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晴れた日こそ映画を観る

24歳会社員による映画感想ブログ。出かけたと思ったら映画館というインドア派です。

きいろいゾウ

2013年02月24日 06時33分12秒 | 新作映画(劇場で鑑賞)


宮あおいと向井理による「ムコ」と「ツマ」の夫婦の映画、観てきたぜぇ。
ネットのレビューを観ると、原作を知らないとちょっと理解しにくい映画だということだったのでしっかり読破してから鑑賞に臨んだのですが、この原作小説がめちゃくちゃ素敵だった!
その良さを認めているためか映画は原作にかなり忠実だったと思います。

中でも良かったのは、冒頭と最後の夫婦の穏やかな日常を描いたところ。
貧しいながらも田舎の広い家に住み、家庭菜園を楽しみ、つつましいながらもおいしそうなごはんを食べる冒頭と、ラスト縁側でふたり並んでゆっくりお茶を飲むシーンは当たり前のようで貴い幸せな夫婦の姿で、「きいろいゾウ」の映画としてまさに観たかったものでした。

「奇跡とは、日常である。」
庭の木の「ソテツ」によるこのセリフはこの映画のキーになるセリフだと思う。
大切な人と一緒に過ごせる日常こそがある種奇跡のようなものであり、原作に出てくる絵本の言葉を借りていうのなら「こんなにきれいなものが、このよにはあるんだね」ということであり「水道水のようにありふれていて、途方もなく貴い。」ことなのです。
とっても幸せで当たり前のような暖かい日常を映した冒頭は特に原作に忠実で、ここだけでもう映画化の価値はあったと思うぜ。

ただ、もし映画単体で観ていたら正直言って「?????????!!」って感じだったと思うのも正直なところ。
「ツマ」がどうしてあんな風に壊れてしまうのか、「ムコ」は東京に行って何がしたかったのか、どうして大地君はまた学校に行くようになったのか、はたまたこの夫婦の関係はどうして奇跡のように貴いものなのか。
映画の中の情報だけでは、なかなか理解するのは難しいと思うなー。

「私の人生はあの日、全部収まってしまった。」
これは原作で最も強く共感して、深く深く感動したところ。
いろんな苦労があったり、孤独だったそれまでの人生が、大好きな人に認めてもらえることで全部チャラになってしまうようなスッキリする気持ちをムコさんに「全部収まってしまった」と表現するのが真新しいのにすごくしっくりきて、ゾクゾクするほど感動する!
それに対して映画では、このくだりがないせいでツマとムコがいかに互いにとって必要な存在なのかが著しく見えにくくなっててるんだよなー。

それに伴って大地君のエピソードも大きくカットされていて、ざっくり言うと原作の大地君は「妙に大人びてるくせに大人になることを極端に恐れていたけど、ツマ&ムコとの交流により大人になるのもいいもんだなと思うようになる」小学三年生男子で、ツマとムコの生活が奇跡的なほど幸せであることを客観的に感じる役であり、夫婦というものの貴さを読者に伝える重要な人物だったわけです。

代表的な場面としては、大人になることを受け入れて学校に行くようになってからツマに宛てた手紙の中の一節から。
ムコさんや、アレチさんみたいに、だれか好きな女の人と住むことが、僕は大人のダイゴミだと思います。
わかる?なにをいいたいかよくわからないかもしれないけど。これはラブレターです。
やぶってすててください。でも、とっておいてくれるなら、とっておいてください。
大人びているくせに大人になることを極端に怖がっていた大地君が、ツマとムコの日常を見て初めて「大人になりたい」と感じるようになったこと、そして子供のくせしてクールぶった大地くんのはっきりしない気持ちがそのまま文章になったこの言い回しにグッとくる!!!
これに対して映画版では、もともと大地君がそれほど大人性と子供性が複雑に入り混じっていることを描いていないためか「でもとっておいてくれるならとっておいてください。」をカットしていたのは仕方ないとしても、学校に行くようになった成長の意味についてサラッと済ませてしまっていたのが残念だった。

とはいえ、そもそも原作小説は文庫版478ページという尺の前半約半分を贅沢に使ってほのぼのとした幸せな田舎暮らしをたっぷり描いてからそれが壊れそうになるところを描き、そしてまた元に戻ることでよりいっそう日常の幸せを感じるという作りになってる。
つまり、ツマとムコの夫婦生活がいかに幸せなものであるか、お互いの存在によっていかに「収まっている」のかを序盤でとくと見せつけ、その貴さをしっかり理解させた上で一旦壊し、最後にはやっぱり「収まっている」状態に戻るということに感動できるのである。
一方映画版の尺ではそれは無理だからなのか、「収まる」タイミングを全く別のところに置いている。
映画版で「収まる」のはラストシーンで、晴れた日に縁側で一緒とお茶を飲み、ムコが過去に囚われて日記を書くのをやめて、自分に最も必要なツマはいつもすぐそばにいるとほのぼの感じるシーン。
何が言いたいかというと、起承転結のケツとしておいしいところを持ってきた形だったと思うんです。

映画と小説で違うということについて象徴的なのが、映画でいうと上映30分くらいの海に行くシーン。
ムコが毎晩書いている日記について聞きたいのにちゃんと教えてくれなくてツマは怒ってしまうけど、海についたらすっかり忘れて楽しくなってしまうという場面。
小説ではほのぼの生活のほんの一節で、後半に聞いてくるジャブではあってもその時点では重いシーンではなかったのだけど、映画版では車中のケンカの気まずい雰囲気を長回しにすることより2人が一緒にいる居心地の悪さを際立たせて、実は危うい関係であることを匂わせているわけで、穏やかで幸せな田舎暮らしを紹介した“起”に対して“承”の部の始まりとしているわけです。(小説版では長い長い“起”の一場面かね。)

