徳川慶喜log~徳川と宮家と私~

徳川慶喜家に生まれた母久美子の生涯、そして私の人生。

父・井手次郎~精強261空”虎部隊”サイパンに死すとも⑪・幻の連合艦隊1~

2019-08-26 05:00:00 | 日記
すでにアスリート飛行場では、多数の航空機が地上において爆破され、乗るべき愛機を失った30数名の戦闘機の搭乗員たちは、なすすべもなく腕をぶしていた。
第一航空艦隊司令部から、これら搭乗員を救出するための方策が示されたのも、丁度このころであった。それは、南部のナフタン岬沖か、北部のマッピ岬沖(どちらかは記憶はさだかでない。)に潜水艦が浮上する予定であるから、その地点に集結するように、と言う内容であった。

そこで、搭乗員たちは勇躍先発して行き、浮上予定海域近くの海岸に向かったのであったが、しかし予定日時、予定海域にはついに、味方潜水艦の浮上はなく、搭乗員の救出は不成功に終わったのであった。
サイパン島周辺の海域で米海軍は、非常に鋭敏な対潜水艦水中音波兵器を使用し、日本海軍の潜水艦の近接を極度に警戒していた。
このため味方潜水艦の接近、浮上は全く不可能であった、と言われている。

その夜9時過ぎ頃、261空では指令以下全員が、飛行場東端にある隠蔽弾薬庫に一時移動することになり、わが医務隊もアスリート飛行場からはなれ、負傷者を連れてその地下弾薬庫に入ることになった。
弾薬庫は鉄の二重扉をもつ巨大なもので、中には航空魚雷、80番、25番爆弾、3号空中投下焼夷弾などのほか、弾薬類が多数格納されていた。

(父井手次郎の手記を基にしているので、「私」の記載は父井手次郎を指す。)

徳川おてんば姫(東京キララ社)