国で牧師按手を受けて後、東京ソフィア教会において牧師の立場で活動していたことが認められ、自分の立場について組織的背景はないとして、東京ソフィア教会への所属を否定する説明をしたことについて虚偽であると評価されてもやむを得ない事情があったといえる。そうすると、65,77番は、摘示された事実の重要な部分について真実性が認められ、違法性が阻却される。

(ウ)よって、65,77番については、原告会社及び原告高柳に対する名誉毀損は成立しない。

 

キ 表現⑩(原告高柳が匿名ブログで被告の誹謗中傷を行っているとの表現。79)

(ア)表現⑩は、一般人が読めば、原告会社ないし原告高柳が不当ないし違法な活動をする反社会的団体とその役員であるとの印象を抱かせるか

ら原告会社及び原告高柳の社会的評価を低下させる。

(イ)被告は、原告高柳が匿名ブログを管理し記事を投稿しているから、真実性ないし相当性が認められると主張する。

 この点、証拠(原告高柳p47)及び弁論の全趣旨によれば、匿名ブログは、原告会社の記者である井手が管理していたこと、同ブログに被告の批判記事が投稿された当時の原告会社の代表者である原告高柳は、高柳■■会談の反訳を作成し、それを匿名ブログの管理者である井手に提供していたこと、高柳■■会談の内容については、匿名ブログにおいて注釈付きで掲載されたことが認められる。

 そうすると、原告高柳自身が匿名ブログを管理し記事を書いたとする客観的な証拠はないものの、匿名ブログを閲覧した被告が、匿名ブログで批判記事を投稿している管理者を原告高柳であると信じたことについて合理的な根拠があるというべきであり、真実と信じることについての相当性が認められる。

(ウ) よって、表現⑩は、原告会社及び原告高柳に対する名誉毀損とはならない。

 

ク 表現③の36番及び⑭の84番(「摂理脱会手記」が原告矢田の自己の体験ではないかとの表現)


(ア) 36,84番は、原告会社が発行するインターネット新聞「クリスチャントゥデイ」に原告矢田が書いた「摂理脱会手記」が、原告矢田の千葉信望教会での体験を綴ったものではないかとの記載しているところ。これは、特に根拠を示さずに被告自身の推論を示しているだけであり、その表現態様からして、一般人がこの表現を閲覧しても、直ちに原告矢田が反社会的団体とされる摂理の信者であったとの印象を抱くとはいえず、原告会社及び原告矢田の社会的評価が低下するものとはいえない。

(イ)よって、36,84番は、名誉毀損とはならない。

(5) 小括

 以上により、本件各表現のうち別紙主張整理表の「表現行為」欄の6,8~10,14,17~19,21((イ)を除く。)、23~27,31,32((ア),(イ)を除く。),34,35,37,39,40,43,45,46,49,51,55~57,59~62,66,68,70~75,78,80~82番について名誉毀損が成立する(以下「本件各名誉毀損表現」という。)。

3 損害について

(1)本件各名誉毀損表現の内容、本件記事が掲載された被告の管理する本件ブログが、原告会社関係者からの削除要請にもかかわらず、現在に至るまで掲載されていること、前記認定事実4)及び(5)のとおり、張在字が過去に統一教会と関係していた事実があり、同人が設立し代表者となって深く関与する諸団体と原告会社とは密接な関係が認められること、その他弁論の全趣旨や証拠調べの結果によって認められる一切の事情を賜的すれば、原告会社が被った損害額は50万円、原告高柳が被った損害額は25万円、原告矢田が被った損害額は15万円と認めるのが相当である。また、弁護士費用については、原告会社の上記損害額の1割である5万円を損害として認めるのが相当であるから、原告会社の損害額合計は55万円となる。

 したがって、被告は、原告会社に対し、55万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年4月29日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。

 また、被告は、原告高柳に対し、25万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。

 さらに、被告は、原告矢田に対し、15万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。

(2)謝罪文掲載措置の要否

 上記のとおり、本件各名誉毀損表現が原告らについて摘示する事実の内容等に鑑みると、原告らの被った不利益の程度は小さいものといえないものの、本判決によって被告による名誉毀損が認定され、上記(1)の金額の損害賠償が支払われることによって、原告らの社会的評価や精神的苦痛は相当程度回復されると考えられること、前記認定事実(6)のとおり、原告会社は世界的なネットワークを有するマスメディアであり、自ら名誉回復措置を取ることが可能であることなど一切の事情を考慮すれば、上記(1)の金銭賠償に加えて、謝罪文を被告が管理するサイト上で掲載することが必要とまでいえる事情は認められないから、原告らの謝罪広告の掲載を求める請求は、理由がない。

4 削除請求について

 本件各名誉毀損表現については名誉毀損が成立し、これを不特定多数人が閲覧することが可能なインターネット上で放置すれば、原告らに将来的にも損害が生ずるものと認めるのが相当であるから、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するために、名誉毀損成立部分である本件各名誉毀損表現について削除請求を認めるものとする。

第4 結論

 よって、原告らの請求のうち損害賠償請求は前記3(1)の限度で、削除請求は前記4の限度で理由があり、その余は理由がないからこれらを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第17部

裁判長裁判官 戸田   久

裁判官 今井和桂子

裁判官   中野   雄壱

これも読んでおきましょう→裁判後に仮処分によって山谷氏に対し削除が命じられた毀損表現一覧

コメント (4)
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