えええっ、それで終わり? マジで声を上げそうになっちまった。
犬たちが置き去りにされた基地に、ようやく人間たちが辿り着く。そこで彼らが見たのは、最年長のジャックが雪に埋もれて死んでいる姿だった。人間たちは悲嘆に暮れるが、その時、犬たちの吠える声が! 見ると、丘の上から5頭の犬たちが駆けてくる。感動的な再会だ。歓喜あふれるシーンである。ここまでは問題ない。
大満足した様子の人間たちは5頭を雪上車に乗せ、その場を去ろうとする。んん? それで帰っちゃうの? 残る2頭を探さないの? そう思っていたら、犬たちの中で一番若いマックスが、雪上車に乗ろうとせず吠えまくる。そして、雪原を走り始める。それを追ったジェリー(人間側の主人公)が見つけたのは、雪に埋もれて横たわるリーダー犬のマヤだった。ああ、死んじゃったのか。そう思ったら、ケガをして動けないだけだった。再び喜ぶジェリーと仲間たち。こっちもホッとする。
1頭が死亡、6頭が生存。合わせて7頭だ。ってことは、残りは1頭。もちろん、観客はその1頭=デューイが崖から転落したことを知っている。しかし、スクリーンの中の人間たちは、まだそれを確認していない。今から探しに行くのだろう……って思ってたら、そうじゃなかった! なんと、ここで物語は終わるのである。雪上車の中で口づけを交わすジェリーと恋人、その間に入って顔を舐めようとするマックス(別の犬だったかも)、その光景を見て微笑む仲間たち。絵に描いたようなハッピーエンドの場面である。しかしデューイは? 走り去る雪上車を見送るように立てられた墓標が映ったが、それは基地で命を落としたジャックのためのものだろう。デューイの遺体は確認されていない、というか確認しに行くという描写は一切なかった。な、なんで?
そりゃあまあ、あれだけ過酷な状況の中で8頭のうち6頭が生き残れば万々歳でしょ。でも、まだ1頭の生死が確認されていないのに、それで去っちゃうのはどうよ。だって、天候も悪くないのよ? せめて「その後、デューイが崖の下で発見された」みたいなテロップが出るのかと思ったら、それもナシ。ものすげー中途半端な気分になったのは僕だけ? ホント、「もう1頭は?」って声を出しそうになっちゃったもん。
全体的に緊迫感は今ひとつだが、犬たちが好演しているので見応えはある。とはいえ、人間たちのドラマは少々お粗末。あの身勝手な博士、どうよ。演じるブルース・グリーンウッドの顔付きが優しいので善人っぽく見えるけど、とんでもねー野郎じゃん。半年も経ってから改心したって遅いっちゅうねん。それも含めて、ちょっと人物描写が薄っぺらに感じたなぁ。
驚いたのは、シャチの死体の中からヒョウアザラシが現れた瞬間。こっちも思わずビクッと身体が動いちゃったもん。ああ、恥ずかしい。そのヒョウアザラシと犬たちが闘う場面は、ホラー映画かパニック映画のようなノリで迫力満点。まあ、冷静に考えると、ヒョウアザラシの食い物を犬たちが奪った、ってことなんだけどね。
いろいろと不満はあるものの、氷原を犬たちが走っていく姿を見るのが大好きな僕としては、かなり楽しめる映画だった。ただし、昔の『南極物語』のリメイクだと思って観ると、ちょいと違和感を感じるんじゃないかな。あれはドキュメンタリーっぽい感じだったけど(って、あんまり覚えてませんが)、今度のは純然たるハリウッド的エンターテイメント作。あくまで別物と考えるべし。
※画像は伏見ミリオン座に飾られていた看板。あえて昔っぽく描かれています。
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