この映画を成功させた最大の要因は、好感度の高い役者たちを使ったことだろう。一歩間違えば「キショイ」と言われそうな兄弟だが、演じているのが佐々木蔵之介と塚地武雅なので、観る側は(少なくとも僕は)親しみを持ちながら行動を見守ることになる。そして、彼らが関わり合う女たちがすべて美人すぎることに「ありえね~」とツッコミを入れつつ、「ああいう生活もいいかも」と思いながらスクリーンを眺めることになるのだ。深い感銘も教訓も残らないが、観たあとで穏やかな気分になれる作品である。
間宮兄弟の部屋で目を引くのは、壁一面に備え付けられた本棚だ。本が好きな者ならば誰もが憧れるような本棚なのである。どんな本が並んでいるんだろう、と目を凝らしてみる。中央より少し下にオレンジ色の背表紙の文庫本が並んでいる。これはおそらく新潮文庫の三島由紀夫だろう。その隣の赤色は? たぶん松本清張じゃないだろうか。黄緑も少しある。これは間違いなく星新一だろう。アップにしてくれないかなぁ、などと思いながら観ているのだが、大写しになるのは図鑑の類ばかりだ。確かに、兄弟のマニアックさを示すにはそっちの方が正解だろう。
しかし、ある場面で、小説の単行本が大きく写り、僕は驚いた。おおおっ、船戸与一の『午後の行商人』! もちろん、僕も持っている。でも、なんで? 森田芳光監督の好みか? 今まで好きじゃなかった(だって『模倣犯』をあんな風に映画化したヤツだもん)けど、ちょっと親近感を持っちまった。
それにしても、中島みゆきは楽しそうだなぁ。『さよならCOLOR』では女医、『ガラスの使徒』では占い師、そして『間宮兄弟』では裕福で無邪気な母親役。演技のレベルとしては決して高くはないんだろうけど、いつも妙に存在感があるし、本人が楽しそうに演じていることが観る側にも伝わってくる。これからますます映画やドラマに出ることが増えるんじゃないかな。
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