少年トッパ

嗚呼、世界は美し……くない、と感じた日。

 初めてメガネをかけたのは、高校2年生の時だった。誰でも同じだろうが、ある日突然、目が悪くなったわけではない。少しずつ少しずつ視力が下がり、「黒板の文字が見づらい」「遠くの景色がぼやけて見える」といった不便さを感じるようになったのだ。そして、親に「暗いところでマンガばっか読んどるでだわ」なんてブツブツ言われながらお金をもらい、僕はメガネ屋へ行った。
 案の定、僕の視力はかなり下がっていた。メガネをかけるのは気が進まないけど、まあ仕方ないか。機械で視力を測定し、度数を決める。せっかくだからカッコいいフレームがいいなぁ。でも、高いのは買えないので適当なところで妥協する。しばらくして、僕のメガネは出来上がった。
 メガネ屋を出て外を歩く。おおっ、何もかもよく見える。標識とか看板とかも、くっきり見える。ちょっと感動。でも、昔はメガネなしでも、こんな風に見えてたんだよなぁ。
 そして僕は、メガネをかけて学校へ行った。「おっ、ついにメガネか」と笑う級友。あれ、お前、そんなにニキビ面だったっけ。鼻毛も出てるぞ。先生が教室に入ってくる。うわっ、きたねぇ。アンタの顔面、そんなにガサガサしてたっけ。改めてクラスの連中の顔を見る。あらら、可愛いと思ってた妙子ちゃん、確かに顔立ちは整ってるけど、けっこうニキビが多いじゃん。山本君、キミの肩、フケだらけ。瑞恵さん、うなじがけっこう毛深いじゃん。教室の壁や窓も目に入る。うわぁ、こんなに薄汚れてたんだ。日焼けして変色しちゃってる部分もあるなぁ。
 休み時間、音楽の先生と廊下ですれ違った。色白の美人だ。ちょいと憧れてた。でも……あれれ? そんなに化粧、厚かったっけ。なんか、粉が顔に浮いてるし……。

 その日、僕は「世界は美しくない」と知った。

コメント一覧

トッパさん
うんうん、最初は恥ずかしいよねぇ。分かる分か
る。ただ、僕の場合は「自分が思ってるほど周りは
自分を気にしていない」ってことに気付かされたけ
どね(笑)。
トッパさん
僕の場合、あんまり度が強いメガネだと頭が痛くな
るので、メガネをかけた時点で0.7弱なんっすよ。な
ので、免許を更新する時は毎回ヒヤヒヤしてます。

しかし「バカ」ってのはスゴいネーミングっすねぇ
(笑)。
ごむながおじさんさん
2~3年前、恥知らず・・じゃなくてモノモライ
(仙台では”ばか”という)がでて眼科にて即効手
術する前にに視力検査とかいろいろされました
が、裸眼でよく分からなかったものが、レンズを
変えるたびにはっきり見えて驚きました。
めがねとは縁のない僕ですが、とっぱさんやビ
ターさんの嬉しさの感覚がなんとなく分かる気が
します♪~
トッパさん
そうそう、毛穴! みんな汚い顔してるなぁ、と
思ったもんです。もちろん、自分も含めて(笑)。
ビターさん
似たような経験あります。
高3で初メガネ。
トッパさんと違うのは、世界の輪郭がはっきりした嬉しさの方が強かったです。
でも、鏡見て己の毛穴に愕然としました。
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