コウジの答えに、ミイコが黙り込んだ。
「それにしても、たまご・・・・って」
言いかけたマドカが、ふと気づいたように
「そういえば、なんであれをモルドって言うんですか?」
ちらり と、黙り込んだミイコに一瞬視線を送る。
「MOLT(モウルト)羽化、から取った呼び名です。MOULDHIAN(モウルディアン)脱皮するもの。で、モルドです。彼らは、幼体のうちは、比較的皮が薄いので通常攻撃がある程度は通用します。そして、蛹体。これは二種類ありまして成体になるために必要なのですが、一つは厚い皮を持っつため通常攻撃がほとんど通用しません。ですが動きが鈍いため集中攻撃をする事でどうにか倒すことが出来ます。もう一つの蛹形態ですが、これが、かなり特殊で・・・、通常は蛹体で過ごすのは一年ほどですが、この場合、幼体からら数秒の蛹体を経て成体へ変化していくものです。モルドにとって身の危険を感じた場合、行われる変態です」
「それって、・・・・」
コウジの長い説明を聞いていたマドカが唖然とした顔で
「幼体を攻撃した途端、返り討ちにあう可能性もあるって事じゃないですか」
との呟きに
「そうですね」
コウジが短く答える。
をい、そうですねじゃねーだろーが! 思わず、突っ込みを入れようとしたマドカより早く
「でも、モルドの全てがその、変態をする訳ではないのでしょう? 特殊と言うくらいですから、それには何か条件があるのですか?」
今まで黙りこくっていたミイコが口を挟んだ。
「そうですね。その場合、全ての脱皮工程が終わり、一息に成体へ変化出来るだけのエネルギーを持つものに限られます。ただこれは、外見上の判断が出来ません。もし、それに出くわしたら十数人で一斉射撃を加えれば多少のダメージを与えることは出来ますが、危険な場合は逃げるしかないと言うのが正直なところです」
はっきり言って、積極的な攻撃は出来ないに等しい訳だ。
コウジの話を聞いたマドカとミイコが顔を見合わせた。
と、その時、
ぴぴぴ・・・
コウジの前にある通信機の呼び出し音が音を立てた。
「それにしても、たまご・・・・って」
言いかけたマドカが、ふと気づいたように
「そういえば、なんであれをモルドって言うんですか?」
ちらり と、黙り込んだミイコに一瞬視線を送る。
「MOLT(モウルト)羽化、から取った呼び名です。MOULDHIAN(モウルディアン)脱皮するもの。で、モルドです。彼らは、幼体のうちは、比較的皮が薄いので通常攻撃がある程度は通用します。そして、蛹体。これは二種類ありまして成体になるために必要なのですが、一つは厚い皮を持っつため通常攻撃がほとんど通用しません。ですが動きが鈍いため集中攻撃をする事でどうにか倒すことが出来ます。もう一つの蛹形態ですが、これが、かなり特殊で・・・、通常は蛹体で過ごすのは一年ほどですが、この場合、幼体からら数秒の蛹体を経て成体へ変化していくものです。モルドにとって身の危険を感じた場合、行われる変態です」
「それって、・・・・」
コウジの長い説明を聞いていたマドカが唖然とした顔で
「幼体を攻撃した途端、返り討ちにあう可能性もあるって事じゃないですか」
との呟きに
「そうですね」
コウジが短く答える。
をい、そうですねじゃねーだろーが! 思わず、突っ込みを入れようとしたマドカより早く
「でも、モルドの全てがその、変態をする訳ではないのでしょう? 特殊と言うくらいですから、それには何か条件があるのですか?」
今まで黙りこくっていたミイコが口を挟んだ。
「そうですね。その場合、全ての脱皮工程が終わり、一息に成体へ変化出来るだけのエネルギーを持つものに限られます。ただこれは、外見上の判断が出来ません。もし、それに出くわしたら十数人で一斉射撃を加えれば多少のダメージを与えることは出来ますが、危険な場合は逃げるしかないと言うのが正直なところです」
はっきり言って、積極的な攻撃は出来ないに等しい訳だ。
コウジの話を聞いたマドカとミイコが顔を見合わせた。
と、その時、
ぴぴぴ・・・
コウジの前にある通信機の呼び出し音が音を立てた。
「あの、・・・・」
突然のミイコの声に二人の男性の目が集中する。
一瞬、詰まったミイコだが、思い切ったように疑問を口にした。
「あの、モルドの全てが危険な存在なのでしょうか?」
コウジの顔が僅かに反応する。
「モルドが・・・ですか? いえ、全て危険とは、言えません。中には、人類の味方をするモルドもいます」
「味方って?」
そう言ったのはマドカ。訳が分からないといった顔だ。
「対モルド用の武器等は、モルドの技術提携があってのことですし、そもそもこの組織アトフの創始者の中にもモルドがいます」
え? モルドがモルドに対抗する?