もう一つ、小説と映画で見せ方がまるで違うなーというところとしては、
「ムコさんに忘れられない恋人がいるのは知ってた。」
というところなんだが、原作小説ではこれが出てくるあたりから「収まっていた」はずのネガティブな想いが溢れてくるわけで、ちょうど半分くらいで出てくるということもあり前篇・後編を分けるサインのような役割ですらあるように思えるけど、映画版ではこれ以前からツマはとっくに情緒不安定だったりして意味合いが違う。

何が言いたいかのかと言うと、実際にはそう簡単なつくりではないのかもしれないけど、映画化に際してストーリーを起承転結に区切って整理したのかなという印象を受けるわけです。
“起”幸せな夫婦生活、“承”だけど歪みもあります、“転”ムコ「東京行くから!!」、“結”ムコ「必要なもの、ツマ!」てな感じに。
大きく捉えれば小説版も話としての起承転結は同じなんだけど、“起”はだいぶ大盛りで、“承”もそこそこに“転”に移りハラハラさせて“結”ぶという少々いびつな骨組みの小説版に対して、映画版ではそのバランスを補正して、わかりやすい話にする努力をしたんだろうなという印象です。
その甲斐あって、「きいろいゾウ」の世界を映画仕様にコンパクトに描いている点についてはきちんと評価されるべきだと思う。
ただ、原作の素晴らしさと比べると少し物足りなさを感じるのも正直なところ。。。

ネックになったのは尺と、絵本のところだよね。
ツマが子供の頃に読んでいた「きいろいゾウ」が出てくる絵本。
空を飛べる孤独な黄色いゾウが、地上で仲間と群れて生きる普通の暮らしをする象も悪くないよねと気付くお話なんだけど、これだけでめちゃくちゃ感動的なんですわ。
絵本の体をなしてるせいもあって文章がいちいち印象的なのだが、いつも1人のきいろいゾウが、群れで生きてる普通の象を目の当たりにしたときの、
「ちっともさみしくなんてないけどさ、すこうしだけ、さみしいね」
て、これがめちゃくちゃ突き刺さるんだよ!!
映画版でも能天気な音楽を流してみたり、絵の感じはピッタリだったりと良かったんだけど、“絵本の世界”をイメージさせる媒体として分が悪かったのは仕方ないですな。

ということでかなり原作の肩ばかり持ってしまうのですが、映画も良かったと思います!
小説の文字だけの世界観を映像化するということ自体の素晴らしさを特に感じたのは、既に書いたように夫婦並んだ心地いい映像だったり、近所ののどかな風景、そして何より食べ物ですわな。

原作から「モッツァレラばか」のくだりは気になっていたのだけど、映画を観てからやはり衝動を抑えきれず、とはいえそういいものは買えないということで「ボーノ」のモッツァレラチーズとミニトマトで代用するという痛い形でまんまと影響されているわけですよ。

ウマー!

こんなんじゃなくて、普通に夕食を食べるシーンも良かったなー。
お肉少なめのメニューで、プリプリしながらセロリの漬物かなんかでごはんを食べる宮崎あおいはくそうざいのになんか素敵っていう役柄にうってつけだったと思います。

そんなこんなで長々と書いてしまったけど、自分にとってはかなり思い入れの深い作品となりました。
“日常の貴さ”を描いた、とっても大切な映画です。
もう上映が終わりかけているタイミングだけど、なるべく多くの人に勧めたい作品ですな。

脳男

2013年02月20日 20時56分01秒 | 新作映画(劇場で鑑賞)
予告編がかなり面白そうだった「脳男」、TOHOシネマズデイに有楽町スカラ座で観てきました。
当日2/14はTOHOシネマズデイであると同時にバレンタインデーでもあったのだけど、ひとり映画鑑賞の前にひとり居酒屋も楽しんでくるという万全なソロ活動っぷりで鑑賞に臨みました。

鳥貴族でビールとおつまみ一品なら560円という安心価格。
ちなみに実はひとり居酒屋はデビュー戦でした。

そんな感じですっかりバレンタインであることは忘れてたんですが、劇場ではチョコで作った脳が展示されてましたよ。
大きいからかすごくチョコの匂いが漂ってました。


1人アフターファイブを満喫するバレンタインというのもなかなかオツなもんです。
そんなわけで観る体制が万全だったこともあってか、「脳男」めちゃちゃ楽しかったです!

なんといっても一番の魅力は、生田斗真のべらぼうな美しさですよ。
この撮影のためにより一層鍛えたという肉体やら、江口洋介ごときに意外と手こずり善戦となるバトルシーンやらと見どころは多くて本当にカッコイイんだけど、ハデなことをしないでただ静かに座っているだけのシーンですらとてつもないオーラを放ちっぱなし!
眺めているだけで退屈しないんだわホント。
生田斗真ってイケメンだとは思っていたけど、これは観る価値ありますぞ。

画面の魅力でもう一つ良かったのは爆破シーン。
爆弾魔が出てくる話なのでたびたび爆破が起こるんですが、中でも最初の爆破シーン!
松雪泰子がバスを乗り逃し諦めた瞬間になんとまさにそのバスがバスガス爆発!!!!!!


