ものずき烏の無味乾燥?文

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全相運:韓国科学技術史

2005-04-30 | 書籍 の 紹介

全相運『韓国科学技術史』 高麗書林 1978/11/20

 渤海国から受け入れたという(唐)宣明暦のながい施行を経て、渋川春海の貞享暦で我が国は、中華文明の正朔(*)から解き放たれた。そして寛政暦・壬寅天保暦により中国を追い越し、世界情勢の認知において東アジアので最初の太陽暦採用国となった。この暦法の推移は科学技術の典型とみることができる。
 有人宇宙船で中国はアジア初となったのだか、これをどうみるかは将来の史家が判断するであろう。

 おなじ中華文明の周縁で隣国の韓国では、すこし事情がことなるようである。日本の暦法の推移を調べ中国の史料まで踏み込んだわたしであるが、すこし周りをみてみようと求めたのがこの全相運『韓国科学技術史』である。研究機関なら蔵書となっていて、いつでも参照できる書籍であろうが、無学無縁で一般庶民のわたしは、なかなか見れない。みつけたのが明倫館書店で比較的割安(¥3000)であった。もちろん古書であるからして一点ものと云う市場価値を持つ。

 暦法史に関しては、(唐)宣明暦の時代がながいのは本邦と同様であるが、その後も(元)授時暦、(明)大統暦、(清)時憲暦と中国の影響から抜け出していない。関連して元号というものがあるが、これも朝鮮では独自の元号は継続してたてられなかった。暦法の史料としては中国、日本の欠を補うものが存在するようである。
 中国で木刻活字が使われているのに、朝鮮で金属活字を採用したのはすばらしい。ただ多くの種類をもつ漢字という問題で、アルファベットにくらべ印刷技術で活字の使用が普及しなかったのは、東アジアの不利な条件であった。印刷物の多量普及という情報面で欧米に遅れをとったかもしれないが、現在この障害は解消されたと思っている。
 秀吉の侵略で活躍した亀甲船は、時代小説で登場するが、その構造なども解説してある。

 この書籍、所有しているからしてざっと読んだだけである。なにか気になることがあるとページを繰ることができるという安心感が購入代金となっている書籍である。


(*)中華文明の正朔
 単に日にちを記すのにつかわれているだけではなく、"正朔を奉じる"というのは支配下に入ることなのである。杓子定規に考えればの話であるが、中国暦であれば中国の支配下に、西暦であればローマ法王の支配下となるのである。似たようなのが、現行の祝日で国が毎年決めている春分と秋分の日。これは天文台と海上保安庁で計算することなっているが、天体観測データのおおもとが米海軍の機関であるから、この祝日は「アメリカの正朔を奉じている」と国粋主義者が叫んでもあながち間違いではないと煽っておこう。と言うのは冗談で、合理性(=簡便性)から春分・秋分の日にちは固定すべきと考える。

2005/04/30 ものずき烏

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