「メジャーの打法」~ブログ編

野球、ゴルフを中心とするスポーツ動作論
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柳川昌弘

2009年09月08日 | スポーツ全般

 YouTubeに上がっているこの空手家の動画をたまたま見て、珍妙とも形容しうる不可解な動きに魅了された。経歴もすごい。

 まず、スローで見ると肩から先の動きが長谷川穂積のストレート(1:00頃)に似ているのがわかる。突きでありながら打ち型。うねっている。空手にはこういう突きもあったのか!

 コメントを読むと、空手をやっている連中の違和感は相当なものだ。柳川のオリジナルなのか? おそらくかなり若い頃のこの動画では普通の突きだけしかやっていない。そうなると『柳川の突き』の威力を長谷川が証明して見せたということにもなるだろう。打ち型の方が末端の加速や引きには有利だ。しかし、空手の動作の多様性や多くの流派が存在することからすれば、かれの発明とは考えにくい。この動画も、腰の使い方を教えるもので、腕の使い方に言及してはいない。長谷川の技術が、知ってか知らずか、空手の奥義の域にまで達したと言った方がいいのだろう(ボクサーも長谷川一人ではないはずだ)。

 ・・・で、その腰の使い方は―というと、これがまた変っている。端的に言えば「腰を切っていない」のだ。腸腰筋による左股関節の屈曲を使っているのではないか? 「(左)腰のストッパーを作る」はそういう意味だと思う。甲野の『支点』だ。
 腸腰筋による前側股関節屈曲は強力で、投球で言えばアーム式、打撃でもC・リプケンあたりは(おそらくJ・ロビンソンも)このエネルギー生産様式を使っている。しかし、柳川の突きのばあい、この動作を空中で(左足を床から離して)やっているところがミソだ。床につけたままだと、逆方向の地面反力を受けて前方の勢いが削がれる。

例えば金田だと、かれのばあい末端の加速に支障はないが、リリースで腰が引ける。柳川はこれを避けたいのだ。


 空中動作では、重心は動かないから、股関節トルクを発揮すると骨盤は後方に動く。この動きを右脚の踏ん張りで押しとどめるところが第二のポイント。柳川の話に再三出てくる受動筋力で、パワーの発揮は少ないが、その踏ん張りで得た地面反力により重心は前方に移動し、突きの威力を増す。

 この左股関節屈曲はTiltだけではなくTurnを含む。それが突きにおいては胸郭のTilt&Turnをもたらし、次に出てくる『前手の突き』ではタメを維持する役割を担う。
 また、この屈曲がもたらす(反射による)力強い体幹伸展も目を引く。腰を切る打法よりもスピードは上で、引きを重視する空手であれば、大きな長所となるのだろう。

この点もアーム式を連想させる。例えば村山(1:20頃)



 腸腰筋の動作に続いて、腹筋の収縮による体幹の折り曲げがあり、上肢帯の挙上を経て腕のうねりへと続く。
 この体幹の折り曲げと上肢帯の挙上が第三のポイントだろう。水泳のクロールのリカバリーのような動作で、長谷川のストレートにはない。これが、末端スピードに加えて、拳の伸びをもたらす。拳の伸びが突きにとって決定的に重要なのはバレロのストレートを見てもあきらかだ。

こちらの動画でも突きの伸びを強調している。このばあい伸びをもたらすのは逆ムーン・ウォークのような足捌きだ。


 この、長谷川以上にそれこそ目いっぱいうねる打法がスピードを要求される空手の突きとして成り立つのだからおもしろい。ボクシングで流行のノーモーションとはまったく異質であり、甲野の思想の対極にある。うねらない打法とはまったくちがう仕方でディフェンスをむずかしくするのだろう。

スウェイバックで対処できなくするには、おそらく、20センチ程度の伸びで十分なのではないか? それをバレロは股関節の動きで、柳川は肩の動きで賄っているわけだ。



 柳川の打法についてはまだまだ語り尽くせない。いずれまた取り上げようと思う。それにしても、このネガ・コメのオンパレードは何だ。まぁ、こういう連中はアフリカへつれて行ってライオンのエサにでもするしかないのだろう。ところがいざ試合をやると、ライオンのエサの方が強かったりするんだろうな。くだらない世の中。

 

 

 


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