かなり不意打ちだったので私を含めて劇場が一斉に“ビクゥゥゥッッ!”となったのが良き思い出です。

その他キャストも実に素晴らしかった。
特に、二階堂ふみの18歳とは思えない貫禄は才能だなぁと思います。

今回は頭のおかしいレズ爆弾テロの役なんですが、ぶっ飛び具合が素晴らしい。
太田莉奈とイチャコラしたと思ったら急に「クセェ口向けんな」とキレてみたりと、ちょっと攻撃的で下品な役をうまくこなしてました。
顔が宮崎あおいに似てると言われているけども、もらう役柄は正反対だよなぁ。
劇場版神聖かまってちゃん」「ヒミズ」「悪の教典」、そして今回の「脳男」といった出演映画の面白さの水準が恐ろしく高いという18歳にしてかなり信用できる役者。
(リンクは私の感想です。悪の教典は感想書いてなかったのか!!超面白かったっす。)

松雪泰子に関してもこの人以外なかったんじゃないかってぐらいハマってて、ここにきて堂々の代表作なったんじゃないでしょうか。
精神鑑定の途中生田君に何度も何度も「私とセックスしたいですか?」と聞いて「生田君には感情がない!」とわかるシーン、そしてそのことで後々二階堂ふみにいじめられるシーンは最高だった。

あと江口洋介にはとにかく「ウゼェ!」と思わされました。
本気でうざかったんだけど、それってつまりうまく演じてたんでしょうね。
イライラしててエラそうで、上映中は本気で嫌いでした。

ということで本当にめっちゃ面白かったんですが、この映画の中で語られる「正義感とはなんなのか?」やら「犯罪者は更生するか?」みたいなテーマに関して真剣に考え始めてしまうとアラが見えやすい映画なのかもしれません。
ところどころシリアスタッチになり犯罪心理やら何やらを解明しそうな雰囲気になりながらも結局特にそうではないところが気になる人もいるかもしれないけど、そういうことは単なる刺身のツマであって映画を楽しむための説明だと捉えるといいと思います。
なので難しい話はそれぞれ持ち帰って各自考えるとして、ただただ生田斗真君率いるエンターテイメントショーを楽しむと良いと思います。

北のカナリアたち

2012年11月22日 00時40分48秒 | 新作映画(劇場で鑑賞)
「悪の教典」観たいぞーなんて思いながら会社の近くのチケット屋をのぞいてみると「北のカナリアたち」の前売り券がなんと600円で売っているではないか。
吉永小百合が寒そうにたたずむポスターが実につまらなそうで、気が進まないけど一応調べてみると原作は「告白」の湊かなえだし、満島ひかり・宮崎あおい・松田龍平・森山未来とった夢のキャストを招集していることがわかり、ましてや600円とはどんだけお買い得なんだということで丸の内TOEIで観てきました。
だけど結論から言えば割と期待外れで、おとなしく「悪の教典」に行けばよかったと後悔。


嫌な予感がしたポスター。
こんな感じで観に行って面白いこともあるから困る。



男女三人ずつ計6人の小学校でかつて吉永小百合は教員をやっていて、その時の教え子の1人・森山未来に殺人の容疑がかかったことから吉永小百合が教え子たちを訪ねるのだが、そのついでに20年前の忌まわしい事故の真相が明らかになる・・・。みたいな話。
この20年前の事故っていうのが、海に落ちた幼少時の宮崎あおいを助けるために吉永小百合の旦那が死んだ事故なんだが、満島ひかりやら勝地涼やら小池栄子が寄ってたかって「あなたの旦那を死なせたのは私なんです!」と事故の真相を語ってくるというもの。

ここまで観て、湊かなえ原作ということもありさぞかしひどい話に展開していくんだろうということで
「幼少時の恨みをきっかけにみんなでグルになって森山未来を殺人犯にしたてあげた。そして吉永小百合も何かしらの罠にかけられそうになっている・・・!」などとわけのわからない筋書を先読みしてニヤニヤしていたのだが全然そんな話になっていかないのね。

ここからの話の展開は割愛するが、3点だけ愚痴りたい。

1.「好きになったらしょうがない」とはなんだったのか
教員時代の吉永小百合は寡黙で変り者のお巡りさんと不倫状態だった。
20年ぶりに再会した小池栄子は「実は子供の時不倫現場目撃してました。幻滅でした。」といまさらながらきつく咎めるのだが、その時いきなり小池栄子の親友役の女が入ってきて「アタシの旦那と浮気したわね!」と小池栄子をボコボコに!
そう、不倫教師の教え子もまた不倫をする大人になっていたのです。
すぐ次のカットで吉永小百合と小池栄子の不倫コンビが海を眺めながら観客に同意を求めるテンションで「好きになったらしょうがないよね」「人を好きになったことのない人にはわかんないよね」と傷をなめ合うのだが、まじで全然意味わかんねっす。

この薄っぺらすぎる「好きになったらしょうがない」理論はここでとどまることなく、森山未来の殺人の動機も実はコレということになっているんですな。
森山未来は、夫にDVされていた年上女性と駆け落ちしたもののその女性は元旦那に見つかり、逃げて車道に出たところを車に轢かれて死んでしまう。
そのあげくその元DV夫は「あんな女死んで当然なんだよ!!」と逆上して森山未来までをボコボコにし始める!
もしここで「大事な人に暴力をふるい、死なせたことを悔やむどころか、彼女を悪者にするのか!」とキ
レて殴り殺してしまうのであれば「好きになったらしょうがない」理論も映画上筋が通ると思うのですが、あろうことかここで起こる殺しというのは殴る蹴るの暴力野郎を「ヤメロォ!」と押し返すとその後ろに尖ったものがあり、それが刺さって死なせてしまうというなんとも地味なやつなんですな。。。
これだと、「好きになったからしょうがない」以前に正当防衛だからしょうがないんじゃないだろうか。