信じられないのは、ミイコもマドカも同じこと。
「人類が戦争をしますね。喧嘩や抗争、同じ人間同士で・・・。それは、モルドも同じ事なんです。人と共存を望むモルドとそうでないモルドと・・・・、その他にも様々なモルドがいます。基本的にアトフは、人に害をなすモルドを廃するための組織なんです」
コウジの言葉に、ミイコとマドカが顔を見合わせた。
「モルドは、自らの安全が、我々は、モルドの科学力が・・・。アトフは、モルドの科学力を提供してもらい、かわりにモルドを守る。モルドからモルドを。まあ、モルドが自分達の抗争にたまたまそこにいた人間達を巻き込んだようなものかもしれませんが・・・。それでも、モルドに対抗するには、モルドの科学力が必要なんです。たとえ、矛盾してるとしても」
そう言って、コウジが自嘲気味に笑う。
「さっき、その他にもって言いましたよね。その、モルドの中には、自覚のないモルドっているんですか?」
ミイコの問いに“何、あほな事を・・・”という顔のマドカだが
「自覚のないモルドは、確かに存在します。すでに確認されているものだけで、20人ほど。他には、自覚はあるものの、人として社会に溶け込んで日常生活を送っているモルドもいます。アトフの内部だけですでに100人近くいます」
という、コウジの答えが返ってきた。
「どうして、自覚がないんですか?」
「そうですね。たとえば、人として生活しているモルドの両親から生まれて人として育ったとか、まだ自意識のないうちに人を取り込んでコピーして、そのまま育った。あるいは、これは非常にまれなのですが、取り込んだ人の意識にのまれるたり、モルドの記憶を失い人の記憶のみが残ったという場合などもありました」
突然のミイコの声に二人の男性の目が集中する。
一瞬、詰まったミイコだが、思い切ったように疑問を口にした。
「あの、モルドの全てが危険な存在なのでしょうか?」
コウジの顔が僅かに反応する。
「モルドが・・・ですか? いえ、全て危険とは、言えません。中には、人類の味方をするモルドもいます」
「味方って?」
そう言ったのはマドカ。訳が分からないといった顔だ。
「対モルド用の武器等は、モルドの技術提携があってのことですし、そもそもこの組織アトフの創始者の中にもモルドがいます」
え? モルドがモルドに対抗する?
信じられないのは、ミイコもマドカも同じこと。
「人類が戦争をしますね。喧嘩や抗争、同じ人間同士で・・・。それは、モルドも同じ事なんです。人と共存を望むモルドとそうでないモルドと・・・・、その他にも様々なモルドがいます。基本的にアトフは、人に害をなすモルドを廃するための組織なんです」
コウジの言葉に、ミイコとマドカが顔を見合わせた。
「モルドは、自らの安全が、我々は、モルドの科学力が・・・。アトフは、モルドの科学力を提供してもらい、かわりにモルドを守る。モルドからモルドを。まあ、モルドが自分達の抗争にたまたまそこにいた人間達を巻き込んだようなものかもしれませんが・・・。それでも、モルドに対抗するには、モルドの科学力が必要なんです。たとえ、矛盾してるとしても」
そう言って、コウジが自嘲気味に笑う。
「さっき、その他にもって言いましたよね。その、モルドの中には、自覚のないモルドっているんですか?」
ミイコの問いに“何、あほな事を・・・”という顔のマドカだが
「自覚のないモルドは、確かに存在します。すでに確認されているものだけで、20人ほど。他には、自覚はあるものの、人として社会に溶け込んで日常生活を送っているモルドもいます。アトフの内部だけですでに100人近くいます」
という、コウジの答えが返ってきた。
「どうして、自覚がないんですか?」
「そうですね。たとえば、人として生活しているモルドの両親から生まれて人として育ったとか、まだ自意識のないうちに人を取り込んでコピーして、そのまま育った。あるいは、これは非常にまれなのですが、取り込んだ人の意識にのまれるたり、モルドの記憶を失い人の記憶のみが残ったという場合などもありました」
白いもやがまとわりつく。あぁ、これは、モルド対策のガスだ。その向こうに見えるのは・・・。
さっきのモウルディアン。
ここは、さっきのアパートだ。どうして、あたし、ここに戻って来てるの?
“オマエハ ナゼ”
聞こえるモウルディアンの声。まるで心臓を掴まれているようだ。
“オマエハ、・・・・デアリナガラ、ニンゲンニカタンスルノカ”
“ ウラギリ”
「この、化け物!」
思い出した。ずっと前、自分を襲った男からおびえた顔で浴びせられた言葉。
水溜りに写った異形の姿。
家で見つけた“東緑依子ノ霊位”と書かれた位牌。
私は、一体、だれ?
ふと、目を開けると、向こうでマドカとコウジが何やら話をしている。
ミイコが眠っていたのは、ほんの僅かの時間だったようだ。
「お、大丈夫か、起きて?」
振り返ったマドカが声を掛けた。
「うん、少し寝たらすっきりした」
ミイコは起き上がり、毛布をたたんでソファーの隅に置く。
「飲みますか?」
コウジがまたコーヒーを入れてくれた。
さっきのモウルディアン。
ここは、さっきのアパートだ。どうして、あたし、ここに戻って来てるの?
