野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

八幡平から秋田駒ケ岳を歩く 平成24年8月1日(一日目) 八幡平から大深山荘

2012年08月10日 | 山の思い出
(嶮岨森を望む)

一昨年の秋、避難小屋泊まりで八幡平から大深岳を経て松川温泉まで歩いたことがあった。本当は更にその先秋田駒ヶ岳まで歩くつもりであったのだが、悪路と寒さに悩まされ中途断念したのであった。その後しばらくは東北の山からは遠ざかっていたのだが、昨年の奥秩父の縦走成功を機に、再び八幡平から秋田駒ヶ岳の縦走に挑戦してみようと考えた。八幡平から秋田駒ヶ岳までの裏岩手縦走路には多くの避難小屋があり、昨年のテント泊よりはいくらか荷物も軽くなるはずである。この二年の間に悪路対策もしてきたつもりだ。東北地方での梅雨明け宣言を待って出かけることにした。

夜行バスで早朝盛岡駅に着き、IGRいわて銀河鉄道・JR花輪線へと乗り継ぐ。盛岡駅や田沢湖駅からも八幡平頂上行きのバスはあるのだが、花輪線鹿角花輪駅から秋北バスで行くのが八幡平頂上に着くには最も早い。大館行きのディーゼルカーに乗るとIGRからそのまま花輪線へと入っていく。松尾八幡平駅までは鄙びた田園風景であったが、その後は山間の山岳路線へと移り変わってゆく。八幡平駅を過ぎると再び田園風景が戻ってくる。到着した鹿角花輪駅は駅前にターミナルのある賑やかな所だ。8時発のバスはボク一人を乗せて来た道を戻っていく。バスに揺られ、ウトウトしていると、いつの間にかバスは八幡平アスピーテラインを登っている。八幡平ビジターセンターのある大沼を過ぎ、後生掛温泉で一人お客を乗せた後は、只管開けた九十九折を登っていく。鹿角花輪駅から一時間余り、八幡平頂上バス停に到着。盛岡駅に着いた時はどんよりとした雲に覆われていたが、山の上は少しガスが掛かっている程度だ。

(鹿角花輪駅)


(大沼)


(八幡平頂上バス停からの眺め)

まずは八幡平頂上へ向かって石とセメントで舗装された道を上がっていく。石段も混じるこの道の造りには批判もあるかとは思うのだが、一度雨が降れば激しく道がぬかるむこの地にあっては、こうした過剰とも思える整備状況もある程度は致し方ないのだと思う。石段を登りきり、緩やかに上がっていくと岩手山から畚岳(もっこだけ)までの展望が得られる。地形図によるとこの辺りを見返峠というらしい。直ぐ側には避難小屋と見紛うほど立派なトイレもある。八幡沼が眼下にちらちらと見える頃、ガマ沼のほとりに着く。夏の空の色を反映して沼は青く輝いている。ガマ沼の北にある展望台へ登ると八幡沼がよく見える。八幡平のハイライトといえばこの八幡沼とその周辺の湿地帯であるが、今日はそちらへは寄っていかない。一昨年秋に茶臼岳から歩いて八幡沼のほとりの陵雲荘に泊まっているし、何より今日は先を急ぎたい。

(舗装された道)


(見返峠からの展望)


(ガマ沼)


(八幡沼 左に見える建物が陵雲荘)

展望台から八幡平の頂上へ続く道は両側がオオシラビソの高い樹に覆われている。ただ足元は笹が生え、アザミやニッコウキスゲなどの高山植物も多い。緩やかに登ると展望台の設けられた八幡平頂上(1613.3)に着く。展望台はあるものの、上がってみても展望は殆ど得られない。深田久弥氏が「日本百名山」で書かれたように、この山は高原を逍遥することに意味があるのであって、山頂からの展望を期待する山ではないのだ。

(ガマ沼を見下ろす)


(ニッコウキスゲ)




(八幡平頂上)

展望台を下り、バス停へと戻る。蒸ノ湯への道を分けるといくつかの小さな沼が眼下に見える。それぞれめがね沼・鏡沼と名付けられている。秋に訪れたときは沼と畚岳の対比が素晴らしかったのだが、夏の空気ではやや冴えない。バス停へと戻り、駐車場のある東側の展望を楽しむ。薄っすらとだが岩手山の山頂が見えた。今日一日天候は安定しそうである。レストハウスの水道で縦走の準備に取り掛かる。スパッツを着け、ストックを取り出し、水は3リットルを補給することにした。

