野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

信夫山 平成24年11月16日

2012年11月24日 | 山の思い出
(烏ヶ崎)

福島駅の新幹線ホームに降りると仙台方面に新幹線のトンネルが貫いている山が見える。標高300mに満たないその山は福島市の中心部にあることからかつての地名を取って信夫(しのぶ)山と呼ばれている。西から羽山、寺山(薬師の峰)、羽黒山、熊野山、立石山の各ピークがあり、それぞれ山頂付近まで車道が通っている。しかし登山道も確りと整備され、麓からのんびりと歩いて各ピークを縦走することもできる。福島市内の盆地の平野部からは大抵この山を眺めることができるほどに市民に親しまれた山であり、ボクも幼い頃からこの山に親しんできた。今回久しぶりに西の羽山の端にある烏ヶ崎から東の立石山まで縦走することにした。

大震災後の復旧工事によってすっかり綺麗になった福島駅東口から福島交通バスのももりん2コースに乗る。ももりんとは福島市の観光PRキャラクターのことで、吾妻小富士にできるうさぎ形の残雪に由来している。2コースのバスは県立美術館・図書館を先回りする循環バスなので、その近くにある羽山を登るのに便利だ。東北新幹線の高架下にできた森合緑地公園でバスを降りる。公園内に植えられた街路樹が紅葉の盛りを迎えている。信夫山へ向かって歩き出すが、登山口はどこであろう?今日はコラッセふくしまで貰った信夫山ガイドブックの地図のコピーを参考に歩くことにしている。ただこのコピー、やや不鮮明で肝心なところが分かりにくい。でも適当に登っていっても何とかなる山でもある。図書館の近くなどを探ってみたが、結局新幹線の高架下右脇に登山口があった。

(森合緑地公園)


(図書館脇から羽山辺りを見上げる)


(登山口)

お地蔵様の立ち並ぶ石段を登ると土の登山道に出る。意外と通常の山らしい雰囲気もある。登山道を歩くとすぐに車道に出てしまう。この道路は羽山山頂へとつながっている。だが東に少し進むと山側に踏み跡がある。ここを登っていけばいいようだ。大きなジグザグを切りながら高度を上げていく。森の中は風が吹き抜けず、予想したよりも暑い。山形新幹線を望む展望地でザックを下ろし、上着を全て脱ぐことにした。

(お地蔵様)


(土の登山道)


(展望地から)

山中の紅葉は半田山に比べるとそれほど綺麗と感じることはない。それでも時折朱に染まった木が目を楽しませてくれる。しばらく西に向かって歩いていたところで、道が途切れる。いや厳密には踏み跡は続いているようにも見える。だがこのまま進めばどんどん下っていってしまいそうである。山側を見るとこちらにも踏み跡らしきものはある。そこで山側の踏み跡を辿って登り始める。最初こそはっきりとしていたが、次第にこちらの踏み跡も怪しくなる。ただどちらにせよ羽山は上がっていけばいずれ着くので、とにかく登りやすそうな所を探して登っていく。すると突然林道らしき広い切り開きに出る。藪が酷いが涼しい季節なので、それほど進むのは困難ではない。途中看板を見つけ、「伐採地につき立入禁止」と書かれていたが、今回は大目にみてもらうことにしよう。藪を掻き分けて進むと古い看板が見えてきた。見るとロータリークラブが設置した座禅石についての説明板である。この説明板は以前烏ヶ崎を訪れたときに見た覚えがある。説明板の向かいには確りとした踏み跡が付いている。踏み跡を進めば、綺麗に整備された羽山の月山駐車場だ。

(山中の紅葉)


(古い林道らしき切り開き 藪が酷い)


(月山駐車場)

駐車場脇にある東屋の奥に烏ヶ崎へと続く道が延びているが、先に駐車場の裏手にある月山神社を目指す。道標の先に踏み跡があるのだが、ここも結構藪っぽい。過剰な整備はしていないようだ。藪を抜けた小さなピークの上にあるのが月山神社。コンクリ製であまり風情は感じられない。背後には吾妻山方面に向いた石碑などもある。石碑のあるピークを巻いていくと烏ヶ崎・寺山への縦走路に出る。まずは烏ヶ崎へと向かう。途中湯殿山神社のあるピークがあり、ここが羽山の最高点(275)になっているらしい。神社裏の岩場の眺めが良いとのことだが、一先ず烏ヶ崎に行くことに。烏ヶ崎へは緩やかな下りが続く。やがて前方が開けてくると展望デッキが設置された烏ヶ崎(267.3)に着く。デッキの先にある岩場はかつて湯殿権現の聖地とされ、この岩に上がることを遠慮したとのことだ。そうは言っても見晴らしの良い所には上がってみたいというのが登山者の性。恐る恐る岩に上がる。まず正面に見えるのは雄大な吾妻山と安達太良山。だた残念なことに今日は雲に隠されて山頂部を拝むことはできない。信夫山から延びる新幹線の福島駅から左に目をやるとひょっこりひょうたん島のような弁天山、更にそのまま花見山公園などがある十万劫山(じゅうまんこやま)へと連なる尾根が見渡せる。吾妻山から右に目をやれば、飯坂町に茂庭地区の山並みが広がる。そして何よりも眼下に広がる福島の街。まるで空を飛ぶ鳥になったかのような気分を味わえる。