“オマエハ ナゼ”
聞こえるモウルディアンの声。まるで心臓を掴まれているようだ。
“オマエハ、・・・・デアリナガラ、ニンゲンニカタンスルノカ”
“ ウラギリ”
「この、化け物!」
思い出した。ずっと前、自分を襲った男からおびえた顔で浴びせられた言葉。
水溜りに写った異形の姿。
家で見つけた“東緑依子ノ霊位”と書かれた位牌。
私は、一体、だれ?
ふと、目を開けると、向こうでマドカとコウジが何やら話をしている。
ミイコが眠っていたのは、ほんの僅かの時間だったようだ。
「お、大丈夫か、起きて?」
振り返ったマドカが声を掛けた。
「うん、少し寝たらすっきりした」
ミイコは起き上がり、毛布をたたんでソファーの隅に置く。
「飲みますか?」
コウジがまたコーヒーを入れてくれた。
アパートでのモルドの突き刺さるような視線。まるで、憎しみを叩きつけられたような感じがした。
なぜ?
ミイコとしては、見ず知らずのモルドから恨みを買う覚えはないのだが・・・。
「・・・い、おい。ミイコ、顔色悪いぞ、大丈夫か?」
うつむいて考え事をしているミイコの顔を覗き込んだマドカが声を掛けた。
「え? うん、大丈夫」
ミイコは、あわてて答えたのだが・・・・。
あれ、何だろう? あたまがくらくらする・・・・。
思わず頭を抱えたミイコに
「やっぱ、連続で跳んだのは、きついか・・・」
マドカの声が降ってきた。
そういえば、さっき車の中から基地の入り口まで跳んだのだった。
「すこし、横になった方が良いですよ。ここなら、モルドもそう簡単には入ってこられません」
コウジが近くのソファーを指し示した。
「その方がいい。すいません、お言葉に甘えます」
そう言ったマドカがミイコをソファーに横たえ、コウジが差し出した毛布をかける。
「ありがとう、ごめんね」
「いいって。少し、休んでろ」
そう言った、マドカが小さな子供を寝かしつけるように、毛布の上からミイコの身体をぽんぽんと叩いた。
なぜ?
ミイコとしては、見ず知らずのモルドから恨みを買う覚えはないのだが・・・。
「・・・い、おい。ミイコ、顔色悪いぞ、大丈夫か?」
うつむいて考え事をしているミイコの顔を覗き込んだマドカが声を掛けた。
「え? うん、大丈夫」
ミイコは、あわてて答えたのだが・・・・。
あれ、何だろう? あたまがくらくらする・・・・。
思わず頭を抱えたミイコに
「やっぱ、連続で跳んだのは、きついか・・・」
マドカの声が降ってきた。
そういえば、さっき車の中から基地の入り口まで跳んだのだった。
「すこし、横になった方が良いですよ。ここなら、モルドもそう簡単には入ってこられません」
コウジが近くのソファーを指し示した。
「その方がいい。すいません、お言葉に甘えます」
そう言ったマドカがミイコをソファーに横たえ、コウジが差し出した毛布をかける。
「ありがとう、ごめんね」
「いいって。少し、休んでろ」
そう言った、マドカが小さな子供を寝かしつけるように、毛布の上からミイコの身体をぽんぽんと叩いた。
毎月、旧暦の一日 夕陽が山の向こうに沈むのをみながらORARE駅に急ぐ。
今日を逃すと、また来月まで待たなくてはならない。
駅の10番ホーム
入ってきた電車の最後尾車両に乗り込む
しばらくして、電車が発車した。
いつものように正確な時間。
そして、しばらく行くと 短いトンネルを通過する。
ガクン この車両だけが列車から外れ、代わりに別の車両が連結される。
それは、一瞬のこと。
この車両のみが勢いのまま走り続け、向こうで待っている別の列車に連結される
ぐんっ と、速度が上がり 運転車両から順に空へ舞い上がる。
目下に広がる地上の灯りが小さくなる。
ここへ帰ってくるのは、満月の夜。
END
意味もなく、短編を書いてみました。
サトビさんのコメントに触発されたものです。
いかがでしょうか?
今日を逃すと、また来月まで待たなくてはならない。
駅の10番ホーム
入ってきた電車の最後尾車両に乗り込む
しばらくして、電車が発車した。
いつものように正確な時間。
そして、しばらく行くと 短いトンネルを通過する。
ガクン この車両だけが列車から外れ、代わりに別の車両が連結される。
それは、一瞬のこと。
この車両のみが勢いのまま走り続け、向こうで待っている別の列車に連結される
ぐんっ と、速度が上がり 運転車両から順に空へ舞い上がる。
目下に広がる地上の灯りが小さくなる。
ここへ帰ってくるのは、満月の夜。
END
意味もなく、短編を書いてみました。
サトビさんのコメントに触発されたものです。
いかがでしょうか?