そもそも、「好きになったからしょうがない」理論っぽくまとめてるけど森山未来のエピソードは「好きになったらその人のために熱くなってもしょうがない」ってことで百歩譲ってわかるとしても、吉永小百合と小池栄子のは「好きになったんだから自分が結婚してようが相手が親友の旦那だろうがしょうがない」っていう全然関係ないやつだし、実際にしょうがないのかどうかは別としてもそういうスイーツな思考をシリアスタッチで描かれてもなんだかよくわからん。

2.大人の合唱シーンがシュール過ぎる
そんな感じでしょうがなく殺人鬼になってしまった森山未来を思い出の校舎に呼び出すと教室には同級生と吉永小百合先生が勢ぞろいしてて、小学生時代みんなで歌った「カナリア」を20年ぶりに合唱するというクライマックスがこの映画の見所。
なのだけど、20年間も会わなかったくせして急に馴れ馴れしくアットホーム感をねつ造してくる旧友たちのノリや、どうでも良い急展開で交際に発展した勝地涼&宮崎あおいカップルの内に秘めたウキウキ感がどう見ても居心地悪い。
こんな状況で逮捕されるまでの最後の時間を過ごすはめになったあげくにいい歳こいて一生懸命「カナリア」を歌う森山未来のなんとも言えない表情がやけくそっぽく見えてきてとにかく奇妙なシーンだった。

3.細かいところが適当だから時々分かりずらい
吉永小百合の20年前ヴァージョンと現在ヴァージョンが髪型以外全く一緒なのに、同じような場所で同じように振る舞うからシーンが切り替わった時に回想なのか現在なのか一瞬わからなかったり、吉永小百合の夫が野良犬を虐待するシーンで犬が無傷っぽく見えるから「あれ、やらなかったのかな?」とわからなかったり、細かいところの見せ方が適当に感じた。

てなわけで、期待値が高かったこともあり不満が多くなってしまった。
湊かなえと言えばいま流行の“イヤミス作家”(後味の悪いイヤ~なミステリーのこと)なわけで、人間が内に秘める醜くて凶悪な何かの爆発が観れるとばかり思っていただけに共感できない妙なハッピーエンドに全然乗れなかった。。。

もちろん良かったシーンもあって、一番最初の方で満島ひかりが大雪の中笑顔でチクリとイヤ~なことを聞いてくるシーンなんかはまさに「イヤミスが始まるぞ…ゴクリ」といった感じでゾクッとしました。(実際にはそういう映画ではなかったけども。。。)
それにおれがシュール過ぎてひどいと感じた「カナリア」を歌うクライマックスシーンで隣の席のおばさんは泣いていたから、案外おれの見方がひねくれてるだけで普通に良作なのかもしれない。

さて、今回は期待してたのと違ったから残念に感じてしまったわけだけど、かと言って観る前にあんまり調べ過ぎて話を全部わかってる状態で観に行くのもつまんないし、映画ってどうやって選べばいいんでしょうね。

最強のふたり

2012年10月03日 22時36分25秒 | 新作映画(劇場で鑑賞)
全身麻痺で首から下が全く動かない金持ちじいさんを不良っぽい黒人の若者が介護して仲良くなる実話に基づいたフランス映画の「最強のふたり」(英題:「Untouchable」)。
邦題が安っぽいし障害者モノは苦手なのでスルーするつもりだったのだけど、「アメリ」を抜きフランス語映画では世界歴代1位の観客動員数を記録したということと、映画の日で1000円だったこともあり会社の同僚に誘われるがままに観てきました。
予想してたのと違ってなかなか愉快な作品だった。

予告編では富豪じいさんが使用人のくせに無礼者の黒人のことを「彼は私に気を遣わない。そこが好きなんだ。」と話すシーンがあり、てっきり「金持ちだけど孤独な老人と、本当は心優しい黒人の若者が心を通わすハートウォーミングストーリーか何かでしょ」なんて予想していたのだが実はコメディ映画で、ギャグ盛りだくさんのブラックユーモラスな作風だった。
じいさんの障害をイジりまくる無邪気なドリスと、もっとイラついていいのでは!?ってほど何をされても楽しんでしまう心の広いドエムじいさんフィリップの絡みがとにかく笑えて満席の劇場でかなりウケてた。

特に黒人のドリスの方はセリフの言い方やら仕草がほんとに面白くて、フランス語で何言ってるのかはさっぱりわからないのに不思議なほど笑わされてしまった。
ひょっとしてコメディアン出身のひとなのかな。
ドリスが豪華な部屋で乱暴に絵を描いてたら飾ってあった高価そうな絵に絵具が飛んでしまったり、パラグライダーやらタイツを履かせる仕事やら「そんなことオレは絶対やらないからな!」→やってる。みたいな演出だったり、木の恰好をして本格的に歌い上げる本場のミュージカルを小馬鹿にしてみたり、下ネタなんかも満載でとにかくあの手この手で笑わされた。
また、オーケストラ演奏に飽きたドリスがアイポッドで曲を流して踊り始めるとそのダンスが妙にうまくて、スタイルも良いから普通にカッコイイってシーンにもなんか笑っちまった。
だから観てて本当に楽しかったし面白い作品であることに間違いはないんだけど、それにしては良い映画を観たっていう満足感がそれほどないような気もする。
どちらかと言えば面白いコントを観た時みたいな気持ちに近いような。

「ハングオーバー!」みたいにその状況自体が面白くてストーリーにも引き付けれらるタイプのコメディ映画ではなく、ドリスとフィリップのキャラクターにひたすら引き付けられる映画なのでその意味では「最強のふたり」って邦題もあながち間違いではないのかも。
とはいえストーリーとしては予告編以上のことは何も起きないから、その場ではめっちゃ笑えたけど結局印象に残るシーンは意外と少ない。