(めがね沼)


(鏡沼)


(岩手山の頭が見える)


(東側の展望)

準備をしていると中高年のグループが畚岳へ向かって歩いていった。おそらく今日一日同じルートを歩くことになるのだろう。彼らの出発を見送ってからまずは畚岳へ向かって車道を下っていく。まだ時間が早いせいか通るクルマは少ない。車道からは畚岳の眺めが良い。火山活動によって出来た八幡平周辺の山は比較的なだらかな形をしている中で、おにぎり形の山頂部を持った畚岳はよく目立つ。車道が大きくカーヴする辺りからいよいよ山道へ入る。本格的な縦走の始まりだ。一昨年に来たときはこの辺で濃いガスに巻かれたが、今日は畚岳もよく見える。緩やかなアップダウンをこなしながら段々と畚岳が近付いてくる。畚岳分岐の手前で先ほど見掛けた中高年のグループが休憩していた。話を聞いてみると彼らもボクと同じく今日は大深山荘に泊まるという。水場も心配なく出ているとのことだったので、一先ず先に行かせてもらうことにした。

(畚岳)


(車道からの眺め)


(縦走路から)


(アザミ)

分岐から畚岳を目指す。遠くから見ると急に思えるが、実際に取り付いてみればそう急でもない。ハクサンシャジンの花に慰められながら、重いザックのまま山頂へと向かう。空に向かって歩くと人の声がしてくる。畚岳(もっこだけ 1577.8)山頂に出ると中高年の女性二人が談笑していた。山頂からは360度の展望が得られる。これから向かう諸桧岳は山頂部がどこにあるか分からないほどに平たい。その左には南部片富士と呼ばれる岩手山が大きい。盛岡方面は雲海となっていて、朝天気が悪かったのも頷ける。振り返れば八幡平のなだらかな峰々が続き、茶臼岳のところで大きく盛り上がっている。女性たちはまだまだ話が続きそうだったので、挨拶もせずに先へと向かう。

(ハクサンシャジン)


(ニッコウキスゲ)


(畚岳山頂)


(諸桧岳)


(奥が岩手山)






(畚岳からのパノラマ)

諸桧岳へ向かう道は一昨年歩いたときは泥濘で苦労した所だったが、今回は快適そのもの。夏場は以前苦しめられた水溜りも暑さで干上がってしまうのか、靴やスボンを汚すことは殆ど無い。徐々に遠ざかりつつある畚岳を振り返る余裕も見せながら、オオシラビソに覆われた諸桧岳へ入っていく。若干傾斜が急になる所では石がゴロゴロとした道となる。ここも秋に歩いたときは辛かった。山頂部へ近付くと道の両脇は笹に覆われる。刈払いの終えた道はとても歩き易い。道標が置かれただけの諸桧岳(もろひだけ 1516)頂上は眺めもなく、山頂らしくない。少し前諸桧方面へ下りるといくらか眺めが得られる。

(畚岳を振り返る)


(名も無き沼)


(オオシラビソの森が広がる)


(諸桧岳)




(少し下った所からの眺め)

これから向かう前諸桧と嶮岨森を眺めながら下っていくと石が浮かぶ沼のほとりに出る。石沼と呼ばれる沼で、鞍部となっているこの辺りは他にもいくつかの沼が点在しているようだ。登り返すとここも山頂らしくない前諸桧(1481)。山頂自体には眺めは無い。山頂から嶮岨森へ向かって下っていくと尾根が段々と細くなっていく。なだらかな尾根が続く裏岩手縦走路にあってこうした細く急な尾根は珍しい。急で雨風が強くなるせいなのか高い樹はなく、なかなか眺めが良い。最初は東側の岩手山から大深岳・嶮岨森が見え、更に下ると西側の曲崎山などの眺めも得られる。西側の眼下に見える沼には特に名前は付けられていないようだが、カシューナッツのような形はかなり目立つ。

