●『倶楽部亀坪』亀和田武×坪内祐三
街を歩きながらの対話をまとめたもの。興味深いウンチクも多少はあるけど、はっきり言って単行本にするほどの内容じゃないと思うなぁ。しかも1890円は高いて。亀和田氏の本は今までずっと買ってきたけど、今回ばかりは不満。まあ、こっちが東京の街に詳しくないってこともあるだろうけどね。
●『終(つい)の住処』磯崎憲一郎
結婚してからの十数年間を内省的かつ観念的に綴った小説。非現実的な描写が続く箇所もあるが、描かれていることはおそろしく現実的で生々しい。同年代の男なら大多数が共感できるんじゃないだろうか。
この磯崎氏、写真を見るとかなり男前である。小説の中で「やたらと女がちょっかいを出してくる」という部分があるけど、実際そうだったんだろうなぁ。うらやましー。って、小説とは関係ない感想になっちまいました。失敬。
●『夜にはずっと深い夜を』鳥居みゆき
好きな作家として安部公房の名を挙げている鳥居みゆきが、どんなシュールで毒気のある小説を書くのか。興味を抱きつつ読み進めていくと、これが特にシュールでも毒々しくもない。帯には「狂気の叫び」と書かれているが、読むのがつらくなるような重苦しさや痛ましさも感じられない。
じゃあ面白くないのかというと、決してそんなことはない。コンプレックスのカタマリで自意識過剰で妄想癖のある女の思い込みや空回りっぷりは笑えるし、独立した短編かと思ってたら前の物語とつながっていたりして、なかなか楽しませてくれる。気の利いたショートショート集、という印象だ。
鳥居みゆきの写真を使った帯を含めて、アートワークも見事。ただ、表紙のイメージから「怖さ」を期待した人は、ちょっと拍子抜けするかも。僕は気に入ってるけどね。
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