『ファインマン物理学Ⅱ(光 熱 波動)』の温度に関する記述。
熱力学的温度をカルノー・サイクルで定義した(p266)。それが分子運動論的温度と同じになることを次の順序で証明している(p273以下2章にまたがる)。TとVを独立変数としたばあいに、
1.(∂U/∂V)T=T(∂P/∂T)V-P
2.理想気体では左辺がゼロだから、Pに関する微分方程式になる。V=一定の条件でPについて解くと、
P=定数×T
3.分子運動論的定義ではP=(R/V)×Tだから、このTと3.の熱力学的温度Tは比例する。
そして、このばあい、比例定数が1になるように決められた。
そこで、1.についてだが・・・(p274-6)
TとVを独立変数としたばあいに、
⊿U=⊿T(∂U/∂T)V+⊿V(∂U/∂V)T・・・(1)
一方、第一法則より
⊿U=⊿Q-P⊿V
⊿V=一定とすると、(∂U/∂T)V=CV(定積比熱)が出る。厄介なのは、⊿T=一定としても1.の式は簡単には出てこないことだ。本文で指摘しているように、もちろん-Pではない。Vが増えて外に対して仕事をすれば、温度を下げるように働くから、(定温の条件では)熱が補充されてUが増えるからだ。
1.の式を出すためにカルノー・サイクルを使う。
(注)そこに現れる⊿Tはカルノー・サイクルにおける高温と定温の差であって、(1)式の⊿Tとは関係ない。
得られた結果は、
1/⊿V・(Vを⊿Vだけ変えるのに必要な熱量)T=一定=T(∂P/∂T)V ・・・(2)
そこでいよいよ、1.の式を出すわけだが・・・
(2)式を使うと、T=一定で体積を⊿Vだけ増やしたときの⊿Qがわかる。つまり、
⊿Q=T(∂P/∂T)V⊿V
仕事は当然-P⊿Vであり、(1)式の右辺第1項は定温だからゼロなので、
⊿U=T(∂P/∂T)V⊿V-P⊿V
となる。そこで両辺を⊿Vで割れば、1.が得られるというわけだ。
翻訳についてだが・・・
最後の式を出すにあたって、
最初にUは熱をつぎ込まれるために変化し、つぎに仕事がなされるために変化する。
としている。「最初に」、「次に」は原文では”first”と”second”だが、これは時間的前後関係を述べているわけではない。ひとつの定温膨張過程において「まず第一に熱」、「次に仕事」と言っているわけで、それが最後の式の右辺第一項と第二項になる。訳者の頭にはまだカルノー・サイクルがあるのではないか?