徒然日記

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[感想] VMware社におけるクラウド基盤技術の変遷(2010~2018)

2018-11-19 13:28:28 | 製品クラウド

VMware社におけるクラウド基盤技術の変遷(2010~2018)

自分が「IaaSクラウド」なるものに関心を持ったのは、2011年頃に VMware VCloud Director の情報を見た時でした。 その後いろいろな変化があったけれど、2018年になってやっとVMwareのクラウド基盤ソフトの新しい決定版が固まって走り始めた気がします。


vForum2018を見て感じたことは
  ・VMware社がサーバ仮想化技術の会社からクラウド技術の会社に完全にシフトした
  ・VMware社のクラウド基盤技術は紆余曲折を経て VMware Cloud Foundation に収斂した
という2点です。




2010年頃から本格的に話題となり始めたクラウド基盤技術。 自分は2013年以来、vForumに参加していますが、毎年発表されたVMware社のクラウドへの取り組みはそれはそれは多様な(悪く言えば混迷を極めた)ものでした。 今年のvForum 2018 。この混迷がやっと終息し、VMwareのクラウド基盤はプライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドもすべて「VMware Cloud Foundation」に収斂したことを実感しました。

いままでは(正直、)VMwareのクラウド基盤に本気で付き合う気がしなかったのですが、やっと VMware Cloud Foundation さえ押さえれば大丈夫かな…という確信めいたものを感じています。

せっかくのこの機会に、VMwareとの長い付き合いの中で見てきた、感じてきたクラウド基盤技術の変遷と感想について振り返って簡単にまとめてみようと思います。








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2010~2014年頃の VMwareクラウド基盤
  VCloud Director=IaaSレベルのマルチテナントクラウド基盤

★VMwareはかなり初期の段階(2010年)から「仮想化の次はクラウド」というビジョンを発表しており、VCloudと呼ばれるクラウドサービスを展開していました。しかし、2013年頃の急速な「クラウドブーム」で脚光を集めた各種クラウド基盤技術(AWS, OpenStack, CloudStack)に比べて設計の古さが目立ちました。 特にAPI制御ができない事とSDNに対応していないネットワークが問題だったようです。

それにしても、
  CloudStack, OpenStack といったクラウド基盤が初めて登場したのが2010年
  この時に既に VCloud Director を持っていた
VMware社というのは… 仮想化ベンダじゃなく、もともとクラウド技術ベンダなのですよね。
すごいもんだ。



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2014~2016年頃の VMwareクラウド基盤
  VCloud Director=パブリッククラウド専用
  VCloud Suite=プライベートクラウド専用
  NSX=パブリック、プライベート両方のクラウドで利用されるSDN技術

VMwareは2013年に思い切ってVCloudを廃盤(厳密にはプロバイダ向けのみに終息)、オンプレミスのプライベートクラウド向けにはDynamicOps社を買収して得た「VCloud AutoMaion Center(現 vRealize Automation)」と従来の仮想化製品を組み合わせた「VCloud Suite」を提供します。
ここから、クラウド基盤技術がパブリック用、プライベート用の二本立てとなりました。 

また、Nicira(ニシラ)のSDN製品「NVP」を買収。VCloud の仮想ネットワーク技術と組み合わせることで「VMware NSX」というネットワーク仮想化製品をラインナップに加えます。

★個人的には この当時の vCloud Suite は正直寄せ集めであり、一枚岩だった VCloud を捨ててまで新しいクラウド基盤と位置付ける意義を感じないものでした。  
特に問題だと感じたのはこういった点でした。
  ・ネットワーク仮想化には NSX が別途必要
  ・VShere, VCenter, VCloud Automation Center, NSX のそれぞれに管理コンソールがある
  ・実はシングルテナント構成のクラウドだった!
正直、企業向けに VCloud Director を継続販売してほしい! と思ったものです。



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2015年~2016年頃の VMwareクラウド基盤
  VCloud Director=パブリッククラウド専用
  VCloud Air=VMware社謹製のクラウドサービス専用

  VCloud Suite=プライベートクラウド専用
  Evo Rail=プライベートクラウド専用のアプライアンス

  VIO=パブリック、プライベート両方のクラウドで利用可能なクラウド基盤

クラウド基盤の二本立て化に続き、さらに混迷の度合いが上がります。
VMware はメーカーから、自社ソフトでサービスを販売するクラウドプロバイダーへと立ち位置をシフト。その旗艦サービスとして「VCloud Air」をサービス開始します。 これによって VMware のパブリッククラウドは互換性がない2サービス(VCloud Director, VCloud Air)の並列となりました。

