もともとSMAPのために作られた曲ではあるが、世の音楽好きの大半には今や「スガシカオの曲」として認識されているのではないだろうか。僕もその一人だ。しかし、そうなると気の毒なのが川村結花である。確かにスガシカオによる歌詞がこの作品を名曲たらしめているわけだけど、作曲したのは川村結花なんだからさ。もうちょい彼女にもスポットライトを当ててあげようよ。
スガシカオにはデビュー当時から注目していた。ファーストアルバムが出た頃のインストアライブに行って、握手してもらったこともある。その時は、渡されたサイン色紙を見て驚愕したもんだ。だって、ものすごく手抜きっぽいサインなのよ。アルファベットで無造作に「sikao」と書いてあるだけ。しかし、その時、僕は思った。コイツはサインなんかに時間をかけず、すべてのエネルギーを音楽に注ぎ込むのだろう。そして、必ずや売れっ子になるだろう、と。その予感は的中し、今や日本を代表するミュージシャンになったわけだ。
さて、甲斐よしひろによる『夜空ノムコウ』。これは意外にも(という言い方はナンだけど)、最初に聴いた時点で即座に気に入った。なんか、甲斐よしひろの声にピッタリと合っているように思えたのだ。
もしかしたら、それは『今宵の月のように』や『歌舞伎町の女王』と違って、原曲のイメージが固定されていなかったからかもしれない。ほら、この曲はSMAPもスガシカオも川村結花も歌っているし、他にもたくさんのシンガーがカバーしているでしょ? なので「この曲にはこの声」という固定観念がなかったのだ。そういう意味では、『夜空ノムコウ』は今や『上を向いて歩こう』や『見上げてごらん夜の星を』みたいな国民的愛唱歌になったと言えるかも。あ、そういえばもう教科書にも載ってるんだっけ。
6) 接吻 KISS(オリジナル:オリジナル・ラブ)
オリジナル・ラブと聞いてすぐに思い浮かぶのは、曲よりも田島貴男の濃い顔である。でも、濃いのは顔だけじゃない。歌い方も濃い。1年ぐらい前に出た『キングス・ロード』というアルバムは「往年の洋楽スタンダードを自らの訳で歌う」という意欲作だったんだけど、あまりにも押しの強い歌いっぷりに少々たじろいでしまったほどである。『接吻 KISS』を歌っていた頃より3倍ぐらい濃くなってるんじゃない?
それはともかく、甲斐よしひろの『接吻 KISS』。これまた一発で気に入った。こういう歌謡曲っぽいナンバー(これは褒め言葉)を歌わせたら、やはり甲斐よしひろは凄腕である。『クレイジー・レイジー・ラブ』あたりを彷彿とさせるカッコよさ。さすが。そう考えると、これを一曲目にした方が良かったんじゃない?
7) 恋しくて(オリジナル:BEGIN)
「イカ天」出身バンドの中で今なお大活躍している唯一のバンド。それがBEGINである。まあ、今やイカ天のイメージは微塵も残っていないけど。イカ天といえば、あの田中一郎も審査員だったよねぇ。
『恋しくて』はBEGINのデビュー曲であるが、これまた数多くのシンガーにカバーされているので、『夜空ノムコウ』同様、イメージが固定していない。それもあって、この甲斐よしひろバージョンも最初から違和感なく聴けた。ただ、ちょっとアレンジがクドいんじゃない? もっとシンプルでもいいと思うけどなぁ。
8) 色彩のブルース(オリジナル:EGO-WRAPPIN')
もしかしたら意外に思われるかもしれないけど、なぜかEGO-WRAPPIN'にはハマらなかった。自分の趣味にピッタリのように思えるのに、どういうわけかあんまり手を出す気にはなれなかったのだ。下世話さが足りなく感じたからかもしれない。EGO-WRAPPIN'は、ちょっと洗練されすぎてるもんね。
『歌舞伎町の女王』同様、この曲に関しても「甲斐さん、歌いこなせるだろうか」という危惧を抱いていた。だって、ものすごく歌いにくい曲じゃない? 中森明菜もカバーしているけど、あまり良い出来とは言えなかった。
予感は7割ほど的中した。どうにも歌い方がぎこちなく感じるのだ。『歌舞伎町の女王』ほどの違和感はないけど、どうも「無理してるなぁ」と思えて仕方ない。なので、あまり好きになれず。
<つづく>
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