【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

株式投資はひとつの特定口座で!

2022-09-16 15:00:00 | 相続・贈与、資産運用、節税
上場株式(以下株式)の譲渡益や配当に関する所得税の仕組みは大変複雑ですが、以下の方法で株式の売買や配当金の受け取りをしていれば、所得税の確定申告は不要で税金に関する手続はすべて取引をしている証券会社がしてくれます。

◆取引はひとつの特定口座でのみ行う

株や投資信託なんて、どの証券会社で買っても全く同じです。たとえば、トヨタ自動車の株はどの証券会社で買っても同じ日時であれば売買価格は同じです。配当金額も同じです。各証券会社とも口座数を増やすべく取引手数料やポイントなどで自社の特徴や優位性を強調していますが、そんなことは大勢に影響はありません。

株式取引はひとつの証券会社の、しかも特定口座で行うことが「株式投資の鉄則!」であると考えるべきです。

◆特定口座は「源泉徴収あり」で

特定口座を開設しておきながら「源泉徴収なし」を選択してしまっている人がいます。これをしてしまうと年間を通して利益が出た場合には確定申告が必要となります。特定口座は「源泉徴収あり」を選択してこそ意味があるのです。

証券口座はひとつの特定口座しかなく、しかも源泉徴収ありを選択していれば、株式売買と配当に関する税金の計算は特定口座を開設している証券会社がしてくれます。確定申告をすることなく税金の計算は完結するのです。

◆年間を通して損失を出さない(無理かもしれませんが・・・)

株式売買の利益に関する所得税は年間(暦年)トータルで計算されます。年間に株式売買を複数回行った場合には、利益のケースと損失のケースに分かれることがあります。このような場合には個々の売買の利益と損失をプラス・マイナスして計算します。そして、それがプラスであれば株式譲渡所得として所得税が課税されます。

マイナスつまり譲渡損失の場合には所得税は課税されません。ただし、確定申告をすればその譲渡損失を翌年に繰り越して、翌年に譲渡所得が生じた場合、そこから差し引くことができます(最長、翌年以降3年間繰り越せます)。しかし、この確定申告をしてしまうと様々な税金の問題が生じてしまいます。また、給与所得者以外の人であれば国民健康保険料と介護保険料の金額にも影響が出てしまいます。

税金の計算を簡潔にしたいのであれば、年間を通して損失は出さない、損失が出てもそれを翌年に繰越すための確定申告はしないということが必要となります。しかし、「損失を出さない」、そんなこと現実には無理かもしれませんが・・・

◆誤って一般口座で取引をしない

特定口座を開設していたとしても、一般口座での取引もできます。ネット取引での注文画面では、どちらかを選択できることから誤って一般口座での取引をしてしまうことがあります。一般口座の譲渡所得は必ず確定申告をしなければなりませんので、この点には十分注意をしなければなりません。

◆特定口座年間取引報告書

特定口座を開設していると、1年(暦年)が終了した翌年の1月中旬に特定口座年間取引報告書が発行されます。ネット証券の場合にはサイトからダウンロードすることができます。

◆特定口座における譲渡所得と配当の関係

特定口座(源泉徴収あり)で保有する株式の配当金は特定口座に受け入れることができます。この場合、譲渡損失は配当と相殺されます。例えば、年間の譲渡損失はマイナス10で年間の配当がプラス10であれば、譲渡損失も配当もなしということです。譲渡損失>配当の場合は譲渡損失(源泉徴収はされない)、譲渡損失<配当であれば配当所得(相殺後の金額で源泉徴収される)があるということです。

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★証券会社のサイトの税に関する情報は信頼ができます

「税金に関しては税務署あるいは税理士に最終的な確認をしてください」

そのとおりですが、証券会社がサイトで発信している税に関する情報は全面的に信頼してもいいと思います。大手企業ですので入念にチェックした後に情報を発信しています。そして、なによりもわかりやすいです。国税庁のサイトでは到底気がつかないようなことが、簡潔明瞭に説明されています。確定申告をした場合のあらゆる影響も詳細に説明されており、証券会社のサイトを読めば「ひとつの特定口座で!」という結論に到達します。

中途半端に税金の知識を身につけるよりも、証券会社はひとつに絞りそこで特定口座を開設し(税金のことはひとつの証券会社に任せて)、自身は有望銘柄の発掘に専念することが賢明であることに気がつきます。