プライベートクラウドも新製品(Evo Rail)のため混迷が増加します。 Evo Rail はプライベートクラウド向けのクラウド基盤アプライアンスです。 VSphereを基盤にしていますが管理機構は VCloud Suite ではなく独自のものが採用されました。

さらに、VIO(VMware Integrated OpenStack)と呼ばれるプライベートクラウド、パブリッククラウド両用のクラウド基盤製品も投入されます。 VIOは当時とても話題性が高かったクラウド基盤製品 OpenStack を VSphere と組み合わせ VMware社認定の自社製品に仕立てたものです。 高機能ながら敷居がとても高かった OpenStack を自由度を多少さげた代わりに比較的簡単に使え、VMwareのサポートも得られるようにしたものです。


★この時点で混迷は最高潮に達したと思います。  パブリック系で3種、プライベート系で3種の製品選択肢があり、これらが互いに全く共通性がないという状況になりました。
特に、VCloud Air と Evo Rail の管理ポータルに vRealize Automation が採用されず、互いに別々の独自ポータルが作られた時点でVMwareが何を主軸に展開したいのか? 主軸などないのか? わからなくなりました。 自分はこの時、しばらく放置して様子を見たほうがいいな…と思ったくらいです。


●2016年 Evo Rail 終息
登場わずか1年で早々と終息。 2016年のVForumではまったく姿なし…
どうやら、上限4物理ノードという拡張性の低さ、独自管理ポータルがVcenter大好きな管理者に嫌われたというのが大きな要因だったようです。



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2016~2017年頃の VMwareクラウド基盤
  VCloud Director=パブリッククラウド専用
  VCloud Air=VMware社謹製のクラウドサービス専用

  VCloud Suite=プライベートクラウド専用

  VMware Cloud Foundation=パブリック、プライベート両方のクラウドで
  利用可能なクラウド基盤のちに VMware Cloud on AWS の基盤になる製品
  VIO=パブリック、プライベート両方のクラウドで利用可能なクラウド基盤

この年にまたも新しい製品(VCF)が発表されます。
VCF(VMware Cloud Foundation)は VSphere, vSAN, NSX, vRA, SDDC Manager を組み合わせた新しいクラウド基盤です。 「VSphere, vSAN, NSXで仮想化を行い」「SDDC Managerで低レイヤーの管理」「vRA, VC, NSX Managerで高レイヤーの管理を行う」構成となっており、パブリッククラウドでもプライベートクラウドでも使え、さらにVCFを基盤とするパブリッククラウドとプライベートクラウドの間でハイブリッドクラウドを形成できるというものです。

VCFそのものよりはそれを活用してVMwareが新たに提供するパブリッククラウドサービス「VMware Cloud on AWS」が話題となり、自分は当初パブリッククラウド専用製品だと誤解しました。 実際にはプライベートクラウドにも使え、それによってハイブリッドクラウドも実現できるという「決定打(たぶん)」です。


★2018年になって初めてVCFこそが決定打。と確信したのですが…この時点では正直「プロバイダ専用の飛んでる技術」と感じてしまいました。
ついでに言えば、VCFを活用したパブリッククラウドは IBM Cloud が先行したのですが、 「AWS上でVSphereが動く!」という扇動的な話題のおかげで、すっかり影が薄くなり、VCFもなんとなくAWS向け専用技術のような印象を感じました。 もちろん、それは間違いで、他のプロバイダもVCFを使ってVSphereクラウドを作れるし、オンプレミスにも使えるのはご承知の通り。


●2017年 VCloud Air(VMware謹製クラウドサービス)断念⇒売却(仏OVH社)
VMware Cloud on AWS を登場させて、今後どうするのか…と思っていましたが、予測通りというか諦めちゃいました…
それにしても諦め早すぎ。 撤収も早すぎ。 期待して契約した先進的顧客の残念を思うと… もう少し別の方法を取るべきだったのでは? と思うのは日本的感情論?