(月山神社への道)


(月山神社の社)


(湯殿山神社)


(吾妻山)


(安達太良山)


(弁天山と十万劫山)


(飯坂・茂庭方面)




(烏ヶ崎からのパノラマ)

デッキ近くにある石に腰掛けて遅い朝食を取り終わると往路を戻る。先ほどは寄らなかった湯殿山神社の岩場(大日岩)へと立ち寄る。岩場はかつて行場として使われていたであろう見晴らしの良い所だ。仙台方面へと新幹線が延び、その左脇に見える黄色い建物はヤマダ電機。新幹線と交差するように松川が流れ、その背後には飯坂と国見の山そして白い崩壊地を晒す半田山が見える。月山神社裏の縦走路まで戻り、そのまま寺山を目指す。暗い登山道を抜けると九十九折の車道が見えてくる。この車道を串刺しにするように土留めの木段が延びる。この木段の道は羽山駆け道と呼ばれているらしい。羽山駆け道を下りきると駐車場脇に出る。日を浴びたイチョウの木が鮮やかな黄色を輝かせている。駐車場前の石段を上がると薬師の峰展望台が近いのだが、先に第一展望台へと向かうことにする。もうひとつ奥の石段を登ると舗装された遊歩道となる。その先の五つ石の下に第一展望台はある。駐車場のある展望台からは十万劫山方面の眺めが得られるが、それほど広い展望ではない。

(湯殿山神社の岩場)


(大日岩からの眺め 中央は半田山)


(羽山駆け道)


(駐車場脇のイチョウ)


(五つ石)


(第一展望台)


(第一展望台からの眺め)

遊歩道に戻り、羽山駆け道を下りきった所にあった駐車場前の石段の上にある広場へと上がる。その先の林の中にあるのが薬師の峰展望台(225)だ。新幹線と×を描くように延びる国道13号線の延長線上にある突き出た無骨な山が大作山。そこから右を見ると半田山があり、背後には平たい頂上部を見せる萬歳楽山がある。逆に左には台山・黒森山・烏帽子ヶ岳などが見えているようだ。

(薬師の峰展望台)


(中央が大作山)


(半田山 左後ろが萬歳楽山)




(展望台からのパノラマ 右端に見えるのは羽黒山)

展望台から通信施設の脇を抜けていくと薬師堂がある。この辺りが寺山と呼ばれるのはこの薬師堂があるからであろう。鐘楼台で鐘を打ち鳴らし、今日の山歩きの安全を祈る。薬師堂からは羽黒山へ向けて石段を大きく下る。石段を下っていくと霊山の屏風連山がよく見える。意外にも信夫山から霊山が大きく見える所は少ない。車道が乗り越す鞍部から羽黒山へと登り返す。羽黒山の南側は民家が立ち並ぶ関係で舗装路が延びている。だがその舗装路も赤い鳥居を避けるように付けられている。この鳥居は暁まいりの際に羽黒山へ奉納する大わらじが通るため、クルマはそこを避けているらしい。石が埋め込まれた細い舗装路はなかなか傾斜が急である。脇には観音堂や体格の良いお地蔵様など信仰の跡が随所に見られる。信夫山一周道路が横切る所から先は古い石段が続く。観光客らしき中高年の女性が前を歩いている。脇を追い抜くが、女性はだいぶ辛そうだ。山慣れていない人にはきついのだろう。

(薬師堂 奥は鐘楼)


(石段から霊山を望む)


(羽黒山を望む)


(羽黒山への道)


(細い舗装路)


(観音堂)


(お地蔵様)


(最後の石段)

石段を登りきると朱と白に塗り分けられた羽黒神社の拝殿が迎えてくれる。今日は背後にあるイチョウの黄色との対比が見事である。拝殿の脇には奉納された大わらじが立てかけられている。10m以上はあろうかという大きなものだ。イチョウの木の脇を通り、拝殿裏の登山道を下ると熊野山へと続く舗装路に出る。舗装路を進むとゲートの奥に更に舗装路が続く。ゲートの脇を抜けて通信施設の建つ熊野山を目指す。通信施設の裏へ行くと熊野神社の碑が残され、その脇に熊野山の三角点(268.1)がある。展望も社もなく、信夫山のピークとしては最も地味なところかもしれない。