そもそも「ドリスって確かに面白くて良い奴だけど、四六時中一緒に居て世話されるにはさすがにうざくね??」という根本に乗れなかった感もある。
フィリップだからこそ仲良くなれた話なんだから当然なのか、それともアメリカンジョーク大好きな欧米人は全然ドリスを受け入れちゃってるのか、はたまた日本でも普通に受け入れられているのかは気になる。

というわけでお話はシンプルだけど、ドリス&フィリップのナイスガイに出会えるユーモラスな作品だった。

おおかみこどもの雨と雪

2012年10月01日 00時00分00秒 | 新作映画(劇場で鑑賞)
もう上映を終了してしまった映画館も多いけど、もしまだ観てないのなら絶対に超オススメの傑作映画「おおかみこどもの雨と雪」。
同じく細田監督の「サマーウォーズ」や「時をかける少女」に比べてもスバ抜けて素晴らしかった。

サマーウォーズも本当に素晴らしくて、アニメ映画ってこんなに面白いことがあるのか!って驚いたくらいだったんだけど今作は方向的にちょっと違くて、サマーウォーズが「楽しい作品」だったのに対して今作は「人生の一本」になってしまいそうなほどの意味を感じる映画だった。

「母」の教科書的な作品というか。
これほど人間離れした偉い親になれるひとはなかなかいないとも思うけどやっぱり素敵ね。

自分に子供ができたらまた観てみたい作品。
自分の立場やら状況によって感じ方が違いそうな、これぞ子供から大人まで楽しめる作品。
それから焼き鳥が食べたくなる作品でもある。

キャストに関しては、宮崎あおいの声優としての資質のすごさにびびる。
俳優で出ると「ハイハイ宮崎あおいねハイかわいいねハイハイ」と過小評価されがちだけど、今回ばかりはアンチも批判の仕方に困るのでは。

めっちゃ良い映画でした。

へルタースケルター

2012年07月15日 18時34分01秒 | 新作映画(劇場で鑑賞)
蜷川実花監督と沢尻エリカ主演の話題作を公開初日にさっそく渋谷シネマライズで観てきた。

さすがは写真家が撮った映画といった感じで、美しい沢尻エリカと醜い沢尻エリカの描き分けがすごい!
全身整形の美女がいつか自分が美しくなくなり世間から忘れられることを異常に恐れて狂う様を衝撃的に描くのだけど、ストーリーを語るってことに重点を置くんじゃなくてあくまでも沢尻エリカ演じるりりこの“狂気”を映像で表現した、写真家監督ならではのとっても芸術的な映画だった。

まずりりこが住んでる部屋がすごい。
全体的に黒と赤のおどろおどろしい色遣いで、変な飾りがいっぱい垂れ下がっていたり、絵なのか写真なのかわからない唇が大きく飾り出されていたり、とにかくこの映画を象徴する常軌を逸した独特な雰囲気で溢れていた。
これがちょっと時計仕掛けのオレンジっぽくて、真っ白の服を着た男たちがブリッジしてる白い女の形のテーブルやらが置いてある妙な空間で白い液体を飲んでるっていう最初のシーンを観た時の衝撃に近いものをりりこの部屋からも感じた。
時計仕掛けのオレンジっぽいといえばショッキングな映像に合わせてベートーベンなんかを流す手法も同じだし、不健全な感じといい割と雰囲気の似た作品だと思う。

りりこが見る幻覚もこれまた良い。
テレビの収録中に狂っちまって、セットで飾ってあった花とか人形とか時計とかが下品に笑い出したり目をグルングルンさせてるように見えちゃったりってのは普通に良かったし、この映画のポスターにもなってる蝶の幻覚もグッド!
蝶って上品で怪しいし、キレイだから絵になるけど、所詮は虫だから見せ方によっては気持ち悪い不愉快な映像にも見えるっていう二面性の塊みたいなもんで、これもまたヘルタースケルターの世界を象徴してると思う。

あと非常に良かったのは、風呂に入ってたら湯が全部クスリに見えちゃうシーン!
床と壁の不健康な赤に、湯船の白とカラフルなクスリが際立っていかにも「狂ってる!」って感じ!



美しいりりこと醜いりりこの描き分けでは、綺麗でかわいいりりこを描く時はヘビーローテーションのPV風味でポップな感じを演出。(あのPVも蜷川実花が撮ったものだそう)


一方で醜いりりこはひどい。
ちょっと恋の罪の美津子っぽくも見える。


醜いりりこの時は妙に肌が汚く見えたりして全然綺麗じゃないし、恐ろしい形相で泣きながら大暴れする狂った演技からも同じ人物を撮ってるとはとても思えない。
りりこの見せ方の違いだけでもかなり見応えがあった。

綺麗だけど闇があって、性格が悪くて、トップ女優から転落して、それでもなぜか注目を集めるりりこという役はこれ以上ないほど沢尻エリカにハマってる。
これまでのキャリアはりりこを演じるための壮絶な前振りだったのではってぐらい合ってる。
見た目とかスキャンダル抜きにしても狂った演技が普通にすごかったし、沢尻エリカの個性派俳優としての道がここにきてついに開かれたな。


脇役もそれぞれ面白くて、特に桃井かおりは素晴らしかった。
りりこを整形させた事務所の社長役として本当にりりこの味方なのか、それとも美しくなくなったら使い捨てにするつもりなのかを曖昧に見せるやり口が秀逸。
実際にはりりこを自分の分身のように心からかわいがってくれているんだろうけど、りりこの狂気のフィルターを通せば「自分じゃなくたっていいんでしょ!誰だっていいんでしょ!」って見えてしまうし、「アンタはもう用済みよ」って捨てられる夢を見ちゃうほど信じられない存在なわけだ。
いつも自分のことを可愛い綺麗だって言ってくれてたけど、水原希子にもそう接しているところを目の当たりにしてしまうわけだし。