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2017~2018年頃の VMwareクラウド基盤
  VCloud Director=パブリッククラウド専用
  VMware Cloud Foundation=パブリック、プライベート両用

  VCloud Suite=プライベートクラウド専用
  VIO=パブリック、プライベート両用
  VMware Cloud Foundation=パブリック、プライベート両用

混迷が整理され、収斂先が見えてきました。
結局のところ、VCFこそが本命であり、これを使うパブリッククラウドとオプライベートクラウドは連携が可能となり、ハイブリッドクラウドを形成できる! という事になります。

2015年頃の混迷の時、しばらく様子を見よう…と思いましたが
「VCFが本命!これを押さえれば。」と思えるようになりました。 AWSとの連携などを見ると、さすがに Air や Evo の時のようなどんでん(ちゃぶ台)返しはもう、ないでしょう…

ところで、ほかの製品群はどうなるのでしょう… 
個人的な勝手な見解ですが…たぶん
  VCloud Director=既存のパートナークラウド向けに当面は継続されるだろう
  VCloud Suite=既存顧客向けに当面は継続されるだろう
  VIO=既存顧客向けに当面は継続されるだろう
いずれもいきなりなくなることはないのでしょうが、VCFという本命がこのような形で登場した以上、もはや主役に帰り咲く可能性はなく、徐々に終息となるのではないだろうかと思います。



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VCFは唯一無二のベストな解か?

「VCFが本命!」と書きましたが、なんでもかんでもVCF一番! というわけではなく、以下の要件が必要な場合はVCFが最良かつたぶん唯一の解ということだと思っています。
  ・ vSphere ベースの仮想化が必要である
  ・ オンプレミスだけでも、パブリッククラウドだけでもダメで両方にワークロードを配置する
  ・ 管理者の知識は VSphere が中心で、いまさらそれを捨てたくない
  ・ オンプレミス~クラウド間のシームレスなワークロードの移動がしたい

このような需要にはVCFが持つ
  ・ vSphere, NSX, vSANベースの仮想化
  ・ ハイブリッドクラウド基盤
  ・ オンプレとパブリッククラウドを1つの管理UIで制御可能
  ・ オンプレ~パブリッククラウド間でライブマイグレーション可能
  ・ オンプレ~パブリッククラウド間でNSXによるL2トンネル延伸が可能
といった特徴が特長になるはずです。


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VCF は相変わらず寄せ集め…

なお、VCFというと1つの製品のように見えますが、ふたを開けると(やっぱり)色々な製品の寄せ集めです。 よく言えば、必要な機能だけ使えるのですが… いらない人には無駄だし、各製品にすべて精通するのも大変そうです…これさえあれば、ほかは何にもいらないよ! という単一製品ではないので、その点は相変わらずなのです。
  VCF(VMware Cloud Foundation)を構成する製品群
  ・SDDC Manager
  ・vSphere
  ・vSAN
  ・NSX
  ・vRealize Suite
  ・vRealise Network Insight
Basic, Standard, Advanced, Enterprise というエディションがあり、グレードによって同梱される製品が異なったり、同梱されるエディションが異なったりします。
また、VDI用途に特化した for VDI というエディションもあります。
以下のサイトにわかりやすく表になっています。
  ネットワールド VMware Cloud Foundation 製品ページ
  https://www.networld.co.jp/product/vmware/pro_info/vsphere/edition-cloudf/


この画像を見るとよくわかりますが、VCFの SDDC Manager は vSphere, NSX, vSAN, VC を管理するだけでクラウド上の仮想マシン、仮想ネットワーク、仮想ストレージの払い出しにはタッチしていないということです。

この作業は VC 又は vRA が行います。 ここの部分に VMware の過去の苦い体験が活かされているといえます。 それは、VMware Loveな人たちは VCenter を自分で操作したい! ということです。
過去の失敗(Air Evo)はいずれも、専用の管理UIで払い出す必要があり、VCを使ってはいけない仕様だったからです。

やっかいですね。人間って…



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VMware社のクラウド製品群

★ VMware VCloud Director
  VMware VCloud Director 製品ページ
  https://www.vmware.com/jp/products/vcloud-director.html



★ VMware VCloud Suite
  VMware VCloud Suite 製品ページ
  https://www.vmware.com/jp/products/vcloud-suite.html



★ VMware Integrated Openstack(VIO)
  VMware Integrated Openstack 製品ページ  
  https://www.vmware.com/jp/products/openstack.html  



★ VMware Cloud Foundation(VCF)
  VMware Cloud Foundation 製品ページ
  https://www.vmware.com/jp/products/cloud-foundation.html



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