(羽黒神社)


(大わらじ)


(イチョウ)


(ゲート)


(振り返ったところ)


(熊野山三角点)

熊野山からは更に立石山へ向かって登山道が延びている。以前来たときはもっと荒れた感じがしたのだが、倒木を片付け、伐採も入ったらしい。急な下りを終えると立石山までフラットな道が延びる。途中立石と見紛う岩は虚空蔵岩というらしい。尾根の北端には通信施設があり、この辺りを立石山と呼ぶようだ。そしてその脇には立石と呼ばれる巨岩群がある。2m位に突き出した岩の側にやや傾いた平たい岩があり、まずはそこからの展望を楽しむ。羽山の向こうには吾妻山が見えるが、生憎逆光となってしまっている。紅葉も今一つ冴えない。今度は突き出した岩の上へと上がる。多少の岩登りの技術は必要なので、自信のない人は登るのは止めたほうが良いだろう。人ひとりが丁度立てる幅のスペースがあり、その先からは信夫山で最も広い展望が広がる。羽山と背後の安達太良山から始まり、吾妻山・台山・大作山・半田山などが呼称の内にある。ただ逆光になってしまっているのが本当に残念でならない。

(立石山への道)


(虚空蔵岩)


(立石)


(下の岩場からのパノラマ)


(信夫山の紅葉)


(立石上)




(立石からのパノラマ)

立石からは下にある一周道路へと下る。ここの下りはこの山で最も本格的な山道と言ってよいだろう。古峰神社の鳥居がある一周道路へ下り立つと、第三展望台へと足を延ばす。東屋と駐車場のある第三展望台からは吾妻山から大作山辺りまでの展望が得られる。東屋で休憩を取っているとクルマで中高年の女性二人がやって来た。観光スポットとして知られているのだろう。

(立石からの下り)


(第三展望台)


(パノラマ)

往路を戻り、今度はそのまま一周道路を回って第二展望台を目指す。南側へ回ってくるとなかなか紅葉が美しい。日の当たる朝の内ならもっと綺麗だったであろう。しばらく歩くと開けた芝草の広場が見えてきた。天狗の森と呼ばれる広場のようだ。ここも紅葉が見事だ。そして半田山方面の眺めも良い。ここから先は遊歩道が交錯し、どうも手持ちの地図ではわかりにくい。とりあえず西へと歩みを進める。色々迷いながらもなんとか第二展望台へ到着。ここも駐車場が近く、訪れる人は多いほうだ。展望台からは福島競馬場が良く見える。ただ個人的にはここの展望はあまり面白くない。

(一周道路の紅葉)


(天狗の森広場の紅葉)


(半田山方面の眺め)


(紅葉の道)


(第二展望台)


(第二展望台からの眺め)

一通り展望台を回ったので、下山することにした。下山先はかなり幼い頃に行った岩谷観音へ下りることにする。第二展望台脇から木段交じりの登山道をジグザグを描いて下る。意外に長い下りを経て車道に下り立つ。道標にしたがって車道を下りると岩谷観音の境内が見えてくる。観音寺裏参道と書かれた碑の脇から境内に入る。下っていくと大きな一枚岩が見える。立入禁止のロープが張ってあることを不思議に思って下るとそこは磨崖仏の上であった。かなり風化しているものもあるが、数十を超える御仏の姿には圧倒される。

(グラデーションが見事)


(木段交じりの道)














(岩谷観音の磨崖仏)

石段の脇に付けられた九十九折を下れば山歩きも終わる。岩谷下バス停は近いが、親水公園を松川に向かって歩く。松川に出て、今日一日の山歩きの余韻を楽しみつつ、上本内からバスに乗り込んだ。

(岩谷観音の石段)


(親水公園)


(松川土手から)


DATA:
福島駅東口(福島交通)森合緑地公園11:53~12:22月山駐車場~12:30烏ヶ崎~12:55第一展望台~13:00薬師の峰展望台
~13:20羽黒神社~13:27熊野山~13:33立石~13:52第三展望台~14:20第二展望台~14:35岩谷観音~15:00上本内バス停

福島交通バス 福島駅東口~森合緑地公園 100円
       上本内(あるいは岩谷下)~福島駅東口 330(あるいは260)円

トイレ 月山駐車場 第一展望台 第二展望台 その他各所にある

歩数 20,400歩

地形図 福島北部

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