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年金と家賃収入の確定申告

2022-08-27 19:00:00 | 相続・贈与、資産運用、節税
確定申告においては所得税と住民税だけでなく、健康保険料・介護保険料の金額も決まります。さらには、医療費や介護サービスの自己負担割合も決まってきます。ですから、年金と家賃収入がある人にとって確定申告は大変重大なイベントです。

◆公的年金等の源泉徴収票

確定申告には公的年金等の源泉徴収票が必要ですがこれを紛失している人が多いです。公的年金等に関しては様々な連絡文書が送付されてきます。源泉徴収票は毎年年初(1月中)に、前年の合計年金額を知らせるべく送付されてきます。確定申告にはその合計年金額が必要です。

年金から所得税の源泉徴収をされている人は、その年間税額が源泉徴収票に記載されています。この税額も確定申告に必要です。

介護保険料は年金から徴収されますので、この年額も源泉徴収票に記載されています。この金額も確定申告に必要です。

◆必要経費は漏れなく計上する

不動産所得の計算は「家賃収入-必要経費」として計算します。家賃収入については特殊なケースを除いて難しくはありません。問題は必要経費です。

〇減価償却費
減価償却費を計算するには、賃貸物件を取得した年は物件の売買契約書など、取得価額が明らかになる資料が必要です。それ以降の年は前年の確定申告書控から取得価額や未償却残高を調べる必要があります。

〇固定資産税
固定資産税は、毎年5月に賃貸物件が所在する市町村から通知書が送られてきます。自宅と賃貸物件が同一の市町村に所在する場合には両者を合算して税額が通知されてきますが、計算の内訳も通知されますのでそれにより賃貸物件部分が明らかになります。

〇金利
賃貸物件を購入するためのローンの利息は必要経費にできますが、この金額は返済予定表に記載されています。返済予定表は当初から全期間分を記載していることもありますが、当初は1年分程度を記載しているにすぎない場合や特定期間ごと(半年ごとなど)に送付してくる場合などもあります。

〇火災保険料
火災保険料の支払い方法には、「月払い」「年払い」「一括払い」ありますが、必要経費を計算するにあたっての基となるのは申込書や保険証書に記載されている契約期間とその保険料になりますので、領収書だけでなくこれらも保管しておく必要があります。

〇修繕費
多額の修繕についてはともかくとして、少額な消耗品や部品に関する領収書やレシートを紛失しているケースが目立ちます。

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★不動産所得は年度によって大きく変動することがある
空室率によって家賃収入は変動します。多額な修繕費はその年度の必要経費を突出させます。不動産所得が一定していない場合には、当然のこととして毎年の税額も一定せず、納税資金の用意に苦慮するということです。

★国民健康保険料・医療費負担割合が大きく変わることも
「所得」は税額の計算だけでなく、国民健康保険料・介護保険料、医療費や介護サービスの自己負担割合を算出する基準にもなります。上記のように不動産所得が一定しない場合にはこれらも毎年変動するということです。

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給与と家賃収入の確定申告

2022-08-26 17:00:00 | 相続・贈与、資産運用、節税
所得税はすべての所得を合算しての総合課税を原則としておりますので、給与収入と家賃収入がある場合には、給与収入と家賃収入を合算して確定申告をしなければなりません。ただし、給与収入は給与所得として、家賃収入は不動産所得として別々に計算した後に合算をします。

◆給与所得の計算は勤務先がしてくれる

給与所得については勤務先が給与や賞与から源泉徴収をするとともに、年度末には年末調整をして給与所得とその税額を計算して、その結果を源泉徴収票として交付してくれます。確定申告においては源泉徴収票をそのまま利用することができます。(年度途中で退職した場合には税額が未確定の源泉徴収票が発行されます。)

◆不動産所得は自ら計算しなければならない

不動産所得は給与所得と違って自身で計算しなければなりません。その計算は「家賃収入-必要経費」として計算します。家賃収入はともかくとして、必要経費については専門的判断が必要です。ですから、不動産所得が初めて生じる年はできるだけ早めに税務署や税理士に相談しなければなりません。

