財務管理の基本知識について、体系的に記述していきます。
内容が古いなと感じたら、現在の財務管理の内容と照らし合わせながら見ていただくと、より理解いただけるかと思います。
原価管理(コスト・マネジメント):原価管理の意義
季悠長企業会計審議会の原価計算基準は、原価管理を「原価の標準を設定してこれを指示し、原価の実際の発生額を計算記録し、これを標準と比較して、その差異の原因を分析し、これに関する資料を経営管理者に報告し、原価能率を増進する措置を講ずることをいう。」と定義している。これがいわゆる伝統的な原価管理の考え方である。
これは原価そのものだけを対象としており、「狭義の原価管理(コスト・コントロール)」を意味している。
これに対して経済産業省産業構造審議会の「答申:コスト・マネジメント」によれば、原価管理は「利益管理の一環として、企業の安定的発展に必要な原価引き下げ目標を明らかにするとともに、その実施のための計画を策定し、これの実現を図る一切の管理活動をいう」と定義している。
ここでは原価管理を広義でとらえ、その課題のごとく「コスト・マネジメント」として捉えている。
この考え方の特徴は前者と比べると、その対象を原価と利益との関係でとらえているということにある。すでに学んだ「利益予算公式:売上高-目標利益額=許容原価」という考え方で原価をとらえることが要請されていることを考慮すると、この定義のほうが妥当な解釈といえよう。
そして原価管理が、原価計画と減価統制という2大プロセスによって構成され、原価統制が狭義の原価管理に相当しているとされ、その意味で「答申:コスト・マネジメント」は「原価計算基準」の考え方も包含しているのである。
原価管理(広義)の概念式
原価管理(広義)=原価計画+原価統制(狭義の原価管理)
コスト・マネジメントにおいては原価引き下げ、すなわちコストダウンの目標を明確にすることが要請されている。そこでコスト・マネジメントとコストダウンの関係について少し考察する。
コストダウンとは、「製品の品質を損なわずに製造および販売の管理を行うのに要する単位原価を、企業努力によって永続的に引き下げること」と定義できる。近年のように低成長時代になると、企業の売上高の急伸は期待できず、無理な販売に邁進するとコストが浪費されてしまい、売り上げの増進のみによる利益の確保が困難となる。そこでコストダウンによる利益確保が必要不可欠になっており、そのためには生産性の向上によるコストダウンを促進するとともに、コスト・マネジメントの徹底が要請されるのである。
つづく