中国一の富豪、アリババ経営者「行方不明」の闇 習政権批判のせいなのか 識者「目的はグループ解体」 (1/2ページ)
- <iframe frameborder="0" marginwidth="0" marginheight="0" scrolling="no"></iframe>金融フォーラムで講演する馬雲氏=2020年10月、中国・上海(フォーラムのホームページから、共同)
ロイターは4日、馬氏が昨年10月下旬に上海で開かれた金融フォーラムに出席して以来、公の場に姿を現していないと報じた。フォーラムで馬氏は「優れたイノベーション(技術革新)は監督を恐れないが、古い方式による監督を恐れる」と発言、中国当局を批判したと受け止められた。
11月にはアリババ傘下で電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」を運営するアント・グループが上海と香港で予定していた新規株式公開(IPO)が直前に延期。12月には中国国家市場監督管理総局がアリババグループを独占禁止法違反の疑いで調査する方針を明らかにした。
馬氏について欧米メディアは「行方不明」と積極的に報じるが、中国メディアは静観の姿勢だ。
東アジア地域の経済を研究する愛知淑徳大ビジネス学部の真田幸光教授は、「中国はデジタル人民元を普及させ、ドルの駆逐を狙っており、アリババグループを利用したかったが、馬氏が難色を示したことが背景にあるのではないか」とみる。
中国情勢に詳しい評論家の石平氏は「拘束されているかどうかは分からないが、国内を出ることができないのだろう」とした上で、「中国当局の目的はアリババグループの解体だ」と推察する。
馬氏は中国浙江省出身で、英語教師から1999年にアリババを創業、巨大なECグループに成長させ、2014年にニューヨーク証券取引所に上場させた。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(63)とも親しく、昨年6月まで同社取締役を務めた。昨年9月にはアリババグループの会長職も退いた。
世界的富豪としても知られ、昨年11月に米経済誌フォーブス中国語版が発表した中国の長者番付でも馬氏は4377億人民元(約6兆9700億円)で首位だった。
中国の経営者をめぐっては、安邦保険集団の創業者で、●(=登におおざと)小平氏の孫娘と結婚していたとされる呉小暉氏が拘束され、のちに詐欺罪などで懲役18年の有罪判決を受けた。米ウォールストリート・ジャーナルは、政府と対立してきた大午集団の創業者、孫大午氏が昨年拘束されたと報じた。世界的なカリスマ経営者といわれる馬氏と巨大企業のアリババであっても中国当局ににらまれるとひとたまりもないのか。前出の真田氏は「中国は『経済成長するには中国を頼らなければならないだろう』と考えており、将来的なリスクは限定的とみているはずだ。今後、アリババグループは国有企業化が強まることとなるだろう」と指摘した。