不動産所得の計算に必要な資料の入手と保管も忘れてはいけません。「賃貸物件の売買契約書」「ローンの返済予定表」「固定資産税の通知書」「火災保険料・修繕費・管理会社の管理費の領収書」など、紛失しているケースが目立ちます。

◆確定申告のみで行える所得控除

給与所得の源泉徴収票での所得控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除など)は基本的には確定申告においてもそのままです。ただし、基礎控除と配偶者控除は給与所得と不動産所得を合算すれば変動してくるケースがあります。

確定申告でのみ行える所得控除があります。「雑損控除」「医療費控除」「寄付金控除」です。

◆両所得合算後の税率

所得税率は累進税率ですので、確定申告で給与所得と不動産所得を合算すれば、給与所得の年末調整よりも税率がアップする場合があります。

◆給与所得から源泉徴収されている所得税

給与所得と不動産所得の確定申告をする場合には、最終的な税額は両所得を合算して計算しますので、給与所得の源泉徴収票における税額はいわば「前払した税金」ということです。前払いですので確定申告における最終的な税額から差し引くことができます。

◆住民税

所得税の確定申告は国税に関する手続ですが(手続は税務署でします)、所得税の確定申告の結果は住所地の市町村へ報告され、それが住民税(都道府県民税と市町村民税)の計算の基礎となります。

この住民税も給与所得と不動産所得を合算して計算されますが、納付は給与所得については勤務先、不動産所得については自身ですることができます。

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★賃貸を開始した年度から確定申告をする

不動産の賃貸を開始したならば、開始をした年度から必ず確定申告をしてください。

不動産所得がゼロの場合は確定申告をする必要はありません。しかし、不動産所得が赤字(マイナス)の場合には給与所得から差し引くことができますので、給与所得から源泉徴収された所得税の還付を受けることができます。「給与所得+不動産所得」で不動産所得が20万円以下の場合には所得税の確定申告は不要ですが、住民税の確定申告は必要です。

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家賃収入の確定申告をしなかった理由

2022-08-16 10:00:00 | 相続・贈与、資産運用、節税
家賃収入の確定申告をしていない人がいます。中には10年以上も申告をしていないというケースがあります。確かに、家賃収入があってもそれを上回る経費があれば、不動産所得は生じませんので確定申告は不要です。しかし、この判定が正確にできていないことが非常に多いです。

◆確定申告の方法がわからなかった

所得税の確定申告は大変複雑で知識ゼロの人が自ら確定申告をするのは並大抵のことではありません。確定申告をしようとはしたけれども特定の専門用語につまずいて、結局は確定申告ができかかったという事態に陥ります。

例えば、不動産所得の計算においては「減価償却」を避けて通ることができませんが、この減価償却という考えは大変専門的で「取得価額」「償却方法」「耐用年数」などといった用語をそう簡単には理解できません。

◆「業者」から確定申告しなくていいといわれた

「業者」といっても、正確な資料を基に税務的な見解を示してくれる業者もいれば、無責任なアドバイスをする業者までと様々です。

ここで忘れてはいけないのは、業者は税務署でも税理士でもありませんので、税務に関する相談に応じるとか、確定申告の代行をしてはくれない(法律的にしてはいけない)ということです。業者の提供資料やアドバイスは「参考」程度でしかないのです。

◆家賃収入よりもローン返済額が多い

不動産所得の計算は「家賃収入-必要経費」という計算をしますが、ローンの返済については利息部分を除いて必要経費には含まれません。

「賃貸物件を買うためのローンなのに!?」

そのとおりです。賃貸物件の購入代金は減価償却を通して必要経費に算入されますので、ローン返済額までも必要経費に含めてしまうと「二重に」必要経費がカウントされてしまいます。

また、ローンが賃貸物件の土地購入も目的としている場合には、ローンで調達した資金の内土地部分は金利を除いて一切必要経費になりません。土地は減価償却ができないからです。

◆ばれないだろう

「ばれる」「ばれない」はあくまでも結果です。事前に確約を得ることはできないのです。

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★まずは無申告期間(最長過去5年分)の「不動産所得」を正確に計算する

不動産所得は賃貸を開始した年度以降生じる可能性がありますので、まずは賃貸開始以降無申告となっている年度の不動産所得を計算することです。なお、無申告期間が5年を超える場合には、5年を超える年度については申告をすることはできません。5年を超える2年分は税務署が「決定」という処分をします(7年を超える部分は時効です)。

