塩見鮮一郎:『 浅草弾左衛門 』
”興味本位で読んでいる”その選別の基準を考えてみた。この時代小説、テーマは幕末から明治にかけての被差別のいきいきとした生活が描かれている。生まれ育った地域性もあるのであろうが、わたしはこの問題に関して無知であったし、今でも無知のままなのかも知れない。美濃部都知事が誕生したころ同和問題としてとりあげたのが、この被差別の問題であったと記憶している。この時期、関連する本「の歴史?」も読んだことがある。
謂れなき差別というが、謂れがあろうがなかろうが、差別というものは、個人の自己保身から発するものであると、理解し認識した。人間の弱さが、自分や自分の家族を優先するため、かれらとは違うのだと強調した結果が、差別となる。いびつな組織であれば、いたるところ未だに存在する、大きな問題(諸悪の根源)である。
この文庫本の親本(批評社)は、4分冊で刊行していた。高価であり、いくら興味本位といっても手は出しかねた。文庫で出ていても、まとめて買えば負担がおおきい。かといって1冊づつ読むかというと、何か事情で続きが読めないのでは面白くないから手を出さない。古書店で誰かが読んだ後に、売り払ったものを入手し読んだ。
浅草弾左衛門(1)天保青春篇(上) 塩見鮮一郎 小学館文庫552 1999/01/01 浅草弾左衛門(2)天保青春篇(下) 塩見鮮一郎 小学館文庫600 1999/03/01 浅草弾左衛門(3)幕末躍動篇(上) 塩見鮮一郎 小学館文庫657 1999/05/01 浅草弾左衛門(4)幕末躍動篇(下) 塩見鮮一郎 小学館文庫657 1999/05/01 浅草弾左衛門(5)明治苦闘篇(上) 塩見鮮一郎 小学館文庫676 1999/07/01 浅草弾左衛門(6)明治苦闘篇(下) 塩見鮮一郎 小学館文庫676 1999/07/01
感想としては、時代の転換期に生きるための経済を重視する、主人公である...ということか。まあ、真宗の本願寺に多額の寄進があったという事実は、他の本でも読んでいたので、身分差別という割には、経済的には相当に裕福なんだと想っている。
6冊の文庫本の書誌事項らしきものを並べてみました。(3)=(4)、(5)=(6) と文庫のシリース番号が重複しているのに気がつきます。決して転記ミスではありません。親本が、天保青春編、幕末躍動編、明治苦闘編、資料編(→未文庫化)、となっていましたので、そのままの分冊で発行すればと考えるのですが、これは現在の文庫の製本技術を配慮して小学館は分冊したと思うのです。
1970年代ころまでの文庫・新書は背中の部分が通常の製本と同じように糸で綴じられていました。現在のものは背中を接着剤で固めた無線綴じとなっています。古本をよく購入するわたしは、背中が割れてしまい読でいるとバラバラになってしまう文庫に遭遇します。はっきりと背表紙が割れてしまったのは古書店主が商品価値がないと判断し処分するのでしょう、出会う確率は極めて少ない。本の価値は中身と思いますので分解しないよう再製本をして読みます。
(わたしの再製本の方法は、そのうちに機会があったらデジカメで撮って紹介します。)
背割れを起こす文庫本は、ぶ厚くて、接着剤層も厚いものです。接着剤の乾燥と劣化によって、書物が分解してしまう運命を背負っています。こんなことを考えながら、後発の文庫ながら分冊数を増やした小学館の姿勢に敬意を表しておきます。
2005/05/12 ものずき烏 記
2005-06-27 わたしの、背割れ文庫本の補修方法を紹介します。
ホームページにのせました。こちら→ 無線綴じ文庫本の補修