徒然日記

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[感想]クラウドコンピューティングEXPO2019秋より「DXは未体験だとその価値は全く見えない。 躊躇せずやってみれは価値もわかる」という経産省の主張

2019-10-28 17:33:25 | イベント情報

 

デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革=DX)って何? という実像をきちんと把握していない人は多いような気がする。

よく聞くのは「アナログ⇒デジタル変換がDXだ。」という主張。 しかしこれは全然違う。 A/D変換はDXのひとつの手段にすぎない。 「ペーパーレスこそDX!」という人もいる…しかしこれも違う。

DXとは情報の流れ(データパイプライン)の中に存在したアナログ処理やデータを無くすことで、データや制御を一気通貫でデジタル化し、それを前提として従来は不可能だった価値を生み出し、さらにそれを利活用できるように組織そのものの形や運営、思考回路を変えてゆくこと。 だと思う。


2019年10月23日に開催されたJapan IT Week の以下の講演を聞いてみた。 そして感じたこと。


   2025年の崖問題とDX推進に向けた政策展開
   ~DXレポート作成の背景と国内外のDX動向を踏まえて~
         講演者 経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 企画官 和泉氏

 


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所感
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   ・DXの成功事例について各種紹介されており、DX以前から見て、DX以後は未知の世界であり
    あれこれ考えるより行動せよ! というのは政府の主張としては非常に積極的に感じる。
    外資系企業が言うのなら納得できるが。

   ・しかし、うがった見方をすると、失敗の事例は紹介されておらず、聴衆は躊躇より行動を
    という言葉を額面通りには受け取れないかもしれない。
    失敗するのは君ら(経産省)じゃあないから好きな事言えるな。 と冷笑するかもしれない。
    
   ・DXレポートが挑戦への起爆剤になればよいのだが、失敗したところでびくともしない大企業
    ほどわずかな挑戦すら忌避する(失敗の大小ではなく、失敗そのものを忌避する)のが実際だ。

   ・講演の中で和泉氏が主張する「失敗の中にチャンスがある」という考え方に今、転換しうる
    だろうか? それとも2025年以降に崖から落ちてから気づくだろうか? その時にも気づか
    ないだろうか?

   ・未来は見えない、自然界に100%という確率も0%という確率もあまりない。
    しかし、何もしなければ成功しないというのは、この数少ない100%確実なことだろう。

 


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講演概要
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概ね、このような内容。
1.政府が考えるDXとは何か?
2.2025年の崖、DXレポート
3.戦略的なIT導入(データ利活用に向けて)
4.共通プラットフォーム


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1.政府が考えるDXとは何か?
・DXはこれからではなく、すでに始まっている流れ。では、DXとは何なのか?
 事例を色々紹介し、
   DXは導入前に想定もしない価値を生むことがある
   日米企業のDXの目的意識には根本的な方向性の違いがある
   DXは大企業だけのものではない
 といったことを解説。

・事例)本当の便益はやってみた後で見える パリ地下鉄の自動運転
これは1998年から始まっている。自動運転の効果はなにか?というと普通は制御システムの変更が容易などを考えがちだが、実際に聞いてみると、オペレーターの権限で臨時便を出せ、イベントによる混雑時に容易に混雑を終息できることだった。 最初からそのメリットが見えていたわけではなかった。もし初めからそれが予測できていればより多くの予算を獲得できただろう。 というヒアリング結果を紹介。

・事例)日米では考え方が違う アマゾンGo vs JR東のAIコンビニ
技術的にはセンサーやAIは日本がすぐれているようである。が…基本的な考え方が違う。 Goは店を出るときに商品を再チェックはしない。 日本はレジで購入品、数量を確認。 この違いはなぜか? Amazonは客の数をさばくことを主眼にしている。 日本は無人化=人減らし(コストカット)と考えるが、アマゾンは「如何に多く売るか?」に重きを置く。 その結果、価格もシアトル市内でGoが一番安い。

・事例)中小企業でもDXは可能 京都宇治の山本精工改めヒルトップ
中小企業はDXできないは間違い。 アルミ部品の切削下請会社だった京都の中小企業「山本精工」は、業務内容を切削作業からCAMプログラミングに変えた。 大量生産部品の切削請負から試作品のモデリング請負に変え、顧客の2DCADデータから3DCADデータを起こし、CAM用プログラムを起こすと機械が翌朝までに試作品にする。 この成功でNASAから受注を得られ、米国支社設立。中小企業がデジタルの導入でグローバル企業に成長した。

・事例)端末コストダウンから知識構築ツールが生まれた 宮崎大学病院のナースステーションスマホ化
ナース用PDA(ナースステーション)をスマホに変えた。 QRコードで患者を識別すると医師が出した医療指示(注射など)が表示。対処方法がわからない症例の動画をアップし指示を仰ぐSNSも提供。結果、ナースがナースステーションにいなくなった。従来は(アナログの)メモを取ってそれを入力するためにナースステーションで多くの時間を消費していたがこれがなくなり、患者対応に割く時間が増えた。 当初の動機は高額なPDAを安価なスマホに代替することだったが、作ってみたら色々な効果が出てた。


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2.2025年の崖、DXレポート
・DXに向けて躊躇するべきではない
   ・DXはデジタル化の技術論やコスト論ではない
   ・デジタル化の先の世界は見透かせない
   ・すでにDXを行った人たちも時間の経過でいろいろな変化を生み出している
   ・技術論やコスト論でDXへの参入に躊躇する場合ではない