不動産所得の計算は「自己流」ですることができませんので、国税庁のサイトやパンフレット、著者が税理士など書物を参考にして計算することです。計算結果に自信が持てない場合には、税務署あるいは税理士に相談をしてください。

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会社の不動産を代表者に「名義変更」する

2021-10-16 23:00:00 | 相続・贈与、資産運用、節税
会社で所有している不動産を、代表者の個人名義に変更したいという相談を受けることがあります。当然可能ですが、それには不動産を会社と代表者個人の間で「売買」しなければなりません。この売買に関しては様々な課税問題が生じます。また、売買に関するコストも決して少額ではありません。

◆会社に売却益が生じて法人税が課税される場合も

会社の不動産を売却すると会社には売却損益が生じます。売却損益は「売買価格-不動産の簿価」として計算します。「簿価」とは売却する前年度の決算書に計上されている金額のことです。

売却損益がプラス(売却益)で、不動産の売却益を除く事業年度合計の利益がプラスであれば、不動産の売却益を加えた利益合計に対して法人税が課税されます。

売却損益がマイナス(売却損)でも、不動産の売却損を除く事業年度合計の利益が売却損を上回る場合には法人税が課税されます。

不動産の売却損益が最終的な事業年度合計の利益(あらゆる損益を合計して計算する利益)に影響するパターンは様々です。不動産を売却するにあたっては、その影響を十分に把握してから行う必要があります。

◆会社が消費税を納めなければならない場合も

会社が売却する不動産が建物であれば、それは消費税の対象になります。建物の売買価格が1000万円であるとすれば、消費税100万円を上乗せするということです(税込みで取引することも可能です)。この上乗せした消費税は、売上代金に対する消費税と同じように「受け取った消費税として」税務署に納税する消費税に含めなければなりません。

◆売買代金の決め方が恣意的であると税務調査の対象にされる

会社とその代表者との間の不動産の売買においては、売買価格を恣意的に決めることができます。「売却益が出ると法人税が・・・」「消費税を納めるのが・・・」ということから低く設定するのです。税務署はこの点に目を光らせていますので、売買価格は「近隣の取引事例」「路線価」「固定資産税評価額」を参考にして客観的に決定しなければなりません。

正常な売却価格との差額は、代表者に対する給与所得とされるとともに(代表者個人に税負担が生じる)、会社の法人税の所得計算においては損金不算入とされて法人税の負担が増えます。

◆売却代金は必ず決済する

代表者は不動産を買い取った際の代金を必ず会社に支払わなければなりません。支払いがない場合には、売却代金相当額が役員(社長)貸付金となり、代表者は会社に対して相応の利息を支払わなければなりません。

◆代表者個人には不動産取得税が

案外忘れがちなのは不動産取得税です。不動産の売買による移転は登記を通して課税当局(都道府県)に知られてしまいます。また、不動産取得税は不動産の移転から半年程度遅れて通知がされますので、課税されることを認識していなかった場合の衝撃は相当大きいです。

◆登記をしなければ所有権が移転したとは認められない

会社とその代表者の間など近親者間で不動産の売買をしたとしても、その所有権移転の登記をしないケースがあります。登記関連費用を惜しんでのことです。

このような登記をしていない場合に一番問題となるのは、不動産が収益物件である場合に収益が誰に帰属するかということです。第三者はあくまでも登記上の名義人を所有者と考えますので、賃貸契約は名義人である会社との間ですることになります。

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★安易に会社で不動産を購入しない(不動産を会社で購入する場合の条件)

「なんとなく」会社で不動産を購入してしまうことがあります。また、昨今では会社の設立も簡単にできることから規模の小さい「不動産所有会社」も目立ちます。

会社で不動産を購入してから、会社で不動産を所有することのデメリットに気がつくことがあります。しかし、これを個人名義に変更するには上記のとおり、「税負担」「事務手数」「関連費用」が重すぎます。

〇その不動産は会社に必要不可欠な資産であること
〇その不動産を所有している会社は代表者の引退後も永続すること

会社で不動産を所有する場合の条件です。この条件を満たさずに「誤って」会社で不動産を購入してしまった場合には、機を見て代表者個人の名義に変更しなければなりません。その際は、「税負担」「事務手数」「関連費用」を惜しんではいけません。

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