『初恋』の舞台は1960年代の終盤。学生運動が盛んな時代だ。家族の中で孤立している女子高生は、少し年上の若者たちがたむろするジャズバーに入り浸るようになる。そして、その中の一人に請われるままに、ある犯罪に手を染めることになる。「3億円事件」として世を賑わす現金強奪事件だ。しかし、彼女自身には、そのお金で贅沢な暮らしをしたいという欲望も、世の中に衝撃を与えたいという野心もなかった。彼女はただ、初めて好きになった人の役に立ちたかっただけのだ。その純粋さには胸を打たれる。しか~し!
この映画、はっきり言って出来は良くない。致命的なのは、主人公以外の登場人物たちに魅力を感じられないことだ。今風に言えば「キャラが立ってない」のである。最後に「○○○ ○○○で死亡」「○○○ 郷里に帰って○○○」などとテロップが流れるが、観ている側は(少なくとも僕は)「それ、どいつだったっけ」としか思えない。群像劇を作りたかったのかもしれないけど、その目論見はとても成功しているとは言えないのだ。役者たちの存在感が今ひとつということもあるが、脚本の段階で各々の個性を際立たせるような描写を入れていないのが失敗の原因ではないだろうか(もしかしたら編集段階で削られたのかも)。主人公が恋する東大生も、画面を見ている限りさっぱり魅力的じゃないので、なんで彼女が惚れたのかよく分からない。全編ほぼ出ずっぱりの宮崎あおいが好演しているから、この映画はそれなりに見応えのあるものになったのだろう。
さて、ここからが本題。なぜ僕は『初恋』を観て驚いたのか。それはズバリ、小嶺麗奈が脱いでいたから、である。いやぁ、ホントにビックリした。だって、そんなこと全然知らなかったもん。世間でも話題になってなかったんちゃう?
僕は彼女の大ファンじゃないけど、一度お会いしてお話ししたことがある(その時のことは「映画バカ一代」8号に書いたので興味のある方は買ってくださいませ)ので、一方的に親近感を抱いている。出演作もできる限り観るようにしてきた。だから、今回の突然のヌードにビックリしちゃったのである。
もちろん、「脱いだらダメ」なんて言いたいわけじゃない。女優にとって脱ぐという行為は相当の覚悟が必要だろうから、彼女も熟考の末に決めたんだと思う。その勇気には敬意を表したい。身体も美しかった。でも、だからこそ、余計に言いたくなるのである。もったいない!
だって、この映画では彼女の出番は少なすぎるもん。見せ場がほとんどないのよ。そんな映画で脱がなくてもいいじゃん。たとえば『さよならみどりちゃん』の星野真里、あるいは『欲望』の板谷由夏みたいに、自分が主役の映画で脱がなきゃ。まったくもって、もったいない。
とはいえ、彼女の女優人生はまだまだ長く続くだろうから、これはひとつの通過点に過ぎないのかもしれないね。むしろ、ササッと脱いじゃった(って言い方はナンだけど)ことで、さらに女優として飛躍するんじゃないかな。ともあれ、ますますの活躍を願うばかりです。がんばれっ。
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