「メジャーの打法」~ブログ編

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センサー・バット(Ⅸ)

2006年01月29日 | センサー・バット
 ここでパワー(=仕事率)について少し考えて見ます。

 パワーは以下のように定義されます。
作用力によるパワー   ・・・作用力と作用点速度の積
作用モーメントによるパワー・・・作用モーメントと作用部分の角速度との積

 
 <図5>のグラフに描かれたパワーを見ると両選手とも総パワーの大部分をYsp軸方向の作用力パワーが占めることが判るわけです。

 また、記事には力とパワーの数値が載っているので、そこから逆算してバットのグリップ部分の動きを推し測ることができます。
 前回述べたように、インパクト付近で選手Sのグリップ部分が止まっているのに対し、選手Oは動いているといったことが2つのグラフを見比べることによって判ります。


 ここで、「Zsp軸方向の作用力パワーがゼロではない」ことがちょっと気になったので、間違っているかもしれませんが、勉強のつもりで書き出しておきます。動作解析の基礎知識なのでしょうが・・・。

 2次元ですと、ある点が描く軌道の接線に垂直なZpl軸(pl:plane)の速度成分はゼロですから、パワーもゼロのはずです。
 しかし3次元ですと、ある時点でバットがXsp軸まわりの角速度を持つ場合、つまりバットの描く曲面が捻れる場合は、接平面が存在せず、スイング平面を定義するとZsp軸方向の速度を持つことになるでしょう。

 また2次元の場合でも、離散的なデータから速度を算出する場合、例えばこのようなケースで、bの接線をabcで定義し、bの速度をbからcで測ると速度のZpl軸成分が出てくるのかもしれません。


 選手Sについて、作用力・作用モーメントとパワーのデータからグリップ部分の動きを眺めてみますと・・・。

 Zsp軸方向作用力は左手が負、右手が正なのに対してパワーの符号は逆になっていますから、グリップ部分の速度は負ということになります。

 また、-0.05秒以後、Xsp軸方向の作用力で偶力を掛ける時点で、Xsp軸まわりの作用モーメントパワーの数値が大きく変化している点は注目すべきでしょう。
 Xsp軸まわりの作用モーメントは右手が正、左手が負。それに対してパワーの符号は一時的に逆転しています。例えば左手についての符号を見れば判るように、角速度は負→正→負となります。
 データが両手で偶力を掛ける時期の動作を反映しているとすると、最も強く寄与するのは肘の伸展とそれに続く屈曲でしょう。右手がボクシングのジャブのような急激な動きをやっているのだと思います。
 センサー・バット(Ⅶ)で、インパクト付近の逆向きの偶力を衝撃力に負けないために閉ループ系全体の剛性を上げるための動作に伴うものと書きましたが、投球動作と同じよう急激な肘の伸展に対する防衛反応として屈筋が働いているとも考えられます。

  (続く)