財務管理の基本知識について、体系的に記述していきます。
内容が古いなと感じたら、現在の財務管理の内容と照らし合わせながら見ていただくと、より理解いただけるかと思います。
予算管理:予算差異分析
予算による統制には、事前、事中および事後という3つの局面がある。このうち第3の局面、事後統制にあたっては、予算差異分析が中心的な作業になる。
予算差異分析は、実績がどれだけ予算と合致したかを明らかにするものである。それは予算と実績との差異を測定し、予算の執行に責任を負っている部門管理者の業績評価のための基礎データを収集すると同時に、次期の予算編成に対して問題提起の役割も担っている。それは差異の原因を明らかにして今後の財務管理に有用な情報を導き出すために行われるのである。
予算差異分析の公式
・売上高差異=売上高実績額-売上高予算額
・売上高差異=販売数量差異+販売価格差異
・販売数量差異=(実績販売数量-予算販売数量)×予算販売価格
・販売価格差異=(実際販売価格-予算販売価格)×実際販売数量
予算差異分析を行ううえでの留意点
第1は、例外原理である。これは、予算差異分析はすべての項目について等しく行われるのではなく、最額が例外的に大きな項目についてだけ行われるということである。管理者の利用可能な時間や能力に限界がある以上、経営の知恵ともいえるであろう。
第2は、さらに追跡調査を必要とするということである。例えば売上高差異分析は、販売数量差異と販売価格差異を明らかにするが、今後の財務管理に真に有用であるためには、さらにそれらの原因を明らかにする必要がある。
第3は、責任会計システムとの関連である。予算差異分析は予算報告として部門管理者からトップ・マネジメントに報告され、部門管理者の業績評価のデータとなる。一般に部門管理者の業績評価には、組織上の管理責任に合致した報告システムとしての責任会計が有用とされている。予算差異には部門管理有にとって管理可能差異と管理不能差異があり、そのような区分も常に明確になっているとはいえない。したがって、予算差異を通じてあまりに過度に部門管理者を追求しようとすると、逆機能的な予算管理が行われる恐れが生じる。
第4は、予算の改訂である。予算編成時に予測した諸条件に大きな変化が生じた場合には、新しい条件に適合する新予算を編成することが行われる。このような予算の弾力的な運用は、第2で述べた予算差異分析の究明における困難をある程度緩和できる。
第5は、標準原価管理とのかかわりである。予算管理と同時に標準原価管理が行われている場合には、予算差異分析の保管を標準原価差異分析によって試みることが可能である。
つづく