少年トッパ

『僕の彼女はサイボーグ』へのツッコミ ※ネタバレしまくり

 さて、『僕の彼女はサイボーグ』の感想。ネタバレしまくりなので、未見の方は読まないように。

 さほどSF好きじゃない方でもすぐに分かると思うけど、この場合の「サイボーグ」は完全な間違い。サイボーグってのは、いわゆる「改造人間」のことであり、身体の一部(時には大部分)を機械に置き換えて強化された人間を指すわけだもんね。
 なので、この映画に登場する彼女のことは「ロボット」とか「アンドロイド」と呼ぶのが正しいんだろうけど、劇中で綾瀬はるか演じる「彼女」が「ロボットという言葉は使わないで」と言ってるので、その辺りは確信犯的なものだろう。というか、どうしてもこのタイトルにしたかったんじゃないかな。「サイボーグ」って呼称には、どこか人の心を惹き付ける響きがあるもんね。
 で、予想通り綾瀬はるかは素晴らしく可愛かったんだけど、内容に関してはとにかくもうツッコミどころ満載。もちろん、タイムトラベルを扱った物語には矛盾が付き物であり、その矛盾自体を楽しむべきだとは思う。たとえば「2007年に彼のもとに現れた彼女は、サイボーグ(しつこいけど実際はロボット。もう言いませんが)じゃなくて、彼女そっくりの人間」なのだが、しかしそもそも彼女そっくりの人間は自分と瓜二つのサイボーグを見てから、小出恵介演じる青年に惹かれたのだ。ここで、いわゆる「鶏が先か、卵が先か」という疑問が生じることになる。でもまあ、こうした矛盾をあげつらうことは、SF好きにとってはむしろ楽しい行為だろう。
 しかし、この映画に関しては他の部分でもモヤモヤしっぱなし。しかも、終わってから振り返ってみると、ますます納得できないことばかりなのだ。

 何よりも不可解に思えるのは、小出恵介演じる科学者が61年の年月を費やして成し遂げたのが「彼女を再生させること」という事実だ。それ、ものすごく自己中心的じゃない? だって、それより先に、取り組むべき課題があるじゃん。言うまでもなく、地震での被害を最小限に留めることだ。あんな大災害に見舞われて、彼はそれを真っ先に考えなかったんだろうか。
 もちろん、その時点ではタイムトラベルが将来可能になるとは思ってなかっただろう。でも、あの大規模な地震では数千人、いや、数万人レベルの死傷者が出ているはずだ。主人公は誠実な青年であり、科学者の卵でもある。あんな惨状を目の当たりにしたなら、何を置いても「二度とこんな悲劇を繰り返さないようにせねば」と思うんじゃないだろうか。地震そのものを防ぐことは無理だとしても、たとえば被災者を迅速に避難させるようなシステムを構築するとか、揺れに強い建造物を考案するとか、そういうことに心血を注ぎそうなものじゃない? だって、交通事故に遭った子どもとか、闖入者に襲われた女子高生たちのことは助けようと思ったわけでしょ? 典型的な人道主義者なわけじゃん。なのに、数万人の命を救うことよりも、自分の恋人を再生させることに61年も費やすとは。まあ、それだけ彼女を想う気持ちが強かったってことだろうけどさ、それでも実際に彼女を昔の世界にタイムトラベルさせる時点では、あの大地震に関して何らかの対策を講じようと努力するんじゃない? 彼の性格から考えると。

 そもそも、この地震が起きたのは、主人公たちに原因があるんだよね? あのレストランで死ぬはずの小出恵介が助けられた、という「歴史の改変」が時空間に影響を及ぼして天変地異を起こした……んだよね? あの事故で半身不随になるはずだった彼は、その危機は回避できたものの、半身不随になるという運命は変えることができなかった(それを予想させる台詞は少し前のシーンで綾瀬はるかから発せられた)。なので、別の災厄が降りかかった……んだよね?
 それは彼にとっては仕方ないことかもしれないけど、巻き込まれた数千人、数万人にとっては、とんでもなく迷惑な話じゃない? ……って、もしかしたら僕の解釈が間違ってる? だとしたら、すんません。

 最後の最後、上半身だけになった彼女を小出恵介が抱きしめるシーンで、彼女そっくりの彼女(ああ、ややこしい)が現れるわけだけど、これは無粋な展開じゃないだろうか。釈然としない部分は幾つもあるにせよ、観客は主人公と彼女とのラブストーリーに心を揺り動かされていたわけである。彼女を失った彼の悲しみに胸を痛め、一緒に絶望感や喪失感を噛みしめていたのである。しかし、そこに彼女そっくりの人間が現れるってことは……ええっと、どう解釈すりゃいいの? 彼女そっくりの彼女は、そのあと彼と一緒に人生を過ごすの? それとも、61年後に彼女(サイボーグの方)が無事に再生されることを彼に教えて去るの? もしくは、遠い未来にしか存在しない技術とかを彼に教えるのだろうか(だとしたら61年も費やす必要ナシ)。いずれもしても、どうにもすっきりしないし、感動も半減してしまう。さっきも書いた通り、無粋である。
 というか、彼女そっくりの彼女って、考えてみれば、とんでもねー女じゃん。サイボーグである彼女の記憶を受け継いでいるにしても、もちろん自分自身の意志や記憶も持ってるわけでしょ? なのに、2007年に彼の前に現れた時の行動は何? なんで平然と泥棒や無銭飲食ができるんだ? 冒頭の場面では、こっちもいきさつが分からないので、サイボーグであるらしい彼女がそうした行動をしても「何らかの事情があるのだろう」と思えた。たとえば、まだ人間社会に於ける倫理観や道徳観念が備わっていないのかも、とかね。
 でもさ、2007年に現れた彼女は実は100年以上先の未来からタイムトラベルしてきた人間であり、しかも、かなり裕福な身分なわけでしょ? なのに、過去の世界で法を犯しまくり、騒動を起こし、物を壊してと、やりたい放題。それはダメでしょ。せめて2007年に使える紙幣やコインを調達してから来いよ、と思ったのは僕だけじゃない……よね?

 などとツッコミどころを挙げてきたけど、要は冒頭での万引きや無銭飲食や路上での追っかけシーンは「観客を笑わせるため」であり、クライマックスでの大地震は「観客にインパクトを与えるため」だろう。どれも観る者を楽しませるためであることは、よく分かる。しかし、もうちょっと整合性とか辻褄とかを考えてくれなきゃ。
 他にも難点を書き出せばキリがない。主人公が子どもの頃の情景なんて「いつの時代じゃ」と言いたくなるし、竹中直人のオーバーな演技にはゲンナリするし、田口浩正演じる不審人物の行動も脈絡がなさすぎだし、ウ○コの話は全然笑えないし……ああ、ホントにキリがない。
 しかし、それにしても綾瀬はるかは本当に可愛かった。なので、すべて許す! すんません、尻すぼみなツッコミでした。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「<映画> 映画の感想」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事