・政府のDX定義における重要ポイントは
   ・ビジネス環境の変化に対応して
   ・データとデジタル技術を活用して
   ・競争優位性を確保する ←これがゴール
ゴール達成の過程で人材やカルチャーは変わる。

・DXを阻害する日本のIT投資の慣習
   ・投資の80%が現用システムの維持管理に使われている
    さらに企業の45%は90%を現用システムの維持管理に投資
   ・日本=IT投資のトップシェアは「業務効率向上・コスト削減」
    米国=顧客行動分析、新サービスの開発がトップシェア
    考え方の違いが顕著

・日米中でみたITの評価のされ方の差と成長率
   ・中国=IT産業の平均給与は金融を抜きトップに
    平均年齢も30歳程度であり若い
   ・IT産業の成長率 中国15% 米国6% 日本1%

・ビジネススピードアップを阻害する旧式システムとワークフロー
   ・日本のIT業界=人材の殆どを旧来システムのお守りに張り付かせている
    ⇒システムが変わらない=仕事の仕方が変わらない
    ⇒昔のビジネススピードから脱却できない

・2025年までに変革できない人は崖から落ちる(知らないよ…もう)
旧式継承というシステム刷新がDX実現の障壁
⇒DXレポート作成の動機
   ・2021年以降のポストOlympic特需の計画を今から立てておいてほしいという趣旨
   ・2021年~25年をDX集中変革時期と想定 それに合わせた政策も打ってゆく
   ・2015年に崖から落ちないような計画を立ててほしいと期待。

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3.戦略的なIT導入(データ利活用に向けて)
・日本でDXが進まない要因
経営トップがDXに無理解ではなく、どうすべきかわからないのが障壁。
経営トップがDX推進に向けてリーダーシップを発揮できる必要あり。
ITや情シスの問題でなく経営の問題。
⇒DXレポート作成の動機
   ・経営者と社員でビジョンは共有できていますか? 
    なぜそのビジョンが必要か?危機感に裏打ちされてますか?
    適当に言ってるだけじゃあないですか?
   ・ビジョンや危機感に対して適切に予算を割り当ててますか?
このような問いかけに経営トップが答えられるガイドライン。

・目的を持った戦略的IT投資
カ〇ビーの事例を紹介 ERPは目的をもって使わなければいけない。 ERPのカスタマイズにコストをかけるくらいならERPから事業目標にあわせて、どのようにデータを抽出するかに金をかけるべき。 実際の事業目標として店舗鮮度向上を紹介。

・戦略ミスはチャンス  データ利活用ができていれば
経営戦略は必ずしも正しくない、トライ&エラー⇒修正を素早く実施する必要がある。 なぜか?作り手の想定とは違う使い方が生み出され、チャンスが生まれるから。
MaaS=レンタカーという固定通念では何も生まれない。 某カーシェアリングサービスの事例を紹介 利用者の約半分が走行距離=0で返却していることが判明。 なぜか? ユーザに聞いてみた⇒自動車として利用せず、カプセルホテルやワーキングスペースとして利用しているという実態があった。 ⇒では、その需要向けにサービスを提供すればいい(チャンス)

・データをどう使うか? これが重要
競合ともいえるEC事業者に全売上情報を開示しEC事業者のマーケットプレースで自社製品の販売を委託した実店舗事業者の事例紹介。 結果的に売上向上←リアル店舗に来ない客層を開拓できたから。

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4.共通プラットフォーム
・自社で出来ない規模はライバル同士で協業すべし
DX投資は個社で不可能な場合もある。その場合はライバルと手を結んで業務の共通化をすればいい。 北海道のビール4社の共同配送事業を紹介。 競合同志が配送は共同で行う(割り勘作戦)。 差別化は配送以外の領域でという取組。

・政府の水道サービス管理オペレーションセンターの共用化の取り組み
自治体単位で持っていた水道の管理オペレーションセンターの共用化。
皆で作って割り勘にすれば単独ではできないことも可能になる。


参考情報
① 宮崎大学病院、Androidスマホ対応電子カルテでコスト削減と業務効率改善 2011/7/21付
  https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2002W_Q1A720C1000000/

② 目指すは「病院ノマド」、宮崎大学病院 スマホによる“フル電子カルテ”が本稼働 2016/08/10
  https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/event/15/060300064/081000008/

③ パリの地下鉄が無人運転 労組反対押し切る 海外とっておき パリ支局・古谷茂久 2012/1/17付
  https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1304C_U2A110C1000000/

④ 地下鉄「無人運転」が、フランス人にできて日本人にできなかった理由 2019/7/7
  https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65621

⑤ 第10回・変化を恐れず社内を変え続ける HILLTOPの山本昌作副社長、山本勇輝経営戦略部長に聞く
  日経BP総研 中堅・中小企業ラボ 2018年11月26日(月)
  https://special.nikkeibp.co.jp/atcl/NBO/18/hataraku/brilliant/10/

 


経済産業省 デジタルトランスフォーメーション 関連資料
①デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン
 (DX推進ガイドライン)を取りまとめました 2018年12月12日
  https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004.html

② デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会の報告書
  『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』
  をとりまとめました 2018年9月7日
  https://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180907010/20180907010.html

③ D X レポート
  ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ サマリ版
  https://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180907010/20180907010-1.pdf

④ D X レポート
  ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ パワポ版
  https://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180907010/20180907010-2.pdf

⑤ D X レポート
  ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ ワード版
  https://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180907010/20180907010-3.pdf

⑥ DX 推進ガイドライン
  https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf


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