その水原希子演じるこずえのあっさりとした美しさも素敵だった。
生まれつき美人で、全部が作り物のりりことは対照的に見えるんだけど実はこずえだって細くいるために食べたものは吐き出すのが当たり前だと思ってるし、今はちやほやされてもいつかどうせ忘れられるとか思ってる達観したヤツ。
ただしパルコの広告とかバラエティ番組に出て番宣してる頻度からするとかなり出番は少ない印象。

そんな美人とは対照的に鈴木杏がかなりデブス化していて驚いた。
ハリセンボンの春菜そっくり。
「鈴木杏じゃねーよ!」ってのを春菜のレパートリーに入れて欲しい。
「若さと美しさを失って世間から忘れられた人」としてキャスティングしたとしたら相当意地悪だけど、「若さや美しさは幸せとは別なのに」的な名台詞を吐くなど結構おいしい役だったと思う。

その鈴木杏とタッグを組む大森南朋がなぜか中二病全開でめちゃくちゃ面白かった。
「朝のコーヒーはいいね。カップの中に漆黒の闇が溶け込んでいるようだ。」
ってどういうことだよ。
けどそういうぶっとんだ中二病発言のおかげでメッセージ性を孕んだクサいセリフが普通に聞けたから、ひょっとしたら計算されつくされたキャラだったのかもしれない。
沢尻エリカと桃井かおりに加えてこの大森南朋もこの人しかいない!っていうベストキャスティングだと思う。
大森南朋じゃなかったらあの事務所のシーン全般が退屈になってそう。

その他キャストに関して
・新井浩文は面白い邦画にはほとんど出てるといっても過言ではない(?)名脇役だが、オネエ役はさすがに違和感。笑
・綾野剛は話題のイケメン俳優だが、あんなに何回も出てきてたのにエンドロールで名前が出るまで気付かなかった!まさにカメレオン俳優。


シネマライズの向かいの渋谷パルコで展示会をやってて、りりこの部屋で垂れ下がってた変な飾りが見れたり、ラストシーンでりりこが座ってた変な椅子にその時の衣装と眼帯を付けたマネキンが座ってたり、りりことこずえが表紙になった雑誌がたくさん飾ってあったりとなかなか楽しかった。

だらだらと長くなってしまったが、沢尻エリカと蜷川実花とこの原作の相性がバッチリで、いくら書いても書きつくせないほど最高の映画だった。
沢尻エリカ・蜷川実花の次回作に期待!って言いたいところだけど、これよりすごいのはもうできないだろうなあとも感じてしまうほど完璧だった。

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追記(7/16)
主人公の女が理想を求めて狂っちまって幻覚を見るあたりとショッキングなテイストがちょっと「ブラックスワン」っぽい。
どうでもいいことだけど思い出したので付け足し。

タイタニック3D

2012年04月10日 23時30分45秒 | 新作映画(劇場で鑑賞)
監督・脚本 ジェームズ・キャメロン
出演者 レオナルド・ディカプリオ ケイト・ウィンスレット ビリー・ゼイン

結婚して最初の映画になった。
子どもの頃ビデオで観た以来だったけど、改めて素晴らしい映画だった。

まずディカプリオ演じるジャックがかっこ良すぎる。
自殺しようってときにあんなイケメンが現れて救ってくれたらそりゃあ誰でも恋に落ちちゃうさ。
貧乏人の絵描きなのに貴族たちの会食に飛び込んで場に溶け込み、身分が低いからってびびるどころか逆に「橋の下で寝ることもあれば豪華客船でシャンパンを飲むことも」なんてジョークで笑いを取り、さらには「今を大切に」との名台詞で場を盛り上げるコミュニケーション能力の高さにホレボレした。
沈没し始めてパニックになってからの頼りになる感じはもちろんカッコイイし、船の中を一緒に遊びまわる姿を見ているだけでこっちまで楽しくなってしまう。
とうとう海に投げ出されてからもなんとかローズを板に乗っけて、自分は凍るような海水に浸かってるっていう過酷な状況で「タイタニックのチケットを手に入れられて本当にラッキーだった。君に出会えたんだからね。」なんてロマンチックなセリフを囁くもんだからカッコよすぎて泣いた。
まさに理想の男。まさにレオ様。
はた目からはとっても恵まれたお嬢さんに見えるのに、本人としては居心地が悪く逃げ出せない悶々とした状態にいるローズを救い出してくれる王子様。
それでいて写真も何もないまま死んでしまうため一緒にいた短い思い出だけが残る幻のような存在であるってのも素敵。

そんなレオ様にフィアンセのローズを取られる金持ち夫のキャロも、嫌なヤツだけど共感しちゃう部分もありかなりいい味出してる。
地位の高さと資産だけが自身のよりどころの典型的なイヤな金持ちで、「ホントは救命ボートの確保なんてしてないんだろ?」と聞くディカプリオに対して「席は確保してあるよ。ただし君は乗せないけどね。ニヤリ」なんていう器の小さい男。
それでもフィアンセをとられて怒り狂う姿を観てるとやっぱり可哀そうで、いくら頑張っても駆け落ちをする決意を変えないローズとジャックにキレてピストルで撃ちまくるシーンではあれほど惚れ込んだレオ様なのに「そんなヤツら殺しちまえ!」ってむしろキャロの方を応援してしまう気持ちと、「レオ様逃げて!」っていう正反対の気持ちが共存する不思議な体験ができました。
嫉妬で撃ち殺そうってのはカッコ悪いけど、貧乏自由人の真性イケメンにフィアンセを奪われた金持ちの男の気持ちになってみれば衝動的にそうしたくもなるだろって共感してしまう。

