恵子の入院のからこれまでの過程のさまざまな出来事を思い出しているが、思い出すたびにつくづくラッキーだと思うような出来事がたくさんある。
まずその第一が、視床部という大脳の奥の奥の方の出血にもかかわらず認知障害や言語障害がまったく起こらなかったこと。これはひょっとしたら奇跡的なことかもしれないとさえ思う。
脳卒中患者の多くの場合に、言語障害も認知障害も起きているし、ましてや左脳の視床などという場所での出血が手足の麻痺だけで済んでこと自体が不幸中の幸いだったと最近つくづく思えてならない。
思えば、入院初日に看護士さんたちが入れ替わり立ち代わり(あの病院はやたらと看護士さんの多い病院でしかもそのほとんどが若い看護士さんばかりだった)やってきては「みつとみさん、生年月日を教えてください。今日は何年何月何日ですか?お名前は何といいますか?今日は何曜日ですか?」といった質問を飽きることなく繰り返して聞いていった。
そのほとんどを正確に答える恵子を見て「ああ、これなら大丈夫」とは思わずに、「なんでこんなに同じことばかり繰り返していくんだよ」とちょっとムッとしていた自分がいたことも思い出す。
もちろん私がそんな風に思うのは的外れであって、看護士さんたちがチェックしていたのは患者に「認知障害の徴候がないかどうか」ということ。
これまでの入院生活でそうした認知障害を患う脳疾患患者をたくさん見てきた。
そして、それらの人たちに見られる顕著な症状は「表情に生気がない」ことだ。
単に「暗い」といった表現では現せない何か「生きていない」感じのするうつろな表情が多くの患者さんの顔に現れている。
なのでたとえ同室でも廊下ですれ違って挨拶をしても挨拶が返ってくるどころか表情が変わることもない。
私のことばが聞こえているのか、あるいは私の声が聞こえているのかすらもわからない。
そんな人たちを見るにつけ、恵子のケースがますますラッキーなことに思えてくる。
それこそしゃかりきになっていろいろなリハビリやできることは全てやってきたせいか恵子の経過はとても順調だと思う。
今月終わりの退院も全治での退院ではないとはいえ、ある意味、将来的な見通しはけっして暗くはない。
彼女のリハビリの一つの方法として始めたクレパスとスケッチブックによる「ヤマネコウサギの生活絵本」のようなものも既に7冊もたまってしまった(彼女は現在7冊目のスケッチブックを描いている)。
私が今度出す単行本のように、彼女も絵本かなにかで一冊まとめられると良いと思っている。
まずその第一が、視床部という大脳の奥の奥の方の出血にもかかわらず認知障害や言語障害がまったく起こらなかったこと。これはひょっとしたら奇跡的なことかもしれないとさえ思う。
脳卒中患者の多くの場合に、言語障害も認知障害も起きているし、ましてや左脳の視床などという場所での出血が手足の麻痺だけで済んでこと自体が不幸中の幸いだったと最近つくづく思えてならない。
思えば、入院初日に看護士さんたちが入れ替わり立ち代わり(あの病院はやたらと看護士さんの多い病院でしかもそのほとんどが若い看護士さんばかりだった)やってきては「みつとみさん、生年月日を教えてください。今日は何年何月何日ですか?お名前は何といいますか?今日は何曜日ですか?」といった質問を飽きることなく繰り返して聞いていった。
そのほとんどを正確に答える恵子を見て「ああ、これなら大丈夫」とは思わずに、「なんでこんなに同じことばかり繰り返していくんだよ」とちょっとムッとしていた自分がいたことも思い出す。
もちろん私がそんな風に思うのは的外れであって、看護士さんたちがチェックしていたのは患者に「認知障害の徴候がないかどうか」ということ。
これまでの入院生活でそうした認知障害を患う脳疾患患者をたくさん見てきた。
そして、それらの人たちに見られる顕著な症状は「表情に生気がない」ことだ。
単に「暗い」といった表現では現せない何か「生きていない」感じのするうつろな表情が多くの患者さんの顔に現れている。
なのでたとえ同室でも廊下ですれ違って挨拶をしても挨拶が返ってくるどころか表情が変わることもない。
私のことばが聞こえているのか、あるいは私の声が聞こえているのかすらもわからない。
そんな人たちを見るにつけ、恵子のケースがますますラッキーなことに思えてくる。
それこそしゃかりきになっていろいろなリハビリやできることは全てやってきたせいか恵子の経過はとても順調だと思う。
今月終わりの退院も全治での退院ではないとはいえ、ある意味、将来的な見通しはけっして暗くはない。
彼女のリハビリの一つの方法として始めたクレパスとスケッチブックによる「ヤマネコウサギの生活絵本」のようなものも既に7冊もたまってしまった(彼女は現在7冊目のスケッチブックを描いている)。
私が今度出す単行本のように、彼女も絵本かなにかで一冊まとめられると良いと思っている。