【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
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【経費削減!】社長の自宅に会社を移転する

2020-10-20 17:40:00 | 起業(会社設立など)と経営
コロナ禍においてテレワークが推し進められ、都心部のオフィスを縮小する動きが起こっています。中小零細企業では、経費削減も兼ねて会社を社長の自宅に移転させるという方法がとられています。しかし、合理的に思えるこの選択ですが、そこには様々な問題が生じることもあるのです。

◆自宅が社長の持ち家の場合(移転前から所有)

〇会社から社長へ家賃を支払うことができる
たとえ貸主が社長であっても(他人でなくても)、会社は社長に対して家賃を支払うことができます。もちろん、家賃を支払わないことも可能です。また、家賃とは別に、社長個人で支払っている電気・ガス・水道料金の会社利用相当額を会社から社長に支払うこともできます。

〇社長が会社から受け取る家賃は不動産所得として確定申告が必要
社長が会社から受け取る家賃は、社長個人の不動産所得として確定申告が必要となります。不動産所得は「家賃収入―必要経費」として計算しますが、必要経費には減価償却費(持ち家の購入代金)、固定資産税、住宅ローンの利息などがあります。ただし、必要経費にできるのは会社に賃貸している部分に対応する金額に限られます。

【社長と親族の共有名義である場合】
持ち家の名義が社長と親族の共有名義になっている場合には、家賃はそれぞれの持ち分に応じて受け取り、確定申告も持ち分に応じてします。

【住宅ローン控除は賃貸している部分を除いて適用する】
住宅ローン控除は居住用物件に関しての適用ですので、会社に賃貸している部分相当額の住宅ローン利息は除かれます。

◆自宅が社長個人で契約している賃貸住宅の場合(移転前から契約)

社長が個人的に契約して支払っている家賃のうち、会社として負担すべき金額を、社長は会社から受け取ることができます。会社が社長に支払った金額は会社の費用になります。社長が会社から受け取る金額は、社長が個人的に支払っている家賃の一部に充当されるので、社長には利益(所得)は生じません。持ち家の場合のように不動産所得の確定申告が必要ないということです。

◆自宅が会社で契約している賃貸住宅の場合(移転前から契約)

このケースは「節税本」で必ず説明されています。ネット上にも情報が多数あります。

家賃は全額会社の費用として処理するとともに、社長からは「わずかな家賃」をもらう(収益が発生する)という方法です。そうすれば会社が支払う家賃の大部分が会社の費用となるのです。しかし、その要件が整わない場合には、「わずかな家賃」ではなく「家賃の半額」を社長からもらう必要があります。

賃貸住宅を会社が契約している場合には、そこに会社を移転させたのであれば、社長の居住スペースが縮小されることになります。そうであれば、社長からもらう家賃も減ることになります。

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★諸費用を公私に区分することが困難なケースも
自宅兼会社の場合には、そこで生じる様々な費用を会社と社長個人のそれぞれが負担することになります。中には両者(公私)に共通して生じる費用もありますが、それについてはそれぞれのスペースの比率などで合理的に区分しなければなりません。しかし、これが困難で、税務調査で問題となる(会社に負担させすぎていると税務署に判断される)場合があります。

★賃貸借契約における用途の制限
賃貸住宅によっては契約で事業目的での利用が制限されていることがあります。会社を賃貸物件に移転させたことを貸主に黙っていても、「登記」「ホームページ」「取引先の来訪」などからばれることがあります。そうなれば、再び会社を移転させなければなりません。

★許認可などによる事業スペースの要件
許認可の必要な業種では「事業用部分」の要件が厳格に定められていることがあります。要件を満たさない場合、持ち家であれば改築が、賃貸住宅の場合には引っ越しが必要となります。

★消費税の扱いに注意
店舗や事務所専用として借りている物件であれば消費税の課税対象になりますが、住宅は消費税が非課税です。会社が消費税の申告をするにあたって、店舗や事務所の場合は家賃のうちの消費税相当額を仕入税額控除できますが(受け取った消費税から差し引いて申告できる)、住宅用の場合にはそれができません。

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