その他のディテールも素敵で、船が沈むって時に最期まで演奏を続ける奏者やら、最後まで紳士らしくとブランデーを飲む金持ち、ベッドで二人で最期まで一緒に過ごす老夫婦だとか、子供に話を聞かせるお母さんとか、こういう緊急事態での全く違うそれぞれの最期でいろんな人間を細かく描くのが面白いし、それが実話だったりするのがすごい。

シーンによっては3Dもすごく効果的で、船がひっくり返って高いところから下を見下ろすところでは3Dならではの奥行で迫力がすごかったし、船の先っぽでいちゃつくタイタニックポーズも3Dだとなお一層気分が良い。

3時間以上もある長い映画だけど全編夢中で観てしまった。
長い映画だったことを映画館から出て初めて思い出したぐらい。

前回観たのはおれがまだ小学校低学年だった頃で、ディカプリオがまだレオ様だった頃だったころというわけで、映画の印象が記憶してたのと結構違ったな。
そもそもジャックが最初に出てきたときに今知ってるディカプリオと違い過ぎてびっくりした。
一番最近観たレオ様っていうと「J・エドガー」だけど、エドガー・フーバーとジャックって完全に真逆のキャラクターだよなあ。

レオ様が本当に美しいし、金持ち達との戯れやら踊り騒ぐ感じが楽しいし、どんどん浸水して壊れていく船がスリリングだし、史実に忠実なつくりがリアルだし、何よりロマンチックで完璧な映画でした。

キツツキと雨

2012年04月03日 22時36分50秒 | 新作映画(劇場で鑑賞)
監督:沖田修一
出演:役所広司 小栗旬 高良健吾 臼田あさ美 古舘寛治 嶋田久作 平田満 伊武雅刀 山崎努
公開:2012年2月
上映時間:129分


どんな映画を観ても楽しい吉祥寺バウスシアターのメンズデーで観てきた。
そんなバウスシアターのおかげもあり、ゆるい雰囲気が心地よくてなかなか楽しかった。

南極料理人と同じ監督ということでやっぱり食べ物がおいしそうに見えるようにできていて、妙な関係の小栗旬と役所広司が将棋を差しながら味付け海苔を食べるシーンやら、高良健吾がお行儀悪く鮭やら味噌汁やらの朝ごはんを味付け海苔に巻いて食べたりだとか、味付け海苔が食べたくなる演出満載でした。
普段食べない朝ごはんを明日は食べてみようかな!とか思わされた。
もちろん食べなかったけど。

なんとなく知り合ってしまった小栗旬と役所広司がだんだん仲良くなっていく過程が気まずいのに楽しくて、人見知りの小栗旬が温泉で役所広司に近づいていくシーンでは思わず微笑んでしまった。

役所広司に心を開くと村社会の掟的な法則に則り村全体が協力してくれる感じやら、家出した息子の高良健吾が母の命日にちゃんと帰ってきたり、序盤でひどく失礼に扱われた役所広司が結局かなり好意的に撮影に協力してくれるほんわかな感じやらといろいろな展開が安易ではあるんだけども何なく雰囲気でゆるせる雰囲気イケメンな映画だった。

「はい?はい?」
って聞き返すのがやたら多くてしつこいんだが、考えのかみ合わない出会ったばかりのひとと話すとたしかにああなるわな。

ジンクスに打ち勝つところやら、自分の脚本の面白さに自身がなくて村から逃げようとして捕まるところ、そこで別のスタッフが1人逃げちゃうとことかなかなか素敵な映画だった。

人生はビギナーズ

2012年03月04日 21時19分06秒 | 新作映画(劇場で鑑賞)
監督・脚本 マイク・ミルズ
製作 レスリー・アーダング ディーン・ヴェネック ミランダ・ドゥ・ペンシエ ジェイ・ヴァン・ホイ ラース・ヌードセン
出演者 ユアン・マクレガー クリストファー・プラマー メラニー・ロラン ゴラン・ヴィシュニック
音楽 ロジャー・ネイル デイヴ・パーマー ブライアン・レイツェル
撮影 キャスパー・タクセン 編集 オリヴィエ・ブッゲ・クエット
公開 カナダ 2010年9月11日(TIFF) アメリカ 2011年6月3日 日本 2012年2月4日
上映時間 105分


ドラゴンタトゥーの女やタイム、メランコリアなど面白そうな映画がいっぱい公開されていたにも関わらず、すぐに終わっちゃいそうだからという理由で観てきた。
余命いくばくもない父親にゲイだったことを告白されるっていうあらすじからしてコメディ風味の人間ドラマかと期待してたんだがちょっと違って、中年のオヤジがテンション低めにうだうだする映画だった。

父がゲイだったってことに対してマジカヨー!みたいな元気な反応が当然あるものかと思ったのにそういう雰囲気ではなく、父の人生に想いを馳せながら淡々と大人の青春を謳歌する割と落ち着いた感じ。

写真やら静止画を切り替えて説明的な表現をするところはナレーションの口調からもなんとなくアメリを連想させられたけど、アメリに比べると主人公がかなり常識的だし、会話や音楽も静かで結構退屈。

初めて映画館で寝てしまった。

気に入ったところを挙げると、やっとこさ恋愛がいい感じになりついに同棲ってとこからのやっぱり私たち合わないわね!っていうケンカ別れからの、やっぱり仲直りをして結局一緒に過ごそうよみたいな雰囲気になるとき、「一度別れることになってしまってゴメンネ」的なニュアンスで放たれるユアン・マクレガーのセリフ↓