(左に前諸桧 右は嶮岨森 奥は大深岳から源太ヶ岳への尾根)


(石沼)


(他にも沼がある)


(前諸桧)


(東側の眺め)


(花)


(西側の眺め)

鞍部へと下ると嶮岨森が高く聳え立つ。今日一番の厳しい登りだ。じっくりと高度を上げていく。ときに後ろを振り返りながら休みを織り交ぜつつ登る。やがて山頂部の岩場が見えてきた。だが岩場に上がってもなかなか山頂に辿り着かない。東側が切り立った尾根を風にあおられ、日に炙られながらよろよろと進む。ようやく三角点のある嶮岨森(けんそもり 1448.2)に辿り着くとザックを下ろしてへたりこんだ。ここも畚岳と同じく360度の眺めだ。平たい大深岳の向こうには薄っすらとだが最終目的地である秋田駒ヶ岳が見える。本当は八幡平のめがね沼辺りからも見えるのだが、夏場の午後では嶮岨森辺りからが秋田駒の見える限度なのだろう。西側にはやはり曲崎山の丸い山頂部がよく目立つ。この縦走路で最大の山場と考えている山だ。東側は鏡沼と樹海ラインの車道が目立つ。車道が見えなければ相当山深い所と感じるに違いない。

(鞍部から嶮岨森)


(山頂付近は岩場が続く)


(山頂まであと少し)


(嶮岨森頂上 右に曲崎山が見える)


(奥に薄っすらと秋田駒ヶ岳)




(嶮岨森からのパノラマ)

嶮岨森頂上からも見える大深山荘を目指して、今日最後の一踏ん張り。緩やかな尾根が続くのだが、なかなか足は進んでいかない。這松ばかりだった尾根が少し高い樹に変化する頃、前方からエンジン音が鳴り響く。近付くとちょうど二人のおじさんが刈払いの最中であった。彼らがいなければこのルートを歩くのは相当に困難であろう。お礼を言って通り過ぎる。やや歩きにくい東の縁を歩く道を過ぎると小さな沼が見えてくる。ここを過ぎればいよいよ大深山荘だ。約二年ぶりに訪れた山荘は以前と変わらず綺麗なままだ。1階の板の間に寝床を確保し、水場へと向かう。ここの水場は山荘から5分ほどと少々遠い。中腹を横切る道を東に向かって進むと開けた湿地帯に出る。木道が引かれた湿地帯にはニッコウキスゲの群落が風に揺れている。柄杓のぶら下がる水場は相変わらず水量が豊富だ。頭を洗ったり、体を拭いたりしながら、水を6リットル汲んでおく。

(大深山荘への道)


(鏡沼)


(大深山荘)


(水場への道)

山荘へ戻り、昼食の準備をしていると畚岳手前で出会った中高年のグループがやってきた。東京から来たという男女六人のグループであったが、とても統率の取れたグループだった。リーダーの男性が確りとした人で、明日は岩手山へ向かうと話してくれた。もう少し話をしてもよかったのだが、荷の重さや暑さもあってか昼食が終わるとマットの上でぐうぐうと寝てしまった。夕食を終えると彼らも直ぐに寝てしまったので、人数の割には静かな山小屋の夜は更けていった。

DATA:
盛岡駅(IGRいわて銀河鉄道・JR花輪線約2時間)鹿角花輪駅(秋北バス70分)八幡平頂上バス停9:18~9:33見返峠
~9:38ガマ沼~9:47八幡平頂上~9:54めがね沼~八幡平頂上駐車場10:16~10:47畚岳分岐~10:56畚岳~11:57諸桧岳
~12:31石沼~12:47前諸桧~13:35嶮岨森~14:21大深山荘(泊)

秋北バス 鹿角花輪駅~八幡平頂上 1310円

大深山荘 
水場5分 水量豊富 トイレは男女兼用と女性専用が有り(洋式・汲取り式) 紙はあるが持参してほしいとのこと
1階・2階とも板の間 20人位は寝られる 外にベンチ有り 携帯電話はよく入る

歩数 20,327歩

地形図 八幡平 松川温泉 曲崎山

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 武蔵野の記憶 東川 | トップ | 八幡平から秋田駒ケ岳を歩く... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

山の思い出」カテゴリの最新記事