「メジャーの打法」~ブログ編

野球、ゴルフを中心とするスポーツ動作論
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センサー・バット(Ⅹ)

2006年02月02日 | センサー・バット
 本題に戻って選手Oについて考えます。

 Xsp軸方向の作用力と作用力パワーの数値(符号)から判るグリップ部分の動きを選手Sと比較しますと・・・。

 選手Oはスウィングの早い時期から、右手が正、左手が負の力を加えていますが、パワーの符号は逆になっています。
 偶力を掛ける時期の選手Sも、同じく右手が正、左手が負ですが、パワーの符号も一致しています。

 従ってグリップ部分は、それぞれの時期に、選手Oの場合はスウィング平面上でXsp軸の負の方向に、選手Sの場合は正の方向に動いていることになります。

 選手Sのスウィングが一般的なⅠ型で、バットを前方に引き出す時点で、「バットはインサイドアウト」或いは「グリップエンドを投球に向ける」といった表現が当てはまるのに対して、選手Oのバットは、体幹の回転と一体になって移動していると考えられます。この点はⅢ型と同じでしょう。
 
 Ⅲ型との著しい違いは、Ⅲ型が選手Sと同様、スイングの後半にXsp軸方向の偶力でバットに回転を与ているのに対し、選手Oは(それに加えて)両手でYsp軸方向にバットを引き切っているという点でしょう。従ってグリップを長軸方向に若干移動させながらインパクトを迎えてることになるのです。

 両手でバットの長軸方向に力を加えるというのはⅣ型に当たります。タイ・カップやイチローのインパクトも似たようなものになるでしょう。
 選手Oの打法をⅣ型と見なすと、彼のような打ち方は日本では決して珍しいものではありませんから、かつて私がHPで「イチロー以外のⅣ型の打者を知らない」と述べたのは誤りだったことになります。


 Ⅰ型を念頭に置いた打撃論では、「バッティングはムチ動作の一種で、リストはあまり使われない」と言われます。偶力を使わなければムチ動作の典型とされるヌンチャクに似ています。2本の棒を結ぶ鎖の部分が手首に当たります。
 このことは「Zsp軸まわりのモーメントが小さい」ことを意味しますが、選手Oについてはこれを無視できないのではないかと思います。

 私も「打撃論の常識」に従って作用モーメントについてはこれまであまり考えてきませんでしたが、センサー・バットのデータはその重要性を物語っています。この点でも考察が杜撰だったと言えるでしょう。