「いつもうまくいかない気がして、自分でうまくいかなくさせてしまうんだ」

これが意味不明なようで結構共感できる。
このまま普通にしてれば普通にうまくいきそう・・・ってときこそなんか変なこと言いたくなったり、意味もなくちょっとしたことを指摘したくなったり。
恥ずかしいことながら、とんとんうまくいくのがしっくりこない失敗グセがここまでの人生で培われちまったんだろうね。
成功して変化していく自分の状況の変化に気持ちが追い付かないというか。
わかるなそれは。

逆に許せないポイントは、犬の思ってるセリフみたいのを字幕であてる演出。
おれもそうだけど、犬を飼ってるひとにとってその犬に勝手なことをしゃべらせるってのはありがちなことだと思うんだが、無言で字幕だけってのはやっぱり映画として地味すぎる。
それをやるならハイテンションに腹話術させるとかして欲しい。
「そんなんふざけたコメディじゃねぇかww」って感じだけど、会社ではほとんどしゃべらない無表情なおれでも家では犬にそういう絡み方をしてるわけで、普段クールなのに動物に会うと急にムツゴロウみたくなるひともいるし結構普通にあり得ると思うんだけどな。

というわけで、ほんとに心地よくて、寝てしまったにも関わらずあんまり嫌いになれないという憎めない映画ではあるけれど、やっぱり退屈だったなあという印象の一本でした。

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル

2012年01月28日 17時22分58秒 | 新作映画(劇場で鑑賞)
監督 ブラッド・バード 脚本 アンドレ・ネメック ジョシュ・アッペルバウム
原作 ブルース・ゲラー 製作 トム・クルーズ J・J・エイブラムス ブライアン・バーク
製作総指揮 ジェフリー・チャーノフ デヴィッド・エリソン ポール・シュウェイク デイナ・ゴールドバーグ
出演者 トム・クルーズ ポーラ・パットン サイモン・ペグ ジェレミー・レナー ジョシュ・ホロウェイ アニル・カプール
音楽 マイケル・ジアッキーノ ラロ・シフリン(テーマ曲)
撮影 ロバート・エルスウィット 編集 ポール・ハーシュ
製作会社 TCプロダクションズ バッド・ロボット・プロダクションズ スカイダンス・プロダクションズ
配給 パラマウント映画
公開 アメリカ 2011年12月16日 日本 2011年12月16日
上映時間 132分


とにかくカッコイイけどどこか落ち着く見事な緊張と緩和。

大々的な宣伝で気になってシリーズ第一弾を観てみたところめちゃくちゃ面白かったので、終わらないうちに2・3作目を飛ばして映画館に行ってきました。
1作目はほぼ全員に裏切られる鬱展開で、そんな逆境でもカッコよく勝ってしまうイーサン・ハントに憧れる傑作だったわけですが、それに比べると今作は仲間らしい仲間がいて単独行動じゃないため、そこのやり取りから生まれるユーモアがいい具合に効いてる。
基本的に“カッコイイ映画”だけど、それだけじゃなくて普通の人間らしい面が前作よりもあるし、後味の悪さがなくなったのが良かったと思う。

2回瞬きをするとデータがプリンタに送られて印刷できるコンタクトレンズ、磁石の力で宙に浮けるスーツ、追跡レーダーはスマホで見れるなどハイテクな武器を駆使して闘うのが燃えるんだけど、使えないものもあるのがユーモラス。
変装のためのマスクを作る機械が火噴いて壊れて結局素顔でミッションに臨むことになったり、CMでもやってた高層ビルを登るのに使うガラスに貼り付く手袋が途中で壊れちゃって結局体のガチムチさを頼りに頑張るなど、カッコイイのにどこか抜けていて楽しいし、抜けている展開のはずなのにそこで臨機応変に対応するイーサンが余計にカッコよく見える。

もちろんハラハラドキドキの緊迫スパイアクションも見どころで、冒頭でスパイの一人が殺し屋に殺されたり、イーサンが脱獄する場面からいきなりカッコ良かったし、砂嵐の中カーチェイスしたり、高層ビルでの殺し屋集団との戦いとかいちいちカッコイイ。
データを盗みに入るとこは1作目と同様息をするのも気を遣うほど静かで、その静寂をうまく使って見ているほうまでドキドキさせられるうまい手法だなと思った。

1作目にはなかった“仲間”の見せ場としては、イーサンの仲間の一人に色黒の女スパイがいるのだがそいつは最初のシーンで殺し屋に殺されたスパイと愛し合っていたという過去があり、彼を殺した金髪色白という対照的なルックスの殺し屋の女を恨んでるんですな。
高層ビルのミッションの準備中にはいろいろハプニングがありハラハラするなか臨機応変に作戦を進めていき、なんとかうまくいくのか・・?ってときに結局大乱闘になってしまい、そのオセロな2人が女同士で戦うシーンにつながるわけですが、ただでさえスリリングな展開の中でこの二人が鉢合わせてしまうわけですからめちゃくちゃエキサイティングだった。
結構あっさり勝負がついてしまうんだけどもね。

一番最後のほうで核戦争を起こさせたいマジキチと核のスイッチの入ったスーツケースを取り合い立体駐車場で上下しながら戦うシーンは、高層ビルを登るシーンと並んでこの映画を象徴するカッコよくてシュールなシーンだと思う。
スイッチを切りながら「ミッション完了!!!!!!!!」とか言っちゃうしね。

衝撃が強くて「スゲー…!」って思わされるのは第一作目のほうだと思うけど、スリリングで緊迫したシーンも持ちつつちょっと笑っちゃうような楽しいユーモアが加えられてて、こんな男になりたいぜって憧れる“カッコイイ&面白い”映画でした。